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一章 飛空島
10 神の聖杯
しおりを挟む「…ってことがあったんです。」
シャルルの説明に、僕は唖然とした。
「大袈裟だよ、そんな……。」
すごく、持ち上げられてる気がする。
僕はそんな大した魔核を作ったつもりじゃなかったのに。
ただ、怪我が治るようにって思ってただけなのに。
「あの魔核を、魔道具にして神殿に納めようって話を、研究機関でしてるそうだよ。」
「えぇっ?し、神殿って…!!」
神殿は、その名の通り神様を祀る場所で、ヴォルカー先生みたいに神聖力を使える人たちが集まるところ。
怪我や病の救済や、貧しい人たちにボランティアで衣食を分け与えてる機関だ。
勿論、貧しい人々だけじゃなくて貴族や王族なんかも、神聖力による治療は物凄く有効だから町医者よりも神殿を利用する。
「しかも、教皇様の居られる聖エルナリア国の大神殿に納めるに相当するんですって。」
「ひっ…ひえぇ………っ。」
エルナリア国って、この飛空島ができるよりももっと前からある歴史ある国…。
その昔、神様の遣いが天から降りて、そこで人間の娘と恋におちて国を興したんだって。
神はその天使が恋心を覚えたことに大変喜ばれ、聖エルナリア国は神の祝福を得た特別な聖国だって、有名な話だ。
神が遣わしたって話は、世界中にいくつかあるけれど、国まで興したのは聖エルナリア国だけだし。
そんな国の神殿に、僕なんかの魔核を…?
「魔道具にするって…具体的にはどうやるものなんだ?」
ギーヴの質問に、僕は答える。
「あの魔核は水に反応するように設計してるんだよ。…だから、シャルルの言うとおり、聖杯…みたいな形が望ましいかな。…うん。……そういうことなら、僕、ちゃんとした魔道具作りたい。《神の聖杯》だっけ?シャルル。」
「へっ!!?あっ、あ、でもでも、私が勝手に勢いで言っちゃったもんだから…その。」
妙に慌ててるけど、もうヴォルカー様も王子様もその名前で通してるっぽいし。
「でも僕の部屋…爆破されちゃったんだよね…?魔道具造り用の彫金台とか…道具も一式あの部屋にあったんだけどな…。」
全て灰になったと聞いた。
うーん…。これは…結構ショックだなぁ…。愛着あった道具たち…。
あ…。ヤバ。僕…かなり落ち込んでる…。
「ティルエリー様…。」
「それなら、研究機関のラボを一部屋貸し与えましょう。クライン血族の…神器級の魔道具を作る技術が、この目で見られるなんて…C・Gの責任者である私にとっても、こんなに光栄なことはありません。」
「アールベル王子っ!」
わっ、びっくり。
シャルルが声のしたほうを見て叫んだ。
「ほ…本物のおうじさま…。」
初めて見たよ…。
わぁ、キレイな金髪、エルダタール王国の象徴の深い青の瞳。わ~、超イケメンってやつ!!!
「あ、あのはじめましてっ。僕、ティルエリー=クラインと申します!エンダタール国認定魔道具技師筆頭の…」
「ジョシュア=クライン様のご子息、であっているかな。」
「はっ、はい!」
うおー、やっぱ父さんはすげえ!王族の人にも名前を覚えて貰ってるなんて!
「まずは、入学おめでとう。…それと、君の部屋にある私物という私物がことごとく破壊されてしまったことに…飛空島の責任者でもえる私から謝罪を。」
アールベル様は申し訳無さそうに切ないお顔で頭を下げた。
「ぁ…、そんな、頭を上げてください!」
そりゃ、全部燃えちゃったのは悲しいけどさ…。やったのはレガーノ狂の学生で、あなたじゃないよ。
「それで、正式に国を通してフロェン王に抗議することにした。レガーノ様も、これで少しは自重なさると良いのだが。」
「ええっ?フロェンに!?そんな、大事にしなくても…。」
あいつのことは嫌いだけど、それでも国に文句なんて言えないよ!
「大事なのだよ。
君は…君の家系の方針は、他の国々と大きく違う。レガーノ様を見れば分かるだろう。あれはクライン血族の今の姿と言えよう…。どこの国も似たようなものなのだ。クライン至上主義…まぁ、我が国もそうだがね。だが、能力と権力とを、履き違えて増長した家系も多い。我が国の守るクラインの、しかも御当主の子息が住まう寮部屋を破壊するなど…そして、もしマルローズ男爵令嬢の予言や、ヴォルカーの神託が無かったとしたら、クライン殺しを生んだ国として一生忌み嫌われる逆賊の扱いとなっただろうね。」
「………逆賊……。」
「私達も、それは望んではいない。だから、正式に謝罪するチャンスを与えてやろう、ということさ。」
うぁー…レガーノ狂たち、なんてことを…。
「それより、レガーノ様が彼らに魔道具を融通したのです。どれほど影響が出るか…。」
ヴォルカー様が、レガーノ狂たちから回収した《増幅》の魔道具を僕に見せてくれた。
ん…?
あれ?これは……。
「頑なに街で買ったものだ、と主張しているがね。彼の魔道具とわかればレガーノ様への罪も…」
アールベル様の言葉を遮ってしまう形になるけれど、僕は口を挟まずにいられなかった。
「これ、レガーノの魔道具じゃない。赤いけれど、フロェンの別のクラインが作ったものです。」
「なっ!?…まさか、本当に町で買ったのか?」
「いえ。…あいつのやりそうなことだ。自分が作った、って嘘ついたんだ。」
そう。
あいつはみんなを騙してる。
僕は、あいつと魔法の勝負で勝ったことがない。
つまり、通常の魔法は僕より才能あるんだ。
逆に、魔道具を作る才能は…。
「あいつ、魔道具殆ど作れないんだ。」
フロェン国のクラインの秘密。
跡継ぎは、魔道具を作れない。
あいつは、周囲の分家の人たちに魔道具を作らせて、自分の手柄にしてきた。
レガーノの父親も、そのことに頭を抱えてた。
内緒だけどね。
レガーノが成人するまでに才能が開花しなければ、多分養子を取るはずだ。
「…内緒ですよ?」
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