虹色の子~大魔境で見つけた少年~

an

文字の大きさ
64 / 73

澱みを映す鏡

しおりを挟む

ヒースヴェルトが目覚めたのは、それから一時間後のこと。
『リーナ…ルシオさん、呼んで欲しい。』
ぼーっとした様子で、天井を見つめたまま、側にいてくれたリーナの手を握る。
「は、はい、えっと、これをこうして、ルシオ様の持っている腕輪に波長を合わせて…。」

ぴこん。
小さな音と共に、ルシオの顔がホログラムのように浮かび上がる。

「あっ、ルシオ様。ヒー様がお目覚めになりました。それで、あの、ルシオ様にお会いしたいそうなのですがッ!?」
リーナが腕輪に向かって話をするも、途中で切られ、数秒後。

バダン!!!

「きゃあ!?」
勢いよく開いた扉に、ゼエゼエと息を切らすイケメン。
「ヒッヒースヴェルト様!わたくしにおはなしとは何でありましょうか!!!?」
「ヒッヒースヴェルト様って。」
その形相にドン引きのリーナを押し退け、ベッドの脇に縋るように膝をつき、潤んだ瞳で訴えかけていた。
その様子に、ヒースヴェルトもさすがに苦笑いを覚えた。
『ルシオさん。鏡を作って欲しいの、です。砡の鏡……ママが、夢で教えて、くれました。』
ぽわ、とヒースヴェルトの指が金色の光を纏う。ディーテ神の力を預かっているのだ。
『ぇっとママから預かった…作り方、を渡し、ます。』
淡く光る指先。ルシオの額に軽く触れる。
「………っ!!」
「魂の、澱みが…どれだけキレイになったか、分かる鏡なんだって。この地の砡の欠片でしか、作れない…。ママが、白の眷属なら作ることができるよ、って。…できる?」
神泉の水で磨いた銀製の鏡を、四つの砡の欠片で囲い、全ての力の回路を組み込み、循環させる仕組み。鏡には神語で数値が刻まれるようになるそうだ。
金色の光は、まるでその仕組みを頭の中に直接詰め込まれたような感覚だった。
「……分かりました。すぐに、完成させますね。」
大事になさってくださいね、と伝えるなり、飛んで出ていった。
「相変わらず凄い勢いでしたね…。」
「ふふっ。ルシオさん、ずっと、あんな感じ、だね。」
「ご気分はいかがですか?あ…今はジャンニさんがいないから、お飲み物とかの準備ができませんね…。」
「んふふー。大丈夫、なのです!」
ヒースヴェルトは、得意そうにそう言うと、いつも持っているお出掛け用ポシェットの中から、水色の水筒を取り出した。
「まぁ!それは??」
「アルクスに、来る前に、ジャンニに、お弁当と、青のキラキラのカクテルを、作って貰っていたのです!」
密閉されていた蓋を、ポン、と開けると、ヒースヴェルトのお気に入りの青いカクテルジュースがなみなみと入っていた。
「飲む、です。コップ、ください!」
「はい!待ってくださいね!」



※※※※※※※※※※※※



「それで?どういうことなんだ。お前が黒の石で実験するって。」
アルクスの談話室。カフェが隣接していて、ホテルのロビーのような場所だった。フォレンは、コーヒーを飲みながら、機嫌が悪そうにしている。ディランがルシオに提案したことについて、納得いかない様子だった。
「どうって、言葉の通りだよ。魔境の魔物の相手になるのは俺くらいのものだろう?確かにルシオ様も相当強いけどよ、機械導具を作らなきゃなんねぇのは事実。ヒー様が神殿に帰るまでに、やっときたいと思ったんだよ。」
「……ふぅん。何か隠してないかい?」
「別に。」
にっこりと、人好きのする顔。殿下スマイルを向けられると、フォレンは黙るしかない。あの笑顔が出るのは、これ以上話すことは無い、と言う意味だから。
「ま、いいけどね。」
そんなとき、腕輪が鳴った。

「ぁ、ヒー様、目覚められました!」
サイズが小さくなったリーナと、その脇にちょこん、と座っているヒースヴェルトの姿まで、動画のように映される。この通信機は凄い進歩だと素直に感じた。これが、世界中で通信できるようになれば、別の意味でも時代は変わるだろう。
「!分かった。」
「一時間ってところか。今日は、これ以上何かをするのは…止めておいた方がいいだろうな。目的も果たしたし、一度邸に戻ろう。アシュトも邸に戻るように言っているから。」
「あぁ。」



