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邸内探検①
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アルクスの本部は首都にある。ルートニアス公爵家には、転移装置が置いてあり、レイモンドが、皇帝からの急な呼び出しにでも対応できるようにしていた。
その転移装置を使い、首都に移動できるようになっているのだが、何度か使用して、不具合を起こしたらしい。
公爵家に来ていたルシオは、転移装置の修理を依頼されていた。
「発動させると、どこかがいつも壊れるんだよね。
まだ研究段階だって言ってるけど便利だからってみんな売ってほしいってさぁ。壊れる度に修理しないとならない開発部の身にもなってほしいよね。まだ売りたくないのにさー。」
と、いつもの調子を取り戻していた。黙々と作業をしているかというと、ルシオの場合は違う。常に持論や愚痴などをつらつらとその口からこぼし続けているのだ。
「ま、まぁまぁ、ルシオ様。この装置でヒー様がアルクスへ向かうんスよ。安全にお運びしたいじゃないっすか。」
アシュトはご機嫌取りに、ヒースヴェルトの名前を出して宥めると。
ピタ、と作業をしていた手が止まる。
「ひっ、ヒースヴェルト様がお乗りになられるなら尚更だ!!!!お踏みになられる転移盤は金箔を貼るべきだよね!?いや、この際僕を踏んで…ッ!!!」
あぁ、逆効果だったか、とアシュトの目が遠くを見つめ。
「ルシオ、さん!ぼく、ルシオさんは踏まない、です!」
ぴょこ、とアシュトの後ろからヒースヴェルトが顔を出した。
「ひっ、ひゃああぁ!?あああ、ごっ、ご機嫌麗しゅうございます、ヒースヴェルト様っ!!わわわわっ、わたくしに何かっ、用向きでもっ!?」
ルシオは一気に顔を真っ赤にさせて、持っていた白の砡の欠片が光り、点滅し出す。暴走が起きる前兆。アルクスでは、日常茶飯事だが、ここは公爵邸。爆破されるのはまずい。
ヒースヴェルトも、砡の力の暴走や、人との関わりをトリシャから、そしてディーテから少しずつ学んできた。こういうときは、落ち着かせるのが一番。
「んんっ、ルシオさん、おち着いて、ください!
ルシオさんの、装置は、スゴいの。ママの飴…砡のかけら、とてもよく、りかぃして、ます。嬉しい、です。」
砡の力の引き出し方や、欠片と動力の繋ぎ方とか。ディーテ神を愛し、砡を理解しなければ到底この導具は作れない。
ルシオは生まれたときからずっと、ディーテ神への敬愛を胸に生きてきた。
真剣に、気持ちを伝えるとルシオの心は落ち着き、砡の欠片も元の色に戻った。
「昔、加護を…賜りました。五十年程前の話です。わたしも、言語の加護と、手にしていた白の砡の欠片に、眷属の御力を賜りました。
よく理解し、人々の助けになってやれ、と。わたしの使命だと、感じました…。
それから、わたしはずっと機械導具を造り出してきたのです。」
ディーテ様の御期待に添えるよう…。と、その一心で努めてきた。
「うん。だから、ルシオさんは、スゴい人です!仲良くなれたら、嬉しい!」
「ぁぅ…。」
長い耳の先まで真っ赤にさせて、くるっと背中を向けた。
「さっ、作業を続けます!!!」
そう言うと、照れているものの、もう暴走はすることはなかった。
「さすがですね、ヒー様。ルシオさまが爆発しなかったの、初めて見たッス。」
作業の邪魔はできないから、とヒースヴェルトはアシュトと共に、次は厨房を探検。
「ジャンニ、ここにいたー。」
「あっ、ヒースヴェルト様!アシュトさんも!お腹すきました?何か作りましょうか?」
いい匂いをさせた厨房は、ヒースヴェルトの為だけのスペースがある。作り方が他の料理と別だからだ。ジャンニは、なるべくヒースヴェルトの口にする料理と、フォレンらが食べる料理は同じものを、と考えている。なので、邸の料理人数たちと一緒に調理するのだ。
