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一章 飛空島
11 入学式
しおりを挟む入学式前夜は本当に、大変だったなぁー。
魔力は吸い付くされたけど、数時間寝たら普通に動ける程度には回復したんだ。
まだ道具を作れるほど回復はしてないけどね。
今はギーヴの部屋を間借りしてるんだけど、新入生代表挨拶の練習中!
「なぁ、おかしくないかな?」
合わせたものじゃなくて、出来合いの制服だけど、学園側が用意してくれたんだ。
…僕のは丸焦げになっちゃったなからね。
だから、微妙に袖や腰回りがボタついてるんだけど…許容範囲かな?
「あぁ、似合ってる。首席のバッジ、付けたか?」
あっ、忘れてた。ギーヴ、サンキュ!
胸に一年首席の証、エメラルドの石を付ける。
これは、入学試験で一位を取った者と、あとは一年間に3回ある定期テストで一位を取る者がゲットできるんだ。
だから、次のテストも頑張りたい。
「よし、じゃあ…行こうか!」
入学式は学園の講堂で行われる。
僕は一年の、一列目右端の席。
ギーヴは少し後ろの席だった。
シャルルは…男爵家だから結構後ろなんだよな。学園内では爵位や家柄は然程関係ないって言われてるけど、最初だけ、入学式だけは分かりやすく?爵位順なんだってさ。
僕は挨拶があるから、前の方だけど。
「新入生代表、ティルエリー=クライン。前へ。挨拶をお願いします。」
僕の名前が呼ばれたとき何かざわついたけど、まぁいっか。
僕は用意していた挨拶を噛むことなく読上げた。
「エンダタール王国の、クライン次期当主様だー!」
「きゃあーっ!ティルエリー様ぁぁ!!」
拍手とともに僕の名前を呼んでくれる生徒らがいて、ちょっと、照れた。
ん?
あれ…シャルルがぐっちゃぐちゃになって泣いてる!?
「うううぅ。ゲームになかったシーン!!推しの挨拶最高すぎ……ッ!尊い尊い尊い尊い尊い尊い」
…………。
ま、いっか!
僕が今、ここに立っていられるのは全部シャルルの助言があってこそ。
そうでなければ、きっと僕は大怪我を負ってベッドの住人だった。
それを考えるとさ、やっぱ彼女がどんなに痛くて可哀想な奴だってさ、恩人なわけだよ。
僕は、教師の並ぶ席に居たヴォルカー先生の方に向かって、軽く手を降って、席に戻った。
そして、式は滞りなく進んで、僕らは一年の教室に移動した。
「ティルエリー、いい挨拶だった!」
「ギーヴ!サンキュ。でも緊張したぁ~!」
軽くハイタッチするような間柄だったのが意外だったのか、クラスの皆は驚いて近寄る。
「そうだ、今日終わったらさ、ツインタワーに行くって聞いたけど…あれか?研究室を与えてもらったっていう…。」
「うん。僕の部屋もあんなことになったからね。タワーの部屋を借りて、そこで魔道具を作ることを勧めてもらったんだ。だから、放課後は寮に戻らずに研究機関に通うよ。」
「そっか…やっぱ魔道具は常に作ってたいんだな。流石だな!」
もちろん!クラインは、魔道具を作ってこそ。
それを体現しているって言えば、そうなのかな。
ギーヴとの話に耳を傾けていたクラスメイトたちがこそこそ話しだした。
「すげぇ、ツインタワーに部屋を持てるなんて…!流石エンダタール王国のクライン次期当主様……。」
「見て、あの笑顔…。素敵!!それに、どんな魔道具を作製なさるのかしら…是非見せていただきたいわ!」
うぅっ。
そんなに持ち上げないでよ…。
クラインってだけで…。
僕はなんだか恥ずかしくなって思わず顔を俯かせてしまった。
魔核はクラインしか作れないけど、魔道具に加工するのは、たまに他の職人さんとかも居るんだしさ。
まぁ、僕は魔核から彫金加工まで全工程できるけど。
「ティルエリー、大丈夫か?」
あぁ、ギーヴ、大丈夫じゃないよ…。
「………恥ずか死にそう。」
「あははは……。そりゃ仕方ねぇよ。」
ギーヴも、こればっかりはな、って味方してくれない。
あぁ、もう。こんな空気、耐えられない。
黄色い声に苛まれているうちに、一年の担当の教師が入ってきた。
「こら、なに騒いでる。席につけ!
まずは入学おめでとう。これから3年間をともに過ごすクラスメイトだ、仲良くな。まずは自己紹介からだ…。
俺はこの魔法学園のお前らの主担任のイアン=コーネリアスだ。」
コーネリアス先生か。体育会系なガタイの良い中年教師。
「じゃ、そっちの端から自己紹介。簡単でいい。家柄や出自は学園内では然程関係がないからな。特技や、趣味程度紹介していけ。」
「はい!ぼくは……」
順番に自己紹介が始まった。コーネリアス先生の助言通り、出身や家門なんかは省く人が多かった。
そして、僕の番。
「先程の式でも挨拶しましたが僕はティルエリーと言います。趣味…というか、生業は魔道具技師。将来、父を超える技師になりたいと思ってます。3年間、宜しくお願いします。」
父親の稼業を継ぐ。これってやっぱ譲れない。自信に溢れた感じで断言すると、ギーヴは大きく頷いてサムズアップしてた。
へへっ。キマった?
ギーヴの横の席に戻る。
「ティルエリー様、有難うございます。」
コーネリアス先生が意外にも丁寧に言ってきた。
僕は驚いて目を丸くしてると、ギーヴが耳打ちしてきた。
「コーネリアス先生、フロェンとは反対側の東隣のザールブルグ国の出身なんだけど、あの先生も、青のファンなんだってさ。つまり、レガーノ様に毒されてない貴重な教師だ。良かったな!」
ザールブルグ国、と聞いて僕はほっとした。
ザールブルグの当主家は、父さんの妹が嫁いだんだ。だから次期当主は僕の従兄妹にあたる。
来年、入学してくるんじゃないかな。
あの爆発があった後、夜にも関わらずレガーノは学園長に呼び出されて尋問を受けたそうだ。
クライン血族を尋問なんて、前代未聞じゃない?って言われてたけど。
でもやっぱり、レガーノは「私は知らない。彼奴等が勝手に暴走したのだろう。そんなことまで私が責任を取るのか?」と一蹴してきた。
学生も、魔道具についてはレガーノからもらったとは二度と言わなかったし、レガーノ自身も与えたことなどない、と突っぱねるし。
現にあの魔道具はフロェンの別のクライン血族の手によって作られたものだった。勿論、国に登録された認定魔道具ではない。
魔核が赤い色だったってだけで、作った奴が不明。だからそれ以上は追えなかったんだ。
マルスと事件に関わった2年の生徒らは、結局飛空島を降ろされた。
今頃母国に強制送還され、裁かれることになるそうだ。
フロェン王に、正式に抗議文も送ったから、レガーノも少しは態度を改める…かな。
無理だろうなぁ…。あいつ俺様だもん…。
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