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作戦、準備中…!
しおりを挟む国王を目覚めさせるために必要なこと。
それは神気により、魂を揺り起こすことだ。
単純に神力を込めるだけならば、言霊鳥に虹の光を宿せば良い。
だが彼の肉体は今、猛毒に侵されている状態。
かつてマリンの病原体を神力で包み込み取り出したように、毒を体から除去しなければならないのだ。
そのためには、ヒースヴェルトが直接レジスタンスのアジトへ行かなければならなかった。
だが、それにはディランとエルシオンだけでは護衛として不十分だろう。
治安の良いルートニアス領や、エンブルグ皇国の城下町とは話が違う。
人間の肉体をもつヒースヴェルトだからこそ、その身体を守らなければならない。
そして、ヒースヴェルトが実際に出向けるか、情報を得るためアルクスの《神翼》が主体となり、秘密裏に調査を行った。
国内の治安状態や、レジスタンス側の戦力。
ダスティロス城内の政治体制から、すべての王族、貴族の把握まで多岐にわたった。
その調査も、1ヶ月もあれば大体出揃う。
その結果をフォレンやエルシオン、首領まで大神殿に出向いて連日話し合っていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
そして、作戦を実行することに。
「兄上、今回の会議は兄上だけが行く?レイモンドは残るのか?」
ディランが通信機を作動させた。
エンブルグ皇帝、アドルファウスにも今回の作戦に一枚噛んでもらっている。
アドルファウスに直接手渡しているので、皇帝の執務室から受けてくれる。
《会議の場所は諸島国だったな。…レイモンドは私の留守を任せることにしているからね。…そして、ダスティロスの代表ではない一派から、何故かアルクスに出席要請があったんだってな?》
「あぁ。国王不在を良いことに、貴族院のゴリ推しで第一王子に権限を一部任せているようだな。こちらは首領とエルシオンが行く。何の要請かは…見当は付くけどな。」
おそらく、聖神子の住むこの場所の《所有権》を主張してくる。
それについては、創造神から手札を切ってもらっているため問題視していないが、胸糞悪い要請には変わりない。
元々ここ大魔境は、との国にも属さない独立した場所だったはずだ。
それを、ディーテ神と共にあるヒースヴェルトの出自がダスティロスだったからと、所有権を主張するのは筋が通らない。
どの国にも属さないアルクスだからこそ、ヒースヴェルトはアルクスをその手元に置いた。
アルクスも、ディーテ神に寵児と認められたヒースヴェルトが、自ら選んだ組織で、それに答えたアルクスが(とは言うものの、殆どエルシオンの私財。)存分にその力を発揮し、神の思いを第一に考えて大神殿を建て直したのだから。
《会議に聖神子様を、お連れするのか…?》
兄の声が、少し大きくなった。まるで、誰かに聞かせているかのように。
「………いや。あの方はまだお若い。色々な意味であまりに危険すぎるだろう。それに、ディーテ神もお戻りにならない今、主を簡単に大神殿の外に出すわけにいかない。当分の間は神殿とこの屋敷で大人しくしていただく予定だ。ご本人も納得されておられる。」
ディランとしては不本意なセリフだった。
自らの主を、幼いから危険だ、などと嘯くなど。
《なら、お前は護衛としてそちらに残るんだな。》
「あぁ。そういうわけだから…悪いな、兄上。会いたかったんだろ?」
感情のまま、兄弟と会話するのはディランにとっては久しぶりだった。
《そうか…。久しぶりに、愛らしいあの方に拝謁できるかと期待したのだがな。まぁ、それは日を改めよう。お前の主に伝えてくれ。我が国の敬愛は常に神の元にあると。》
「…感謝します。」
ぴっ。
まるでお互いに作り込んだような会話。
