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一章 飛空島
39 シャルルの記憶チート
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「…………シャルル嬢、何とかならない?コレ。」
アールベル様が、チラ、と視線を右に向けると、少し離れた場所でキノコでも生えてきそうなほどじめついたヴォルカー様がへたりこんでいる。
「わっ……と、ヴォルカー様、どうしたんですか?」
「ヴォルカー先生でも落ち込むことってあるんだな……。なんか気持ち悪いな。」
シャルルも、驚いてる。
ギーヴ!気持ち悪いってなんだよ!!儚くて美しいだろ!
「……はぁ………。」
「………!!!」
ため息まで甘いっ!!
でも、ヴォルカー様がこんなになっちゃったのって、多分…エディオが原因……だよね。
恋人宣言したとき、あまりいい反応しなかったもんな。
きっと子供の戯言だとか思って……。
「そもそも、どうして落ち込まれてるんです?それが分からないことには…。」
「あぁ。それは、おそらく自身を蝕む毒のことだろうね。」
「毒の!?」
「ここへ来る前、神殿が盗賊に襲われたことがあったんだ。ヴォルカーはその夜に毒矢を受け、その毒が身体に残り武器を持てなくなった。騎士団には居られないから、と医学知識もあった彼は、飛空島の学園寮の保健医になった。それは知っている?」
「えっと…はい。知ってます………。」
でも、そのお陰で騎士として働けないからって、エルナリアの王女様に連れていかれそうになったのを、避けることができたんだ。
シャルルも、何故かその話を知っていたのは驚いたけど。
「彼はね、もう一度戦う力を取り戻したいと思ってるんだよ。」
え?
戦う力を取り戻す…?どうして?戦えるようになったら、また大神殿の騎士団に…それに、ご実家が黙ってないよっ、戻されちゃうんじゃ……っ。
「いやっ!!」
悩むより先に、声が出た。
「ティルエリー様?ど、どうしたんですか、突然…」
「ヴォルカー様が神殿騎士に戻っちゃう…のは、僕は…嫌です。」
あ、ヤバい。視界が歪む。
「ティル様……っ。ティル様を泣かすとは酷いですヴォルカー様!!!」
「……いや、何故そうなる。」
ギーヴがシャルルに突っ込んでるけど、でもヴォルカー様、本当に騎士に、戻ろうと考えてるの……?
僕は涙を堪えてたけど、こぼれちゃった。すると、そっと指で拭ってくれた……
「うぅ…ヴォルカー様……。僕、側にいたい。」
「エリィ、私は、前に言いましたよね。貴方のためだけに振るえる力なら、取り戻したい…。それは本気なんです。ですが…それをするには、私やアールベルだけでは力が足りない。権力抗争に勝てる要素がないのです。…駄目ですね……。権力から逃げてきた代償が……こんなにも……。」
僕のため?
どうして……?
疑問に思っていると、ヴォルカー様は昨日あったことを教えてくれた。
◆◇
「……………はぁ……。」
「…………………はぁ~。」
ヴォルカー様の横で、僕も菌床化してしまった。
でも、仕方ないじゃん。僕には政治とか、権力とか…王の庇護とか。
そんなの知らなくて。
好きな人と一緒にいるのは、いけないことなの?
僕が当主を目指すと、好きな人と一緒にいられないの?
ヴォルカー様の立場とか、エンダタール王国のこととか。
僕が当主になることでヴォルカー様と一緒にいることが難しくなるんだっていう現実を聞かされて……僕も心臓が痛くなった。
アールベル様も、ヴォルカー様の唯一の欠点であるその毒が無くなることで、ご実家や神殿、それから、王女のせいで求心力が落ちているエルナリア王室の動きに警戒せざるを得なくなるので、とても慎重に考えないといけないって。
「「………どうしたら……。」」
どうしたら、諦めずに済むの?
