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いなくなった子
しおりを挟む《貴様は何故、ここを選んだんだ?》
通信機から、映像を伏せられ、声だけ届く状況に、子爵邸の一部屋を借り仕事をしていたフォレンは静止した。
(…ルシオ様…?町で何かあったのか?)
フォレンは、そのまま黙って聞いていると、なにやら他の男の声がした。
《で、ですから、ダスティロスの殺伐とした国に居続けるより、穏やかに過ごしたいと…。》
《モートン…。貴様、何か教会に弱みでも握られたか?》
(…これは…子爵を呼んだ方がいいな。)
フォレンはリーナに指示し、ウォルトにすぐ来るように伝えた。
《………仕方なかったのです!教会に噛み付いて…家族の命を、ダスティロス王家に握られてしまった!》
《何……?》
《ギネル様は…貴方のお父上はダスティロス王と癒着している。あの忌まわしい黒い石を使い、西の国と共謀して、奴隷を量産しているのです…。私も…既に、ここから二名……死都市に送った!!》
ガンッ!!!!
通信機から、何かを殴るような音がした。
おそらくはルシオが、机か…あるいはモートン自身か。殴り飛ばしたのだろう。
《………腐っているな。教会も…貴様も。》
通信機から漏れるルシオの声が、殺気を孕んでいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「…?なにか音がしたねぇ?」
リアンの案内で、二階の宿坊を見て回っていたとき。物音がしたのを感じてリアンにも聞こえたか、と尋ねたが。
「えぇ?気のせいじゃない?」
「そう?…あっ、ここがみんなの寝室?凄い、人数分ベッドがある~…ん?」
いち、にぃ、さんー、と数えていると、ヒースヴェルトはふと、明かに使われていないベッドがあるのに気づく。
「ベッド、二個余裕があるねぇ?使ってないの?」
「…あっ、あぁ。…そこは、ラントっていう五歳の男の子と、マリンって七歳の女の子が使ってたんだ。」
「どこかに、貰われたの?よかったね!!」
「……いなくなったんだ。突然……。」
「……ぇ?」
リアンは、眉を寄せて悔しそうに、悲しい表情で溢した。
「ある日、突然…マリンと、ラントがいなくなった。他の奴らに聞いても、分からなくて…町の外も探したけど、見つからなくて!すげー、可愛い奴らだったからさ、拐われちゃったのかな、って…。今も、警備兵使って探してるけど…。」
リアンは、そのことがあって以降、この孤児院の子供達と遊ぶとき、つい彼らを思い出してしまい、落ち込んでしまうのだと言う。
ヒースヴェルトは、ぞくっとした。突然消え失せた子供。…もしかして。
「…あっ…あのね、この孤児院の中に、えと、えっと…黒い…石みたいなの、ないかな?」
手が、震えているのが分かる。平和だと思っていたんだ。このエンブルグ皇国なら、そんな酷いことなんて、起こらないと、思っていた。
「黒い石?さぁ…ここの子供たちなら、知ってるかもしれないけど。」
「もし、あったとしたら、とっても危険!!探さなきゃ!」
いつも穏やかで明朗としているヒースヴェルトの焦った顔に、リアンもどこか焦りを感じた。
「よ、よしっ!探そう!ここのヤツにも聞いてみよう。今は庭で遊んでるはずだ!」
「うん!行こう!」
二人は、黒い石探しを開始した。
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