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剣と盾
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ディランと、フォレンは幼い頃からよく一緒に遊んでいた。
歳離れた皇太子の弟として、大事に育てられたディランには、友人と呼べる存在もなく、寂しい宮殿生活を強いられていた。
しかし、5歳のときに宮殿に親に連れられて来たフォレンと出会い、意気投合する。
そして、ディランの傍らには、少し年下の、可愛らしい少女も。
少女は、フォレンの妹で、名前はグレイシアといった。
フォレンと同じ、透き通るような金色の髪の毛と深い翠色の瞳。一目で、恋をした。
グレイシアもディランに一目惚れし、すぐに婚約し二人は愛を育んだ。
幼馴染みとしてずっと一緒に過ごしていくうち、決まって三人が誓った台詞がある。
『おれは、グレイシアのために戦う剣になるんだ!』
『じゃあ、私は兄としてグレイシアを守る盾になるよ。』
『それなら、私は二人が傷ついても絶対に癒す女神様になるのよ!』
ずっと、そんな日々が続くと思っていた。でも。
『グレイシアが、死んだ。』
ディランとフォレンが、十五歳になった秋のこと。あまりにも突然の訃報に、ディランは言葉を失った。
なんで?
あんなに元気だった。
自分が成人したら、改めてプロポーズして、グレイシアの卒業を待って、結婚する予定だったのに。
フォレンも、グレイシアの死は到底受け入れられず、人間らしい感情を失った。
それでも、公爵家の子息という役割を重要視した父親によって性根を叩き直され、何とか自我を保っていた。
しかし、ディランは。
無気力な傀儡殿下。
貴族の間で、そんな風に囁かれた。
社交場にも出ず、食事も満足にとらない。
見かねた母親が、縁談を複数持ってきたが、何の未来も見えなくなったディランにとって、自分の結婚など、どうでもよかった。
そして、数年が経過した、ある日。
疎遠になっていたフォレンが、ディランの部屋に訪ねてきた。
『私と一緒に行かないか?』
ーアルクスへ。
フォレンもまた、雁字搦めの環境の中、懸命に足掻いていた。
そんな中、フォレンは世界機関アルクスの存在を知った。
そこでは、平民貴族関係なく皆が支え合い、国境すらも隔てることなく人々を救っているという。
グレイシアの死因は、砡の欠片の暴走に巻き込まれた事故だった。
暴走させた本人も、グレイシアを巻き添えに爆死したと聞かされていた。
暴走さえしなければ。
限度を越えた加護の持ち主が、制御の仕方を知っていれば。
グレイシアのことを思うと後悔ばかりだったが、それでも。
グレイシアのような犠牲者をだしてはいけない。
『俺が剣で、お前は盾だ。』
随分と昔の情景を思い出した。
(あぁ、そうか。俺は。俺にも、できることがある。)
ディランの瞳に、再び光が灯った。
それから、アルクスへ入門し、二人はその才能を開花させた。一年足らずで本部のトップクラスの砡術士となり、フォレンにいたっては、その話術や頭脳も役立ち、アルクスの頭脳と呼ばれるほどの地位に収まっている。
今回の調査は、フォレン自ら行くことを強く希望した。
未開の地に、単純に興味があったことも理由のひとつだが、本当の理由は。
(ディランのガス抜きには丁度良い場所だったしな。)
実際のところ、ディランの強さはエンブルグ皇国で一番だ。
他の三国にも、ディランほどの使い手が、そうそういるとは考えにくい。
ほんの小さなトラブルや喧嘩の仲裁程度で、彼が満足できるわけがない。
それなら、思い切りがむしゃらに戦える場所を与えてやれば、気分転換になるだろうと。
大魔境に、アルクスがついに踏入れる。
それを実現させたのは間違いなくディランの剣の力があったからだ。
(愚痴を吐きながらも、あんなに楽しそうなディランの顔は久しぶりに見た。・・・。)
夕食を終え、青い結界の外へと走って行くディランを視線だけで見送り、深い森からでは殆ど見えない夜空を想像して、夜の狩りに出掛けた彼の無事を祈った。
そして、翌朝。
夜中のうちにディランが大物を狩りつくしたお陰で、アシュトは早朝から広範囲の偵察が可能になった。
アシュトが、戻ってくるなり報告した、内容は。
「遺跡です!ここより東に一キロ先、旧ディーテ神殿の遺跡を発見したっす!」
「!!」
「でかした!アシュト、案内しろ。」
歳離れた皇太子の弟として、大事に育てられたディランには、友人と呼べる存在もなく、寂しい宮殿生活を強いられていた。
しかし、5歳のときに宮殿に親に連れられて来たフォレンと出会い、意気投合する。
そして、ディランの傍らには、少し年下の、可愛らしい少女も。
少女は、フォレンの妹で、名前はグレイシアといった。
フォレンと同じ、透き通るような金色の髪の毛と深い翠色の瞳。一目で、恋をした。
グレイシアもディランに一目惚れし、すぐに婚約し二人は愛を育んだ。
幼馴染みとしてずっと一緒に過ごしていくうち、決まって三人が誓った台詞がある。
『おれは、グレイシアのために戦う剣になるんだ!』
『じゃあ、私は兄としてグレイシアを守る盾になるよ。』
『それなら、私は二人が傷ついても絶対に癒す女神様になるのよ!』
ずっと、そんな日々が続くと思っていた。でも。
『グレイシアが、死んだ。』
ディランとフォレンが、十五歳になった秋のこと。あまりにも突然の訃報に、ディランは言葉を失った。
なんで?
