虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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大魔境の最奥に…。

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世界は、四つの美しい宝石の力で支えられている。
その美しい宝石は《聖砡》といい、創造神ディーテが人間界に与え賜うた奇跡の宝石。
大人の拳よりも大きな球体で、それぞれ緋、蒼、翠、白の宝石である。
それらには色に因んだ奇跡の力が込められていた。
緋色の石には炎の力と強さ。
蒼い石には水の力と護り。
翠の石は風の力と癒し。
白の石には大地の力と技術。

その力を上手く使いながら、人々は生活してきた。

そして、その砡の力を最大限に活用し、組み込んだ《機械導具星の導き》を開発したのが、世界共通組織のアルクス。
アルクスは、砡の欠片を使った機械導具を駆使し、人間では到底敵わない魔獣を討伐したり、大災害からの復旧などに尽力したりなど、人々を助けることを目的に組織されている。
機械導具を使いこなす彼らを砡術士と呼び、世界中に派遣される。
そんな彼らの中でも、特に能力が高く、聡明なもの達が集められた、と言われている特務支部が作られたのが、約一年前のこと。
特務支部はその能力が試されるかのような、凶悪な魔獣が闊歩する大魔境の奥深くに存在すると言われていた。



そして、その特務支部には。



「いやーーーーーっ!!!いやだもん!ぼくも、魔境たんさく行きますぅーーー!行くんですぅー!!」

「ダメです!絶対!!!魔獣と出くわしたらどうするんです!?ヒー様がお怪我なんてされたら、私っ!!」
「うぁーーーんっ!!!だってディランがぼくを置いてったのがいけないのー!!」

特に能力が高く、聡明な?

「砡の欠片、見っけてくるぜ!!なんですぅーー!!」
「もー!いい加減、ライリー君から卒業してくださいませ!」
「きゃあーっ!!離してっ!リーナ、いやっ!いやーぁんーーー!」

可愛らしい声で大騒ぎしているのは、特務支部の誰もが愛してやまない、プラチナの長髪に灰紫色の瞳をした、美しい少年。
彼が一年前、この大魔境の最奥にある旧神殿に捨てられた、人の言葉など知らない、薄汚れた子供であった事は、誰も想像できないだろう。

「あれ?ヒー様、どしたん?」
修復の進んだ神殿の入り口で、リーナ…美しい黒髪をポニーテールで纏めた、凛とした綺麗な女性だ。彼女の腕に抱かれ、ジタバタと暴れている彼に声をかける深緑の髪色の青年。
「アシュト、助けてっ!たんさく、行こ?魔境たんさく、する、ですぅ!」
渡りに船、とばかりにアシュトと呼ばれた青年に助けを求める。
「へ?魔境探索…スか?ん~…。」
「アシュト!だめですよ!」
リーナの怒りをひしひしと感じ、アシュトは苦笑した。
「ヒー様、大魔境はホントに危険なんスよ。命に関わるほど。探索なら、オレと別の場所に行きましょ。」
「ぅー。アシュトと、一緒に?どこ、探しますか?」
アシュトは、平民の出身ながら、風の民という特殊な一族だったため、風を読む能力に長けており、砡の欠片を探し当てる才能は群を抜いていた。
ただ、この子を危険に晒すわけにはいかない。

この子は、この旧神殿で十年間一人で生きてきた。
それだけでも驚愕な事実なのだが。


『…ヒースヴェルトよ、何を喚いておる?まったく、外を知ってから随分と粗暴になりおって。
そんなことでは、管理者次の神には…なれぬぞ?』

ふわりと。

空気が変わる。

『ディーテ様。』
神聖な空気を感じ、アシュトと、リーナもヒースヴェルトをそっと地面に降ろし、跪いた。

創造神ディーテ。

この世界を創り、見守っておられる唯一神。
足元まで伸びた美しい金色の御髪に、金の瞳。
男性にも女性にも見える、美しい容貌。

ここは、世界で唯一、神の降臨される神聖な場所なのだ。

そして。

『ママっ!!』

他の者が跪き、身動きも取れないほど萎縮する中、ふわりとディーテ神に走りよるプラチナの少年。

『ヒースヴェルト、あまり人を困らせるな。そなたの我が儘で、命を終える者が出ても良いのか?』

『うぅ…。わかり、ました。ごめんなさい。魔境は、まだ早い…です。』

しゅん、としながらもディーテに叱られ、とても嬉しそうな顔で、ディーテ神の腰に抱きつく。 
『そなたらも、すまぬな。ここも随分と賑やかになったものよ。』

穏やかな笑顔を携え、ディーテ神はヒースヴェルトの柔らかな髪を掬うように撫でる。
たった四歳だった子供が大魔境に突然現れ、大怪我を負いながらも奇跡的にこの神殿にたどり着いた。
その神殿こそが、唯一ディーテ神の降り立つ場所で、神の気まぐれか、その子供は神に拾われた。
それ以来、たった一人、この大魔境でディーテ神の手より生み出される砡の欠片を得ることで、生き長らえた。

『ヒースヴェルト、浄化のための砡の欠片を見つけに行くのかぇ?』
『うん。見て?この一年でね、数字が凄く減ったの。』
そう言って、首にかけてある金色の懐中鏡の蓋をカチリと開けて見せる。
中の鏡には、ヒースヴェルトの魂の病、《澱み》が数値として刻まれている。
この数字がゼロになるとき、ヒースヴェルトはディーテ神の跡を継げるのだ。

今は、その数字を減少させるため、この世界に存在する聖砡から生まれ出でる砡の欠片を集めている最中。

アルクスに集められるものとは別に、ヒースヴェルト自ら見つけに行くこともある。

『ほぅ。よく頑張ったな。これからも励むが良い。』
『うんっ!みんなのお陰、なの。』
素直に、そんなことを言うものだから。
『………。』
ディーテ神は、目を見開いたあと、ゆっくりと微笑んだ。とても、とても嬉しそうに。
『あぁ。そうだね。余も、そなたのお陰で気づかされることが多々あるよ。』

そして、ヒースヴェルトの額に軽くキスを落として、ディーテ神は光の粒となって消え去った。

「……リーナ、アシュト、無理言ってごめんなさい。ぼく、アシュトと探しに行くね?」
しゅん、として。
「いえ、分かっていただけたなら、それで。ヒー様はこの世界の、次期神さまなのですから。御体を大切になさってください。」
リーナはほっとして、微笑む。
この神殿でヒースヴェルトに出会ってから、リーナはずっと、尊い彼のお世話をしてきた。他の誰より、母のように、姉のように…大切に思っている自負もあった。
「神殿から一歩でも外に出れば、ディーテ様の聖域から外れて魔獣のエサになっちまうッスからね。
今日は、オレと他に行きましょ。ヒー様、お手を。」
アシュトが手を差し出す。ヒースヴェルトは慣れたようにそれにきゅっとしがみつくと。
「リーナ、夕方には帰るッス。」
「はいっ!いってらっしゃいませ!」
手を引かれ、神殿の奥に設置された、転移装置へ。

ここは、アルクス特務支部、と表向きには説明しているが、本当は、神さまの住処。

これから世界が変わっていく、その準備をするところ。


    
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