どうしたら、ずっとヴォルカー様と一緒にいられるの。
「力を取り戻しても、神殿騎士に戻らない方法はあるさ。」
保健室のドアが勢いよく開いて、声がした。
「えっ!?」
誰?
入口を見ると、そこにはヴォルカー様の菌床化の原因!!
「エディオ!!お前、僕のヴォルカー様に何言ったのっ!?酷い!!!」
「あーっ、もう!!うるっさいな、そりゃ直球過ぎたかなって、後悔したから!こうやってわざわざ保健室まで謝りに来たんじゃねぇか!」
エディオ!それって謝る態度なの!?
「う~ッ!!」
精一杯威嚇する。
けど、エディオは僕の頭をワシャワシャ撫でるだけであしらわれたッ!畜生…!
「ティルエリー様、落ち着いて。ヴォルカーの毒を取り除いてしまえば、遅かれ早かれ騎士職に戻されることは可能性として高い。それを、回避出来るなら聞く価値がありますよ。」
アールベル様に諭されて、僕は黙った。
「お聞かせください。ヴォルカーが力を取り戻しても、神殿騎士に戻らないで済む方法を。」
「……まぁ、まずはその毒ってやつがあんたの中から消えるかどうかだけどな。……フェリクスのように血を護る者の称号を得れば良い。」
血を護る者。
主人の作る、最高傑作の魔道具を纏う権利を得る。
優秀なクライン血族の、その稀有な血を護るためだけにその剣を振るい、どの国にも属さない騎士。
ただそのクラインにだけ、忠誠を誓い命を捧げる人。
父さんには元々3人、付いていた。
そのうちの一人が、死んだ僕の母さんだったから、今は二人だ。
「フェリクスは、オレ専属の《血を護る者》だ。当主ともなれば複数名侍らせるが、オレには…フェリクスが居てくれたら十分。」
「はい。…っていうか、他の者に護らせたくない。貴方は私が護ります。」
エルナリアで助けられ、エディオはフェリクスさんに惚れちゃったんだって。
だから、他国へ去ってしまったフェリクスさんを追いかけて、めちゃくちゃ探しまくったそうだよ。
そして、フェリクスさんもエディオのことが凄く気になっていたんだって。そして、偶然(ではないけどね。)出会い、すぐに思いを告げたそう。
「…そうか。ヴォルカーが、ティルエリー様の《血を護る者》になれば良いのだな。どの国からの柵からも逃れられ、ティルエリー様の側にいられる。」
アールベル様は納得したように頷いた。
「だがなぁ…いくつか問題もある。」
「問題…?」
僕もアールベル様と一緒に首を傾げる。
僕は、《血を護る者》の選定の仕方をあまり知らないんだよね。
平民と一緒に過ごしてきたからか、貴族からの目もあまり気にならなかったし…。
他のクラインたちより、平和に慣れていたんだと思う。
それに、幼い頃は父さんの血を護る者の、母さんがずっと側にいたから、きっとそういう危険な要因は僕が気づかないところで消されてたんだろうなぁ。
「血を護る者は、現当主に認めてもらうことで称号を得られる。オレの場合は姉さんだったしな。
ティルエリーの場合、エンダタールの当主、ジョシュア様の血を護る者に挑み、力を認めさせないとならない。
力を取り戻しても、ヴォルカーさんはブランクがあるだろうし、ティルエリーが作った魔道具を使いこなせないと、それこそ認められない。
だから、ティルエリーは武器になる最高傑作の魔道具を作ること。
ヴォルカーさんは、身体の毒をどうにか消し去った後、その魔道具に慣れるため修行しなきゃならない。な?…やることが山積みなんだよ。一朝一夕ってワケにいかないだろう。」
「………成程。それならば、外界から隔離された、この飛空島に滞在できる三年間のうちに、手を打つべきか。」
ご実家にバレると、また余計なことになりかねないって。
ヴォルカー様、家族と仲悪いんだった。…まぁ、僕だって野心の塊みたいな親に、駒のように扱われてきたら不審に思うんじゃないかな。
「そしたら、僕はヴォルカー様のための魔道具の武器を作る。」
武器は、残念ながら作ったことがない。沢山練習して最高傑作を作り上げるんだ。