「えっとねー、今日のおやつはぁ、お星さまのキラキラのゼリーがいいの。お星さまのお色はね、ママの色と、ピンクにしてね?」
「はい、分かりました。金とピンクの星のゼリーですね!」
「ぁ…ジャンニはぁ、アルクスじゃないって、本当?」
これは、フォレンから聞いたこと。
「ぁ、はい。わたしは皇国の騎士団にいたんですよ。
でも、怪我をして戦えなくなったから、こうしてお料理しているんです。ディラン殿下が直接誘ってくれたから、私はアルクス所属ではないんです。」
「お怪我…!?大丈夫、ですか!?」
「大丈夫、もう痛みは無いですよ。でも、激しい運動や、走ったりは、できないんですよー。」
気にしないで、と言うように手をパタパタと振る。
「お怪我をしてしまって、騎士のお仕事、終わってしまった…ですか?悲しかった、でしょうか?」
その道が断たれたとき、何を感じたのか。と。
「うーん…。そうですね、私としては、良かった、ですかね。」
「へ…?良かった?悲し、じゃない?」
「もともと、ウチの家系は料理が得意な家系ですから。私は姉が先に後宮に…ええと、お城の料理人になってしまったので、私はお城には入れなかったんです。
でも、騎士になれば騎士団の厨房に携われるって聞いて、騎士になったんですけどねぇ。
怪我をした原因が訓練中で、怪我をさせた方も騎士だったので、居づらくなったんですよ。」
「むむっ…?難しい、です。」
ジャンニの境遇が理解しづらく、首をかしげた。
「すみません、難しいですよね。でも、今こうしてヒースヴェルト様のためにお料理ができるのは、私にとっては物凄くありがたくて、嬉しいことなんです。
一番、やりたかったことが出来てるんですよ!」
本当に嬉しそう。
(道が断たれたのに、もっとやりたかったことができるようになったから、そっちの方が嬉しいから?道が断たれても、悲しいだけじゃない?)
余計に分からなくなり、ヒースヴェルトはおやつの約束だけして、次の人に会いに行くことにした。
その転移装置を使い、首都に移動できるようになっているのだが、何度か使用して、不具合を起こしたらしい。
公爵家に来ていたルシオは、転移装置の修理を依頼されていた。
「発動させると、どこかがいつも壊れるんだよね。
まだ研究段階だって言ってるけど便利だからってみんな売ってほしいってさぁ。壊れる度に修理しないとならない開発部の身にもなってほしいよね。まだ売りたくないのにさー。」
と、いつもの調子を取り戻していた。黙々と作業をしているかというと、ルシオの場合は違う。常に持論や愚痴などをつらつらとその口からこぼし続けているのだ。
「ま、まぁまぁ、ルシオ様。この装置でヒー様がアルクスへ向かうんスよ。安全にお運びしたいじゃないっすか。」
アシュトはご機嫌取りに、ヒースヴェルトの名前を出して宥めると。
ピタ、と作業をしていた手が止まる。
「ひっ、ヒースヴェルト様がお乗りになられるなら尚更だ!!!!お踏みになられる転移盤は金箔を貼るべきだよね!?いや、この際僕を踏んで…ッ!!!」
あぁ、逆効果だったか、とアシュトの目が遠くを見つめ。
「ルシオ、さん!ぼく、ルシオさんは踏まない、です!」
ぴょこ、とアシュトの後ろからヒースヴェルトが顔を出した。
「ひっ、ひゃああぁ!?あああ、ごっ、ご機嫌麗しゅうございます、ヒースヴェルト様っ!!わわわわっ、わたくしに何かっ、用向きでもっ!?」
ルシオは一気に顔を真っ赤にさせて、持っていた白の砡の欠片が光り、点滅し出す。暴走が起きる前兆。アルクスでは、日常茶飯事だが、ここは公爵邸。爆破されるのはまずい。
ヒースヴェルトも、砡の力の暴走や、人との関わりをトリシャから、そしてディーテから少しずつ学んできた。こういうときは、落ち着かせるのが一番。
「んんっ、ルシオさん、おち着いて、ください!
