ボーイズシアター

神永ピノ

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登場人物

3.不満

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どうやら新妻は文化祭に向けて制作する映画のシナリオを考える為部活を休んでいたようだ。確かに、冷静に考えてみれば映画への情熱が一番強い 新妻が無断で部活を休むはずがない。不良みたいな見た目だが、根は真面目なやつだ。
「ちょっと待って。連絡って誰にした?」
 沢田が訊いた。
「双葉」
 沢田と新妻は双葉の方を見た。見られた双葉は目を泳がせている。
「え、あー、いやぁー。ヒロ、それっていつ送ったの?」
「最後に部活行った日の夜」
 ジッと双葉に視線が注がれる。
「あのーですねー……僕その日の帰りに公園で弟たちの遊びに付き合ってたんだよねー。そこで噴水に落として現在進行形で修理中でス………」
「「このバカやろー‼」」
沢田と新妻は同時に双葉を叱った。だが叱っても何も始まらない訳で………
新妻は鞄を席に置き、書いてきたシナリオを机の上に広げた。
「この間光希がアクションものやりたいって言ってたから俺たちが出来る範囲のアクションを取り入れた話にしてみたんだが……」
 新妻はぺらぺらと自分のシナリオについて説明していく。双葉と沢田も席に座り説明を聞いた。
 説明が一通り終わったところで新妻がシナリオについて意見を求めた。
「どこか変えてほしい所はあるか?」
「あ、えっといいと思うよ。思うんだけど―………」
双葉は沢田と目配せをした。それを合図に沢田はうなずき話を切り出した。
「新妻、この話は全員が揃ってした方がいいんじゃないか?今日、木戸は仕事で居ないから明日とかにでも………」
「明日待って、本当に来るのかよ」
 部室内は静かに深刻な空気に包まれた。風通しが良いはずなのに、息苦しさを感じる。
 予想はしていたが、やっぱり新妻は木戸に関して話をすると、途端に機嫌が悪くなる。ここまで新妻は木戸に反発するような奴だっただろうか?一年の時は仲良くやっていた気がする。
「新妻、木戸のことなんだけど、何がそんなに気に入らないんだ。木戸は俺たちとは違うんだ。ただの学生じゃない。仕事を休むことと部活を休むことじゃ迷惑をかける範囲が違うんだ」
 沢田なりに新妻の気に障らないよう、慎重に言葉を選んだつもりだった。だが、新妻はドンっと机を叩き沢田に叫んだ。
「モデルなら許されるのかよ‼部活休んだって許されるのかよ‼たいして準備の手伝いはしないくせに、自主映画に出れば木戸君木戸君言われて、あいつだけが作ったみたいになって‼オレ達や先輩がどれだけ時間かけて作ったかも知らねーくせに‼」
 新妻の言葉には誤解も含まれていた。だが、沢田も双葉もその言葉に反論は出来なかった。
 去年、木戸は大道具や小道具の準備を一切手伝わなかった。そんな奴を作品出すのはおかしいと言って新妻は反対していたが、先輩は見栄えがするの一点張りで準備を手伝っていない木戸を演者として出した。木戸が広告塔になったおかげで自主映画の客足は途絶えることなく二日間計四回の放映が全て満席だった。
 結果はついてきたものの、客の感想は木戸に対するものばかりで、木戸を演者に選んだ先輩も木戸に対して少し距離を置くようになった。
 沢田や双葉は当然のように受け入れた去年の出来事。だが、新妻には相当腹に据えかねていたようだ。
 部室は静まりかえったままで、誰一人として否定の言葉を発さない。
 バッと沢田が顔を上げドアの方を見た。ドアの小窓に誰かの影が映った。

 “全部聞かれた‼”
 影が消えたと共に、廊下にバタバタと走る音が響いた。沢田は体の動くまま、ドアを勢いよく開け放ち、部室から飛び出した。
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