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始まり 短時日の皮切り
初ダンジョン攻略 第一階層にて異能と出会う
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デリアから紅音への指名依頼ということで、二人は東のダンジョン【逆鱗森林】へと向かった。そのダンジョンは最近できたばかりの若いダンジョンであったが、その割に出現するモンスターは強力なので難易度が高いダンジョンに指定されていたのだ。
その事を一行は知らなかった。Dランクの冒険者が、よもや冒険者になりたての人間が到底挑むべき難易度ではない。まさしく自殺行為と言える。
――しかしそれは通常の人間であればの話に限定される。
「なるほどなぁ。ここがダンジョンってやつか。映像で見るのとはものが違うな」
「ふぇえぇ……すっごく大きいですね」
彼女たちは今、ダンジョンの前にいる。ここは辺境都市「ドレイル」から東の大森林「デーンマーク」である。そのデーンマークにある唯一のダンジョン【逆鱗森林】。その見た目は巨大な大樹であり、その根本にアーチ状の入り口が存在する。
因みに彼女たちはここに来るまで幾多のボロボロになった冒険者とすれ違っていたため、迷うことなく来れたのだった。一応ダンジョン周辺とはいえ、ダンジョン内からモンスターが溢れないということもあり、入り口周りは露店等といったものがあった。
「よぉ! 嬢ちゃん達、どうにも見かけねぇ顔だな。ここに来るのは初めてかい? 買い忘れたもんや買い足しておきたいもんはここで買っていくといいぜ」
と、露店を開いているむさい商人の男が話しかける。
「アイテムみたいなもんか? そういや武器ねぇな……アタシは……グリル、お前何使う?」
「えっ……あー、じゃあ私はこのメイスでお願いします」
「あいよッ嬢ちゃん!」
(アタシには世界異能があるから正直な話、買わなくても別にいいよな? でも能力使ってる所誰かに見られたらまずいかもだし、カモフラージュで買っておくか? いやーでも金の浪費は嫌だなぁ)
紅音は熟考する。そもそも自分に合う武器とは何か、そもそも能力無しで戦えるのか、勢いでここまで来たが具体的なダンジョンについての情報も乏しい。もう少しよく考えてから来ればよかったと少し後悔の念を抱くほどであった。
しかし人とは不思議なもので賭博においては巨額の金を差し出すというのに、こういう生活必需品等となると財布の紐が固くなる。まさに本末転倒とも言える。
「んーー……まぁ同じやつでいいか。下手に剣とかいう絶妙に技術がいるものよりも、打撃は単純で使いやすそうだし」
「毎度あり! メイス2つで300セールだ。因みにあんたら冒険者だろ? もしかして最初の第一階層踏破者にでもなるきかい?」
「はいよ。まぁそんな所だ。てかまだ居なかったんだな」
こうして二人は初めて武器を手にするのであった。このメイスならば頭や急所に当てることで致命傷を負わせられるだろう。
「ま、止めやしねぇが死なねぇ程度に進まねぇと死ぬぞ。そんじゃ行ってきな」
「ご忠告どうもなー。んじゃグリル行くぞ」
「うん! 気を引き締めて頑張る!」
とてもやる気のあるグリルを見て紅音は何だか少し奇妙に感じたのだが気にはしなかった。
さてこれにて一行はダンジョンの第一階層へと侵入する。意外にも屋内は木で出来てはおらず、石レンガの壁に少しだけ木の根が張り巡らされてる程度であった。
「……なんかこういう場所を見ると空飛ぶ城の映画を思い出すな。巨人兵とか居ねぇよな?」
「それで紅音、ここからどうするの?」
「え、あーまぁこういうのは左の壁に触れながら進むと迷うことなく一周できるんだがぁ……そんなことはしてらんねぇよな。本でも読み返すか」
そうして彼女は鞄から例の本を取り出す。なんとその本にはダンジョンについても記載があった。
