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金色の果実
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森を歩く間に、もう一度ジャンニから神泉の側に立つ果樹のことを聞いた。
「村の少女が木の実を神泉の水を使い、茹でたものを捧げたのですが、その種が芽を出して、果樹になったのではないか、と言われてます~。」
「シルディアさんが埋めたのかなぁ?」
ディーテ神が、戯れに人のフリをして暮らしたとき、よく世話をやいてくれた少女がいたという。その彼女の名前が、シルディア。
「ようやく食べることができますね。神殿の畑の果実も、ここの果樹を参考に育ててみたので。お役に立てたら良いのですが~。」
なんて言っていたら、開けた場所に出た。ルートニアス公爵邸の中庭の、噴水くらいの大きさ。にも関わらず、その湧水の量は相当である。
「スッゴい勢いで湧き出てるな!あの商人が買いたがる訳だ…。」
リアンは感嘆した。そして、ヒースヴェルトも。
「あぁ…そうか。ママが直接加護を与えたんだ。神泉自体に加護を与えたのは、ここだけだから、ここの泉は枯れることは無いんだ。」
ちゃぷ、と水を手に取る。それだけで、金の光は弾けとぶ程溢れる。
「…ヒースヴェルト様、あちらが、目的の果樹です。」
泉の脇に、ゆったりと枝葉を広げ佇む美しい果樹。
緑であるはずの葉は、金色の葉脈を持つ。
そして、金色の果実は、季節を選ばずに常に枝に成るという。
神の与えた種から生まれた果実は、神果と呼ばれ、毎年の神饌の一つとして捧げられているそうだ。
「美しい果実だ…。ディーテ様の御力が満ち溢れている…。」
昨晩は真っ暗な中で泉の様子を見に来ていたルシオは、改めて金色の果実を目の当たりにし、溜め息を漏らす。
「ジャンニ、あれ、食べたい。取ってもいい?」
瞳を潤ませて、感動しているのか黒髪は徐々にプラチナの色を取り戻しつつある。
「えぇ、勿論です~!リアン、口外禁止よ、ヒースヴェルト様は特別な身体であらせられるから、神果を口にすることができるの。私やあなたが口にしたら、その瞬間死を迎えることになるわよ~。」
「うっ…わ、分かってるよ!!ったく、ヴェルの身体はどうなってんだよ、本当にさぁ!」
「ふふっ。どうなってるんだろうねぇ~?ぼくも知りたい。」
ぴょん、と枝に跳び移り、金色の果実を手に取ると、ストンと降りてくる。
相変わらずの運動神経の良さである。
「うわぁっ、きれい!美味しそう…。あー…ん、」
かぷ、と歯を立てて食べると、甘い香りと、豊潤な果汁と柔らかい果肉。噛み締めるごとに溢れる果汁に、ヒースヴェルトは瞳を潤ませてもう一口、もう一口と、あっという間に一つの実を食べきってしまった。
「おっ…おいしーーーー!!!!!」
「はい~!良かったです!」
ヒースヴェルトは幸せいっぱいの笑顔で、ルシオに向き直った。
「…?ヒースヴェルト様?いかがされまし……」
ふわっ、とヒースヴェルトの身体が宙に浮く。虹色の粒子を纏いながら、神聖陣を描いてゆく。その様子は神殿に描かれた天井画のように優美で、威厳に満ちていて。
『見つけた。これが、神力を留める構築式だ。』
「何と美しい…。このような構築式、見たことがない!」
神の果実からヒントを得たヒースヴェルトは、神力が他の物質に留まるための構築式を見つけることができた。
それは、まるで花のような美しさ。ヒースヴェルトの意識に引きずられ、少しだけ神果の花に似てしまったようだ。
それは、金色と虹色の光を放つ、桃の花。
「ルシオさん、砡の欠片を持っている?」
「あ…えぇ。いくつかは荷物の中にあります。ですが、村に置いてきています。」
構築式を解いて、ヒースヴェルトは再び色替えの術をかけなおした。
「じゃあ、戻ろう!!ルシオさんは、麓の町で待機ね!」
「え?えぇっ!?まさか、早速実験するおつもりですか!!」
ルシオの慌てように、リアンは疑問符を浮かべていたが、ジャンニは理解したようで、苦笑いしていた。
「ね、姉さま、何だよ?どうしたの?」
「あはは~、こういうときのヒースヴェルト様って、本当にルシオ様そっくりなのよね。即実験したがると言うか…。とにかく、村に戻りましょ。神果もいくつか持って帰りましょう~♪神殿に植えたら、育つかしら~?」
ジャンニは果実をいくつか優しく採り、籠に仕舞うと、ヒースヴェルトたちの後に続いた。
「え、姉さまっ!もう良いのか?」
