虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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ヒラム=ローゼン

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北の国、ダスティロス。
国境近くの村で、国境の山の向こうは富の国、エンブルグ皇国。
ダスティロスはその昔、王族同士の争いがあって、この村は第二王子の母君の傍系の貴族が治めていた。
争いに負けた第二王子派の兵士や騎士、貴族が逃げてきていたが、世界は各国間の流通だけは認めていたけれど、内戦による問題は干渉してはならないと決めていたため、エンブルグ皇国も、人道的援助はなかった。

そんな激動の中の、一人の赤子。
ヒラム=ローゼンという名前を付けられた、第二王子派の騎士の息子だった。ヒラムの父親であるラーシュ=ローゼンは侯爵家の三男で、この戦争に負けて、帰る家を失った。侯爵家が、第一王子派に寝返ったためだった。ラーシュとその嫡子は、侯爵家から見捨てられ、国境近くに追いやられた。
ヒラムの母親は、もともと中立派の貴族の一人娘であったため、ラーシュと縁を切ることで家に戻ることを許された。
まだ赤子だったヒラム以外の身内を失い、細々と暮らしていたとき、村に一人の女性が現れた。その女性はラーシュのことを見初め、付きまとうようになった。
だが、ラーシュには、ヒラムの本当の母親がまだダスティロスの彼女の実家にいることを理由に、いつかダスティロスの王都に帰るのだと希望を口にし、彼女との関係を頑なに断っていた。
そんなある日、この村にも残党狩りがやってくる。生きねばならないと思ったラーシュは、苦肉の策として、付きまとう女と偽装結婚をし、隣国に亡命した。婚姻という形でなら、国家間を渡ることができたからだ。
そして、たどり着いたのがエンブルグ皇国の辺境の、端の村。
村は余所者に対しては歓迎しなかったものの、若い夫婦に、赤子もいたため、受け入れることにした。
小さな小屋のような家で暮らし始めたが、女はヒラムが邪魔でしかたなかった。偽装とはいえ、夫婦であるのにラーシュはヒラムの世話ばかりだったからだ。そして、ある日小屋の暖炉の火を起こすために赤の砡の欠片に触れたとき、側にいたヒラムの吐息で、赤の砡が反応し、暴発した。

そのショックで、女は怒り狂い、ある嘘をついた。
「ヒラムのせいで、お腹の子が流れた」
ヒラムを堂々と虐げるための理由をでっちあげた。
それからの日々は酷いもので、ラーシュが側にいないときはひどく罵られ、食事も与えられなかった。
夕方、ラーシュが帰ってきて、ヒラムはやっと救われる。そんな日々の繰り返し。

ある日、ラーシュの元に手紙が届いた。
差出人はダスティロス王室。信じられないことに、第二王子派の残党兵らに、恩赦が出たという内容だった。
第二王子は殺害され、その子供らも一人残らず処刑されたという。
ラーシュにとっては、最愛の妻を迎えに行ける、格好のチャンス。ダスティロスに帰るため、町へ準備をしに行った。
その時、初めてヒラムを連れて町へ出た。亡命し、隠れて暮らす毎日から、少しでも解放された気分だったからだ。
そこで、ラーシュは最高額の華護りをヒラムに与えた。愛しているから、と。
あの女には恩赦の手紙の存在を知られるわけにいかない。
迅速に動く必要があった。
国境のエンブルグ皇国側の関所の兵士に、事情を説明したところ、そういうことならば、とあの女が着いてきた場合の足止めを買って出てくれた。そして、その日の帰り道に、残党狩りが国境を越えて待ち伏せしているなど、知らずに…ラーシュは、潜伏していた残党狩りの手により帰らぬ人となった。

ラーシュが丸一日居ない日は珍しく、女はヒラムを預かっている村長の家に行った。
そして、告げる。
「このガキは害悪。砡が側にあるだけで暴発し危険なガキ。閉じ込めておけばいい。」
村で何度も砡の暴発を見ていた村長らは、地下深くの檻に閉じ込めることにした。
なかなか戻らないラーシュを待つ間、「出して、助けて」と泣き叫ぶヒラムを疎ましく思い、遂に手が出るようになった。泣けば腹を蹴り、与える食事を残せば、殴り飛ばし、食事を与えなかった。ヒラムは精神的にも壊れていった。
そして、ある日のこと。あの女が一つの黒い石を渡した。
「この檻で一生暮らすか、この石を自分で割るか選べ」
と。
「石を割れば、ここからは出ることが出来る。」
ヒラムにとって、その言葉は希望に思えた。
「ここから、出して……おと、うさんに会わせて

壊れた玩具のように、そればかり繰り返すヒラムに、イラついた女は檻の鉄格子の間から火かき棒を突き刺し、ヒラムの手にある石を割った。

その瞬間、檻からヒラムの姿は消え去った。





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