医務室に入ると、ベッドに腰掛け、白いマグカップを持ったヒースヴェルトが二人に気付いて微笑んだ。
「二人とも、ごめんなさい!とても眠くなって、寝ちゃったの。」
「いえ。大丈夫ですよ、澱みを消すのに、かなりご負担がかかるようですね…。無理をなさらないでください。」
「ぁい~。」
マグカップを空にして、ヒースヴェルトは立ち上がった。
「ん。元気いっぱい、です!」
「良かった…。じゃあ、今日は邸に戻りましょう。澱みの消しかた、分かっただけでも大収穫です。ヒー様。」
「ぁい!中庭で、お弁当食べる、です~!」



しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「クビにされた俺、幸運スキルでスローライフ満喫中」

チャチャ
ファンタジー
突然、蒼牙の刃から追放された冒険者・ハルト。 だが、彼にはS級スキル【幸運】があった――。 魔物がレアアイテムを落とすのも、偶然宝箱が見つかるのも、すべて彼のスキルのおかげ。 だが、仲間は誰一人そのことに気づかず、無能呼ばわりしていた。 追放されたハルトは、肩の荷が下りたとばかりに、自分のためだけの旅を始める。 訪れる村で出会う人々。偶然拾う伝説級の装備。 そして助けた少女は、実は王国の姫!? 「もう面倒ごとはごめんだ」 そう思っていたハルトだったが、幸運のスキルが運命を引き寄せていく――。

病弱少年が怪我した小鳥を偶然テイムして、冒険者ギルドの採取系クエストをやらせていたら、知らないうちにLV99になってました。

もう書かないって言ったよね?
ファンタジー
 ベッドで寝たきりだった少年が、ある日、家の外で怪我している青い小鳥『ピーちゃん』を助けたことから二人の大冒険の日々が始まった。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

学生時代、私をいじめていた女と一緒に異世界召喚されたけど、無能扱いされた私が実は本物の聖女で、いじめていた女は災厄を呼ぶ魔女でした。

さら
恋愛
いじめていた女と一緒に異世界召喚された私。 聖女として選ばれたのは彼女で、私は無能扱いされ追放された。 だが、辺境の村で暮らす中で気づく。 私の力は奇跡を起こすものではなく、 壊れた世界を“元に戻す”本物の聖女の力だった。 一方、聖女として祭り上げられた彼女は、 人々の期待に応え続けるうち、 世界を歪め、災厄を呼ぶ魔女へと変わっていく――。

少し冷めた村人少年の冒険記 2

mizuno sei
ファンタジー
 地球からの転生者である主人公トーマは、「はずれギフト」と言われた「ナビゲーションシステム」を持って新しい人生を歩み始めた。  不幸だった前世の記憶から、少し冷めた目で世の中を見つめ、誰にも邪魔されない力を身に着けて第二の人生を楽しもうと考えている。  旅の中でいろいろな人と出会い、成長していく少年の物語。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

我が家に子犬がやって来た!

もも野はち助
ファンタジー
【あらすじ】ラテール伯爵家の令嬢フィリアナは、仕事で帰宅できない父の状況に不満を抱きながら、自身の6歳の誕生日を迎えていた。すると、遅くに帰宅した父が白黒でフワフワな毛をした足の太い子犬を連れ帰る。子犬の飼い主はある高貴な人物らしいが、訳あってラテール家で面倒を見る事になったそうだ。その子犬を自身の誕生日プレゼントだと勘違いしたフィリアナは、兄ロアルドと取り合いながら、可愛がり始める。子犬はすでに名前が決まっており『アルス』といった。 アルスは当初かなり周囲の人間を警戒していたのだが、フィリアナとロアルドが甲斐甲斐しく世話をする事で、すぐに二人と打ち解ける。 だがそんな子犬のアルスには、ある重大な秘密があって……。 この話は、子犬と戯れながら巻き込まれ成長をしていく兄妹の物語。 ※全102話で完結済。 ★『小説家になろう』でも読めます★

処理中です...