「えぇ。ヒースヴェルト様は、望む結果を得られたようですから~♪」
帰り道のヒースヴェルトの足取りは軽かった。
「村の少女が木の実を神泉の水を使い、茹でたものを捧げたのですが、その種が芽を出して、果樹になったのではないか、と言われてます~。」
「シルディアさんが埋めたのかなぁ?」
ディーテ神が、戯れに人のフリをして暮らしたとき、よく世話をやいてくれた少女がいたという。その彼女の名前が、シルディア。
「ようやく食べることができますね。神殿の畑の果実も、ここの果樹を参考に育ててみたので。お役に立てたら良いのですが~。」
なんて言っていたら、開けた場所に出た。ルートニアス公爵邸の中庭の、噴水くらいの大きさ。にも関わらず、その湧水の量は相当である。
「スッゴい勢いで湧き出てるな!あの商人が買いたがる訳だ…。」
リアンは感嘆した。そして、ヒースヴェルトも。
「あぁ…そうか。ママが直接加護を与えたんだ。神泉自体に加護を与えたのは、ここだけだから、ここの泉は枯れることは無いんだ。」
ちゃぷ、と水を手に取る。それだけで、金の光は弾けとぶ程溢れる。
「…ヒースヴェルト様、あちらが、目的の果樹です。」
泉の脇に、ゆったりと枝葉を広げ佇む美しい果樹。
緑であるはずの葉は、金色の葉脈を持つ。
そして、金色の果実は、季節を選ばずに常に枝に成るという。
神の与えた種から生まれた果実は、神果と呼ばれ、毎年の神饌の一つとして捧げられているそうだ。
「美しい果実だ…。ディーテ様の御力が満ち溢れている…。」
昨晩は真っ暗な中で泉の様子を見に来ていたルシオは、改めて金色の果実を目の当たりにし、溜め息を漏らす。
「ジャンニ、あれ、食べたい。取ってもいい?」
瞳を潤ませて、感動しているのか黒髪は徐々にプラチナの色を取り戻しつつある。
「えぇ、勿論です~!リアン、口外禁止よ、ヒースヴェルト様は特別な身体であらせられるから、神果を口にすることができるの。私やあなたが口にしたら、その瞬間死を迎えることになるわよ~。」
「うっ…わ、分かってるよ!!ったく、ヴェルの身体はどうなってんだよ、本当にさぁ!」
「ふふっ。どうなってるんだろうねぇ~?ぼくも知りたい。」
ぴょん、と枝に跳び移り、金色の果実を手に取ると、ストンと降りてくる。
相変わらずの運動神経の良さである。
「うわぁっ、きれい!美味しそう…。あー…ん、」
かぷ、と歯を立てて食べると、甘い香りと、豊潤な果汁と柔らかい果肉。噛み締めるごとに溢れる果汁に、ヒースヴェルトは瞳を潤ませてもう一口、もう一口と、あっという間に一つの実を食べきってしまった。
「おっ…おいしーーーー!!!!!」
「はい~!良かったです!」
ヒースヴェルトは幸せいっぱいの笑顔で、ルシオに向き直った。
「…?ヒースヴェルト様?いかがされまし……」
ふわっ、とヒースヴェルトの身体が宙に浮く。虹色の粒子を纏いながら、神聖陣を描いてゆく。その様子は神殿に描かれた天井画のように優美で、威厳に満ちていて。
『見つけた。これが、神力を留める構築式だ。』
「何と美しい…。このような構築式、見たことがない!」
神の果実からヒントを得たヒースヴェルトは、神力が他の物質に留まるための構築式を見つけることができた。
それは、まるで花のような美しさ。ヒースヴェルトの意識に引きずられ、少しだけ神果の花に似てしまったようだ。
それは、金色と虹色の光を放つ、桃の花。
「ルシオさん、砡の欠片を持っている?」
「あ…えぇ。いくつかは荷物の中にあります。ですが、村に置いてきています。」
構築式を解いて、ヒースヴェルトは再び色替えの術をかけなおした。
「じゃあ、戻ろう!!ルシオさんは、麓の町で待機ね!」
「え?えぇっ!?まさか、早速実験するおつもりですか!!」
ルシオの慌てように、リアンは疑問符を浮かべていたが、ジャンニは理解したようで、苦笑いしていた。
「ね、姉さま、何だよ?どうしたの?」
「あはは~、こういうときのヒースヴェルト様って、本当にルシオ様そっくりなのよね。即実験したがると言うか…。とにかく、村に戻りましょ。神果もいくつか持って帰りましょう~♪神殿に植えたら、育つかしら~?」
ジャンニは果実をいくつか優しく採り、籠に仕舞うと、ヒースヴェルトたちの後に続いた。
「え、姉さまっ!もう良いのか?」
「えぇ。ヒースヴェルト様は、望む結果を得られたようですから~♪」
帰り道のヒースヴェルトの足取りは軽かった。
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