ルシオさんの、装置は、スゴいの。ママの飴…砡のかけら、とてもよく、りかぃして、ます。嬉しい、です。」
砡の力の引き出し方や、欠片と動力の繋ぎ方とか。ディーテ神を愛し、砡を理解しなければ到底この導具は作れない。
ルシオは生まれたときからずっと、ディーテ神への敬愛を胸に生きてきた。
真剣に、気持ちを伝えるとルシオの心は落ち着き、砡の欠片も元の色に戻った。
「昔、加護を…賜りました。五十年程前の話です。わたしも、言語の加護と、手にしていた白の砡の欠片に、眷属の御力を賜りました。
よく理解し、人々の助けになってやれ、と。わたしの使命だと、感じました…。
それから、わたしはずっと機械導具を造り出してきたのです。」
ディーテ様の御期待に添えるよう…。と、その一心で努めてきた。
「うん。だから、ルシオさんは、スゴい人です!仲良くなれたら、嬉しい!」
「ぁぅ…。」
長い耳の先まで真っ赤にさせて、くるっと背中を向けた。
「さっ、作業を続けます!!!」
そう言うと、照れているものの、もう暴走はすることはなかった。
「さすがですね、ヒー様。ルシオさまが爆発しなかったの、初めて見たッス。」
作業の邪魔はできないから、とヒースヴェルトはアシュトと共に、次は厨房を探検。
「ジャンニ、ここにいたー。」
「あっ、ヒースヴェルト様!アシュトさんも!お腹すきました?何か作りましょうか?」
いい匂いをさせた厨房は、ヒースヴェルトの為だけのスペースがある。作り方が他の料理と別だからだ。ジャンニは、なるべくヒースヴェルトの口にする料理と、フォレンらが食べる料理は同じものを、と考えている。なので、邸の料理人数たちと一緒に調理するのだ。
「えっとねー、今日のおやつはぁ、お星さまのキラキラのゼリーがいいの。お星さまのお色はね、ママの色と、ピンクにしてね?」
「はい、分かりました。金とピンクの星のゼリーですね!」
「ぁ…ジャンニはぁ、アルクスじゃないって、本当?」
これは、フォレンから聞いたこと。
「ぁ、はい。わたしは皇国の騎士団にいたんですよ。
でも、怪我をして戦えなくなったから、こうしてお料理しているんです。ディラン殿下が直接誘ってくれたから、私はアルクス所属ではないんです。」
「お怪我…!?大丈夫、ですか!?」
「大丈夫、もう痛みは無いですよ。でも、激しい運動や、走ったりは、できないんですよー。」
気にしないで、と言うように手をパタパタと振る。
「お怪我をしてしまって、騎士のお仕事、終わってしまった…ですか?悲しかった、でしょうか?」
その道が断たれたとき、何を感じたのか。と。
「うーん…。そうですね、私としては、良かった、ですかね。」
「へ…?良かった?悲し、じゃない?」
「もともと、ウチの家系は料理が得意な家系ですから。私は姉が先に後宮に…ええと、お城の料理人になってしまったので、私はお城には入れなかったんです。
でも、騎士になれば騎士団の厨房に携われるって聞いて、騎士になったんですけどねぇ。
怪我をした原因が訓練中で、怪我をさせた方も騎士だったので、居づらくなったんですよ。」
「むむっ…?難しい、です。」
ジャンニの境遇が理解しづらく、首をかしげた。
「すみません、難しいですよね。でも、今こうしてヒースヴェルト様のためにお料理ができるのは、私にとっては物凄くありがたくて、嬉しいことなんです。
一番、やりたかったことが出来てるんですよ!」
本当に嬉しそう。
(道が断たれたのに、もっとやりたかったことができるようになったから、そっちの方が嬉しいから?道が断たれても、悲しいだけじゃない?)
余計に分からなくなり、ヒースヴェルトはおやつの約束だけして、次の人に会いに行くことにした。
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