97 / 119
聖戦
しおりを挟む
「ええっと、皆さんに、大事なことを、お伝えします!」
その日の夕刻。
緊張した面持ちで、詰め所に集まった皆に伝えたのは、ディーテ神からの言霊。
『世界の寿命を縮める元凶を断つ、聖戦の準備をしておきなさい。…お前の翼はまだ二つ。このまま挑んでも到底、澱みきった人間どもの軍には敵わぬ。
だが、喜ばしいことにお前を助けたいと言葉を寄越した神がいる。…近くその者の翼が手を貸しに来るから、ヒースヴェルトの翼と候補たちは、準備として学びなさい。』
「…他の世界の、翼の方が…?」
リーナは突拍子のない話しに動揺するが、ディランとエルシオンは静かに頷いた。
「聖戦…とは、一体どのような戦なのですか。」
フォレンの疑問に、ヒースヴェルトは小さくうなずいて、答えた。
「人間の戦争に、翼が潜入するの。」
「…!!」
それは、つまり。
「俺と、エルシオンが、ダスティロスの内乱に参加するってことか…?」
「そのとおり。だけど、ママは…今の第一王子の勢いは強くて、二人が加勢しても、王様が率いる予定の軍は…甚大な被害を受けると予測したの。」
「そりゃあ、確かに俺らが参加したところで…。俺やエルシオンの居る場所は負けはねぇだろうけど…。」
ディランの実力は世界最強。一部隊を殲滅させる程度の戦力を持つ彼でも、同時に複数箇所で勃発する戦争を一人で終わらせることは出来ない。
「他の軍勢は厳しいだろうな。レジスタンスってのは大抵、志こそ同じだが、結局は烏合の衆だ。第一王子側に付かなかった国の騎士も、ごく少数。傭兵崩ればかりの軍など、国の騎士団に立ち向かうだけで、やられてしまうだろうな。」
ディランはため息混じりにぼやく。
「…だからこそ、異世界の翼の力を借りるのですね?」
フォレンの言葉に、ヒースヴェルトは頷いて続けた。
「ぼくに手を貸してくれる神様は、フレイド様。フレイド様はね、何度も素晴らしい世界を管理してきた、ぼくの理想の大先輩なの。聖戦を幾度も経験している翼たちから、潜入した先の立ち回りを学んで欲しいって。」
ヒースヴェルトの表情は、いつになく穏やかで冷静だった。人が人を殺め、傷つける戦争の話をしているというのに。
そしてフォレンは察する。我々の知る戦争とは違うのだ、と。
「…成る程…通常の戦争とは話が違う、ということですね…?」
「フォレン、流石。聖戦は、戦と名がついているけれど、本来は《神罰》のひとつ。」
「神罰…!?」
驚いたが、ヒースヴェルトの表情に納得がいった。これは神としての仕事。仕事としての《魂の管理》という線引きだからこそ、厳しい選択も厭わない。
「管理者の願いに程遠く、星の寿命を縮めるような、害悪を造り出した生命に、人々の戦に紛れ込んだ翼が、神力による《印》をつける。」
魔獣を故意的に出現させたとはいえ、たった一人の魂をディーテ神の元に還した、ギネルの断罪とは違う。
「印…。」
「その印を付けられた者は…神が、その星に還る魂の澱みを、拒絶できるようになる。」
「えっ!?そ、それって……。」
「人々の生み出す深い澱みが…星の寿命を短くしてしまう場合、管理者の判断で特定の生命を拒絶する。」
本来、人々の澱みは、神が救わない限りその地に還り、長い年月を経て穢黒石となり現れる。
しかし、印が現れた者は、大地に還ることなくその魂を蝕み、近い将来自らの澱みに喰われて死に至る。
「成る程。翼は人に紛れ込み、害悪の元凶となる人間らに…神力による傷を負わせることが必要なのですね。」
フォレンの推察は当たっていた。
ヒースヴェルトから授かるであろう《印》の力を翼が行使する。その扱いを、異世界の翼から学ぶということだろう。
「でも、それなら秘密裏に《印》だけつければ、戦争なんて利用しなくてもいいんじゃ…?」
平和主義のリーナは、不安そうに疑問をぶつけた。
「それだと、ダスティロスがもたないの。…新たな加護の風を吹き込まないと、大地自体が、死んでしまうから…。」
「新たな、加護…?」
「ママが創造した時に与えられた、豊穣と安寧の加護は、第一王子に食い潰されて…消えかかってるの。…ママの加護は、知ってのとおりその大地には一度だけ。だから、今度はぼくの加護を吹き込む。それには、ぼくの庇護下の魂が、沢山必要。」
密やかに元凶らに印を付けるのではなく、国の歴史を利用することを良しとするのは理由があって、神が味方する者らが、神の加護により戦いに勝つことが何よりも大事。
窮地から救われたことに信仰を確立させていくことで、大勢の魂をヒースヴェルトの庇護下に置ける利点があるのだ。