ディランは通信機をオフにして、ため息を吐いた。
『ふぅ…。今の感じで良かったか?』
『…上手く引っ掛かったようだね。これで尻尾が掴めるといいねぇ。』
フォレンも静かにお茶を飲みながら、機械導具の砡の点滅を見る。
傍受のアラームが鳴っているのを確認して、ため息を吐く。
『無事に傍受したみたいね。あとは逆探知させていたエルシオン君が、機械導具を改竄させてる本人を洗い出す。そいつも《印》の対象者ね。
そして…ダスティロスの奴らは、セレイナって子から聞いた情報を得て、ヒースヴェルト様の身柄を保護したくてたまらないはずだから…今のデマを信じてくれれば、国家間会議で主要人物が外出する隙を狙うわね。有能なガーディアンも、そっちに付いていくと予想するはずよ。
神殿にも穴を開けておきなさい。ディラン君の仕事は、ここへ残って、侵入してくる敵に《印》をつけて…お帰りいただくことね。』
そう発言するのは、会話を同室で聞いていた、一人の男。
やけに派手な鳥のような長髪で、口調もゴキゲンな彼だが、キャラが濃すぎるのであえて無視している。
『ロシュさん、有り難う!』
ぴょこ、とディランの背中から姿を見せるヒースヴェルト。
『うふっ。良いんですよぉ~、ヒースヴェルトさまっ!あ~っ、いつ見ても本当に可愛らしい!!』
身長が高く、2メートルはあるこの男。フレイドの世界から派遣された翼の一人、ロシュリハイン=フレイラ。
フレイドから派遣された、《大天使》。
その力は普通の翼よりも神力を蓄える量も多くその質も格段に良い。
羽の数も、自分の主への貢献度により、段々増えていくという。
基本的に四枚羽根以上の天使は大天使と呼ばれ、主神の名を含んだ姓を与えられるのだ。
フレイドの所有する大天使の姓は、フレイラ。
フレイドが、まさか大天使を派遣してくれるとは思わず、ヒースヴェルトも緊張を隠せなかった。
だが、彼らが神殿に降り立ち、ヒースヴェルトの姿を一目見たとき、彼らは両ひざを付き、翼を地面に付くほど下げた。
頭を垂れ、全員最敬礼の形をとったのだ。
ディーテ神の寵愛を一身に受けたことが一目で分かる程の溢れる神力。
ディーテ神の金色に、己の神力である虹色を溶け込ませた、美しい髪色は、ディーテ神の愛の証。
皆、一瞬で心奪われた。
外見は勿論のこと、ヒースヴェルトの魂に。
そして、フレイド様が気に入る筈だ、と納得し、すぐにディーテ神に交渉したそうだ。
聖戦だけでは勿体無いから、もっと手伝ってもいいですか?と。
勿論、ディーテ神はそれを喜び、『それなら、自分が戻るまでヒースヴェルトを守り、世界の寿命を延ばす方法を試して欲しい』と伝えた。
そして、今に至るのだ。
先ほどの通信は、わざと、穴を準備したもの。欠陥のある通信機同士で会話させたのだ。
そして、エンブルグ皇国に潜んでいる北の国の諜報員がいつでも細工しやすいように、通信機は執務室に固定していた。
今頃、情報を傍受させたことに、皇帝であるアドルファウスも内心ヒヤヒヤしていたことだろう。
ロシュリハインは上機嫌でヒースヴェルトを抱き締めたり、頭を撫でたりしながらウインクする。
フレイドの派遣した翼は全員で十名。そして、そのリーダーがロシュリハインだった。そして、あの時フレイドと共に居た天使、トリアも来ている。
トリアは、実質ロシュリハインの部下にあたるそうだ。
『そしたら、ぼく、王様に会いに行ける?』
国王は未だ目覚めない。
これから行うことは、明確。
国家間会議の場に、彼を送り届け、神託を得た国王側に加護を与える。
それを皮切りに、国王の反撃が始まる。
聖戦の開始だ。
『バッチリ、護衛するわよ~★』
こうして、新たな戦力を得たヒースヴェルトは、ダスティロス王国のレジスタンスのアジトへ、向かうことになった。
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