「そして、ヴォルカー様は、解毒…する、と。」
シャルルはこめかみに指を当てて、うーん、と唸っていた。
「何か、思い当たること、ある?」
シャルルは、関係ないところから凄いことを教えてくれたり、来なかった未来を知っていたりするんだ。
それこそ、神様のプレゼントなんじゃないかと思うくらい。
「1つ、思いたあることが……。ヴォルカー様との親密度が一定数超えている場合のメインルートで、確かエルナリアの王女が召喚した悪魔が飛空島に降りてくるっていう話があるんですけど。」
「「「……何だと!!?」」」
シャルルの色々爆弾発言に、アールベル様もエディオも、フェリクスさんも目を見開いて声を揃えて聞き返した。
ジメジメのキノコを生やしたヴォルカー様でさえ、顔を上げて驚いていた。
キノコが頭の上に見える気がするけど…キノコさえ儚くて美しいです……ッ。
「ひ、飛空島には、魔獣とかいないですし、武力で対抗できる人が少ないんです。魔法使いだけでは、太刀打ちできなくて…。それで、商人のアールベル王子から《どんな封印も解くことができる魔道具》を手に入れて、最強騎士に戻ったヴォルカー様が大活躍して、サクッとやっつけちゃうっていう………。」
「ちょっと待って。情報キャパオーバー。まず、アールベル様って商人なんですか?」
そんなアールベル様を見てみたい。と期待を込めて見つめてみる。
「いや。今も昔も、一応王子をやっているよ。……副業もしていないよ。」
そうだよね、王子様が商人なんて可笑しいよね?
でも見てみたい。
「…アールベル王子は、むかし未来を変えた上で、今を生きてるんですよね。…だからその魔道具は、どうやって手に入れたら良いのか……。」
あぁ、そうか。アールベル様はヴォルカー様が追放を避けるために予知した未来とは違う行動を起こしたから、追放されなかったんだ。
そのせいで、ヴォルカー様の毒を消す……ん?
あれ?
「シャルル、《どんな封印も解くことができる魔道具》って言ったよね。解毒じゃなくて?」
「はい。…だって、ヴォルカー様の受けた毒というのは、封印毒。高度な魔法で作られた《攻撃力と瞬発力がゼロになる》とか、そういった封印をされたものだったの。」
「そんな特殊な魔法…どうやって……。」
「……司祭様に聞けば分かるかもしれない。」
大神殿に居る、司祭様に?
ヴォルカー様は続ける。
「……あの夜、大神殿を襲わせた盗賊を呼び寄せたのは…司祭様でした。そんな特殊な魔法を施せる魔法使いなんて、限られているでしょう。…知り合いかもしれない。」
「……だが、今は安易に手紙を送るのはやめておいたほうがいいな。この前のように、飛空島の修理のための人員紹介とはわけが違う。
しかも、今回は内容が内容だ。ただでさえ治安が悪いんだ。検閲などされてみろ。こちらでヴォルカーの企みがバレてしまっては本末転倒だろう。」
アールベル様は首を横に振り、手紙での連絡は悪手と判断する。
「………オレが行ってきてやってもいいぞ。」
手を上げたのは、エディオ。
「エディオ…。どうして?」
「大神殿には姉さんがいるしな。橋の魔核の件の相談でもしてくるさ。…で、そっちに会いに行くのを口実に、ついでに司祭様に話を聞いてきてやるよ。……ヴォルカーさんに厳しいこと言っちまったお詫び……でもある。…フェリクス、またエルナリアに行くことになるが、いいよな?」
「勿論です。あなたの行く場所なら何処であろうとお供いたします。」
「…有難う、フェリクス!」
こうして、数日後、エディオは僕の描いた設計図と考察を携えて(カモフラージュだけど)、大神殿へと向かってくれた。
アールベル様が、チラ、と視線を右に向けると、少し離れた場所でキノコでも生えてきそうなほどじめついたヴォルカー様がへたりこんでいる。
「わっ……と、ヴォルカー様、どうしたんですか?」
「ヴォルカー先生でも落ち込むことってあるんだな……。なんか気持ち悪いな。」
シャルルも、驚いてる。
ギーヴ!気持ち悪いってなんだよ!!儚くて美しいだろ!
