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第3話 婚約者ができました?
ep.18
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「なにをそんなに怒っているのさ?」
ムスッとしているわたしに対し、ユーグは呆れ顔で聞いてくる。
「……別に怒ってなんかないわ。ユーグはセルグスに行くことを事前にエリクから聞いていたのに、わたしにはなにも教えてくれなかったことなんて、ぜんぜん、まったく、これっぽっちも気にしていないわ」
「すごく気にしているようにしか聞こえないんだけど……」
そんなに怒らないでよ、とユーグが困った顔をする。そんなユーグから、わたしは思い切り顔を逸らして応える。
あとから聞いたことだけど、ユーグは今回のセルグス行きのことをエリクから聞いていて、ずっとわたしに黙っていたのだ。
父さまに会いに行くときに言っていたのは、このことだったみたい。
本当にもう、二人揃って意地悪なんだから! わたしを除け者にして楽しいのだろうか。
……ちょっとだけ。ほんの少しだけ、寂しい。
わたしはエリクになんでも話をするけれど、エリクはそうではないのだな、と思って。
エリクとはなんでも話すことができる、友達よりも近くて、家族よりも気安い、そんな関係なのだと思っていた。
けれど、そう思っていたのはわたしだけで、エリクはそうじゃなかった。
エリクはいつもなにも言わない。一人で全部抱え込んで、わたしの前でも涼しい顔をする。
悩みがあってもわたしに打ち明けることなんて絶対にしないし、なんでもない顔をして一人で解決してしまう。
それがわたしは、とても寂しかった。
わたしではなんの力にもなれないのかもしれない。
でも、素直じゃないエリクの代わりに泣いたり怒ったりしてあげることくらいできる。
嬉しいことなら、エリクよりも喜んであげられる。
そのくらいなら、わたしにだってできるのに。
「エリク王子にも、色々事情があるんだよ。ボクが聞いたのはこの話が正式に決まる前で、リディが一緒に行けることが確定していたわけじゃなかった。キミをぬか喜びさせないように、ちゃんと決まってから言おうとしていたんじゃない?」
「……そんなこと、わかっているわ。わかっているけれど……どうしても、気に入らないのよ」
「リディ……」
ユーグはすごく困った顔をしていた。
別にユーグを困らせたいわけじゃない。だから、わたしは無理に笑顔を作って、「……なんてね」と誤魔化そうとした。
しかし、その前にユーグが口を開く。
「……リディは、すごく我儘だ」
「え?」
ユーグの言葉が意外なもので、わたしはきょとんとする。
そんなわたしをユーグは感情の読めない顔をして見つめ、とても冷たい声音で言った。
「なんでも言うことが、信頼の証なんかじゃない。言わないでいることで、相手を守ることだってある。真実が優しいものであるとは限らない。逆に残酷なものであることの方が多いんだ。それをすべて伝えることが……言わせることが信頼だと言うのなら、キミはとんだ幸せ者だね」
「ユーグ……?」
あからさまな皮肉を言ったユーグに、わたしは戸惑う。
わたしの台詞ろなにかがきっとユーグの琴線に触れたのだと思う。
確かに、ユーグの言う通りなのかもしれない。すべて伝えることが信頼に結びつくとは限らない。むしろ、信頼しているからこそ、伝えられないこともあるのかもしれない。
わたしにはまったく思い浮かばないけれど、きっとユーグにもエリクにもそういうことはたくさんあって、だからこそ、言ってくれなかっただけで拗ねているわたしにユーグは腹立たしく思ったのだろう。
「あ、あの……ユーグ……」
ユーグに謝ろうと名を呼ぶと、ユーグはハッとした顔をしたあと、慌てて謝った。
「ご、ごめん……! 別にリディが悪いわけじゃない。リディの気持ちもわからなくはないし、今回に限っては王子サマはリディにちゃんと言うべきだったとは思うよ」
「ううん……わたしが子どもみたいに拗ねていたのが悪いの。わたしこそごめんなさい」
「いや……ボクも八つ当たりだった」
わたしたちの間に微妙な空気が流れ始める。
どうしてこうなったのだろう……?
