EL DORADOの騎士~異世界物語り~

佐々倉 桜

文字の大きさ
6 / 24
第1章 ~ノワール国~

策略

しおりを挟む
 ジーンの森へと虚兵を走らせている最中に私は思う。流石、スピード特化の虚兵レユニオン、歩幅も従来より広く推進装置ブースターも効いているため兎に角速い。
 速度を上げることによって生じる振動も特殊ダンパーによって限りなく抑えられ操縦者の負担が軽くなっている特殊仕様らしいが…。
「………。」
 この特殊仕様はオズの意見を取り入れ国の技工士が改良をした唯一の虚兵、言えばオズの【専用機】。
 操縦技術が高いオズを更に高みへとグライス王が決定を許可した。
 オズは虚兵操縦の天才だと国中が認めている。
【神騎】も【適性者】も居ない我がノワール国で【虚兵】を誰よりも上手く操れるということは何よりも重宝される。ただ単に階級が高いだけでなく、その上で操作技術もあるのなら当然だ。

 虚兵騎士にもまだ成れない私は、年齢もそんなに変わらないのにどんどん進んでいくオズに対し若干の劣等感みたいな気持ちを覚えつつ……もう1つの感情が…。

『なんだよ、今度は黙りこんで…怖じ気づいたのか?それとも

「あるか!そんなもの!」

 …そう、オズと私は2年程前は恋人と呼び合う中だった…ヘーリオス家とカペルシュ家の両家で公認されていた。
 これも私の黒歴史の1ページなのだけれど…。
 現在はご覧の通りとなっている。
 そうなった理由は…から…それ以上は語りたくない。

『なんだよ、つれないなぁ~』

 まったく、この男は緊張感がないのか!この一大事に…!

『まぁ、冗談はこの辺にして…見えてきたぜ!ジーンの森!』

「…!!急いで父上を見つけないと…!」

 …さぁ、ここからだ…気を引き締めなければ!自分の両頬を叩く。

『おい、アリス!あれを見ろ!』

「え!?」

 ジーンの森入り口に人が倒れている。

「あれは…?」

 その場へ到着すると同時に私はレユニオンから飛び降りる。

「大丈夫ですか!?」

 倒れていたのは今朝方出発した新人の騎士だ。その姿は傷だらけで…私の声に反応がない。
 顔と胸に手をやり呼吸と心音を確認してみる。

「…大丈夫、気を失っているだけだわ。」

『いったい何があったんだ?』

「わからない…けどこれだけ負傷しているなんてただ事ではないわ。」

 ジーンの森では獣や罪人に襲われることがあるけど、ここまでやられるとは考えにくい。新人とはいえ仮にも彼は騎士なのだ。
 獣、罪人などに遅れをとるとは…相手が魔族だったとしてもジーンの森にいる魔族は低級レベルで、人の前にはそうそう姿を現さないはず…。

 ………ん?

「あれ?」

『なにかあったか?』

姿
 低級の魔族は中、上級レベル魔族を怖れる傾向がある。言い方が悪いが【ザコ】扱いを受けている。まぁその通りなんだけど…その為、低級魔族は自ら人の前に姿は見せない。不意に見つかり目があったときぐらいかな?戦闘になるのは…。

 ノワール国で私が見てこの剣で斬った魔族を思い出す。

 目玉ジャム。
 ホースマン。
 四つ目鳥。

 大群だった為、何も思わなかったけど、この3種類は
 …幾ら大群だからといっても

「まさか…いや、でも何のために?」

『おいおい、どうしたんだよ!?』

 オズはまったく気がついていないようだが、私もよく解らないから説明できない。

「あれ?」

 不意に目を動かすと岩影からノワール騎士の兜頭が見える。
 余程重症なのだろうか横になって微動だにしない。

「あそこにも騎士が!」

『なんだって?何処だ?』

「ほら、あそこよ!彼も負傷しているはずだわ!」

『おい!?アリス!』

 虚兵に乗っているオズと地面に立っている私とでは目線の角度が違う。だから姿のだろう。
 急がないと、きっと彼も酷い怪我をしているはずだ。

「ねぇ!だいじょー…」

 それ以上の言葉、声が出せなくなった。そこには騎士は居なかった、いや表現が違う。

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 その場には騎士の首だけが無惨にも投げ捨てられていた。


『どうしたんだよ!』

 「騎士」という道を選んだ以上、自らだけでなく仲間の負傷や死とは常に隣り合わせであるが、ここまで残酷なものは見たことがなかった……。

「う、ぁ、ぁ……。」

 顔の皮を剥がされ眼球が飛び出し、白く見えるのは脊髄だろうか…。

『避けろ!アリス!!』

「!?」

 意識が飛びそうだった私はオズの声に呼び戻された。

ドチャ!!!!!