「……はぁ………。」
「………!!!」
ため息まで甘いっ!!
でも、ヴォルカー様がこんなになっちゃったのって、多分…エディオが原因……だよね。
恋人宣言したとき、あまりいい反応しなかったもんな。
きっと子供の戯言だとか思って……。
「そもそも、どうして落ち込まれてるんです?それが分からないことには…。」
「あぁ。それは、おそらく自身を蝕む毒のことだろうね。」
「毒の!?」
「ここへ来る前、神殿が盗賊に襲われたことがあったんだ。ヴォルカーはその夜に毒矢を受け、その毒が身体に残り武器を持てなくなった。騎士団には居られないから、と医学知識もあった彼は、飛空島の学園寮の保健医になった。それは知っている?」
「えっと…はい。知ってます………。」
でも、そのお陰で騎士として働けないからって、エルナリアの王女様に連れていかれそうになったのを、避けることができたんだ。
シャルルも、何故かその話を知っていたのは驚いたけど。
「彼はね、もう一度戦う力を取り戻したいと思ってるんだよ。」
え?
戦う力を取り戻す…?どうして?戦えるようになったら、また大神殿の騎士団に…それに、ご実家が黙ってないよっ、戻されちゃうんじゃ……っ。
「いやっ!!」
悩むより先に、声が出た。
「ティルエリー様?ど、どうしたんですか、突然…」
「ヴォルカー様が神殿騎士に戻っちゃう…のは、僕は…嫌です。」
あ、ヤバい。視界が歪む。
「ティル様……っ。ティル様を泣かすとは酷いですヴォルカー様!!!」
「……いや、何故そうなる。」
ギーヴがシャルルに突っ込んでるけど、でもヴォルカー様、本当に騎士に、戻ろうと考えてるの……?
僕は涙を堪えてたけど、こぼれちゃった。すると、そっと指で拭ってくれた……
「うぅ…ヴォルカー様……。僕、側にいたい。」
「エリィ、私は、前に言いましたよね。貴方のためだけに振るえる力なら、取り戻したい…。それは本気なんです。ですが…それをするには、私やアールベルだけでは力が足りない。権力抗争に勝てる要素がないのです。…駄目ですね……。権力から逃げてきた代償が……こんなにも……。」
僕のため?
どうして……?
疑問に思っていると、ヴォルカー様は昨日あったことを教えてくれた。
◆◇
「……………はぁ……。」
「…………………はぁ~。」
ヴォルカー様の横で、僕も菌床化してしまった。
でも、仕方ないじゃん。僕には政治とか、権力とか…王の庇護とか。
そんなの知らなくて。
好きな人と一緒にいるのは、いけないことなの?
僕が当主を目指すと、好きな人と一緒にいられないの?
ヴォルカー様の立場とか、エンダタール王国のこととか。
僕が当主になることでヴォルカー様と一緒にいることが難しくなるんだっていう現実を聞かされて……僕も心臓が痛くなった。
アールベル様も、ヴォルカー様の唯一の欠点であるその毒が無くなることで、ご実家や神殿、それから、王女のせいで求心力が落ちているエルナリア王室の動きに警戒せざるを得なくなるので、とても慎重に考えないといけないって。
「「………どうしたら……。」」
どうしたら、諦めずに済むの?
どうしたら、ずっとヴォルカー様と一緒にいられるの。
「力を取り戻しても、神殿騎士に戻らない方法はあるさ。」
保健室のドアが勢いよく開いて、声がした。
「えっ!?」
誰?