エリクのせいだわ……エリクがちゃんと言ってくれれば、こんな空気にならなかったのに!
心の中でエリクを罵っていると、顔を半分だけ出す王子さまスタイルのエリクがひょっこりと顔を出す。
「リディ、そろそろ出発の時間だけど……なに、この変な空気……きみたち、どうしたの?」
思いきり顔を顰めたエリクに、わたしとユーグは顔を見合わせたあと、ギロリとエリクを睨んだ。
そのわたしたちの顔が酷かったのが、エリクはぎょっとした顔をして、一歩後ずさる。
「ほ、本当にどうしたわけ……?」
「……エリクが悪いのだわ」
「は……?」
「エリクがぜんぶ悪いのよ! セルグス王国に行くこと、わたしにずっと黙っていたから! ユーグには先に言っておいて、わたしにはギリギリまで黙っているんだもの!!」
怒り出したわたしにエリクは困った顔をし、助けを求めるようにユーグを見た。
「ボクも、今回は王子サマが悪いと思う」
「きみまで……? なんだかよくわからないけど、ぼくが悪いの……?」
「そうよ! エリクが悪いの! わたしとユーグに謝って!」
「ええ……? なんでぼくが……」
「いいから、謝って!」
「意味がわからないんだけど……」
謝れと迫るわたしに、エリクは不承不承といった様子で「ごめん」と謝った。
心が籠っていない! と怒りたかったけれど、そろそろ出発しないとまずいとのことだったので、わたしはそれを堪え、エリクと同じ馬車に乗ったのだった。
〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「そういえば、エリクはセルグスになにをしに行くの?」
「ああ……そういえば、リディにはまだ言っていなかったかな……今回セルグスに行くのは、セルグスの王太子に呼ばれたからだよ。ぼくじゃなくても良かったんだけど、父上も兄上たちも都合がつかなくて、ぼくが代理で行くことになったんだ」
「国王さまの代理なの……!? それならなおさら、わたしがついて行ってよかったの?」
「もちろん。リディにはぼくの壁になってもらわないといけないし……それに、その夜会はパートナー同伴じゃないといけないらしいから」
わたしはエリクの最後の台詞で納得した。
パートナーがいないといけないんだ。人嫌いのエリクは頼める相手がいなくて、わたしに縋ったのね。
そう思えば少しだけ気分が良くなって、それなら仕方ない、エリクに付き合ってあげよう、と心から思えた。
「……なんか腹立つこと考えてない?」
「べっつに~? エリクはわたしがいないとだめなのね、なんて思っていないわ」
「絶対思っているでしょ……」
半眼でわたしを見るエリクに、にこっと笑いかける。そして、エリクの顔に手を触れる。
「エリクはこうしていると王子さまみたいなのに。やっぱり、顔出した方がわたしは好きだわ」
そう言うと、なぜかエリクは息を呑んだ。
そして、ふいっと顔を横に向ける。
「……そんなにぼくの顔が好きなの?」
「うん、好き。前髪で顔が隠れていると、エリクの綺麗な目が見えないし……どんな表情しているのかわからないのがちょっと不満なの、わたし。エリクが嫌なら別に無理強いはしないけれど、わたしの前でくらい、顔を出てもいいのよ!」
ふんっと胸を張って言う。
エリクにしつこいって言われそうだけれど、わたしはエリクの顔はもちろん、その綺麗なオッドアイが好きだ。右目の赤みの強い紫も、左目の青みの強い紫も、どっちも好きだ。
「……物好きだよ、リディは」
ぽつりと呟いたエリクの声が、少し震えていた。
わたしはそれに気づかないふりをして、にこりと微笑んで、髪で隠している右目を晒す。
わたしの大好きなエリクの瞳に、笑顔のわたしが写った。
「なんとでも言うといいわ。わたしはエリクの顔も目も好き。エリクがもういいって言っても、何度だって言うんだから」
だから、そんなに怯えなくていいの。わたしがエリクを気持ち悪いと思うことなんてないのだから。
エリクの目のことを気味悪がっている人たちがたくさんいることを、今のわたしは知っている。幼いわたしは知らなかったけれど、それでエリクがたくさん傷ついて顔を隠すようになったことは、さすがのわたしでも想像がつく。エリクの人嫌いもそこから来ているのかもしれない。
でも、わたしはエリクが好きだ。意地悪で、意地っ張りで、わたしのことをバカにして、でも時折優しくて、本当はとても繊細な、わたしの大切な幼馴染み。
わたしだけは、ずっとエリクのことを肯定してあげたい。エリク自身が否定することも、わたしは肯定する。
「……リディのバカ」
「はいはい」
「お人好し、考えなし、向こう見ず」
「……そこまで言う?」
人がせっかく好きだと言ってあげているのに!
