空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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一章 飛空島

5 襲撃

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「ティルエリー様!!目が覚めたんですね!気分はいかがですか…?」
元気な声。シャルルだな。
二人が戻ってきた。
やばっ、涙が……っ。情けない姿を見せるわけにいかない…!
ゴシゴシ、と目をこすると、ヴォルカー様が僕の手をそっと握って首を振った。
「いけません、そんなに擦ったら赤くなってしまいますよ。」
…ぁ、ハンカチ……。
やっぱ、大人の余裕……。
「ティルエリー…様。これ、飲め、ますか?」
え?
あれ?…ぎこちない敬語…。
ギーヴが、なんかおかしい。
「ギーヴ?なんで、いきなりそんなに余所余所しいのさ。」
「いや、その。おま…貴方が、エンダタールのクラインだって、マルローズから聞いて…。」
敬語、慣れてないんだね。伯爵令息なのに…。
「ははっ。気負わないで接してほしい、ってお前が言ってたじゃないか。僕も、気負わないでほしい。これまでと変わらず接してくれよ。それに、クラインだけれど家の方針で、昔と変わらず平民とともに生活してきたんだ。…だから、貧乏貴族だってのは本当なんだぜ。」
ちょっとおどけて見せる。
「そ、そっか?…サンキュ。ほら、飲めよ。」
「わぁっ!ベリー炭酸!」
甘い炭酸に、氷代わりに凍らせたフルーツを沈めてある、下町でも人気な飲み物。
「マルローズが、ティルエリーはこの飲み物です!って迷わず買ってたぞ。…お前さ、本当に彼女と初対面なのか?」
「初対面だよ。…マルローズさん、ありがとう。いただくね。」
「ひゃっ!ひゃい!!ティル様が笑顔でお礼の言葉をッー!尊死………っ。」
また分かんないこと言ってる…。
「さて、皆さんが揃ったところで…作戦会議といきましょうか?マルローズさん、詳しい話をお聞かせ願えますか。」
僕の寝てるベッドを中心に、椅子を人数分配置してくれた。

「おおおおっ、ヴォルカー様っ。安定の色気……ッ。」

シャルル、お前は何なんだ、一体……。


◇◆


でも、ギーヴがヴォルカー様を巻き込もうって言ってくれて本当に良かった。
僕たちだけでは、マルスに僕がエンダタールのクライン血族だと言って聞かせたところで、もう信じないだろうって。
いや、むしろ信仰対象であるレガーノの邪魔をする異分子として、更に殺意を抱かせるかも…。って、シャルルも、ヴォルカー様も言ってた。
なにそれ、怖い。
「レガーノ様の周りの貴族らは、フロェンの者が多いのですが…かなり態度が悪い…というか、レガーノ様の権威を傘に、平民らに対して横暴であることが多いのです。」
学園は、相当フロェン国のクライン勢力が強いみたいだな。
こういうの、本当に苦手…。だた、魔道具を作っていたいだけなのに。
「…まぁ、俺もティルエリーを平民だと…思っていたくらいだし…すまん。」
ギーヴにも悪いことしたなぁ。
「ううん。正式に名乗らなかった僕が悪い。シャルル、ギーヴ…ヴォルカー先生。ごめんなさい。」
ベリー炭酸を飲み干して、ベッドで膝を抱える。
「何故謝るんだ?お前は何も悪くないじゃないか。それに、これから本当に起こるかも分かんねえんだし!…一応、今夜は保健室に泊まっとけ。…いいですよね?ヴォルカー先生。」
「ええ。構いませんよ。ティルエリー様のお加減が良くないのは本当ですし…。寮生の健康管理を一任されている私としても、こちらに居てもらった方が助かります。」
にこり、と微笑みかけられると、僕の心臓が飛び跳ねた。
「………ッ。」
「さて、予定通りマルス君たちがティルエリー様の部屋を狙うなら、それに併せて呼んでおきたい方々がいます。3人はこのまま保健室に居てください。…すぐ、戻りますから。」
そう言うと、ヴォルカー様は保健室を出ていってしまった。出ていくときに、ふわりと、部屋が心地よい空気に満たされる感じがした。
「わぁ…。流石ヴォルカー様。この部屋全体に神聖力で結界を張ってくださってる。」
「…神聖力の、結界?」
嘘っ、神聖力って、治癒や治療に特化した特殊能力じゃないの…?
ギーヴも同じことを考えていたようで、シャルルに訪ねてる。
「あっ、ヴォルカー様って、元々神殿騎士だったのよ。これは学園にも届け出ていた経歴だから、知ってる人は知っているわ。」
えええぇっ!?
神官医のヴォルカー様が、神殿騎士出身!?
「だから、神聖力を使って魔法みたいなことや、浄化結界なんかもできてしまう、チートな大人の色気キャラ…。まぁ、私の好みじゃないからスチルはコンプしてないんどけど…ティル様のエピに絡むルートがあるから、常に同時進行してたのよね♪」
シャルルの口からつらつらと出てくる情報に、僕はもうパンクしそう。
また分かんないこと言ってるけど、もう慣れてきちゃった。