入口を見ると、そこにはヴォルカー様の菌床化の原因!!
「エディオ!!お前、僕のヴォルカー様に何言ったのっ!?酷い!!!」
「あーっ、もう!!うるっさいな、そりゃ直球過ぎたかなって、後悔したから!こうやってわざわざ保健室まで謝りに来たんじゃねぇか!」
エディオ!それって謝る態度なの!?
「う~ッ!!」
精一杯威嚇する。
けど、エディオは僕の頭をワシャワシャ撫でるだけであしらわれたッ!畜生…!
「ティルエリー様、落ち着いて。ヴォルカーの毒を取り除いてしまえば、遅かれ早かれ騎士職に戻されることは可能性として高い。それを、回避出来るなら聞く価値がありますよ。」
アールベル様に諭されて、僕は黙った。
「お聞かせください。ヴォルカーが力を取り戻しても、神殿騎士に戻らないで済む方法を。」
「……まぁ、まずはその毒ってやつがあんたの中から消えるかどうかだけどな。……フェリクスのように血を護る者の称号を得れば良い。」
血を護る者。
主人の作る、最高傑作の魔道具を纏う権利を得る。
優秀なクライン血族の、その稀有な血を護るためだけにその剣を振るい、どの国にも属さない騎士。
ただそのクラインにだけ、忠誠を誓い命を捧げる人。
父さんには元々3人、付いていた。
そのうちの一人が、死んだ僕の母さんだったから、今は二人だ。
「フェリクスは、オレ専属の《血を護る者》だ。当主ともなれば複数名侍らせるが、オレには…フェリクスが居てくれたら十分。」
「はい。…っていうか、他の者に護らせたくない。貴方は私が護ります。」
エルナリアで助けられ、エディオはフェリクスさんに惚れちゃったんだって。
だから、他国へ去ってしまったフェリクスさんを追いかけて、めちゃくちゃ探しまくったそうだよ。
そして、フェリクスさんもエディオのことが凄く気になっていたんだって。そして、偶然(ではないけどね。)出会い、すぐに思いを告げたそう。
「…そうか。ヴォルカーが、ティルエリー様の《血を護る者》になれば良いのだな。どの国からの柵からも逃れられ、ティルエリー様の側にいられる。」
アールベル様は納得したように頷いた。
「だがなぁ…いくつか問題もある。」
「問題…?」
僕もアールベル様と一緒に首を傾げる。
僕は、《血を護る者》の選定の仕方をあまり知らないんだよね。
平民と一緒に過ごしてきたからか、貴族からの目もあまり気にならなかったし…。
他のクラインたちより、平和に慣れていたんだと思う。
それに、幼い頃は父さんの血を護る者の、母さんがずっと側にいたから、きっとそういう危険な要因は僕が気づかないところで消されてたんだろうなぁ。
「血を護る者は、現当主に認めてもらうことで称号を得られる。オレの場合は姉さんだったしな。
ティルエリーの場合、エンダタールの当主、ジョシュア様の血を護る者に挑み、力を認めさせないとならない。
力を取り戻しても、ヴォルカーさんはブランクがあるだろうし、ティルエリーが作った魔道具を使いこなせないと、それこそ認められない。
だから、ティルエリーは武器になる最高傑作の魔道具を作ること。
ヴォルカーさんは、身体の毒をどうにか消し去った後、その魔道具に慣れるため修行しなきゃならない。な?…やることが山積みなんだよ。一朝一夕ってワケにいかないだろう。」
「………成程。それならば、外界から隔離された、この飛空島に滞在できる三年間のうちに、手を打つべきか。」
ご実家にバレると、また余計なことになりかねないって。
ヴォルカー様、家族と仲悪いんだった。…まぁ、僕だって野心の塊みたいな親に、駒のように扱われてきたら不審に思うんじゃないかな。
「そしたら、僕はヴォルカー様のための魔道具の武器を作る。」
武器は、残念ながら作ったことがない。沢山練習して最高傑作を作り上げるんだ。
