虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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今は、まだ……

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午後、トリシャの授業を終えたあと。
久しぶりにヒースヴェルトは中庭を散策することにした。いつもはフォレンと共に様々な仕事をしているディランが、珍しく一緒に付き合ってくれていた。
「ディラン、おうさまの弟なんでしょう?昔のおうじさまだったのー?」
ふわふわと歩く彼のプラチナの髪は、太陽の光を浴びて虹色を振り撒く。
その姿は、最近更に神々しさを増した。
「えぇ。兄上が即位されたので、今は特にやることもないですから…楽しくやってます。」
そう言うが、本当はアルクスという世界中を飛び回れる立場を利用して、各国の情勢や皇国自体の問題など、ディラン個人ではあるが皇帝に提起しているのは事実だ。
そして、そのどれもが有用なもので、エンブルグ皇国の安寧において、かなり貢献している。
ディランの先見の目は、今の皇帝以上である。
彼が継承権を凍結して十年経った今でも、次期皇帝に、という、呼び声も多い。現皇帝の腹心であるルートニアス公爵ですらも、その声に否定的でなはい。
それほどに聡明で、そして強い。それが、周りからのディランへの評価。
「おうさまは、国の全部、を管理する、せー…責任、があると、トリシャ先生が言って、ました。」
「そう、ですね。」
「ディランは、次のおうさま、ですか?フォレンと同じで、新しい仕事、はじめるの?」
「俺は……無理だ。世継ぎを作れない。」
「んぅ?よ…なに?」
「皇族は、その血を絶やしてはならないから、子供を産まないとならないんです。
でも、俺はあいつ以外の人とは夫婦になりたくなかった。…我儘、というか、意地みたいなもんです。グレイシアだけだった。俺が守りたい人は。」
「グレーシア、さん?」
「フォレンの妹。…もう、いない。砡の欠片の暴発事故に巻き込まれて…そのまま。」
「フォレンの妹さん…グレーシアさん…死んじゃった…?ぁっ、ご、ごめんなさい、知らなくて…ぼく」
あわあわ、とあわてて謝るヒースヴェルトが可愛くて、ディランは虹の髪の毛をくしゃりとかき混ぜた。
「だから、俺は兄の跡は継がない。兄にはもう子供が…跡を継げる者がいる。二人とも優秀だから、きっとエンブルグはもっと良くなる。」
ニカ、と笑う。ヒースヴェルトは彼のこの笑顔が大好きだった。
『この国が大好きなんだね。ディラン、とても良いお顔。』
「そうか?そりゃ嬉しいね。」

ヒースヴェルトは、唇をきゅ、と結んで少し、考えて。

(うん。やっぱり、ディラン。)




ボクノツバサニ、ナッテクレナイ?



その言葉は、まだ。

ディランの命をくれ、なんて言う覚悟も。
世界を統べるなんて、そんな自信も、まだ無いから。


「ねー、噴水のところまで、行こ!!」
「ははっ。了解です、ヒー様。」

今は、まだ。



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