「お、ダンジョンの項目発見! 何々? ダンジョン攻略においては基本的に探知系に優れたものをパーティーに入れると良い。か、え!? 少なっ!!」
そう紅音が戸惑っているとグリルが話し出す。
「……紅音、私探知能力ってわけじゃないけど、この体のせいか少し鼻が利くから敵の位置はわかるよ」
「おぉ……そいつはいいなァ。じゃあ取り敢えず腕試しに行くとしよう。雑魚狩りじゃあ!!」
そして紅音は握りしめたメイスを念のために金に変えておいた。これでどんなに粗末な武器であったとしても修復可能であり、以前より硬くなる。だが、紅音が持つ"金触"にはさらなる可能性が秘められている。
「あ、紅音! この先の角にモンスターが居るよ!」
「お! よぉし行ってみますかぁ」
角を曲がった先には、“毒モルフォウ”と“森ラビッツ”がいた。
「うげ、毒々しい蝶と緑色のウサギがいやがるな……しかもデケェし、キモッ!」
「紅音は虫系苦手なんだね。結構美味しいよ?」
「食ったことあるんだなお前、まぁ倒しに行ってみますか。グリルには蝶をお願いするわ」
(どうせあの見た目的に雑魚やろ。へっへっへ)
だがしかしこの二体の敵は猛毒と突発的な俊足力を持った初見殺し技を保有している凶悪モンスターである。このダンジョンに初めて来た者はまずコイツラに苦戦する、しかもここでは雑魚指定なので偶発的遭遇をしやすいというのが問題なのである。
「さて、他の冒険者はいなさそうだし“アレ”を試してみるか……イケェッ!!」
そう言うと彼女は腕を伸ばし“森ラビッツ”にメイスの頭を向ける。そして狙いを定めて柄の部分を如意棒の如く勢いよく伸ばし、“森ラビッツ”の頭を撃ち抜き砕く。そしてメイスを元の長さに戻す。
「ヨシッ! 作戦は成功だな……にしてもこのリーチの長さ、元の体積より確実に増えているよな。なんでだろ? グリル、お前はどうだ……って、もうなんか食ってる」
「……ムシャムシャ、ん? どうしたの?」
グリルはとっくにあのモンスターを捕食していた。とても美味しそうに平らげている。その様はあまりにもグロテスクなため若干紅音は引き気味な顔をしていた。
「うん……こいつも食うといいぞ」
「うん! ありがとう!」
そうして彼女たちはこの調子でダンジョン攻略を進めていった。その過程で紅音は原理は不明だが、金に変えた物は本当に元の状態より体積を増やせられることが分かる。しかしグリルのバイキング状態があまりにもショッキングすぎて感情の起伏は薄かった。
そして第一階層のボス部屋前まで来る。
「意外とここまで来んのに苦労しなかったな。多分ここがボス部屋だよな? どんなやつなんだろうな」
「早く入ってみようよ! きっと美味しいよ!」
「うん……今のお前の興味はそこしか無いんだな。じゃー行ってみるか」
そして大扉を開けようとしたその時、後方より声がかかる。
「おーーい! ちょ、ちょっと待つにゃーー!」
「あ? なんだぁ?」
紅音たちは後ろを振り返る。すると息を切らして駆け寄ってきた猫獣人の冒険者がいた。その姿は動物の猫に人間の骨格が入ったかのようだった。全体的に紺色の毛並みに人の髪を持ち黄緑色の瞳を持っていた。服装はかなりの軽装で、背丈は人間のそれであった。
「そのボス部屋に入るなら“ミャー”もいれてにゃ!」
「誰だお前? ミャーってなんだよ、お前の名前か?」
「違うにゃ! ミャー、は一人称にゃ! ミャーの名前は“羽柴ミニル”にゃ!」
「はしば……? なんか日本人ぽくてどこかで聞いた気もするが、気のせいだな。そんな名字聞いたことねぇし」
「紅音、ニホン人って何?」
「え、あーまぁアタシの出身地の話だ、気にすんな。それで何でお前を引き連れなきゃいけねぇんだよ」
紅音は見ず知らずの獣人に聞く。すると彼女は少し慌てた様子で言う。
「ボス戦は人手が多いだけ有利にゃ。ミャーが居るほうが絶対いいにゃ! ぜっったいにゃ!」
その妙な様子を見て紅音は察する。
「ははーん、さてはお前一人で来たはいいものの一人で戦うのが怖くてアタシ達と一緒にいたいっていう腹積りだな? まぁええわ、分前は7:3な。無論アタシらが7だ」