「そして、ヴォルカー様は、解毒…する、と。」
シャルルはこめかみに指を当てて、うーん、と唸っていた。
「何か、思い当たること、ある?」
シャルルは、関係ないところから凄いことを教えてくれたり、来なかった未来を知っていたりするんだ。
それこそ、神様のプレゼントなんじゃないかと思うくらい。
「1つ、思いたあることが……。ヴォルカー様との親密度が一定数超えている場合のメインルートで、確かエルナリアの王女が召喚した悪魔が飛空島に降りてくるっていう話があるんですけど。」
「「「……何だと!!?」」」
シャルルの色々爆弾発言に、アールベル様もエディオも、フェリクスさんも目を見開いて声を揃えて聞き返した。
ジメジメのキノコを生やしたヴォルカー様でさえ、顔を上げて驚いていた。
キノコが頭の上に見える気がするけど…キノコさえ儚くて美しいです……ッ。
「ひ、飛空島には、魔獣とかいないですし、武力で対抗できる人が少ないんです。魔法使いだけでは、太刀打ちできなくて…。それで、商人のアールベル王子から《どんな封印も解くことができる魔道具》を手に入れて、最強騎士に戻ったヴォルカー様が大活躍して、サクッとやっつけちゃうっていう………。」
「ちょっと待って。情報キャパオーバー。まず、アールベル様って商人なんですか?」
そんなアールベル様を見てみたい。と期待を込めて見つめてみる。
「いや。今も昔も、一応王子をやっているよ。……副業もしていないよ。」
そうだよね、王子様が商人なんて可笑しいよね?
でも見てみたい。
「…アールベル王子は、むかし未来を変えた上で、今を生きてるんですよね。…だからその魔道具は、どうやって手に入れたら良いのか……。」
あぁ、そうか。アールベル様はヴォルカー様が追放を避けるために予知した未来とは違う行動を起こしたから、追放されなかったんだ。
そのせいで、ヴォルカー様の毒を消す……ん?
あれ?
「シャルル、《どんな封印も解くことができる魔道具》って言ったよね。解毒じゃなくて?」
「はい。…だって、ヴォルカー様の受けた毒というのは、封印毒。高度な魔法で作られた《攻撃力と瞬発力がゼロになる》とか、そういった封印をされたものだったの。」
「そんな特殊な魔法…どうやって……。」
「……司祭様に聞けば分かるかもしれない。」
大神殿に居る、司祭様に?
ヴォルカー様は続ける。
「……あの夜、大神殿を襲わせた盗賊を呼び寄せたのは…司祭様でした。そんな特殊な魔法を施せる魔法使いなんて、限られているでしょう。…知り合いかもしれない。」
「……だが、今は安易に手紙を送るのはやめておいたほうがいいな。この前のように、飛空島の修理のための人員紹介とはわけが違う。
しかも、今回は内容が内容だ。ただでさえ治安が悪いんだ。検閲などされてみろ。こちらでヴォルカーの企みがバレてしまっては本末転倒だろう。」
アールベル様は首を横に振り、手紙での連絡は悪手と判断する。
「………オレが行ってきてやってもいいぞ。」
手を上げたのは、エディオ。
「エディオ…。どうして?」
「大神殿には姉さんがいるしな。橋の魔核の件の相談でもしてくるさ。…で、そっちに会いに行くのを口実に、ついでに司祭様に話を聞いてきてやるよ。……ヴォルカーさんに厳しいこと言っちまったお詫び……でもある。…フェリクス、またエルナリアに行くことになるが、いいよな?」
「勿論です。あなたの行く場所なら何処であろうとお供いたします。」
「…有難う、フェリクス!」
こうして、数日後、エディオは僕の描いた設計図と考察を携えて(カモフラージュだけど)、大神殿へと向かってくれた。
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