空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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一章 飛空島

4 神官医ヴォルカー=ノクティス

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気がつくと、僕は保健室のベッドで寝ていた。
保健室だろ?ここ。
だって真っ白だし…消毒液の匂いもするし。
シャルルの話を聞いてから、かなりショックを受けたんだろうな。記憶があやふやだ。
「………。」
ごそ、と身動ぎするとその音でカーテンが開いた。
「ティルエリー様、目覚められましたか?」
そこにいたのは、白衣を着た男の人。
黒い長髪に、胸元には金色の…あぁ。神職を示す神鳥のエンブレム。この人が神官医のヴォルカー様だ。
「え、っと…。」
「この学園寮の保健医をしています。神官のヴォルカー=ノクティスです。…ティルエリー=クライン様?」
膝をついて、ベッドに横になってる僕に目線を合わせてくれる。
きっと優しい人なんだろう。
神官ってことは、神聖力で治療するんだよな。
大怪我や大病には向かないけど、打撲とか風邪引いた程度によく活用する、魔力とは異なる力。
学園の保健室なら、有用なのかも。
「ヴォルカー神官医様。」
「ふふっ。神職といえど、単なる学園の保健医ですから。先生で構いませんよ。」
あ。やっぱり優しい笑顔。
「あの、ギーヴと、…マルローズさんは…?」
「君を連れてきた一年生ですか?それなら、君が目覚めたときのために、と食堂から飲み物を貰ってくると言って出られましたよ。」
あいつらに気を使わせちゃったかな。
「そ、…ですか。」
でも、それなら、彼らが戻ってくるまで…もう少し休ませてもらおうかな。
ぽす、と枕に頭を埋める。
まだ頭の中はぐちゃぐちゃだ。
でも、はっきりしていることは、僕は、この手を失うわけにはいかないってこと。
シャルルの言ってることが全て真実だとは到底思えないけど、それでも僕がこの腕を、魔道具を作る術を失うと予言…じみたことを言われちゃったら…。
「……失いたくない……。」
つい、声が出てしまった。ヴォルカー様がいたのに!
「…お話は、マルローズ男爵令嬢とビルチェ伯爵令息から聞きました。…俄に信じがたいことですが…。もしそれが真実なら、放っておくわけにはいきません。私には貴方を守る義務がある。」
「………ぎ、む。」
あぁ。ヴォルカー様はエンダタールの貴族なのか。
だから、自国のクライン血族である僕を守る義務があると言ってるんだ。
クラインである限り、僕みたいな跡継ぎは、こうして貴族や王族から守られる。
それに甘えて増長したのが、レガーノだ。
守られて当然、血が大切なのだから多少の我儘は叶えられて当然。
そんなアイツを見てきたから、余計に僕はそうはなりたくなったんだ。
「………入学前ですが、貴方は大切なうちの生徒ですからね。怪我なんてさせられません。」
ぽんぽん、と頭を撫でられた。
「大切な…せ、いと?」
「私はね、貴方がクラインであっても、そうでなくとも、この学園で勤める大人として生徒を危険から守る義務があると思っています。特別扱いをしてほしい彼…レガーノ様には、反感を買われてしまうかもしれませんが…私は、せめてこの学園て過ごす間は、誰もが平等であるべきと、常に思っているのですよ。」
ペロ、と舌を出して、そんな事を言う。
「ぁ………。僕、そんな人がいるなんて、思ってもみなかった…。クラインであることに誇りを持っているけど、僕はアイツのようになりたくないし、思われたくないって、思ってて。」
あれ。
僕は何を話してるんだ?
初対面の、先生に…。
でも、この人の側はとても、安心する。
大人の余裕?
…僕の気持ちを汲んでくれてるからかな。
お医者さんだからかな…。

わからないけどさ、気づいたら涙が出ていたんだ。

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