「ニャッ!? ……まぁいいにゃ、アンタの予想通りにゃし。それに一人で帰るよりかはいいにゃ。あとアンタ能力者にゃろ?」
思わぬ発言に紅音は驚愕の表情を見せてしまう。
「……見てたのか、だがアレは錬金術だ。能力者とかは知らねぇな」
「嘘ついても無駄にゃ、魔力の痕跡の気配にゃいし。装備も錬金術師としてはおかしいにゃ……そんなに警戒しなくても大丈夫にゃよ。ミャーも同じにゃ」
「!? お前……まさか日本人なのか? その形で?」
「その日本人ってのは知らにゃいけど、ミャーの祖父が教えてくれたにゃ。ミャーが持つ特別な力は奥の手として絶対言いふらしちゃいけないものだにゃって。それでミャーの能力は【斬手刀】にゃ。手を手刀の形にすると手の周りにオーラみたいな刃が出てくるのにゃ、ほら」
そうして彼女は自分の手からビームソードのようなものを出す。そのビームは緑色に輝いていた。
「まじかぁ……アタシ以外のそういうやつとこんなにも早く会っちまうとわなぁ」
「ミャーも初めてにゃ! まぁでもこの刃を出してるとなんか疲れやすいのにゃ。だからこれは不意をつく時に大体使ってるにゃ。切れにゃかった物はにゃいし」
「まぁめんどくせぇから一緒に戦うのはアタシはいいけど、グリルはどうだ?」
「うん! この人そんなに悪そうな人じゃなさそうだし、私もいいよ!」
その言葉にミニルは反応する。
「そんなにってなんでにゃ! 悪さのかけらもないニャロッ!」
「うっせーなぁ。じゃあもう入るぞ」
そうして彼女たちはダンジョンのボス部屋の扉を開けて、あまたの冒険者を退けた第一階層のボス“森林カジュモーク”と戦う事となるのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*あとがきに記載されている情報は読者向けであり、本作品に登場するキャラクター達は一切見れません。
応援やご感想等よろしくお願いします。
ステータス
名前:羽柴ミニル
種族:猫獣人
世界異能:【斬手刀】
詳細:手を手刀の形にする事でエネルギー刃を展開できる。
ただし持続力は体力に依存する。
魔法:無習得
称号:無し
耐性:無し
その事を一行は知らなかった。Dランクの冒険者が、よもや冒険者になりたての人間が到底挑むべき難易度ではない。まさしく自殺行為と言える。
――しかしそれは通常の人間であればの話に限定される。
「なるほどなぁ。ここがダンジョンってやつか。映像で見るのとはものが違うな」
「ふぇえぇ……すっごく大きいですね」
彼女たちは今、ダンジョンの前にいる。ここは辺境都市「ドレイル」から東の大森林「デーンマーク」である。そのデーンマークにある唯一のダンジョン【逆鱗森林】。その見た目は巨大な大樹であり、その根本にアーチ状の入り口が存在する。
因みに彼女たちはここに来るまで幾多のボロボロになった冒険者とすれ違っていたため、迷うことなく来れたのだった。一応ダンジョン周辺とはいえ、ダンジョン内からモンスターが溢れないということもあり、入り口周りは露店等といったものがあった。
「よぉ! 嬢ちゃん達、どうにも見かけねぇ顔だな。ここに来るのは初めてかい? 買い忘れたもんや買い足しておきたいもんはここで買っていくといいぜ」
と、露店を開いているむさい商人の男が話しかける。
「アイテムみたいなもんか? そういや武器ねぇな……アタシは……グリル、お前何使う?」
「えっ……あー、じゃあ私はこのメイスでお願いします」
「あいよッ嬢ちゃん!」
(アタシには世界異能があるから正直な話、買わなくても別にいいよな? でも能力使ってる所誰かに見られたらまずいかもだし、カモフラージュで買っておくか? いやーでも金の浪費は嫌だなぁ)
紅音は熟考する。そもそも自分に合う武器とは何か、そもそも能力無しで戦えるのか、勢いでここまで来たが具体的なダンジョンについての情報も乏しい。もう少しよく考えてから来ればよかったと少し後悔の念を抱くほどであった。