「印の付いた人間はね、それまでに魂が溜めた澱みが、痛みや苦しみとしてその身に跳ね返ってくるの。…ぼくがディランの澱みを受け取った時と、痛みの度合いは似てる…かな。
多分、戦うどころの話じゃなくなるよ。戦意喪失したところを、レジスタンスが畳み掛ければ、聖戦は終わり。」
ディランは苦虫を潰したような顔で、俯く。あの時のヒースヴェルトを思うと、今でも辛い。
「王様を説得する必要はあるよ。本当は、殺したいくらい憎んでいるかもしれない。…それを、ぼくの都合で数十人の《咎人》を作り上げることで、止めないとならないのだから。」
必要以上の殺害は無益。
ヒースヴェルトの願いを伝え、納得してもらわねば聖戦は行えないのだ。
「国王を目覚めさせ、話し合う必要がありますね…。その説得も、異世界の翼の方が手本を?」
「ううん。フレイド様の翼の皆さんの今回の役目は、ディランとエルシオンに印の付け方を教えてくれるのと、足りない戦力を補ってもらうことの、二つ…。
国王軍の建て直しと、印をつける対象のリストアップは、アルクスでやって欲しいの。フォレン…できる? 」
「首領に確認しましょう。きっと大丈夫ですよ。」
既にアシュトが国王の居るレジスタンスのアジトを調べてきている。
「まずは、王様に目覚めてもらおう。全てはそれからなの。」
その日の夕刻。
緊張した面持ちで、詰め所に集まった皆に伝えたのは、ディーテ神からの言霊。
『世界の寿命を縮める元凶を断つ、聖戦の準備をしておきなさい。…お前の翼はまだ二つ。このまま挑んでも到底、澱みきった人間どもの軍には敵わぬ。
だが、喜ばしいことにお前を助けたいと言葉を寄越した神がいる。…近くその者の翼が手を貸しに来るから、ヒースヴェルトの翼と候補たちは、準備として学びなさい。』
「…他の世界の、翼の方が…?」
リーナは突拍子のない話しに動揺するが、ディランとエルシオンは静かに頷いた。
「聖戦…とは、一体どのような戦なのですか。」
フォレンの疑問に、ヒースヴェルトは小さくうなずいて、答えた。
「人間の戦争に、翼が潜入するの。」
「…!!」
それは、つまり。
「俺と、エルシオンが、ダスティロスの内乱に参加するってことか…?」
「そのとおり。だけど、ママは…今の第一王子の勢いは強くて、二人が加勢しても、王様が率いる予定の軍は…甚大な被害を受けると予測したの。」
「そりゃあ、確かに俺らが参加したところで…。俺やエルシオンの居る場所は負けはねぇだろうけど…。」
ディランの実力は世界最強。一部隊を殲滅させる程度の戦力を持つ彼でも、同時に複数箇所で勃発する戦争を一人で終わらせることは出来ない。
「他の軍勢は厳しいだろうな。レジスタンスってのは大抵、志こそ同じだが、結局は烏合の衆だ。第一王子側に付かなかった国の騎士も、ごく少数。傭兵崩ればかりの軍など、国の騎士団に立ち向かうだけで、やられてしまうだろうな。」
ディランはため息混じりにぼやく。
「…だからこそ、異世界の翼の力を借りるのですね?」
フォレンの言葉に、ヒースヴェルトは頷いて続けた。
「ぼくに手を貸してくれる神様は、フレイド様。フレイド様はね、何度も素晴らしい世界を管理してきた、ぼくの理想の大先輩なの。聖戦を幾度も経験している翼たちから、潜入した先の立ち回りを学んで欲しいって。」
ヒースヴェルトの表情は、いつになく穏やかで冷静だった。人が人を殺め、傷つける戦争の話をしているというのに。
そしてフォレンは察する。我々の知る戦争とは違うのだ、と。
「…成る程…通常の戦争とは話が違う、ということですね…?」
「フォレン、流石。聖戦は、戦と名がついているけれど、本来は《神罰》のひとつ。」
「神罰…!?」
驚いたが、ヒースヴェルトの表情に納得がいった。これは神としての仕事。仕事としての《魂の管理》という線引きだからこそ、厳しい選択も厭わない。
「管理者の願いに程遠く、星の寿命を縮めるような、害悪を造り出した生命に、人々の戦に紛れ込んだ翼が、神力による《印》をつける。」
魔獣を故意的に出現させたとはいえ、たった一人の魂をディーテ神の元に還した、ギネルの断罪とは違う。
「印…。」
「その印を付けられた者は…神が、その星に還る魂の澱みを、拒絶できるようになる。」
「えっ!?そ、それって……。」
「人々の生み出す深い澱みが…星の寿命を短くしてしまう場合、管理者の判断で特定の生命を拒絶する。」
本来、人々の澱みは、神が救わない限りその地に還り、長い年月を経て穢黒石となり現れる。
しかし、印が現れた者は、大地に還ることなくその魂を蝕み、近い将来自らの澱みに喰われて死に至る。
「成る程。翼は人に紛れ込み、害悪の元凶となる人間らに…神力による傷を負わせることが必要なのですね。」