本当にエリクは意地っ張りなんだから!
「本当に……バカだよ、リディは」
「あのね、二回も言わなくても……」
いいでしょ、と文句を言おうとしたとき、エリクに抱き寄せられた。
ふわりと、エリクの香りがする。すっぽりとエリクの腕の中に収まると、エリクはわたしの肩に額を置いた。
「バカリディ」
バカバカ言いながら、エリクが少し震える。
わたしはエリクの胸に寄りかかって目を閉じ、少しだけ速いエリクの鼓動を聞く。
意地っ張りなエリクは、泣いているところなんて見られたくないだろう。わたしは優しいから、気づかないふりをしてあげよう。
ああ……だけど、これだけは言わせてほしい。
「エリクはその口の悪さと性格を直せば完璧なのに」
「……うるさいな。リディに言われたくないんだけど」
まったく、台無しだよ、とエリクに呆れたように言われる。
……台無しって、なにが?
台無しの意味を考えるわたしに、エリクは本当に小さな声で「ありがとう」と言った。
ムスッとしているわたしに対し、ユーグは呆れ顔で聞いてくる。
「……別に怒ってなんかないわ。ユーグはセルグスに行くことを事前にエリクから聞いていたのに、わたしにはなにも教えてくれなかったことなんて、ぜんぜん、まったく、これっぽっちも気にしていないわ」
「すごく気にしているようにしか聞こえないんだけど……」
そんなに怒らないでよ、とユーグが困った顔をする。そんなユーグから、わたしは思い切り顔を逸らして応える。
あとから聞いたことだけど、ユーグは今回のセルグス行きのことをエリクから聞いていて、ずっとわたしに黙っていたのだ。
父さまに会いに行くときに言っていたのは、このことだったみたい。
本当にもう、二人揃って意地悪なんだから! わたしを除け者にして楽しいのだろうか。
……ちょっとだけ。ほんの少しだけ、寂しい。
わたしはエリクになんでも話をするけれど、エリクはそうではないのだな、と思って。
エリクとはなんでも話すことができる、友達よりも近くて、家族よりも気安い、そんな関係なのだと思っていた。
けれど、そう思っていたのはわたしだけで、エリクはそうじゃなかった。
エリクはいつもなにも言わない。一人で全部抱え込んで、わたしの前でも涼しい顔をする。
悩みがあってもわたしに打ち明けることなんて絶対にしないし、なんでもない顔をして一人で解決してしまう。
それがわたしは、とても寂しかった。
わたしではなんの力にもなれないのかもしれない。
でも、素直じゃないエリクの代わりに泣いたり怒ったりしてあげることくらいできる。
嬉しいことなら、エリクよりも喜んであげられる。
そのくらいなら、わたしにだってできるのに。
「エリク王子にも、色々事情があるんだよ。ボクが聞いたのはこの話が正式に決まる前で、リディが一緒に行けることが確定していたわけじゃなかった。キミをぬか喜びさせないように、ちゃんと決まってから言おうとしていたんじゃない?」
「……そんなこと、わかっているわ。わかっているけれど……どうしても、気に入らないのよ」
「リディ……」
ユーグはすごく困った顔をしていた。
別にユーグを困らせたいわけじゃない。だから、わたしは無理に笑顔を作って、「……なんてね」と誤魔化そうとした。
しかし、その前にユーグが口を開く。
「……リディは、すごく我儘だ」
「え?」
ユーグの言葉が意外なもので、わたしはきょとんとする。
そんなわたしをユーグは感情の読めない顔をして見つめ、とても冷たい声音で言った。
