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詮索しないで仕事して。
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「説明を、してもらおうか、フォレン。あの子どもは何だ。何故神聖陣が描かれた?あれは神殿の神子の力ではないのか?
神殿の神子のそれよりも遥かに強い力だったじゃないか。」
ハクライのホテルの談話室で、フォレンはレイモンドに言われる。
「今は、任務中なので詳しくは言えませんが、いくら父上でも、ヒースヴェルト様の御気分を害されることのなきよう、お願いします。」
「・・・。」
遊び疲れたヒースヴェルトは、ホテルに向かう馬車の中ですぐに眠りについた。ホテルで出迎えたリーナに抱えられて、今は部屋で眠っている。
アシュトもさすがに疲れ、休ませてもらっている。
今はルートニアス親子と執事の三人だけ。
「神子様ならば教会の畑だ。アルクスに所属しているお前が関わっては、組織が黙ってないだろう。」
「首領には許可頂いていますよ。話せることはこれ以上ありません。
ハクライ滞在後は城に戻ります。家庭教師にトリシャを付けます。ラドリー、手配を頼みたい。」
レイモンドの脇に控えるラドリーに指示を出すと、ラドリーは恭しくお辞儀をした。
「畏まりました、若様。」
「お前・・・。」
じとり、とラドリーを睨むレイモンド。
「とにかく、これ以上は詮索無用に願いますよ、父上。私はあの方の悲しむ姿は見たくない。」
そう言うと席を立ち、その場を去る。
「何だと言うのだ、一体。」
あまりの息子の変わりように、戸惑いしかなかった。
(グレイシアが死んで、腑抜けた時期もあったが、それでもディラン様と共に過ごす日々で真面になったと思っていたのに。今度はあのような幼子に現を抜かすなど・・・。
まぁ、愛らしいけれども!
だが、神子ともなれば、教会に引き取らせねばなるまい?)
「旦那様、若様が仰ったように、詮索はお控えなさったほうが宜しいかと。
私も、あのお子様にはただならぬ気配を感じます。安易に教会に渡すなど、お考えになさりませんように。」
いろいろと思いめぐらせていたところをラドリーに釘を刺され、レイモンドはそれ以上なにも言うことは無かった。
「あれ?レイモンド。どうしたんだ?今週はずっと兄上の元で勤務じゃないのか?」
「ディラン殿下!!どうもこうもありませんよ、うちのバカ息子は一体どうしたというのです?あなたからも一言言ってやってください!」
フォレンが去って数分もしないうち、ホテルにディラン皇弟殿下が姿を見せる。
「えぇ?あー、その様子だとお会いしたんだな?可愛いだろ、うちのヒー様。」
ニカッと笑う、陛下と良く似た笑顔に、動揺を隠せない。この方まで、あの子どもを贔屓しているのは間違いない。
「会いましたよ。会いましたがね、一体なんなのです?何故二人も揃って、小間使いのようにあの子供の世話をやいて・・・。」
頭痛を覚えたのか、こめかみに指をあてて唸る。
「小間使い、ね。まぁ、あながち間違っちゃいねぇよ。・・・まだ俺らは任務中だ。フォレンにも言われただろうが、悪いがこれ以上は探るな。」
「殿下っ!」
「じゃあな、レイモンド。兄上の補佐を宜しく頼むぞ。(さっさと持ち場に帰れよ。)」
べ、と舌を出して帰城を促すと、ディランもその場を去った。
ホテルの最上階。アシュトが手配した部屋はもちろん風呂付きの広めの部屋。
天蓋付きのベッドで、ヒースヴェルトはすやすやと眠っていた。
「待たせたな。城の騎士だったジャンニだ。つい1ヶ月前に足を負傷し、退団希望を出していたのでな。引き抜いた。」
ディランのうしろについてきた、女性。濃い青の長髪、ダークブラウンの瞳の、優しい雰囲気の若い女騎士だった。
「ジャンニ・コールと申します。」