フォレンの推察は当たっていた。
ヒースヴェルトから授かるであろう《印》の力を翼が行使する。その扱いを、異世界の翼から学ぶということだろう。
「でも、それなら秘密裏に《印》だけつければ、戦争なんて利用しなくてもいいんじゃ…?」
平和主義のリーナは、不安そうに疑問をぶつけた。
「それだと、ダスティロスがもたないの。…新たな加護の風を吹き込まないと、大地自体が、死んでしまうから…。」
「新たな、加護…?」
「ママが創造した時に与えられた、豊穣と安寧の加護は、第一王子に食い潰されて…消えかかってるの。…ママの加護は、知ってのとおりその大地には一度だけ。だから、今度はぼくの加護を吹き込む。それには、ぼくの庇護下の魂が、沢山必要。」
密やかに元凶らに印を付けるのではなく、国の歴史を利用することを良しとするのは理由があって、神が味方する者らが、神の加護により戦いに勝つことが何よりも大事。
窮地から救われたことに信仰を確立させていくことで、大勢の魂をヒースヴェルトの庇護下に置ける利点があるのだ。
「印の付いた人間はね、それまでに魂が溜めた澱みが、痛みや苦しみとしてその身に跳ね返ってくるの。…ぼくがディランの澱みを受け取った時と、痛みの度合いは似てる…かな。
多分、戦うどころの話じゃなくなるよ。戦意喪失したところを、レジスタンスが畳み掛ければ、聖戦は終わり。」
ディランは苦虫を潰したような顔で、俯く。あの時のヒースヴェルトを思うと、今でも辛い。
「王様を説得する必要はあるよ。本当は、殺したいくらい憎んでいるかもしれない。…それを、ぼくの都合で数十人の《咎人》を作り上げることで、止めないとならないのだから。」
必要以上の殺害は無益。
ヒースヴェルトの願いを伝え、納得してもらわねば聖戦は行えないのだ。
「国王を目覚めさせ、話し合う必要がありますね…。その説得も、異世界の翼の方が手本を?」
「ううん。フレイド様の翼の皆さんの今回の役目は、ディランとエルシオンに印の付け方を教えてくれるのと、足りない戦力を補ってもらうことの、二つ…。
国王軍の建て直しと、印をつける対象のリストアップは、アルクスでやって欲しいの。フォレン…できる? 」
「首領に確認しましょう。きっと大丈夫ですよ。」
既にアシュトが国王の居るレジスタンスのアジトを調べてきている。
「まずは、王様に目覚めてもらおう。全てはそれからなの。」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
二度目の勇者は救わない
銀猫
ファンタジー
異世界に呼び出された勇者星谷瞬は死闘の果てに世界を救い、召喚した王国に裏切られ殺された。
しかし、殺されたはずの殺されたはずの星谷瞬は、何故か元の世界の自室で目が覚める。
それから一年。人を信じられなくなり、クラスから浮いていた瞬はクラスメイトごと異世界に飛ばされる。飛ばされた先は、かつて瞬が救った200年後の世界だった。
復讐相手もいない世界で思わぬ二度目を得た瞬は、この世界で何を見て何を成すのか?
昔なろうで投稿していたものになります。
田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした
月神世一
ファンタジー
「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」
ブラック企業で過労死した日本人、カイト。
彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。
女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。
孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった!
しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。
ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!?
ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!?
世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる!
「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。
これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる