虹色の子~大魔境で見つけた少年~

an

文字の大きさ
22 / 73

禁忌

しおりを挟む


エンブルグ皇国の皇都より南にある広大な領地は、先々代皇帝の弟であったジーンハルトが賜った領地。
フォレンの父で三代目になる。
二代目公爵は短命で、フォレンの父親が公爵家を継いだのは、まだ十七歳の時であった。

フォレンは、その現公爵の長男である。
まだ公爵は健勝で、領地運営になんの問題も無いが、いずれは後継者として考えなければならないが。

(領地に戻るのも久しぶりだな。)

星の離宮の一室、ヒースヴェルトの部屋の隣の少し狭い部屋で今後の予定をアシュトと組む。

何故アシュトかというと。

「フォレン様、神泉を目指すなら、このルートが一番安全っす。ここから先、少し治安が悪いエリアが・・・あ、この村。
先月野党に襲われ、被害が出ています。死者も。んで、まだ近くの山林に潜んでいるみたいっすよ。
ほんとかなーって思って、昨日ちょっと飛んだンスけど、この山にアジトっぽい横穴見つけました。村から奪った食糧やら、ちらっと見えたんで。」

淡々と、軽ーい感じで周辺の現状を説明してくれる。

アシュトは、アルクス屈指の諜報員でもあった。
翠の砡の力である風を扱うことに長けており、街道を使わず大空を移動手段とする彼なら、検問など意味を成さない。

「そうか。やはり遠回りになるが、こちらの道を行くか。・・・アシュトは単独、ルートニアス領へ入っておけ。
神泉近くの町、ハクライでヒースヴェルト様をお迎えする準備をしろ。」
「ウッス!」

町での宿泊はこれでよし。後は、料理については、リーナでも十分だとは思うが、ヒースヴェルトの身の回りの世話も含め、食事まで彼女に頼むのは負担が多い。

(・・・専属の料理人が必要か?)

しかし、雇うにしても秘匿すべき情報が多すぎる。神泉の水を使い、更に世間的には未発見の砡を使用し、料理を作るなど。
テーブルに広げた資料や地図を片付け、ヒースヴェルトの部屋へと戻ると、お風呂上がりでまたまた輝いているヒースヴェルトの眩しさに目をやられ。

「あっ!フォレン。ねぇ、今日のお飾りはねぇ、ディランのお色なのよ~。すてきでしょ?」
「ん?」
意味がわからず、首をかしげると。
「はい、髪紐のことです。金色と赤の編み込みで、ディラン様の御髪と瞳の色だ、と大喜びで。」
と、リーナに説明されて改めてヒースヴェルトの姿をみる。

ここ数日で一層輝きを増したオパール色の長髪に、赤と金の組紐を三つ編みにした髪の毛に編み込み、一纏めにしている。
品のある金色刺繍の襟元が美しいオフホワイトのシャツに、深い赤茶のスラックス。
足元は動きやすいように丈の浅いハーフブーツを履いていた。

「確かに、これはディランを思わせるなぁ。っと、当の本人は?」
くすっ、と笑い、部屋を見渡す。

「ここにいるぞ。ちょっと野暮用でな。出掛けていた。」
タイミングよく、ドアが開く。

「野暮用?」
「例の双蛇の連中について、西国ロレイジアの支部に問い合わせた。やはりあっちにも目撃報告はあったらしい。
それから、失踪する砡術士は決まって《白》使いなんだとさ。」
「《白》、なのか?意外だな。力が目的なら、《緋》か《蒼》だと思ったが。」
「あぁ。奇妙だな。《白》は戦いや守護というより、寧ろ産業・技術に秀でた能力が特徴だ。
細部加工やら動力エネルギーの循環、増幅・・・とか、って、まさか!?」
ブツブツと分析していると、ひとつの可能性が推測された。
「・・・兵器、とか?」
ディランの推測に、フォレンも気づいた。


この世界で禁忌とされる、戦争を起こそうとしている者がいるという可能性。



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...