あんなに元気だった。
自分が成人したら、改めてプロポーズして、グレイシアの卒業を待って、結婚する予定だったのに。
フォレンも、グレイシアの死は到底受け入れられず、人間らしい感情を失った。
それでも、公爵家の子息という役割を重要視した父親によって性根を叩き直され、何とか自我を保っていた。
しかし、ディランは。
無気力な傀儡殿下。
貴族の間で、そんな風に囁かれた。
社交場にも出ず、食事も満足にとらない。
見かねた母親が、縁談を複数持ってきたが、何の未来も見えなくなったディランにとって、自分の結婚など、どうでもよかった。
そして、数年が経過した、ある日。
疎遠になっていたフォレンが、ディランの部屋に訪ねてきた。
『私と一緒に行かないか?』
ーアルクスへ。
フォレンもまた、雁字搦めの環境の中、懸命に足掻いていた。
そんな中、フォレンは世界機関アルクスの存在を知った。
そこでは、平民貴族関係なく皆が支え合い、国境すらも隔てることなく人々を救っているという。
グレイシアの死因は、砡の欠片の暴走に巻き込まれた事故だった。
暴走させた本人も、グレイシアを巻き添えに爆死したと聞かされていた。
暴走さえしなければ。
限度を越えた加護の持ち主が、制御の仕方を知っていれば。
グレイシアのことを思うと後悔ばかりだったが、それでも。
グレイシアのような犠牲者をだしてはいけない。
『俺が剣で、お前は盾だ。』
随分と昔の情景を思い出した。
(あぁ、そうか。俺は。俺にも、できることがある。)
ディランの瞳に、再び光が灯った。
それから、アルクスへ入門し、二人はその才能を開花させた。一年足らずで本部のトップクラスの砡術士となり、フォレンにいたっては、その話術や頭脳も役立ち、アルクスの頭脳と呼ばれるほどの地位に収まっている。
今回の調査は、フォレン自ら行くことを強く希望した。
未開の地に、単純に興味があったことも理由のひとつだが、本当の理由は。
(ディランのガス抜きには丁度良い場所だったしな。)
実際のところ、ディランの強さはエンブルグ皇国で一番だ。
他の三国にも、ディランほどの使い手が、そうそういるとは考えにくい。
ほんの小さなトラブルや喧嘩の仲裁程度で、彼が満足できるわけがない。
それなら、思い切りがむしゃらに戦える場所を与えてやれば、気分転換になるだろうと。
大魔境に、アルクスがついに踏入れる。
それを実現させたのは間違いなくディランの剣の力があったからだ。
(愚痴を吐きながらも、あんなに楽しそうなディランの顔は久しぶりに見た。・・・。)
夕食を終え、青い結界の外へと走って行くディランを視線だけで見送り、深い森からでは殆ど見えない夜空を想像して、夜の狩りに出掛けた彼の無事を祈った。
そして、翌朝。
夜中のうちにディランが大物を狩りつくしたお陰で、アシュトは早朝から広範囲の偵察が可能になった。
アシュトが、戻ってくるなり報告した、内容は。
「遺跡です!ここより東に一キロ先、旧ディーテ神殿の遺跡を発見したっす!」
「!!」
「でかした!アシュト、案内しろ。」
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