虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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神託と澱み

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ルシオは、ヒースヴェルトの言葉を聞き、押し黙ってしまった。
「ルシオ様、どうしたッスか?信じられないかもッスけど、ヒー様はこれから天上界に行く準備なされるんだから、神様になられるのは決まってるッスよ。
まあ、まだここの四人しか知らないことですけど…。」
ルシオ以外の四人は、この世に生まれてまだ二十年やそこらである。
比べてルシオは時代の継ぎ目に、神託を得た神子等を何人も見てきた。
中には、歴史上、いや、教会の都合のいいように磨り潰された予言などもあった。
ただ、ルシオはディーテ神教の最高司祭の子息であり、神託の全てを知っていた。

ディーテ神を唯一神として崇めてきた教会は、ある年に下された神託が到底認められない、と闇に葬った。かつて彼が恋をした、一人の神子の命と共に。

その神託は、

『世界を統べる、新たな神が現れる』

というもの。

この神託はとてもではないが、ディーテ神を唯一と信じていた彼らには絶望とも思える内容だった。信じていた神が、いなくなる。そう解釈してしまった。

『神託は…正しかった。あのこは…正しかった。……神よ……!』

握りしめた拳から血が滴った。
「ルシオ、さん?大丈夫?お手々、強くしたら痛い、です」
ルシオに駆け寄り、固く握られた拳を包むと、
ふわ、と虹の光の粉が舞う。
「っ…!!」
虹の光の粉はルシオの拳をくるりと回り、弾けた。
ルシオの手は、傷一つない綺麗な手に回復した。
『ママの言うことは、全て正しいんだよ。
でもね、澱みのある心で、弱った心で聞いてしまうと…あぁ、そうか。都合の悪いことは拒絶したくなるんだね?
人のズルさも、魂に澱みを生むんだ…。
きっと、神官さんや司祭さんは、魂が澱んでいては駄目なんだね。ママを信じたルシオさんと、その子は、偉かったね。』
えらかった、えらかった、とルシオの銀髪を撫でてやる。
「あ……あぁっ……!!」
ルシオは両膝を就いて、その綺麗なアイスブルーの瞳から涙を流した。
千年の時を超え、信じ続けた答えを、この虹色の子に授けて頂いた。そして、その子が新たな神になろうとしている。

「ルシオ様……。」
ディランも、何度か教会が都合の悪い神託をどうしていたかは皇子として見てきたため、知っている。
神子を緋色の契約砡で無理やり従わせるのだ。他言せぬよう。

都合の悪い神託が下ろされる度に神子殺しを行っていた時代、ルシオはまだ若く、何も出来なかった。
その後、殺すな、というルシオの切実な想いに答えた結果、神子の神託封じのために開発されたのが、緋色の契約砡の始まりだった。

「あっ、あぁ。申し訳ありません、ヒースヴェルト様。見苦しいものをお見せして…。」
涙を拭い、立ち上がる。
「癒しを賜り、感謝いたします…」
「いやし?」
こてん、と首をかしげる。
「ぇぇ。この、わたくしの手に、今…虹色の神気をあてていただきました。」
ヒースヴェルトは、自分でそのようなものを使った意識がなかった。
「ぅ?ぼく、なにか、しましたか?お手々、痛そう、と思いました。」
分かっていないようで、頭の上にはてなマークが飛び交っている。
「ぁ~、ヒー様。今、ルシオ様の手を握られたとき、ヒー様、光ったんスよ。
…あっ、そうか!!大浴場でも見ました。
ヒー様の神気は、虹色の光なんスね。神様は、それぞれ自分の色があるみたいだな!ヒー様の色、スッゲー綺麗だから、オレは大好きです。」
「ああ、確か俺の砡の欠片を《融合》させたときも、虹色の光を振り撒いていたな。」
アシュトとディランに言われ、ヒースヴェルトは、はっとした。
「ぼくの、神気は、虹のお色?だからぼくは、金色の光を…上手にだせ、なかったの?」
ディーテ神のように金の小鳥を生み出すことにも、神泉に溢れる金の神力を借りた。自分では、まだ出せないと思っていたから。
「その美しい御髪にも、虹の光の粒子が散りばめられているようですよ。
ヒー様の軽やかで柔らかな虹の光は、大変好ましいです。
ヒースヴェルト様のお色ですよ、きっと…これからの未来は、虹の光が溢れる世界になるのでしょうね。」
フォレンが、跪く。ルシオも、いつの間にか膝をついていた。
「「私は、これから来たる未来、世界を統べる新たな神を心より崇拝致します。」」
後ろに、リーナも、アシュトも膝をついた。


ただ、ディランだけは、思い詰めた様子で、ただ、立っていた。

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