虹色の子~大魔境で見つけた少年~

an

文字の大きさ
21 / 73

神泉を目指す

しおりを挟む
「結論から言うと、ヒースヴェルト様のお食事、何とかなると思います、ディーテ様のお声を、聞くことができました!」
リーナは興奮気味に報告する。

「本当か!?それは良かった。」
フォレンもディランも、ほっとした。
「で、具体的にはどうすればいい?」
ディランが促すと、アシュトは大陸の地図を机に広げて、説明を始めた。

「神泉ッス。大陸の各所に湧き出る神泉の水に、ディーテ様の砡の力が込められているそうで、その水を使うことでヒースヴェルト様も、食事できるらしいッス!」
「神泉か・・・。ここから一番近いのは」
とん、とフォレンの指先が指し示す。

「我がルートニアス公爵領。
ここから差程離れていない。首領からの連絡を待つ必要はあるが、急ぎここを目指そう。」

「「はい!」」

「そうだな。」

ルートニアス公爵領は広大で、領主の城はその中ほどにあるが、神泉は幸い城の南側あたりにあり、ここからならば三日程で近くの町へ着くだろう。
フォレンは早々に領地に使いを寄越すよう手紙を送った。

「うー、ん。ふあぁ~」

可愛らしい欠伸が聞こえた。
共に行動するようになり分かったのだが、ヒースヴェルトの朝は遅い。
もう太陽が空高く昇っていた。

「おはようございます、ヒースヴェルト様。よくお休みになられていましたね。」
そう言うと、リーナは寝癖で乱れているヒースヴェルトの髪を櫛でといて、着替えを用意する。
「うーん、なんだか変なゆめ、みたの~・・・」
リーナにされるがままに支度をされるヒースヴェルトは、ぼうっとした顔でうんうんと唸っている。
「ゆめ、ですか?」
「あのねぇ、ママのおしごとばの、ねぇ・・・」
と、そこまで喋ると、ピタ、と止まり。

「・・・?ヒー様?」

「うー。わすれちゃったょ。」

へら、と笑う。
「あはは。そうですか。夢なんて起きたら覚えてないことも沢山ありますからね。」

アシュトはよしよし、とヒースヴェルトの頭を撫でて笑う。

「ね、リーナ。お着替えするまえに、あわあわ、してぇ?」
ベッドからとん、と降りてリーナの腰あたりに抱きつく。上目遣いの天使(神の子だけど)にリーナはプルプルと震えた。

(っーー!甘え上手ッ!)
リーナは顔を真っ赤にして何度も頷くと、速攻で風呂の準備に取りかかった。

コンコンコン、と控えめなノック音がした。
ホテルの従業員だった。
「失礼します、アルクス本部から、フォレン様宛に《流星》が届いているそうです。」
「分かった。」
短く答えて従業員を帰らせる。
「さて。どんな文句を聞けるかな。」
首領に宛てた手紙の内容は、とても誉められたものではない。こちらが全て決定します、と言い切っているのだから。

「じゃ、私はアルクスへ行ってくるよ。ヒースヴェルト様を頼んだぞ。」
「「はい。」」
アシュトとリーナは畏まって礼をした。
「気を付けろよ。昨日の奴らが、まだうろついているかもしれねぇ。」
ディランも声をかける。
「あぁ。気を付けよう。」

フォレンが支部に着くと、受付のロザリーさん。
「フォレン様!《流星》を受け取りにこられたんですよね?」
「あぁ。」
「こちらです。」

職員専用の簡易執務室に入ると、施錠する。
首領からの《流星》の内容は。


*********************

フォレン=ルートニアス 殿

随分と信じがたい内容に驚いている。しかし、報告が真実であれば貴殿の思う通りにすることを願う。
私もまた、神の信徒であるのだから。

だが、報告は怠らないように。

                       アルクス首領・ナッシュ=アトレイ


*********************

「なんとも簡潔な・・・。」
しかし、返答は是とあった。それならば、思い通りにさせてもらう。

目指すは、ルートニアス領、神泉の元へ。


しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

異世界でまったり村づくり ~追放された錬金術師、薬草と動物たちに囲まれて再出発します。いつの間にか辺境の村が聖地になっていた件~

たまごころ
ファンタジー
王都で役立たずと追放された中年の錬金術師リオネル。 たどり着いたのは、魔物に怯える小さな辺境の村だった。 薬草で傷を癒し、料理で笑顔を生み、動物たちと畑を耕す日々。 仲間と絆を育むうちに、村は次第に「奇跡の地」と呼ばれていく――。 剣も魔法も最強じゃない。けれど、誰かを癒す力が世界を変えていく。 ゆるやかな時間の中で少しずつ花開く、スロー成長の異世界物語。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

処理中です...