「なんでも言うことが、信頼の証なんかじゃない。言わないでいることで、相手を守ることだってある。真実が優しいものであるとは限らない。逆に残酷なものであることの方が多いんだ。それをすべて伝えることが……言わせることが信頼だと言うのなら、キミはとんだ幸せ者だね」
「ユーグ……?」
あからさまな皮肉を言ったユーグに、わたしは戸惑う。
わたしの台詞ろなにかがきっとユーグの琴線に触れたのだと思う。
確かに、ユーグの言う通りなのかもしれない。すべて伝えることが信頼に結びつくとは限らない。むしろ、信頼しているからこそ、伝えられないこともあるのかもしれない。
わたしにはまったく思い浮かばないけれど、きっとユーグにもエリクにもそういうことはたくさんあって、だからこそ、言ってくれなかっただけで拗ねているわたしにユーグは腹立たしく思ったのだろう。
「あ、あの……ユーグ……」
ユーグに謝ろうと名を呼ぶと、ユーグはハッとした顔をしたあと、慌てて謝った。
「ご、ごめん……! 別にリディが悪いわけじゃない。リディの気持ちもわからなくはないし、今回に限っては王子サマはリディにちゃんと言うべきだったとは思うよ」
「ううん……わたしが子どもみたいに拗ねていたのが悪いの。わたしこそごめんなさい」
「いや……ボクも八つ当たりだった」
わたしたちの間に微妙な空気が流れ始める。
どうしてこうなったのだろう……?
エリクのせいだわ……エリクがちゃんと言ってくれれば、こんな空気にならなかったのに!
心の中でエリクを罵っていると、顔を半分だけ出す王子さまスタイルのエリクがひょっこりと顔を出す。
「リディ、そろそろ出発の時間だけど……なに、この変な空気……きみたち、どうしたの?」
思いきり顔を顰めたエリクに、わたしとユーグは顔を見合わせたあと、ギロリとエリクを睨んだ。
そのわたしたちの顔が酷かったのが、エリクはぎょっとした顔をして、一歩後ずさる。
「ほ、本当にどうしたわけ……?」
「……エリクが悪いのだわ」
「は……?」
「エリクがぜんぶ悪いのよ! セルグス王国に行くこと、わたしにずっと黙っていたから! ユーグには先に言っておいて、わたしにはギリギリまで黙っているんだもの!!」
怒り出したわたしにエリクは困った顔をし、助けを求めるようにユーグを見た。
「ボクも、今回は王子サマが悪いと思う」
「きみまで……? なんだかよくわからないけど、ぼくが悪いの……?」
「そうよ! エリクが悪いの! わたしとユーグに謝って!」
「ええ……? なんでぼくが……」
「いいから、謝って!」
「意味がわからないんだけど……」
謝れと迫るわたしに、エリクは不承不承といった様子で「ごめん」と謝った。
心が籠っていない! と怒りたかったけれど、そろそろ出発しないとまずいとのことだったので、わたしはそれを堪え、エリクと同じ馬車に乗ったのだった。
〇●〇●〇●〇●〇●〇●
「そういえば、エリクはセルグスになにをしに行くの?」
「ああ……そういえば、リディにはまだ言っていなかったかな……今回セルグスに行くのは、セルグスの王太子に呼ばれたからだよ。ぼくじゃなくても良かったんだけど、父上も兄上たちも都合がつかなくて、ぼくが代理で行くことになったんだ」
「国王さまの代理なの……!? それならなおさら、わたしがついて行ってよかったの?」
「もちろん。リディにはぼくの壁になってもらわないといけないし……それに、その夜会はパートナー同伴じゃないといけないらしいから」
わたしはエリクの最後の台詞で納得した。
