空飛ぶ島は崩落寸前!?〜僕が攻略対象なんて知りません!

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一章 飛空島

29 離れ島庭園にて

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離れ島庭園は、一言でいうと、広大な花畑だ。
色とりどりの花たちがきれいに咲き誇り、街路樹もしっかり剪定されていて迷路のような植え込み地帯もある。
僕たちは、花畑の一角にあるベンチに腰掛けて、その美しい景色を堪能していた。
「大神殿の宝物庫は、歴代の各国のクライン当主の遺作が集められています。既に魔核は色を失ってしまっていますが、素晴らしい資料だと思いますよ。」
雑談から始まったんだけど、ヴォルカー様が去年まで勤めていた大神殿のことを教えてくれたの。
「えぇ?本当ですか!?凄いな、大神殿!行ってみたいなぁ……。でも、どうして?各国のクライン当主達の遺作なら、その国に納められてそうなのに…。」
「…そうですね。かなり前の話ですが亡くなられたクライン当主様の謂わば遺品を…各国の王家や有力貴族らが競って手に入れようと躍起になっていた時代がありました。
ですので、オークションや闇市などで高額で取引するのが主流だったのです。
商品にするために、収集家や貴族の屋敷などにも盗みに入られたり。そしてついに、殺人まで起こるようになりました。
……それがきっかけで、クラインの遺品が元で、そのようなことになるのは遺憾…と、各国のその時の当主らは、自作の魔道具について、魔核が色を失うと同時に、政治の力が及びにくい、神殿に寄贈するよう取り決めたのです。」
「そっか…。ルールを作ったんですね。」
「そのおかげで、バカみたいにオークションで高額で取引されるような案件は激減しましたし、殺害事件以降、強盗などもかなり厳しく取り締まるようになりましたから…効果はあったようです。それに、神殿は強力な結界により守られています。一番安全だと言えますからね。」
僕の知らないクラインの歴史…。神殿にある歴代当主の作品……!
「見てみたいなぁ……。」
ぽつり、と口から溢れてたみたい。ヴォルカー様はとても苦い顔をされてた。
「ヴォルカー様?」
「申し訳ありません。…今は…大神殿は行かないほうが良いでしょう。大神殿のある聖エルナリア国は、治安も良くないそうです。もし旅の途中、襲われでもしたら…。」
「……ぇ……大丈夫なの!?ヴォルカー様の大切な人…最高司祭様は?」
ヴォルカー様が、公爵様に見捨てられて壊れそうだった心に寄り添ってくれた…って言ってた。
僕の大切な人を守ってくれていたんなら、僕にとっても大事な人だ。
もちろん、会えるなら会いたいと思ってたけど…、国の情勢が良くないなんて…神殿とはいえ、影響は多少あるよね。
「あぁ……。ありがとうございます。貴方は本当にお優しい。アールベルからも、今のところ大きな問題は起きていないと聞いています。…大丈夫です。あの方はいろんな意味でお強い方ですから。きっと神殿が襲われたとしても、難なく逃げてしまいそうですね。」
「……ふっ…ふふっ。神殿を守るんじゃなくて、逃げてしまうんですか?」
「えぇ。司祭様……フォード様は、そんな方です。それに、神殿を守る騎士団は、一国を滅ぼしかねないくらいの強さを誇ります。容易に崩されるような所ではありません。」
「ヴォルカー様も、戦えたら…戻りたいですか?」
「………どう、でしょう。私は…猛毒により戦う術を失い、騎士を捨てた代わりに、自由を得た……。…王女から逃げてきた立場ですからね。この腕は、今のままで良いと思います。あぁ、でも。」
ヴォルカー様は僕の手を取り、頬を桃色に染めて微笑む。
「貴方を守るためだけに使えるのなら…もう一度取り戻したい。」
「………ッ。うぅっ…なんてことをサラっと言うんだ……!!」
僕は真っ赤になって顔を逸した。恥ずかしすぎるよ、ヴォルカー様ぁ。
逸したんだけど、ヴォルカー様の顔を見たくて…上目遣いになっちゃう。そしたらヴォルカー様も僕を覗き込むように顔を近づけて……。
「恋人同士になれたんだ。もっと私の思いを知って欲しい。…エリィ。二人だけのときは、いいだろ?」
「~~~~~ッ!!!!きゅぅ…………。」
いきなり、いつもの優しげな声がワントーン低くなって…丁寧な口調が砕けて……。
しかも、僕のこと……エリィって……。
「……エリィ?」
「………はぅぅ、、はぃ……。」
これから調査しないといけないのに…今からこんなんじゃぁ、僕、心臓保つかなっ?
ああああ。
ヴォルカー様がカッコ良すぎて……倒れそう………。
「……おっと……。やりすぎたか…?…申し訳ありません、エリィ。どうか顔を上げて?」
「ふにゃ~………っ。ヴォルカーしゃま……!意地悪です………っ!これから調査しないといけにゃいのに!!」
もう、僕の顔、溶けてるんじゃないの!?
僕は頬を両手で揉み込んで、溶けてしまってないか確認しながら、精一杯の文句を言った。
「貴方の恋人になれたことが嬉しくて。でも、慣れてください…。私の思いを、これからもどうか全て受け取って欲しい。」
ぼっ、僕だって!!!負けないくらい好きなのに~~!!!


甘くて、とても幸せな時間。
目一杯堪能して、離れ島庭園の調査は……うん、もう少し……後で。




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