1 / 119
大魔境の最奥に…。
しおりを挟む世界は、四つの美しい宝石の力で支えられている。
その美しい宝石は《聖砡》といい、創造神ディーテが人間界に与え賜うた奇跡の宝石。
大人の拳よりも大きな球体で、それぞれ緋、蒼、翠、白の宝石である。
それらには色に因んだ奇跡の力が込められていた。
緋色の石には炎の力と強さ。
蒼い石には水の力と護り。
翠の石は風の力と癒し。
白の石には大地の力と技術。
その力を上手く使いながら、人々は生活してきた。
そして、その砡の力を最大限に活用し、組み込んだ《機械導具》を開発したのが、世界共通組織のアルクス。
アルクスは、砡の欠片を使った機械導具を駆使し、人間では到底敵わない魔獣を討伐したり、大災害からの復旧などに尽力したりなど、人々を助けることを目的に組織されている。
機械導具を使いこなす彼らを砡術士と呼び、世界中に派遣される。
そんな彼らの中でも、特に能力が高く、聡明なもの達が集められた、と言われている特務支部が作られたのが、約一年前のこと。
特務支部はその能力が試されるかのような、凶悪な魔獣が闊歩する大魔境の奥深くに存在すると言われていた。
そして、その特務支部には。
「いやーーーーーっ!!!いやだもん!ぼくも、魔境たんさく行きますぅーーー!行くんですぅー!!」
「ダメです!絶対!!!魔獣と出くわしたらどうするんです!?ヒー様がお怪我なんてされたら、私っ!!」
「うぁーーーんっ!!!だってディランがぼくを置いてったのがいけないのー!!」
特に能力が高く、聡明な?
「砡の欠片、見っけてくるぜ!!なんですぅーー!!」
「もー!いい加減、ライリー君から卒業してくださいませ!」
「きゃあーっ!!離してっ!リーナ、いやっ!いやーぁんーーー!」
可愛らしい声で大騒ぎしているのは、特務支部の誰もが愛してやまない、プラチナの長髪に灰紫色の瞳をした、美しい少年。
彼が一年前、この大魔境の最奥にある旧神殿に捨てられた、人の言葉など知らない、薄汚れた子供であった事は、誰も想像できないだろう。
「あれ?ヒー様、どしたん?」
修復の進んだ神殿の入り口で、リーナ…美しい黒髪をポニーテールで纏めた、凛とした綺麗な女性だ。彼女の腕に抱かれ、ジタバタと暴れている彼に声をかける深緑の髪色の青年。
「アシュト、助けてっ!たんさく、行こ?魔境たんさく、する、ですぅ!」
渡りに船、とばかりにアシュトと呼ばれた青年に助けを求める。
「へ?魔境探索…スか?ん~…。」
「アシュト!だめですよ!」
リーナの怒りをひしひしと感じ、アシュトは苦笑した。
「ヒー様、大魔境はホントに危険なんスよ。命に関わるほど。探索なら、オレと別の場所に行きましょ。」
「ぅー。アシュトと、一緒に?どこ、探しますか?」
アシュトは、平民の出身ながら、風の民という特殊な一族だったため、風を読む能力に長けており、砡の欠片を探し当てる才能は群を抜いていた。
ただ、この子を危険に晒すわけにはいかない。
この子は、この旧神殿で十年間一人で生きてきた。
それだけでも驚愕な事実なのだが。
『…ヒースヴェルトよ、何を喚いておる?まったく、外を知ってから随分と粗暴になりおって。
そんなことでは、管理者には…なれぬぞ?』
ふわりと。
空気が変わる。
『ディーテ様。』
神聖な空気を感じ、アシュトと、リーナもヒースヴェルトをそっと地面に降ろし、跪いた。
創造神ディーテ。
この世界を創り、見守っておられる唯一神。
足元まで伸びた美しい金色の御髪に、金の瞳。
男性にも女性にも見える、美しい容貌。
ここは、世界で唯一、神の降臨される神聖な場所なのだ。
そして。
『ママっ!!』
他の者が跪き、身動きも取れないほど萎縮する中、ふわりとディーテ神に走りよるプラチナの少年。
『ヒースヴェルト、あまり人を困らせるな。そなたの我が儘で、命を終える者が出ても良いのか?』
『うぅ…。わかり、ました。ごめんなさい。魔境は、まだ早い…です。』
しゅん、としながらもディーテに叱られ、とても嬉しそうな顔で、ディーテ神の腰に抱きつく。
『そなたらも、すまぬな。ここも随分と賑やかになったものよ。』
