虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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研究室にて。

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大魔境の奥にある神殿の一角に、砡の欠片を収めている部屋がある。そこは研究室と隣り合わせで、一人の白砡術士がいる。
銀髪の、アイスブルーの瞳をしたエルフ。
「はー…ったく、盾の坊やはほんっとに遠慮がないっていうか。こうと決めたら頑固すぎだよね納期短すぎるんだよホントにさぁ…何?教会と話しつけてきたから来月までに?国内の審査装置全て回収かとかあり得なくない?誰に依頼してんのホントさぁ。僕だよ?ぼ、く。」
右手にドライバーを握り、左手には銀色の作りかけの機械導具。羅針盤のような形をしていて、四方に色の違う砡の欠片が嵌められている。
元々、大がかりな装置だったそれは、現在コンパクト化させ、お盆くらいのサイズまで小さくなった。
アルクスの行う事業の一つ。産まれてくる子どもたちの砡の展開率を測ること。
低ければ問題はないが、高ければ制御訓練を施す。でなければ、展開率が高い子供は、砡の欠片に触れると暴発を起こすことがあるからだ。

そしてこれは、人と、砡との相性を調べる装置。世界中に生み出される砡の欠片に対する、自らの展開率が測定できる。

これまで、大がかりな装置を世界中に点在していたディーテ神教会の敷地に置かせてもらうことで、子供が生まれ、展開率を調べる《展開率の審査》をさせてもらっていた。
しかし、教会の在り方に疑問を持ったアルクス側が、教会との縁を断ち切り、別の方法で審査することにした。
それが、今回ルシオが大量生産している、これなのだ。
ブツブツと文句を垂れながらも、その手は作業を止めない。研究室には、それと同じ物が百個以上は作られていた。
「ルシオ様、愚痴聞こえてますよー。悪いとは思ってるんですけどね、早い方がいいじゃないですか。
腐った教会と縁を切って、新しいシステムを導入するんですよ。やっと各国の主要都市の役場に、置いていけるように手配してもらえたんですから。」
研究室に入ってくる、金髪緑目の青年は、ニッコリ微笑む。その手には今日中にサインを、貰いたい書類の束。
「なに?ソレ。」
「その携帯型審査盤の契約書類です。
役場の出生届け出窓口に一件依頼がある毎に五千レル。教会に払っていた設置料金と比較しても破格。ルシオ様は良い機械を作られました。」
上機嫌の彼とは正反対に不機嫌真っ只中なルシオは深い溜め息を吐く。
「元々、君の提案でしょ?全く…。でも、教会がよく引き下がったよね?貴重な収入源だっただろうに。」
「まぁ、そこは私の手腕ということで。ふふふっ。」
怪しく笑うのは、ここより東に位置する大国、エンブルグ皇国の公爵家の長男、フォレン・ルートニアスだった。父親は現皇帝の補佐で、皇帝とは幼い頃からの親友同士。
そんな父を持つ彼もまた、その話術と頭の回転はすさまじく、アルクスの頭脳と呼ばれている。

そして。

「ルシオ様、これ、今日の収穫だ。やっぱ大魔境は他のハンターどもに荒らされていないから、質のいい欠片が見つかるな。」
ばたん、とノックもなしに入ってくる、赤い髪の男。
その金色の瞳は、エンブルグ皇国の皇族の証。
「ディラン。また探索に行ってたのか?…ヒー様に見つからなかった?」
「あぁ、フォレン。来ていたのか。…なんでヒー様?」
「知らないの?ヒー様、魔境探索がしてみたくて、ディランが次に出掛けるときはついていくんだって、張り切っておられたからさ。」
「…はぁっ?そんなもん、ダメに決まってるだろ!危険すぎる……。まぁ、他の場所なら行ってもいいけどよ~…。」
頭を抱えて唸るディランに、ルシオは疑いの目を向けた。
「殿下、ぼくのヒースヴェルト様を巻き込まないでよね。あの美しい御身体に一筋の傷だって、なんなら小指のササクレだって許さないんだからね!」
「ササクレは関係ねぇだろ流石に。それに、ヒー様はご自分で欠片を探すことを半ば使命だと思ってるからな…。まぁ、そうなんだけどよ。」
そう。アルクスには、いつも潤沢に砡の欠片を保管している。だか、それらの殆どは、浄化を目的としているヒースヴェルトにとっては無用のものだった。
「我々が日々集めて来る砡の欠片だけでは…まだ完全なる浄化には足りない。
ヒー様の澱みを浄化できる、生まれてすぐの中砡欠片は本当にレアだからなぁ…。」
「ヒー様にしか、その見分けがつかないしな。俺らは、とにかく集めるしかねぇ。」
ヒースヴェルトは、その砡の欠片が、何年前に生まれた物か、見ればすぐにわかるのだ。特別な、神の目、とでも言うのだろうか。

「はぁ…。ヒースヴェルトさまに会いたい……。」
ここ数日、審査盤製作のために研究室に籠りっぱなしのルシオは、既にヒースヴェルト切れを起こしていた。
「はは。せっかく大っ好きなディーテ様とヒースヴェルト様の《ご自宅》にラボを抱えたってのに、ずっと籠りっきりじゃあな。」

「ヒースヴェルトさま…あぁ…可愛らしい頬に触れたい…。美しい虹色の御髪に顔を埋めたい……。あーーーー。」

「「…………。」」

見た目は絶世の美男子で、その頭脳は世界一の《白砡術士》で、ディーテ神の一番目の眷属を賜った、元・ディーテ神教司祭であり、父親がその最高司祭という肩書きも。

「…台無しだな。…変態エルフ。」



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