 という音と共に辺りを土埃が被う。

 間一髪。

 私はから身を交わす。そして腰に下げている剣を抜き構える。

 舞っていた土埃が、落ち着いてくるとの姿がハッキリと姿を現した。

 巨大な棍棒…。

 その棍棒に完全粉砕された騎士の兜からは頭蓋骨や脳が飛び出ている。

「外してしまたったか…これだからゴミはすぐ飛んでしまう…。」

 巨大な棍棒の主はゆっくりとした動作で棍棒を持ち直しアリスの目の前に出てくる。

「お前は!!」

 目の前には、約3メートルの巨体。異常発達した筋肉の身体。至る所から生えている体毛。天をつく二本の角。鋭く尖った牙。

 上級魔族「大喰鬼オウガ

 巨大な乳房と腰を守る様に獣の毛皮が巻いている事から女性メスと判断。

「ゴミが次から次と出てくるわ!」

「なぜ、こんな所に上級魔族が?」

『離れろアリス!俺が相手をする!』

「オズ!」

 オズが乗っている虚兵レユニオンは全長が18メートルに対して目の前のオウガ(メス)は約3メートルしかない。勝負は目に見えていると思うが…前に話した通り虚兵レユニオンはスピード特化。

 『うぉおおおおおおおおおおお!』

 オズがオウガに突進する。

「ふん!擬物の分際でぇ!」


 棍棒を構え直したオウガもオズに向かって走る。自分の倍以上も大きい相手にも関わらずに怯む事は無い。むしろ、虚兵に対して何か別の意味合いの憤りがあるのだろうか。

 レユニオンのスピードに合わせてオウガは棍棒をフルスイングする。レユニオンはより速く動き進む用に軽量化されている為いくら自分より小さい相手だろうが、攻撃力の高い、上級魔族オウガの一撃で沈む可能性が高い。

 オウガが棍棒の狙いを付け振りかぶる。このままだとオズに直撃してしまう。
 レユニオンは一撃では沈まないと思うが…。
 
ブォォン!

レユニオンを狙った筈のオウガの棍棒が空を切る。

 襲い掛かる棍棒が当たる直前でレユニオンが一歩分後ろに下がったからだ。

『もらったーーー!!!』

「………。」

 このまま行けば確実にオウガを仕留める事が出来る。
……しかし。

 動じてないオウガの目が何かを狙っているのを察しオズは攻撃を止める。

 瞬間、レユニオンの眼前を棍棒が過る。

『うわっ!!』

 オウガの放つ棍棒はまるで生き物の様に軌道を代えて再び襲ってくる。

 『しまった!』

 レユニオンの腹部に棍棒の一撃が当たる。『くっ…!』レユニオンは後ろに吹き飛ぶ。
 樹齢何年にもなるであろう大木を数本倒してレユニオンは倒れ動かなくなる。

「オズ!!!」


「見たか!擬物が!!」


 オウガが私の方を振り向くとほぼ同時に剣を構える。

「こい!化け物!!」

「グオオオオオォォォォォォォォ!!」


『まだだぁーー!!』


 動きが止まっていたレユニオンが突進を開始する。

「まだ、動くか…!」

 今回はオウガが攻撃の体勢になる前にスピードに乗ったレユニオン。
 しかし、目の前のオウガをかわしレユニオンは私の方へ向かってきた。

『乗れ!アリス!!』

「っ…!?」

 瞬発的に私はレユニオンへと飛び乗る。

『逃げるぞ!!』

「オズ!?」

 獲物を逃がし悔しそうに咆哮をあげるオウガをよそに私たちはその場を後にした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。 不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。 14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

処理中です...