しかし人とは不思議なもので賭博においては巨額の金を差し出すというのに、こういう生活必需品等となると財布の紐が固くなる。まさに本末転倒とも言える。
「んーー……まぁ同じやつでいいか。下手に剣とかいう絶妙に技術がいるものよりも、打撃は単純で使いやすそうだし」
「毎度あり! メイス2つで300セールだ。因みにあんたら冒険者だろ? もしかして最初の第一階層踏破者にでもなるきかい?」
「はいよ。まぁそんな所だ。てかまだ居なかったんだな」
こうして二人は初めて武器を手にするのであった。このメイスならば頭や急所に当てることで致命傷を負わせられるだろう。
「ま、止めやしねぇが死なねぇ程度に進まねぇと死ぬぞ。そんじゃ行ってきな」
「ご忠告どうもなー。んじゃグリル行くぞ」
「うん! 気を引き締めて頑張る!」
とてもやる気のあるグリルを見て紅音は何だか少し奇妙に感じたのだが気にはしなかった。
さてこれにて一行はダンジョンの第一階層へと侵入する。意外にも屋内は木で出来てはおらず、石レンガの壁に少しだけ木の根が張り巡らされてる程度であった。
「……なんかこういう場所を見ると空飛ぶ城の映画を思い出すな。巨人兵とか居ねぇよな?」
「それで紅音、ここからどうするの?」
「え、あーまぁこういうのは左の壁に触れながら進むと迷うことなく一周できるんだがぁ……そんなことはしてらんねぇよな。本でも読み返すか」
そうして彼女は鞄から例の本を取り出す。なんとその本にはダンジョンについても記載があった。
「お、ダンジョンの項目発見! 何々? ダンジョン攻略においては基本的に探知系に優れたものをパーティーに入れると良い。か、え!? 少なっ!!」
そう紅音が戸惑っているとグリルが話し出す。
「……紅音、私探知能力ってわけじゃないけど、この体のせいか少し鼻が利くから敵の位置はわかるよ」
「おぉ……そいつはいいなァ。じゃあ取り敢えず腕試しに行くとしよう。雑魚狩りじゃあ!!」
そして紅音は握りしめたメイスを念のために金に変えておいた。これでどんなに粗末な武器であったとしても修復可能であり、以前より硬くなる。だが、紅音が持つ"金触"にはさらなる可能性が秘められている。
「あ、紅音! この先の角にモンスターが居るよ!」
「お! よぉし行ってみますかぁ」
角を曲がった先には、“毒モルフォウ”と“森ラビッツ”がいた。
「うげ、毒々しい蝶と緑色のウサギがいやがるな……しかもデケェし、キモッ!」
「紅音は虫系苦手なんだね。結構美味しいよ?」
「食ったことあるんだなお前、まぁ倒しに行ってみますか。グリルには蝶をお願いするわ」
(どうせあの見た目的に雑魚やろ。へっへっへ)
だがしかしこの二体の敵は猛毒と突発的な俊足力を持った初見殺し技を保有している凶悪モンスターである。このダンジョンに初めて来た者はまずコイツラに苦戦する、しかもここでは雑魚指定なので偶発的遭遇をしやすいというのが問題なのである。
「さて、他の冒険者はいなさそうだし“アレ”を試してみるか……イケェッ!!」
そう言うと彼女は腕を伸ばし“森ラビッツ”にメイスの頭を向ける。そして狙いを定めて柄の部分を如意棒の如く勢いよく伸ばし、“森ラビッツ”の頭を撃ち抜き砕く。そしてメイスを元の長さに戻す。
「ヨシッ! 作戦は成功だな……にしてもこのリーチの長さ、元の体積より確実に増えているよな。なんでだろ? グリル、お前はどうだ……って、もうなんか食ってる」
「……ムシャムシャ、ん? どうしたの?」
グリルはとっくにあのモンスターを捕食していた。とても美味しそうに平らげている。その様はあまりにもグロテスクなため若干紅音は引き気味な顔をしていた。
「うん……こいつも食うといいぞ」
「うん! ありがとう!」
そうして彼女たちはこの調子でダンジョン攻略を進めていった。その過程で紅音は原理は不明だが、金に変えた物は本当に元の状態より体積を増やせられることが分かる。しかしグリルのバイキング状態があまりにもショッキングすぎて感情の起伏は薄かった。
