虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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白の眷属

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ヒースヴェルトが眠りについてしまって、一日が経過した頃のこと。

ディランとアシュトがルートニアス公爵の城にやって来た。
ギュゼリア地方での調査を終えて。

その顔は、とても険しく、特にアシュトは静かに怒りを携えていた。

報告書を、読んでフォレンは目を閉じて深く溜め息を吐く。
「これが本当ならば…到底許せるものではないな。」
「おっ、オレっ……許せないッ……。あんな村、なくなっちまえばいい!!!」
ダン!と机を殴るが、誰も咎めなかった。皆、気持ちは同じだ。
「うちの関所の兵士に、裏はとれてる?」
ディランは頷いて、もう一枚の書類を見せた。エンブルグ皇国の関所の記録簿の写し。
「勿論だ。彼が約束の日になっても、いつまで経っても来ないから付近を捜索して、その兵士が遺体を見つけたらしい。記録を残していた。ラーシュ=ローゼン破落戸に襲われ死亡、と。」
「ふん…破落戸、ね。まぁ潜伏兵などと書けば国家間会議モノだからね。
そして、この…黒い石、というのは…?」
「あぁ。これもあの村の村長の家に実際置いてあったぜ。おそらく定期的に入手していたんだろ。不正に、な。詳しい人が来ている。…ルシオ様、お願いしていいか?」
呼ばれて、部屋に入ってくる、銀髪の美男子。
「全く、ディーテ様の御子にお会いできるって聞いてここまで来たのにさ、なに?何で案内されるのが盾の坊やの部屋なのさ?」
入室早々、文句を言うルシオに、フォレンは苦笑した。
「ルシオ、様でしたか…。それで、この報告書にある、黒い石とは?」
「あぁ。それはねー。」
ルシオは、アルクスに納められている黒い石のことを説明した。そして、付け加える。
「その石はね、展開率が計測できないのさ。その時点で砡の欠片じゃないよね。 その石を破壊すると、死都市に転移してしまうんだ。必ずと言っていい程。でも…」
「ヒースヴェルト様は、その石が割られたとき、姿を消したと…」
「村の奴らも、死都市へ行ったと思っていたようだね。何故、彼だけ行き先が大魔境になったのやら。」
その謎を残したまま、報告は終わった。
「…ヒースヴェルト様は、眠ってしまい、気がついたら森にいた、と思っていらっしゃったが」
「あぁ。おそらく記憶の蓋が、そう思わせたんだろうな。…このような仕打ち、忘れたくて当然だ。」
報告書を持つ手に力が入る。
結局、ラーシュが死亡したことを知ったあの女は、行方を眩ませたらしい。
第一王子派のスパイだったという可能性も、あったという。

「ヒースヴェルト様がダスティロスの騎士の嫡子だったとしても、私たちのすることは変わらない。あの方はディーテ様の大切な御子だ。なるべく、変わらない態度で接して差し上げよう。いいな?」
「「はい!」」
「あぁ。」
「それから、ルシオ様。この黒い石について、調べてもらいたいのだけれど。」
フォレンは、報告の中にある石の記述をとん、と指で示してルシオを見た。
「まぁ、いいよ。転移先を変える方法があるのか…でしょ?
それでさー、僕はいつ会えるのさ?御子様、眠っているんでしょ?覗いちゃダメなの?」
「ダメに決まってるッス!ルシオ様、ちょっとは常識考えましょうよ。」
「えー?僕に常識説いてるよ、こいつ。」
心底嫌そうに、ルシオは毒を吐いた。
エルフは、基本的に心は自由であり、縛られることを嫌う。人間の作り上げた常識などが理解できるはずもなかった。
「これさ、ナッシュにも報告するんでしょ?ならさ、僕はしばらく君たちと一緒に行動するから、それも併せて報告しといてよ。
御子様を大魔境の神殿に送り返すんだよね?」
「それなんだけどね。ルシオ様、あなた白の眷属?」
フォレンの推察は、当たっていた。
「そういう君も、大魔境の神殿でディーテ様から賜ったらしいじゃない?僕だけだと思ってたのにさぁー。ズルいなぁ。」
「実はね、そのディーテ様より、伝言を預かっていてね。白の眷属を連れてこい、と。」
「………!!」
ルシオの表情が明らかにあかるくなった。
「ももも勿論行くよ!!!行くに決まってるじゃない!!」

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