虹色の子~神さま候補、世直しします!~

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風の報告

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「…ってことがあったみたいッス。」
アシュトの報告に、フォレンはニッコリと笑みを浮かべた。
「それはまた。」
セレイナからの手紙を受け取った背景を、実はアシュトと同じ、アルクス所属の風の民の仲間が偵察していた。

本山から大神殿に帰り、再度調査に向かう時、遅れて帰ってきたフォレンに提案されたのだ。
アルクスにいる風の民らで諜報部を組織しろ、と。
人数は少ないが、風の民は世界中に吹き渡る風を読み、人々の少しの体温変化や汗などの湿度変化や、獣の息づかいまで様々なものを読み取る能力に長けている。
アシュトはその中でも群を抜いて優れているのだとか。

手始めに、大魔境の神殿配属の砡術士の風の民を伴い、調査に入って貰っていた。
その彼からの《流星》での報告を受け、アシュトはヒースヴェルトらに伝えていたところ。
「お母さんのところには、敵と味方が両方いるの?…へんなの…。」
「敵、というよりは…元々セレイナさんを、政治の道具として利用しようとしていたのでしょう。だから、伯爵はセレイナさんとラーシュ殿が勝手に結婚したことを歓迎していなかった。何を思い描いていたかは知りませんが…政略的な婚姻という手札を失ったわけですから。ラーシュ殿と別れることができ、数年が経ち彼女も精神的に安定してきた矢先に、息子との再会…。思いどおりに行かず、苛立っているようですね。」
この威圧的な文面からも、見て取れる。伯爵は思いの外短絡的なのかもしれない。
「う~?フォレン、難しいっ!」
「あぁ、申し訳ございません。…アシュト、引き続き風による調査を続けて欲しい。国家間会議までに…国王の行方も掴みたいところだが。」
「あ。それについても進展あったッスよ。」
パメラが、亡命前に一度会ったという男が、その国王というなら手がかりは亡命ルートにある。アシュトは以前の潜入の際に一度探っている。国王を匿っているアジトを突き止めたのだ。
「アジトを?凄い!」
ヒースヴェルトは喜んだが、アシュトは浮かない顔。
「んー、それなんスけど、一つ問題があって、ですね。」
「…どうした?」
「暗殺の際に使われた毒に侵されたのか、この十年間…目覚めないそうです。まるで眠っているようだと。」
「眠ってるの…?十年も?」
「あり得ない…。人間だよな?ダスティロス国王も。」
ディランも驚くのは当然だ。いくら鍛えていたとはいえ、十年も栄養を取り入れず生き長らえるなど、まるで、目の前にいる主のようではないか。
「…アシュト、会ってきたの?」
「いえ。アジトに出入りしているレジスタンスの一員と少し会話しただけッス。」
「そう…。フォレン、少しだけ、神眼を使うね。浄化量の調整をお願いね。」
「御意。」
ヒースヴェルトが神力を行使する場合、フォレンがその日の全体的な調整を図ることになった。ヒースヴェルトの身体を考えて、浄化最優先で、神力のバランスをとるためである。
ヒースヴェルトはアシュトの手に触れ、魂の記憶を辿り、その先のレジスタンスの人間へと意識を飛ばした。
(……ぁ。アシュトの匂い…。この人だ。地下…に基地…。奥のお部屋…。見つけた、王様!)
国王の様子を、アシュトが接触したレジスタンスの人間を介して見つけた。
「…ぷはっ。見つけた!!確かに寝てる…けど、何だかおかしい。」
「おかしい、ですか…?」
「王様、ママと出会った…?眷属になって…いや、無意識だから、眷属に強制的にさせられてる。ママが、繋ぎ止めてる。」
「ディーテ神の加護のお陰で、生きていると?」
「でも、ママはそんなこと、一言も…」
否。創造神は見守る存在。
その大地に住まう人間の愚かさも勇敢さも、唯見ているだけ。
あれこれと軌道修正を図ることは無いのだ。
だから、この国王も毒におかされ、死んでしまっても、それが正しい未来。
ただ、それをディーテ神自ら破る理由があるとすれば、ひとつだけ。
それに気付き、ヒースヴェルトは呟いた。
「…ママは…優しいね。ぼくの為だ。」
少し灰色になってしまった瞳に、涙の膜が張る。
「え?」
「管理者の…世直しの手助けをしてくれてた…。それも、十年も前から…。ぼくを拾ったときから、世界を保つための、切り札を守ってくれていた。」
ヒースヴェルトが、今後人間と共に生きていくことになったとしても、その世の中が少しでも穏やかなものであるように。
神として星の管理を引き継ぐなら、できるだけ解決の足掛かりになる手段をヒースヴェルトの手元に。
どちらにしてもディーテ神が、ただ我が子を思い、失っては困るであろう魂を繋ぎ止めてくれていたのだ。
「はは…っ。何て方だ。」
だが、あまりに干渉し過ぎると、他の星々との均衡を崩しかねないので、最低限の手助けだったのだろう。

「それなら、後はこの星の管理者のぼくが、救わないとね…!」
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