虹色の子~大魔境で見つけた少年~

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華の加護が、ありますように。

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「フォレン、ディラン~、入って、いいですか?」
こんこんこんっ、と、三回ノック。
「ヒー様。用事があれば向かいましたのに…。」
フォレンは慌てて招き入れると、ヒースヴェルトの髪を纏める美しい華護りを見つけてため息を吐く。
「これはまた…。アシュト、随分と大層なものを選んだな。」
「ブランシュさんという一流の職人さんが、売り物にならないからと置いておかれたのを、髪飾りに加工してくれたんです。とても似合うと思って…支払いはルシオ様だし、いいかな~って。」
「イイ性格してるな、ほんと。…で、それが例の緋の砡で造られたものか?」
アシュトから受け取った、華護りを見ながら言う。
「はい。間違いなく。」
「ディランの華護りだったのー?すごく、綺麗!」
「はい。俺の、です。ヒー様、神力を込めずに、ただ…ただのヒースヴェルト様として、これを巻いてくれませんか。」
「ふぇ?ただの、ぼく?…いいけど…。」
華護りを受け取ると、ヒースヴェルトは丁寧に巻き付けた。
「ディーテ様の華の加護がありますように。」
神力をうまくコントロールすることは、管理者になると決めた時から自分なりに頑張って、毎日続けていた。
最近は髪の毛に纏う虹色も、興奮したら振り撒いてしまうけれど、最近はちゃんと意識すれば抑えることに成功しているのだ。
虹の色を消したヒースヴェルトは華護りの祈りの言葉を添えて、ディランに結びつけてあげた。

「ありがとう…ございます。」
「どう、いたしまして?」
ディランの様子がおかしいので、ヒースヴェルトは首を傾げていたが。
「フォレン、しばらくここを離れる。ヒー様のことを頼んだ。」
ぽん、とヒースヴェルトの頭を撫でる。
「それは勿論。…すぐに行くのかい?せっかちだねぇ。」
「…すぐにでも、確かめたい。真実を。」
「ま、死都市には一応アルクスの西支部の人を潜ませてるから、万が一そっちに転移されたとしても大丈夫だろうけど…。」
「例の黒の石を売り込んでる連中じゃないだろうな?」
「ははっ。大丈夫だよ。あー、それに、西の《白砡術士エンジニア》は派閥があるらしい。もちろん、今回の件は首領にも伝わってる。そのうち答えは出るんじゃないか?」
「そうだな。首領も、ヒー様をその目で見てルシオ様を推すと判断された。西の奴らは…一気に変わるかもな。」
アルクスも決して一枚岩ではない。組織が大きくなれば、それだけ人も増え、考え方も多様になる。だが、全ては首領が気に入るか入らないかで判断される。故に、西の件はこれで片付く。
「ディラン、お出掛け、ですか?」
ヒースヴェルトはディランがどこかに行くようなことを言っていると気付き、訪ねた。
「あ、あぁ。少し、ここから遠いところへ。でも、すごく、大事なことだから…行ってきます。」
ヒースヴェルトは胸のあたりに手を置き、何かを考えて、ハッとする。
「ぁぁ…お父さんの時と逆だね。あのときは、華護りはぼくが貰ったんだった。」
「!!…ぁっ。」
辛い思い出を、思い出させてしまったことに、ディランは青ざめる。
「…大丈夫、です。」
にこ、と控え目な笑顔。
「全部を、思い出したけど、やっぱりあの日の思い出は…お肉の、串焼きも、華護り…も。大切な想い出、です。」
本当は、記憶の蓋を開けたとき、いつまでも迎えに来ない…助けに来ない父親が、どうなったのか想像ができた。…気づいていた。父親が既に死んでこの世にいないことを。
「ぃ……ッ、いってらっしゃい、です、ディラン。
でも、帰ってくる、でしょ?そしたら、ぼくを神殿に、連れて帰る、のは、ディランも一緒、です!」
声も、瞳も、肩も。小さく震えていてもなお、泣かずに微笑もうとしていて。
「必ず、御前に戻ります。…必ず。」
ディランは約束した。そして、必ず帰ってくるとも。
そうして、ディランはルートニアスの邸の転移装置で、アルクスへ発った。

ディランがいなくなって、ヒースヴェルトは少し落ち込んでいた。
父親が華護りを巻いた次の日から、居なくなった。その過去と重ねてしまったから。
華護りは大好きなのに、巻いてすぐに居なくなられると、どうしても不安が押し寄せる。

『……おとう…さん。』

その日の夜に一人、部屋のベッドの布団の中で泣いたのは、誰にも知られたくはなかった。



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