でも、大人の色気ってのは、分かるなぁ。

ヴォルカー様に微笑まれると、何か、胸のあたりがギュッてなるんだもん。

大人でカッコいいし、僕の思いと同じことを言っていたのも…嬉しかったな。

そして、しばらく3人で部屋に潜んでた。
ここが襲われませんように、って願いながら。



「火事だぁあーーー!!」
「一年の寮が爆破された!!!!」

地響きと共に、寮が大騒ぎになった。

本当に…?

本当に、マルスが僕を…?

シャルルの予言が当たったんだ。
そう思った瞬間、僕の両手は温度を失って震えが止まらなくなった。
「ティルエリー、大丈夫だ!お前はここにいるだろ!奴らは失敗したんだ!」
ギーヴ、ありがとう。って、言いたいんだけど…声が出なくて。
「ぁ…ぅ……。」
も、大丈夫…かな。

もう、地響きは、しない。

ってことは、部屋の襲撃は、終わったよね?
「………ッ…は…ぁ…っ。」
ため息さえ、震えてる。

すると、シャルルがぎゅ、と手を握ってくれて。
「ティル様、念の為守護のブローチは持っていてください!あいつらが捕まるまで、油断しちゃ駄目です!」
ベッド脇に置いていたブローチを持たせてくれたのか。
「ありがと、マルローズさん。」

物凄く、この静寂が長く感じた。

「………静かになってだいぶ経つよな。…どうなったんだ…?」

ここは、ヴォルカー様の結界のお陰か、別世界みたいに静かで外の様子が分からないんだ。
そしたら、3人の一年が保健室にやってきた。
「…すみません…、先生ぇ、いますか…っ。今の、寮の魔法攻撃で…怪我した人がいて…!!」
涙声の男子生徒の声に、ひゅ、と喉の奥が鳴った。
「せ、先生は今いません!…で、でも…。」
シャルルが3人に近寄る。
僕も、震えを堪えてベッドを降りる。けど、あぁ…駄目だ。役に立ちそうにないな…。
「酷い怪我…っ!何があったの!?」
涙声の子に抱えられて入ってきた一年生は、頭から多量に出血してて、意識が朦朧としてた。
「わっ、かんねぇ。マルスと、2年の先輩たちがいきなり四階の一部屋を爆破したんだ。…中に誰か居たかもしれないけどさ…多分、死んでると思う…。」
「なっ…。そんなに酷い爆発だったのか!?」
「とにかく、手当を…!」
シャルルが保健室をあたふたと探し回りながら、止血したり手当を始める。
「あぁっ…血が止まんないよぉ!」
シャルルが泣きながら叫ぶ。ギーヴも、もうひとりのけが人の手当をしてて…。

僕はただ自分の手を、失いたくない一心で…ここに避難さえしていれば良いと思ってた。
他に被害者がいる可能性なんて、考えつかなくって。

ぽたり。

自分本位で、他の人など、どうでもいいみたいな。

これじゃレガーノと、同じじゃん……。

アイツと同じ。

それだけは嫌。

なら、僕に何ができるの?

魔法も、神聖力も使えない僕が、できることは……。

「ギーヴ!!お願い!!!魔石探して!!」

治癒の魔道具を作ること。

絶対、こいつら助けてやるんだ!!!



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