パートナーがいないといけないんだ。人嫌いのエリクは頼める相手がいなくて、わたしに縋ったのね。
そう思えば少しだけ気分が良くなって、それなら仕方ない、エリクに付き合ってあげよう、と心から思えた。
「……なんか腹立つこと考えてない?」
「べっつに~? エリクはわたしがいないとだめなのね、なんて思っていないわ」
「絶対思っているでしょ……」
半眼でわたしを見るエリクに、にこっと笑いかける。そして、エリクの顔に手を触れる。
「エリクはこうしていると王子さまみたいなのに。やっぱり、顔出した方がわたしは好きだわ」
そう言うと、なぜかエリクは息を呑んだ。
そして、ふいっと顔を横に向ける。
「……そんなにぼくの顔が好きなの?」
「うん、好き。前髪で顔が隠れていると、エリクの綺麗な目が見えないし……どんな表情しているのかわからないのがちょっと不満なの、わたし。エリクが嫌なら別に無理強いはしないけれど、わたしの前でくらい、顔を出てもいいのよ!」
ふんっと胸を張って言う。
エリクにしつこいって言われそうだけれど、わたしはエリクの顔はもちろん、その綺麗なオッドアイが好きだ。右目の赤みの強い紫も、左目の青みの強い紫も、どっちも好きだ。
「……物好きだよ、リディは」
ぽつりと呟いたエリクの声が、少し震えていた。
わたしはそれに気づかないふりをして、にこりと微笑んで、髪で隠している右目を晒す。
わたしの大好きなエリクの瞳に、笑顔のわたしが写った。
「なんとでも言うといいわ。わたしはエリクの顔も目も好き。エリクがもういいって言っても、何度だって言うんだから」
だから、そんなに怯えなくていいの。わたしがエリクを気持ち悪いと思うことなんてないのだから。
エリクの目のことを気味悪がっている人たちがたくさんいることを、今のわたしは知っている。幼いわたしは知らなかったけれど、それでエリクがたくさん傷ついて顔を隠すようになったことは、さすがのわたしでも想像がつく。エリクの人嫌いもそこから来ているのかもしれない。
でも、わたしはエリクが好きだ。意地悪で、意地っ張りで、わたしのことをバカにして、でも時折優しくて、本当はとても繊細な、わたしの大切な幼馴染み。
わたしだけは、ずっとエリクのことを肯定してあげたい。エリク自身が否定することも、わたしは肯定する。
「……リディのバカ」
「はいはい」
「お人好し、考えなし、向こう見ず」
「……そこまで言う?」
人がせっかく好きだと言ってあげているのに!
本当にエリクは意地っ張りなんだから!
「本当に……バカだよ、リディは」
「あのね、二回も言わなくても……」
いいでしょ、と文句を言おうとしたとき、エリクに抱き寄せられた。
ふわりと、エリクの香りがする。すっぽりとエリクの腕の中に収まると、エリクはわたしの肩に額を置いた。
「バカリディ」
バカバカ言いながら、エリクが少し震える。
わたしはエリクの胸に寄りかかって目を閉じ、少しだけ速いエリクの鼓動を聞く。
意地っ張りなエリクは、泣いているところなんて見られたくないだろう。わたしは優しいから、気づかないふりをしてあげよう。
ああ……だけど、これだけは言わせてほしい。
「エリクはその口の悪さと性格を直せば完璧なのに」
「……うるさいな。リディに言われたくないんだけど」
まったく、台無しだよ、とエリクに呆れたように言われる。
……台無しって、なにが?
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