虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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神罰

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「ルシオさぁん!!!居たー!」
応接室に院長と二人で居たルシオに、ヒースヴェルトは飛び付く。
「わっ!?ヒっ…ヴェル様!?どうなさったんです…って、それはっ!」
ぎゅう、と腰のあたりにしがみつくヒースヴェルトの手は、黒い箱を持っている。その手は震えていて。
「ぁい…。リアンから、聞いたです。ここの、子供が突然いなくなった、らしいです…。もしかしたらって、探した…です。」
黒い箱を、震える手で差し出す。箱の側面には、双蛇の紋様。ロレイジアの一部の軍が使用するらしい、その紋様。
琥珀の瞳に、膜が張る。
「モートン…。貴様は……ッ」
頬を腫らしたモートンは、その場に尻餅をついたまま、うち震えていた。
「モートンさん…、ど、したですか…?」
モートンの腫れ上がった頬を見て、そして怒りの色を見せているルシオを見て、ヒースヴェルトは息を飲んだ。あぁ、殴ったの。と。
「かっ…家族全員助けるには…エンブルグ皇国の子供を三人……。」
つまり、ラントとマリンの他に、まだもう一人送る予定でいたということか。
ルシオはギリ、と拳を固くした。自身の爪で、血が滲むのも構わずに。
ヒースヴェルトの目には、魂の澱みが見えている。ルシオの綺麗な魂が、黒くなる。

だめ。

ぼくの翼は、綺麗でいてほしいのに。

「ルシオさんっ!だめです!」

いつか、ルシオを癒した、虹の光を当てる。
他の人にばれないようにほんの、少しだけ。

「はっ……ハッ……ッ。ヒースヴェルト様…ッ、わたしは……」
「大丈夫っ。ぼく、怒ってます。お優しい神様なんか、ならないです。…酷いことをする国も、人も!!ぼくは許さないッ!!!」

強い意思を持った主の目に、ルシオは自らの怒りを静めることができた。
「その通り。ヴェル様、ここの領主を連れてきましたから、もうこの男は終わりです。…国家間会議のネタがまた、一つ増えましたね。はぁ…。ロレイジアとダスティロスは、終わりだな。」
「だっ、誰だ!!」
モートンは、ぞろぞろと部屋に入ってくる者達に声を粗げたが、その後ろに領主の顔を見つけて、顔色を更に悪くした。
「コール子爵様…ッ!!!」
「モートン殿…あなたは、何ということを……!」
「な、何のことですかな?」
モートンは、先程の話の内容を聞かれていないと思っているのか、シラを切ろうと惚けたが。

《ーーー私も…既に、ここから二名……死都市に送った!!》
通信機に備え付けられた、録音機能のお陰で、フォレンはルシオの送ってきた音声を記録することができた。ウォルトにも全て聞いて貰い、現場を押さえにきたのだ。
「証拠は押さえた。言い逃れは出来ぬよ。貴様は即刻皇城で全て話してもらう。皇帝陛下の御前でな。」
「なっ、何の権限があってそのような!!だいたい、あなたは誰ですか!突然に入ってくるなり…!」
ギロリ、と睨み上げるモートンに、冷たい視線を送る。
「あぁ。別件で視察に来ていた。私はフォレン=ルートニアス。父は陛下の補佐をしているレイモンド=ルートニアスだ。そのうち、私か、私の弟がその地位を継ぐ予定だ。…権限は十分だろう?」
「ルートニアス…公爵様……ッ!?」

「…ヒ…っと、ヴェル様。その箱をこちらに。」
「フォレン!」
黒い箱を、フォレンに渡す。二匹の蛇が絡み合うような紋様を確認し、フォレンはため息を吐く。
「これを、誰に渡された?教会?ロレイジアから直接か?」
「……教会です。ロレイジアも、ダスティロスも…最早国家の言いなり。ギネル様は金さえ手に入れば……人の命がどう動こうと、もう…。」
「ルシオ様…これはもう、猶予は無いようですよ?お父上には責任を取っていただかなくてはね。」
「…そのようだな。安心しろ。父は私の手で殺す。教会を殲滅させてやる…」
「だっ…だめ!!ルシオさんは、そんなこと、しなくていいのッ!」
(だめ、だめ!魂が…ッ。どうしたらいいの?ママっ!!!)
ヒースヴェルトが強く思うと、彼の周囲に金の光が降り注いだ。
「!!!この光は…!」
ルシオとフォレンは、ハッとして跪く。
フォレンにとっては、二回目の経験。
ヒースヴェルトの身体を借りて、ディーテが言葉を告げる。
『………この国より西と北からは、人々の祈りの声すら殆ど届いておらぬよ。
白の眷属よ。…翼となるそなたの意思など、既に無いのだ。…そなたの主に従え。それ以上澱みを増やすでない。コレの負担が増えるだけだぞ。それとも…そなたは我が子を苦しめたいのかぇ?それは、親として許せぬのぉ?』
ビリ、と痛みが走るような空気に晒され、ルシオは息が出来ずに思わず踞りそうになった。
『申し、訳ございません。私が…間違っておりました…。』
『…魔獣の卵・・・・は、二つの国でのみ、孵化させる。それが新たな神の初めの言葉だ。
新たな神の…コレなりの、愚かな国への神罰だ。勿論、罪なき者も傷つく…。新たな神は優しいから耐え難いだろうね。…慰め、支えてやれ。余もできる限り側に居てやろうと思う。』

ディーテ神が、敢えて穢黒石を魔獣の卵・・・・と称した。そして、ヒースヴェルトの意思だという。
優しく、人を常に思う彼が、人が傷つく方法を選び取った。
選んでも、結局は悲しみとなって自らに跳ね返ってくる。
しかし、それでも構わないほど、ヒースヴェルトが怒りを感じていることは確かで。
「い、今の……は。」
モートンは、初めて神気に触れたのか、がくがくと震えていた。ヒースヴェルトを囲った金の光の粒には、その時だけ言葉が分かるようになる、言葉の加護がかけられていたため、モートンやウォルト、リアンまでも、ヒースヴェルトに憑依したディーテ神の言葉を聞いた。
「創造神のお言葉だ。近く、新たな神の神罰が、下される。」
「新たな…神…!まさか。千年前のあの神託…ッ。嘘ではなかったのですか!?ギネル様は本当に、神託を無視し…神子殺しを…。」
モートンは、昔に起こった悲劇を、噂話だと信じていた。
「教会が闇に葬ったあの神託の通り、世界は動く。それだけのこと。たかが人間やエルフごときが隠したところで、曲げられる未来など…無いというのに。」
ディーテの神力が離れ、気を失って倒れそうになったヒースヴェルトを優しく抱きかかえ、ルシオは後悔に満ちた表情で溢した。
ヒースヴェルトの髪色が、黒から白金に戻りかけている。フォレンはばさり、とヒースヴェルトを自らのマントで覆い、ルシオからヒースヴェルトを受け取ると、
「一度邸に戻る。ヴェル様を休ませたい。…後始末は、頼めるな?ウォルト殿。」
「はい。私の領での騒動ですから。…陛下にお目通りできるよう、手配をお願いしても宜しいでしょうか…。」
「構わん。私も用事ができた。ルシオ様、行きますよ。」
「……ッ。」
ルシオは黙ったまま。
フォレンらはウォルトと警備兵を数名残して、コール子爵邸に戻った。


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