穏やかな笑顔を携え、ディーテ神はヒースヴェルトの柔らかな髪を掬うように撫でる。
たった四歳だった子供が大魔境に突然現れ、大怪我を負いながらも奇跡的にこの神殿にたどり着いた。
その神殿こそが、唯一ディーテ神の降り立つ場所で、神の気まぐれか、その子供は神に拾われた。
それ以来、たった一人、この大魔境でディーテ神の手より生み出される砡の欠片を得ることで、生き長らえた。
『ヒースヴェルト、浄化のための砡の欠片を見つけに行くのかぇ?』
『うん。見て?この一年でね、数字が凄く減ったの。』
そう言って、首にかけてある金色の懐中鏡の蓋をカチリと開けて見せる。
中の鏡には、ヒースヴェルトの魂の病、《澱み》が数値として刻まれている。
この数字がゼロになるとき、ヒースヴェルトはディーテ神の跡を継げるのだ。
今は、その数字を減少させるため、この世界に存在する聖砡から生まれ出でる砡の欠片を集めている最中。
アルクスに集められるものとは別に、ヒースヴェルト自ら見つけに行くこともある。
『ほぅ。よく頑張ったな。これからも励むが良い。』
『うんっ!みんなのお陰、なの。』
素直に、そんなことを言うものだから。
『………。』
ディーテ神は、目を見開いたあと、ゆっくりと微笑んだ。とても、とても嬉しそうに。
『あぁ。そうだね。余も、そなたのお陰で気づかされることが多々あるよ。』
そして、ヒースヴェルトの額に軽くキスを落として、ディーテ神は光の粒となって消え去った。
「……リーナ、アシュト、無理言ってごめんなさい。ぼく、アシュトと探しに行くね?」
しゅん、として。
「いえ、分かっていただけたなら、それで。ヒー様はこの世界の、次期神さまなのですから。御体を大切になさってください。」
リーナはほっとして、微笑む。
この神殿でヒースヴェルトに出会ってから、リーナはずっと、尊い彼のお世話をしてきた。他の誰より、母のように、姉のように…大切に思っている自負もあった。
「神殿から一歩でも外に出れば、ディーテ様の聖域から外れて魔獣のエサになっちまうッスからね。
今日は、オレと他に行きましょ。ヒー様、お手を。」
アシュトが手を差し出す。ヒースヴェルトは慣れたようにそれにきゅっとしがみつくと。
「リーナ、夕方には帰るッス。」
「はいっ!いってらっしゃいませ!」
手を引かれ、神殿の奥に設置された、転移装置へ。
ここは、アルクス特務支部、と表向きには説明しているが、本当は、神さまの住処。
これから世界が変わっていく、その準備をするところ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【魔女ローゼマリー伝説】~5歳で存在を忘れられた元王女の私だけど、自称美少女天才魔女として世界を救うために冒険したいと思います!~
ハムえっぐ
ファンタジー
かつて魔族が降臨し、7人の英雄によって平和がもたらされた大陸。その一国、ベルガー王国で物語は始まる。
王国の第一王女ローゼマリーは、5歳の誕生日の夜、幸せな時間のさなかに王宮を襲撃され、目の前で両親である国王夫妻を「漆黒の剣を持つ謎の黒髪の女」に殺害される。母が最後の力で放った転移魔法と「魔女ディルを頼れ」という遺言によりローゼマリーは辛くも死地を脱した。
15歳になったローゼは師ディルと別れ、両親の仇である黒髪の女を探し出すため、そして悪政により荒廃しつつある祖国の現状を確かめるため旅立つ。
国境の街ビオレールで冒険者として活動を始めたローゼは、運命的な出会いを果たす。因縁の仇と同じ黒髪と漆黒の剣を持つ少年傭兵リョウ。自由奔放で可愛いが、何か秘密を抱えていそうなエルフの美少女ベレニス。クセの強い仲間たちと共にローゼの新たな人生が動き出す。
これは王女の身分を失った最強天才魔女ローゼが、復讐の誓いを胸に仲間たちとの絆を育みながら、王国の闇や自らの運命に立ち向かう物語。友情、復讐、恋愛、魔法、剣戟、謀略が織りなす、ダークファンタジー英雄譚が、今、幕を開ける。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる