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研究熱、爆発!
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「うううううううう~!!」
神殿の横にある、機械導具を作成するためのラボには、ヒースヴェルトが連日籠って妙な唸り声を上げていた。
「…ヒー様…あぁっ、そんなに頭を掻き乱さないでっ!」
「リーナさぁん、ヒースヴェルトさまがご飯も…ッ!おやつですらも召し上がってくれてないんですぅ~!もう三日連続ですよぉ!」
ラボの外には、リーナとジャンニが嘆いていた。
どうやら、神果の構築式を砡に当てはめてみたものの、砡の硬さが仇となり、壁にぶち当たっているのだ。
少し離れた場所では、ルシオも神術の機械化に挑んでいるし、ラボはいつにも増して殺伐としていた。
そんな時。
「あ。ヒー様ここにいるって聞いたけど本当だったっスね!」
「うううう……ぅ?ぅえっ!?アシュト!!!帰ってきたの!?お帰りなさい!ですー!」
アシュトの声に、ヒースヴェルトは険しい顔を緩め、駆け寄った。
「はい、戻りましたッス。…うわー…スゲェことなってますね…。大丈夫ッスか?」
ラボを覗くと、ドン引きな顔でヒースヴェルトを気遣う。
「大丈夫…じゃないの。砡の欠片ってすごく、すごーく硬くてっ!神果みたいに、組み替えられないのー!」
「え!?疑似聖砡って、物理的に砕いて作るもんなんすか!?」
「にゅー…。分子レベルまで細かく出来たら、きっとうまくいくの…。そうしないと、神気を回路に、なんて無理~…。ううううにゃああ!!」
「分子レベルまで…それって、砡の効果は失われないけど、粉にするってことッスか?」
「そうだよ。でも、硬すぎるし、均等に粉にする技術なんて…」
「華護りの加工技術と似てるッスね!」
さらりと。
もー、アシュトは本当にさらりと言ってくれる。
「はな、まもり…?」
「はい。前にギュゼリアの町でその華護りを買った工房で、見ました。まるで光の粒みたいに粉々になった砡の欠片と、神泉の水が上手く融合されたものを金でコーティングするんスよ、綺麗だったなぁー。」
ちょん、とヒースヴェルトの髪を結っている華護りに触れる。
「………。」
ヒースヴェルトはぽかんと口を開けて、アシュトを、見上げて。
「きゃああぁ!本当に!?本当に!!?それなら、ぼくギュゼリアに行って教えて貰ってくるー……」
バァン、とラボの扉を勢い良く開けると、全力で転移装置まで、駆け出す始末。
「はーい、ヒー様お待ちくださ~い!」
「んきゃ!!?」
ひょい、とフォレンに首根っこを摘ままれる。
怪我も順調に回復し、包帯も取れた。今は、傷口を覆うガーゼだけ。
「ヒー様、お約束をお忘れですか?今は、ヒー様は神殿の外に出てはいけません。」
「あぁっ…。そ、そっか…。ぼく、お外には出ちゃ駄目…。」
しゅーん、となり、子猫のようにぶら下がるヒースヴェルトを見て、困ったように笑うフォレンだったが。
「アシュト、その職人を呼び寄せよう。技術を伝授させてもらえるかは別としても…話を聞くだけでも得られるものはあるだろう。」
「ウッス。じゃあ、ブランシュ工房に行ってくるッスね。」
「アシュト、ありがとう。」
ぷらーん、とフォレンの腕からぶら下がったまま礼を言う主に思わず吹き出して、了解、と小さく答えた。
アシュトがギュゼリアに出掛けたのを見送ったあと。
「さて、ヒー様?研究熱心なのは良いですが、最近の貴方は少し生活が疎かですね。…最後に食事されたのはいつですって?」
「ぇ…?えと、えと…みっ……一昨日の…よる…」
フォレンの顔が引き吊る。
「ひぇっ!だ、で、でも、ラボでちゃんとママの飴食べてたもん!それにルシオさんだってさぁ…」
「彼のことはいいんです!ヒー様!!いい加減なさい!!!」
「きゃああぁ!!!」
「それに!今、一瞬、三日前と言いかけて誤魔化しましたね!?」
「うううああぁは、はいぃ~ッ!!」
「ジャンニ!」
「へっ!?は、はい~!」
「すぐにヒー様の食事を用意しなさい。仮眠も必要だ。こんなに肌荒れしてるじゃないですか。リーナ、風呂の準備!」
「かっ、畏まりました~!!」
視察から帰ってきたフォレンは、どこか違う。なにか、こう……。
まるで、悪ガキを叱り飛ばす母親のような、そして諭す教師のような。
「……ヒー様」
ジャンニとリーナがあわてて去った後、ストンとヒースヴェルトを下ろして、フォレンは目線を合わせるように膝をついて。
「夢中になると周りが見えなくなってしまうのは、貴方の悪いところです。」
「ぅ……はぃ。」
「あなたが食事をしないだけで、あなたが粗暴に振る舞うだけで…リーナやジャンニは悲しみます。だから、皆を安心させる意味でも、しっかり食事をして、休んで…。ね?」
「でもでもっ!ぼく…神化したのに…ッ!死都市に行くだけのことが…こんなに難しいの!?
疑似聖砡が無ければ…何も解決しないじゃない!!」
言い訳、ではない。ヒースヴェルトの心の内は、焦りと自分に対する憤りで満ちていた。ポロポロと溢れる涙を優しく拭い、フォレンは柔らかく髪の毛を撫でる。
「ヒー様。今、ザック達がラント君とマリンちゃんの行方を探しにロレイジアに潜入しています。
それは、貴方が二人の子どもの魂を見つけたからです。…神化して、何も解決していない?阿呆ですか。世界の何処に居るかも分からない魂を見つけ、言霊を贈るなど…ディーテ様と貴方しかできませんよ。あの子供達が、言霊の鳥を受け取った時、どれだけ救われたとお思いですか。」
伏せて泣いていたヒースヴェルトは顔を上げ、思い出した。
神化の儀を執り行った、あの時。
すぐに虹の光を世界中に広げた。もちろん、ディーテ神の力を借りて。
そして、虹の粒子が二つの魂の行方を拾った。
今、辛いなら、救いになればと、言霊鳥に言葉を乗せた。
迎えに行くから、待っていて、と。
神殿の横にある、機械導具を作成するためのラボには、ヒースヴェルトが連日籠って妙な唸り声を上げていた。
「…ヒー様…あぁっ、そんなに頭を掻き乱さないでっ!」
「リーナさぁん、ヒースヴェルトさまがご飯も…ッ!おやつですらも召し上がってくれてないんですぅ~!もう三日連続ですよぉ!」
ラボの外には、リーナとジャンニが嘆いていた。
どうやら、神果の構築式を砡に当てはめてみたものの、砡の硬さが仇となり、壁にぶち当たっているのだ。
少し離れた場所では、ルシオも神術の機械化に挑んでいるし、ラボはいつにも増して殺伐としていた。
そんな時。
「あ。ヒー様ここにいるって聞いたけど本当だったっスね!」
「うううう……ぅ?ぅえっ!?アシュト!!!帰ってきたの!?お帰りなさい!ですー!」
アシュトの声に、ヒースヴェルトは険しい顔を緩め、駆け寄った。
「はい、戻りましたッス。…うわー…スゲェことなってますね…。大丈夫ッスか?」
ラボを覗くと、ドン引きな顔でヒースヴェルトを気遣う。
「大丈夫…じゃないの。砡の欠片ってすごく、すごーく硬くてっ!神果みたいに、組み替えられないのー!」
「え!?疑似聖砡って、物理的に砕いて作るもんなんすか!?」
「にゅー…。分子レベルまで細かく出来たら、きっとうまくいくの…。そうしないと、神気を回路に、なんて無理~…。ううううにゃああ!!」
「分子レベルまで…それって、砡の効果は失われないけど、粉にするってことッスか?」
「そうだよ。でも、硬すぎるし、均等に粉にする技術なんて…」
「華護りの加工技術と似てるッスね!」
さらりと。
もー、アシュトは本当にさらりと言ってくれる。
「はな、まもり…?」
「はい。前にギュゼリアの町でその華護りを買った工房で、見ました。まるで光の粒みたいに粉々になった砡の欠片と、神泉の水が上手く融合されたものを金でコーティングするんスよ、綺麗だったなぁー。」
ちょん、とヒースヴェルトの髪を結っている華護りに触れる。
「………。」
ヒースヴェルトはぽかんと口を開けて、アシュトを、見上げて。
「きゃああぁ!本当に!?本当に!!?それなら、ぼくギュゼリアに行って教えて貰ってくるー……」
バァン、とラボの扉を勢い良く開けると、全力で転移装置まで、駆け出す始末。
「はーい、ヒー様お待ちくださ~い!」
「んきゃ!!?」
ひょい、とフォレンに首根っこを摘ままれる。
怪我も順調に回復し、包帯も取れた。今は、傷口を覆うガーゼだけ。
「ヒー様、お約束をお忘れですか?今は、ヒー様は神殿の外に出てはいけません。」
「あぁっ…。そ、そっか…。ぼく、お外には出ちゃ駄目…。」
しゅーん、となり、子猫のようにぶら下がるヒースヴェルトを見て、困ったように笑うフォレンだったが。
「アシュト、その職人を呼び寄せよう。技術を伝授させてもらえるかは別としても…話を聞くだけでも得られるものはあるだろう。」
「ウッス。じゃあ、ブランシュ工房に行ってくるッスね。」
「アシュト、ありがとう。」
ぷらーん、とフォレンの腕からぶら下がったまま礼を言う主に思わず吹き出して、了解、と小さく答えた。
アシュトがギュゼリアに出掛けたのを見送ったあと。
「さて、ヒー様?研究熱心なのは良いですが、最近の貴方は少し生活が疎かですね。…最後に食事されたのはいつですって?」
「ぇ…?えと、えと…みっ……一昨日の…よる…」
フォレンの顔が引き吊る。
「ひぇっ!だ、で、でも、ラボでちゃんとママの飴食べてたもん!それにルシオさんだってさぁ…」
「彼のことはいいんです!ヒー様!!いい加減なさい!!!」
「きゃああぁ!!!」
「それに!今、一瞬、三日前と言いかけて誤魔化しましたね!?」
「うううああぁは、はいぃ~ッ!!」
「ジャンニ!」
「へっ!?は、はい~!」
「すぐにヒー様の食事を用意しなさい。仮眠も必要だ。こんなに肌荒れしてるじゃないですか。リーナ、風呂の準備!」
「かっ、畏まりました~!!」
視察から帰ってきたフォレンは、どこか違う。なにか、こう……。
まるで、悪ガキを叱り飛ばす母親のような、そして諭す教師のような。
「……ヒー様」
ジャンニとリーナがあわてて去った後、ストンとヒースヴェルトを下ろして、フォレンは目線を合わせるように膝をついて。
「夢中になると周りが見えなくなってしまうのは、貴方の悪いところです。」
「ぅ……はぃ。」
「あなたが食事をしないだけで、あなたが粗暴に振る舞うだけで…リーナやジャンニは悲しみます。だから、皆を安心させる意味でも、しっかり食事をして、休んで…。ね?」
「でもでもっ!ぼく…神化したのに…ッ!死都市に行くだけのことが…こんなに難しいの!?
疑似聖砡が無ければ…何も解決しないじゃない!!」
言い訳、ではない。ヒースヴェルトの心の内は、焦りと自分に対する憤りで満ちていた。ポロポロと溢れる涙を優しく拭い、フォレンは柔らかく髪の毛を撫でる。
「ヒー様。今、ザック達がラント君とマリンちゃんの行方を探しにロレイジアに潜入しています。
それは、貴方が二人の子どもの魂を見つけたからです。…神化して、何も解決していない?阿呆ですか。世界の何処に居るかも分からない魂を見つけ、言霊を贈るなど…ディーテ様と貴方しかできませんよ。あの子供達が、言霊の鳥を受け取った時、どれだけ救われたとお思いですか。」
伏せて泣いていたヒースヴェルトは顔を上げ、思い出した。
神化の儀を執り行った、あの時。
すぐに虹の光を世界中に広げた。もちろん、ディーテ神の力を借りて。
そして、虹の粒子が二つの魂の行方を拾った。
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迎えに行くから、待っていて、と。
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