虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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そして、ヒースヴェルトが目を覚まして、少し経ってから、邸内を探検していたところだったのだが。
花を飾りに部屋に寄ったついでに、お茶をしていたヒースヴェルトが、今まで忘れていた昔のことを、思い出したのだ、とリーナに話す。


「ぼくね、思い出したんだよ。おとうさんが出掛けた日にね。村長さまの、家…檻の中に閉じ込められた。何日もね、おとうさんは来てくれなくて…お腹もすいて、たくさん蹴られたし、叩かれたっ!…苦しかった…よ。それでね、おかあさんに、鉄の棒でね、突かれたの。手に、黒い石、持ってて、それが、鉄の棒で割れて……。」
リーナは、ヒースヴェルトの口からその事実を聞くことが辛く、涙を隠せなかった。
「そっ、それでね、おとうさんの華護りがね、光ったの、思い出したよ!無くなっちゃったんだと、思ったんだけれど、ね、ぴかって、光ってね、金色の………ママの……光が………。」
そこまで、言うと、ヒースヴェルトはぎゅ、と、手首を掴んで、涙を浮かべた。


「今なら、わかるよ。神力が、ママの加護が、あったからなんだ。
華護りに、本当のママの光が入ってた!だからママの近くに、飛んでいけたんだ!!」

その後の、魔獣に食べられかけたことは、とっても痛かったし、怖かったけれど。

それでも、あの朽ちた神殿の近くに落とされた。
それは何も出来ない、たった四歳の子供にとっては、紛れもなく奇跡だったのだ。




※※※※※※※※


ヒースヴェルトの部屋に、皆集まっていた。
当の本人は、ジャンニ特製のキラキラと光る星のゼリーを、ジャンニの説明を聞きながら堪能していた。
金色の星形のゼリーをスプーンで掬うと、今では灰色になってしまった瞳が、それでも輝いて美しかった。

そして、ヒースヴェルトから少し離れた場所で、アルクスのメンバーと、ルシオが顔を付き合わせていた。
「で、リーナは何でこんな壊れているんだ?」

実は、おやつの時間になり約束した星のゼリーを持ってきたジャンニは、リーナが号泣しており側でヒースヴェルトも泣いている光景を目にしたとたん、ただ事ではないと、すぐさまフォレンに助けを求めに走った。
フォレンの部屋にはディランも一緒に寛いでいたのだが、ジャンニが慌てていたので、一緒にヒースヴェルトの部屋に来てみると。

「うぅ~っ、やっぱり、ヒー様は愛ざれでますっ!私、本当によがっだっでぇ~!!ぅう~~~~~~っ。」
もはや、事情を説明できるようなテンションではない。振り切れている。

そして、リーナが落ち着きを取り戻し、先程のヒースヴェルトの話を皆にすると。


「ギュゼリアの華護りに、そんな効果が…?」
「ただの土産の品とばかり…。」
ディランは、驚いたようにヒースヴェルトを見た。今日は、ちょうど華護りを模した金の薔薇を髪の毛に結いつけていた。
「おとうさん、とても値段の高いのを、くれたよ。紙のお金、こーんなに払ってたもん!」
指で、紙幣の重なった厚さを再現すると、皆は驚いた。
「確かに華護りは、貴族が買うようなものは神殿の神子に祈らせ、加護を賜ったものがあるが。…まさか、本当に加護付きだったのか?」
本物の華護りは、加工の仕方から違う。
作る際に、砡の欠片を砕いて粉にしたものと神泉の水を華の 鋳型に流し込み固め、まず薔薇の形にした砡の欠片を作り出す。それを溶かした純金に入れて、コーティングさせるのだ。
そうすることで、色は色褪せることのない、ディーテ神の金色になる。
安物は、ただの天然鉱石を彫ったものにメッキを貼り付けただけのものなので、値段も見た目も、本物のそれとは雲泥の差である。

「……報告書の中にあったが、ヒー様は吐息だけで欠片を暴発させたことがあったらしいな?」
村の調査に行ったアシュトは、幼い頃のヒースヴェルトの危うさについて、様々なことを聞いた。
村の中の砡の欠片は触らせてはいけない。側にいるだけでも機械導具が作動してしまうから、出歩かないように父親に言い聞かせ、徹底させていた、など。
「…とんでもない展開率だったんだと、思われます。」
「ルシオ様、どう思う?」
「面白いね。…そこまで恩恵を受けた人間なんて、僕も三千年生きてきたけど…見たことないよ。」
「ずびっ。でも、何でヒー様は、本物の華護りを身に付けていて、暴発しなかったんですか?本物の華護りは、砡の欠片でできているんですよね?」
リーナの疑問は、皆も感じていた。展開率が高いならば、砡の欠片は触れるだけでも危険。
その疑問に答えたのは、やはりルシオだった。
「そうだなぁ…。アルクスの初等部が、始めに訓練で使う機械導具。オールコーティングされたものなのは、何故だと思う?」
「砡の欠片に、直接触れないように加工し、動力コードを通じて触れさせることで、安定した発現のコツを掴むためだったかと。」
「展開率の高い子供たちは、そうやって抑制方法を学ぶ。一般家庭に普及してる機械導具の殆どはオールコーティング加工のものだからね。それさえ学べば、生活できる。」
ルシオは、ふとヒースヴェルトの華飾りに、目をやり、敬愛の眼差しを向けた。
「本物の華護りは、神泉の水と砡の欠片を混ぜ固めたようなものだ。
砡の欠片が吐息だけで暴発するほど相性が良いなら、意図せずとも、神力に近い力を発現できただろうね。
だってその華護りは…アルクスで作った機械導具のオールコーティングの原理と同じだからね。
使い方を知らなくても、初歩で発現しやすい加工が、意図せず出来上がっていたのさ。
そして、神力は、神力に惹かれる。
黒い石の移転の能力と混在して、ディーテ神の顕現なされる、特別な神殿がある大魔境に、転移軸が捻じ曲がったとすれば…可能性はあるね。」
ルシオの推察に、皆も納得が行く。ただ、そうなれば。
「だったら試してみたいなぁ…。」
と呟いたのは、銀髪の美男子。
「…うん。ちょっと、試してみよう。アルクスにはいつ戻るの?」
「ぁ、あぁ。ヒー様の体調も良いようだし、週末にでも。」
「ねぇ殿下。本物の華護り、手に入るかなぁ?」
にこり、と美しい口許が弧を描く。
「ん~?アルクスの予算はさすがにネェだろーしなぁ?…ヒー様の体験談が本当なら、消耗品だぜ?」
「…本物の華護りって、いくらぐらいするッスか?」
こっそりとフォレンに聞くアシュト。


「うーん。そうだねぇ…君の家族をニ年くらいは養えるね。」

ひゅっ、と息をのむ音がした。




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