「ディラン、私が探してほしかったのは料理人だよ?」
「あぁ。コール子爵の次女でね、あの家は代々宮廷料理人を排出してきた家柄だからな。訓練で右足の腱を損傷し、騎士を辞めるつもりでいたそうだ。
だが、料理を作る両手は無事だ。コール子爵家の教育の最低ラインは宮廷料理人が勤まるレベルになることが必須らしい。なら、その腕を活かして然るべき、だろ?」
「うん。成る程。それで?秘密は守れるの?」
「・・・ついでにアルクス本部に寄ってきた。最新の《契約砡》だ。これを使う。」
「!それはまた。」
契約砡。一般的なものは、赤い砡の欠片で作られた機械導具。原理は、互いの契約内容を《力》で従わせるものだった。
だが、この《契約砡》に使われた砡の欠片は。
「《蒼》の砡の欠片を使っている?」
「あぁ。研究の過程で、約束事を守護する、という力を引き出せたらしい。力で捩じ伏せるより、よほど使いやすい。」
なんと言うか、開発した者の人柄を感じさせる。
「ふはっ、これ作ったの、ルシオ様かい?」
「ご明察。散々自慢されたぜ。で、熱意が暴走しかけたから逃げてきた。」
砡の力に魅せられ、それを産み出すディーテ神を心から崇拝し、その異常さを危険視され、神殿を追い出された司祭の息子。思い出して苦笑した。
「じゃ、ヒー様の目が覚めたら、契約しよう。ジャンニ、いいな?」
「はい。殿下にお声掛け頂いて、本当に、感謝しています。まさか、私が料理人として働けるなど、思いもしなかったので!」
騎士として身を立てていたところ負傷し、実家に戻ろうとしていた彼女も、かなり気落ちしていたそうだ。
ディランに拾われ、騎士ではなく、コールの料理人として雇われたことが本当に嬉しそうだった。
彼女も、天蓋のレース越しに寝息を立てて眠る子どもを見て、くすりと笑う。
「あれだけ大騒ぎして遊ばれたのだ。
しばらく眠っておいでだろう。目覚められたら、リーナが呼びに行く。それまで館内で待機だ。」
「はい。」
ディランも、にこりと笑う。
「隣の部屋で、アシュトが撃沈してたぞ。相当遊んだのか?ヒー様。」
「ふふっ。物凄く、楽しまれたよ。それで、あの場所をいたく気に入ってしまってね、大浴場が聖域になってしまった。」
「へぇー・・・って、はぁ!?」
信じられない報告に、ディランはただ驚愕していた。
神殿の神子のそれよりも遥かに強い力だったじゃないか。」
ハクライのホテルの談話室で、フォレンはレイモンドに言われる。
「今は、任務中なので詳しくは言えませんが、いくら父上でも、ヒースヴェルト様の御気分を害されることのなきよう、お願いします。」
「・・・。」
遊び疲れたヒースヴェルトは、ホテルに向かう馬車の中ですぐに眠りについた。ホテルで出迎えたリーナに抱えられて、今は部屋で眠っている。
アシュトもさすがに疲れ、休ませてもらっている。
今はルートニアス親子と執事の三人だけ。
「神子様ならば教会の畑だ。アルクスに所属しているお前が関わっては、組織が黙ってないだろう。」
「首領には許可頂いていますよ。話せることはこれ以上ありません。
ハクライ滞在後は城に戻ります。家庭教師にトリシャを付けます。ラドリー、手配を頼みたい。」
レイモンドの脇に控えるラドリーに指示を出すと、ラドリーは恭しくお辞儀をした。
「畏まりました、若様。」
「お前・・・。」
じとり、とラドリーを睨むレイモンド。
「とにかく、これ以上は詮索無用に願いますよ、父上。私はあの方の悲しむ姿は見たくない。」
そう言うと席を立ち、その場を去る。
「何だと言うのだ、一体。」
あまりの息子の変わりように、戸惑いしかなかった。
(グレイシアが死んで、腑抜けた時期もあったが、それでもディラン様と共に過ごす日々で真面になったと思っていたのに。今度はあのような幼子に現を抜かすなど・・・。
まぁ、愛らしいけれども!
だが、神子ともなれば、教会に引き取らせねばなるまい?)
