虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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失踪者

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夜が明けて、昨晩の事件の関係で、リアンは麓の町から役人を連れてきた。
後の処理を役人たちに任せるよう、ウォルトから連絡を受けたらしい。
リアンは、ヒースヴェルトの視察の手伝いに戻りなさい、と。
「ヴェル、昨日はちゃんと眠れたか?フォレン様の傷の具合はどうだ?」
「リアン、おはよう!うん…フォレン、お熱出ちゃったの…。傷が原因だって、ルシオさんは言ってるけど…。今日はね、1日安静なの。泉には、ぼくとルシオさんと、ジャンニで行くよ。リーナは、看病!」
「そっか…。大変だったよな。でもさ、本当に大丈夫なのか?あの商人の持っていた魔獣の卵、いつ魔獣になるかわかんねぇから、皆ビビっちまってて。」
証拠品として役人が預かっているものの、護衛兵士も魔獣の姿を見ていたため、正直なところ預かることに後ろ向きなのだ。
「問題ない。私が作った機械導具の中に入れておけば万が一孵化したところで、外に出てくることはない。頑丈な檻だからな。」
ルシオは森を歩くための丈夫な靴をヒースヴェルトに履かせながら、言う。
リアンに貸したのは、アルクスの七階の収納庫にある、鐵扉と同じ素材でできている箱だった。
それ自体が機械導具で、ルシオらしい、守りの力である蒼砡の力で制御するもの。
「やっぱ、凄いっすね、ルシオ様って。」
リアンの尊敬の眼差しに、ルシオは溜め息を吐いて首を横に振る。
「ファル・ファム商会に西支部が売ったアイテムボックスが、私の使用者盤《ユーザーデータ》から外されていた。
…私の技術を改竄できる能力がある者がいるということだ。
…失踪した白の砡術士の誰かだろうが…使用者盤を弄れるくらいの知識を持ち合わせていることになる。」
ルシオは頭を抱えた。
「加護もなしに…?それって、凄いことじゃ…。」
ヒースヴェルトは、以前ルシオが一人で機械導具の製作とメンテナンスを行なっていたことは知っている。
他の術士には、理解と技術が未だ及ばないからこそ、一人でこなしていると聞き、助手としてアルフィンを誕生させたのだから。
「西支部には、私を良く思わない白砡術士がいたのです。そいつかもしれない。」
フォレンやディランも、昔から警戒してきた男がいた。
狡猾で、腹黒い奴。
アルクスという組織には異質でしかないその男は、ダスティロスの貴族だった。
「…でも、今はアルクスには居ないのでしょう?」
「えぇ。ちょうど、ヒースヴェルト様を神殿の外へご案内していた六十日の旅の間に失踪しました。…さ、準備できましたよ。参りましょうか。」
靴紐を硬く結んで、ヒースヴェルトを立たせる。
「ぁいっ!じゃあ、行こう!」
神泉を目指し、気分はピクニック。
「ヒー様、行ってらっしゃいませ。此方のことはお任せくださいね。」
リーナは村長宅の玄関までお見送りをしてくれた。
「リーナ!フォレンをお願いね。」
リーナに手を振り、村を出た。




しばらく歩くこと、数十分。森は神気に満ちていて、ディーテ神がほんの少しでも住んだ痕跡があることが分かる。
「…ぼくも、神化すれば…ルートニアス領やアルクス本部なんかに、神気を満たすことができるかな…?」
 小声で言うと、ジャンニは頷いてくれた。
「知ってますか~?神殿には、もう虹色の光が溢れているんですよ。私、神殿の空気がとても好きです~。」
「ぇ…?そうなの?ぼく、ママの空気しか感じなかったけれど…。」
「ご自身の神気には、気づきにくいのかもしれませんね。無意識に…強まったり、薄れたり…と。先日の孤児院から、ディーテ様の気が少しだけ、感じにくくなりました。おそらく…加護が薄れたのかと。」
「そんなっ!悪いのは孤児院の院長さんで、あの場所は…とても良いところなのに…」
ヒースヴェルトはディーテ神の加護が薄まったことが信じられず、首を横に振る。
「私はエルフですから、長い間生きていく中で色々なものを見てきました。…もちろん、死都市も、この目で見たことがあります。あの場所は…確かに神の存在を感じることができなかった。恐ろしい場所です。」
「ッ!死都市を…?」
「その頃はまだ、魔獣だけが疎らに住む荒野だった。…しかし、十数年前から…穢黒石…卵が出現しはじめ、ロレイジアという国は変わったのでしょう。悪い方向に。」
それまでのロレイジア王国は、英雄が造り上げた栄光ある国として、どちらかと言えば穏やかに、しかし威厳を持った国風であったという。
それが、今では奴隷を国の財源としているのは、軍部の言いなりなのか、それとも、軍部に指示しているのか。
「ディーテ様も仰っておられました。『北と西からの、人々の声は届かない』…。ディーテ様の御力が、それ程に離れてしまっているということです。」
人が、人として懸命に生きて、大地に感謝し、家族を、周りの人々を大事に思い過ごしてくれたなら、ディーテ神もヒースヴェルトも、これほど嬉しいことはない。
だけど、その逆は。

「皆が笑って生きて…死んでゆける星にしなきゃ。」
「ヒースヴェルト様…。」
ジャンニも、自分の領地でこのような事件が起こり、流石にショックを隠せなかった。ヒースヴェルトの心を痛めてしまったことを、とても後悔していたのだ。
「ジャンニ、これから変わるよ、きっと。人々の気持ちをリフレッシュするんだよ!ママと、ぼくがね、頑張るからね!!」

ヒースヴェルトは、この時どのようなことを考えていたのか。

「頑張る」の方法が、まさかあなのようなことになるとは、誰も想像できなかった。


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