虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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腕時計型……

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「ん~っ!!真っ赤なイチゴのお味っ!」
頬を薔薇色に染め上げて微笑むヒースヴェルトの、灰色の瞳が僅かに紫色を取り戻した。
「ヒー様!瞳の色が…!澱みが少し、消えたのでしょうか。」
リーナが、ヒースヴェルトの様子の変化に気付いた。まだ、あの灰紫色の瞳ではないが、明るさを取り戻していた。
「本当に!?ぼく、澱みが消えたのかな?良かった、ディラン!ありがとぅね。ぼく、食べて浄化することに、決めたよ!!触るの、怖いもん~!」
「よし、これで方針は決まったな。ヒー様に、生まれてすぐの砡の欠片を選別してもらい、魂の浄化に役立てていただく。
方法は…我々では、見分けはつかないから…収納庫に納める前に、集められた砡の欠片は、一度転移装置で神殿へ送ろう。そして、浄化できる砡の欠片だけを神殿に残し、あとはここへ納める。どうです?ルシオ様?」
フォレンの提案にルシオも頷く。
「うん。いいね。ここの管理は僕だからなんの問題もないしね。…悪いけど、神殿に置くための、ちょっと特別な転移装置作るから。僕はしばらくここに残るね。」
「…それなら、あの実験は俺が引き受けていいか?」
「殿下が…?まぁ、大魔境に移動するんだとしたら、戦える君が試した方がいいだろうね。逆に、死都市に飛んだとしても、君ならどうにかするでしょ?
まー、別に僕でもよかったけれど、大魔境を抜けるのに数日かかるなら、僕も作りたいものがあるし…君に任せた方が得策か。」
「おう。行ってくる。…アシュトが帰還し次第、試すことにする。」
どこか安堵したような顔で、笑う。その話が終わるのを待っていたのか、ヒースヴェルトはおずおずと、リーナの手を引っ張り、
「リーナ…なんだかね、ねむ……。」
たいの、と続けたかったヒースヴェルトは、眠気に耐えきれずにその場で倒れ込むように眠ってしまった。
「ヒー様!!」
床に落とさないように掻き抱く。
「虹の砡の欠片を召される時とは、訳が違うようだな…。浄化に、かなりの負担がかかるとみえる。」
リーナは大事そうに抱え直し、心配そうに見つめる。
「医務室のベッドに連れていきます。私、付き添ってますので…。」
「あぁ、頼む。」
フォレンも、ヒースヴェルトの顔色を見て、ただ眠っていることが分かると溜め息を吐いて安堵した。
「リーナ。君にこれを渡しておく。試作品だけどね、アルクス本部内程度なら通話できる導具だよ。」
ぽい、と渡された翠の砡の欠片を使った腕輪のような形状の機械導具だった。
「翠の砡の欠片にはね、風の力は振動と共鳴ってのがあってね。同じ波長で整えてやれば、遠くに居ても通話できるようになるんだよ。最近の研究結果を基に作ったの。今後は《流星》を飛ばすより、こっちが主流になるかもね。」
と、そこに居る全員に腕輪を渡し、簡単な使い方を説明した。
「すごいですね…。」
「僕が導具を開発するのは、全てディーテ様の為、ヒースヴェルト様の為だよ。あの子の言葉を信じてきたからね。…ヒースヴェルト様が起きたら、知らせて。じゃ、僕は工房に籠るから。はい、出てって出てって~。」
ぽい、と収納庫の外に全員追い出される。収納庫の中には、工房に繋がる内部階段があるので、それを使って移動するし、ルシオはしばらく出てこないだろう。
「やれやれ。あの人ほんとにマイペースというか、なんと言うか…。スゲェな」

苦笑するディラン。
はじめは、人のはなしを聞かないし、暴力的なところもあるし、苦手意識の強かった相手だったが、彼の千年の思いを知って、何となく分かった気がした。
彼はがむしゃらに、好いた相手のことを信じていただけなのだ。
自分も、今は居ない彼女を思い続けているから。

ルシオは、がむしゃらにディーテ神の言葉を信じるしかなかった。最愛の女性を、都合のいいように簡単に殺された。神の言葉を信じなかった教会の奴らに、少しでも反抗するため。
愛した彼女の聞いた神託が正しいんだと証明するため。
そして、五十年前にようやく、ディーテ神から神託を得て、眷属の砡の欠片を賜った。砡の理解を深め、世界を育てれば、きっとそのときが来るのだと。だからアルクスをナッシュと興したのだ。
そして、今。時代を変える時が来た。ヒースヴェルトの統べる世界は、どんな世界になるだろう。
まだ小さな、人でも神でもない、きっと不安だらけで不安定な、虹色のあの子のために、自分ができ得る最善を。
その思いでいっぱいだった。
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