「旦那様、若様が仰ったように、詮索はお控えなさったほうが宜しいかと。
私も、あのお子様にはただならぬ気配を感じます。安易に教会に渡すなど、お考えになさりませんように。」
いろいろと思いめぐらせていたところをラドリーに釘を刺され、レイモンドはそれ以上なにも言うことは無かった。
「あれ?レイモンド。どうしたんだ?今週はずっと兄上の元で勤務じゃないのか?」
「ディラン殿下!!どうもこうもありませんよ、うちのバカ息子は一体どうしたというのです?あなたからも一言言ってやってください!」
フォレンが去って数分もしないうち、ホテルにディラン皇弟殿下が姿を見せる。
「えぇ?あー、その様子だとお会いしたんだな?可愛いだろ、うちのヒー様。」
ニカッと笑う、陛下と良く似た笑顔に、動揺を隠せない。この方まで、あの子どもを贔屓しているのは間違いない。
「会いましたよ。会いましたがね、一体なんなのです?何故二人も揃って、小間使いのようにあの子供の世話をやいて・・・。」
頭痛を覚えたのか、こめかみに指をあてて唸る。
「小間使い、ね。まぁ、あながち間違っちゃいねぇよ。・・・まだ俺らは任務中だ。フォレンにも言われただろうが、悪いがこれ以上は探るな。」
「殿下っ!」
「じゃあな、レイモンド。兄上の補佐を宜しく頼むぞ。(さっさと持ち場に帰れよ。)」
べ、と舌を出して帰城を促すと、ディランもその場を去った。
ホテルの最上階。アシュトが手配した部屋はもちろん風呂付きの広めの部屋。
天蓋付きのベッドで、ヒースヴェルトはすやすやと眠っていた。
「待たせたな。城の騎士だったジャンニだ。つい1ヶ月前に足を負傷し、退団希望を出していたのでな。引き抜いた。」
ディランのうしろについてきた、女性。濃い青の長髪、ダークブラウンの瞳の、優しい雰囲気の若い女騎士だった。
「ジャンニ・コールと申します。」
「ディラン、私が探してほしかったのは料理人だよ?」
「あぁ。コール子爵の次女でね、あの家は代々宮廷料理人を排出してきた家柄だからな。訓練で右足の腱を損傷し、騎士を辞めるつもりでいたそうだ。
だが、料理を作る両手は無事だ。コール子爵家の教育の最低ラインは宮廷料理人が勤まるレベルになることが必須らしい。なら、その腕を活かして然るべき、だろ?」
「うん。成る程。それで?秘密は守れるの?」
「・・・ついでにアルクス本部に寄ってきた。最新の《契約砡》だ。これを使う。」
「!それはまた。」
契約砡。一般的なものは、赤い砡の欠片で作られた機械導具。原理は、互いの契約内容を《力》で従わせるものだった。
だが、この《契約砡》に使われた砡の欠片は。
「《蒼》の砡の欠片を使っている?」
「あぁ。研究の過程で、約束事を守護する、という力を引き出せたらしい。力で捩じ伏せるより、よほど使いやすい。」
なんと言うか、開発した者の人柄を感じさせる。
「ふはっ、これ作ったの、ルシオ様かい?」
「ご明察。散々自慢されたぜ。で、熱意が暴走しかけたから逃げてきた。」
砡の力に魅せられ、それを産み出すディーテ神を心から崇拝し、その異常さを危険視され、神殿を追い出された司祭の息子。思い出して苦笑した。
「じゃ、ヒー様の目が覚めたら、契約しよう。ジャンニ、いいな?」
「はい。殿下にお声掛け頂いて、本当に、感謝しています。まさか、私が料理人として働けるなど、思いもしなかったので!」
騎士として身を立てていたところ負傷し、実家に戻ろうとしていた彼女も、かなり気落ちしていたそうだ。
ディランに拾われ、騎士ではなく、コールの料理人として雇われたことが本当に嬉しそうだった。
彼女も、天蓋のレース越しに寝息を立てて眠る子どもを見て、くすりと笑う。
「あれだけ大騒ぎして遊ばれたのだ。
しばらく眠っておいでだろう。目覚められたら、リーナが呼びに行く。それまで館内で待機だ。」
「はい。」
ディランも、にこりと笑う。
「隣の部屋で、アシュトが撃沈してたぞ。相当遊んだのか?ヒー様。」
「ふふっ。物凄く、楽しまれたよ。それで、あの場所をいたく気に入ってしまってね、大浴場が聖域になってしまった。」
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信じられない報告に、ディランはただ驚愕していた。
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