そして第一階層のボス部屋前まで来る。
「意外とここまで来んのに苦労しなかったな。多分ここがボス部屋だよな? どんなやつなんだろうな」
「早く入ってみようよ! きっと美味しいよ!」
「うん……今のお前の興味はそこしか無いんだな。じゃー行ってみるか」
そして大扉を開けようとしたその時、後方より声がかかる。
「おーーい! ちょ、ちょっと待つにゃーー!」
「あ? なんだぁ?」
紅音たちは後ろを振り返る。すると息を切らして駆け寄ってきた猫獣人の冒険者がいた。その姿は動物の猫に人間の骨格が入ったかのようだった。全体的に紺色の毛並みに人の髪を持ち黄緑色の瞳を持っていた。服装はかなりの軽装で、背丈は人間のそれであった。
「そのボス部屋に入るなら“ミャー”もいれてにゃ!」
「誰だお前? ミャーってなんだよ、お前の名前か?」
「違うにゃ! ミャー、は一人称にゃ! ミャーの名前は“羽柴ミニル”にゃ!」
「はしば……? なんか日本人ぽくてどこかで聞いた気もするが、気のせいだな。そんな名字聞いたことねぇし」
「紅音、ニホン人って何?」
「え、あーまぁアタシの出身地の話だ、気にすんな。それで何でお前を引き連れなきゃいけねぇんだよ」
紅音は見ず知らずの獣人に聞く。すると彼女は少し慌てた様子で言う。
「ボス戦は人手が多いだけ有利にゃ。ミャーが居るほうが絶対いいにゃ! ぜっったいにゃ!」
その妙な様子を見て紅音は察する。
「ははーん、さてはお前一人で来たはいいものの一人で戦うのが怖くてアタシ達と一緒にいたいっていう腹積りだな? まぁええわ、分前は7:3な。無論アタシらが7だ」
「ニャッ!? ……まぁいいにゃ、アンタの予想通りにゃし。それに一人で帰るよりかはいいにゃ。あとアンタ能力者にゃろ?」
思わぬ発言に紅音は驚愕の表情を見せてしまう。
「……見てたのか、だがアレは錬金術だ。能力者とかは知らねぇな」
「嘘ついても無駄にゃ、魔力の痕跡の気配にゃいし。装備も錬金術師としてはおかしいにゃ……そんなに警戒しなくても大丈夫にゃよ。ミャーも同じにゃ」
「!? お前……まさか日本人なのか? その形で?」
「その日本人ってのは知らにゃいけど、ミャーの祖父が教えてくれたにゃ。ミャーが持つ特別な力は奥の手として絶対言いふらしちゃいけないものだにゃって。それでミャーの能力は【斬手刀】にゃ。手を手刀の形にすると手の周りにオーラみたいな刃が出てくるのにゃ、ほら」
そうして彼女は自分の手からビームソードのようなものを出す。そのビームは緑色に輝いていた。
「まじかぁ……アタシ以外のそういうやつとこんなにも早く会っちまうとわなぁ」
「ミャーも初めてにゃ! まぁでもこの刃を出してるとなんか疲れやすいのにゃ。だからこれは不意をつく時に大体使ってるにゃ。切れにゃかった物はにゃいし」
「まぁめんどくせぇから一緒に戦うのはアタシはいいけど、グリルはどうだ?」
「うん! この人そんなに悪そうな人じゃなさそうだし、私もいいよ!」
その言葉にミニルは反応する。
「そんなにってなんでにゃ! 悪さのかけらもないニャロッ!」
「うっせーなぁ。じゃあもう入るぞ」
そうして彼女たちはダンジョンのボス部屋の扉を開けて、あまたの冒険者を退けた第一階層のボス“森林カジュモーク”と戦う事となるのだった。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
*あとがきに記載されている情報は読者向けであり、本作品に登場するキャラクター達は一切見れません。
応援やご感想等よろしくお願いします。
ステータス
名前:羽柴ミニル
種族:猫獣人
世界異能:【斬手刀】
詳細:手を手刀の形にする事でエネルギー刃を展開できる。
ただし持続力は体力に依存する。
魔法:無習得
称号:無し
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