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二章 宝探し
49 シャルルの将来
しおりを挟む卒業したら、皆バラバラ。
飛空島という、隔離されたこの世界が特別なだけで。
地上に降りれば、王族はお城に、神官は神殿に。
貴族令息、令嬢は実家や領地に……帰ってしまうワケで。
(……ギーヴはビルチェの領主になるために、辺境に帰ってしまうんだよね。……僕は、父さんから継ぐための修行や試験のためにしばらく王都にいなきゃならない。…ブロディアのこともあるし、すぐに工房を建てることは出来ない。……シャルルの家は、領地持ってない男爵家……王都に家があるんだよね。………そしたら……。)
「それならさ、シャルル、卒業したら王都で僕の助手になってよ。」
「へっ?じ、助手ッ!?わ、私がティル様のっ、助手!?」
シャルルは目を見開き、歓喜の叫び声を上げた。
でも、助手に、ていうのは理由がちゃんとあるんだ。
「この前、僕の魔道具から魔法を構築し直して展開したでしょ?
守護のブローチは、僕が守護の陣を魔力で描いたことには変わりないけど…それは、自らを守る魔法を組み込んだだけ。それなのにシャルルは、あれだけの防護壁に作り替えたんだ。それが、技師としては不思議でならない。」
シャルルが、クラインの魔力回路を超えるほどの力を発揮していたのか、それとも、僕の組んだ回路が元々そのような力を秘めていたのか。
その実証をしてみたい。
時間がかかるだろうし、学園での勉強の片手間に進められるような研究じゃない。
むしろ、卒業後にちゃんと技師として向き合いたい。
「わ、わわわたし……役に立てる?」
「うん。立てる。それに、シャルルの描くアクセサリーのデザインは凄く素敵だし、そっち方面でも、僕は本気でシャルルと仕事したいって思ってるよ。ギーヴんとこに工房建てた後も雇いたいくらい。」
「きゃあぁっ!!!推し様と卒業後も一緒にいられるーーーっ!!!」
ギーヴの背中をバンバン叩きながら喜んでるシャルルを見て、つい笑ってしまう。
もちろん、マルローズ男爵に許可を貰わないと駄目だし、クラインの工房に雇うからには、優秀でないとならないけどね!
シャルルなら、きっと大丈夫。
◆◇
お昼休みの、寮の保健室。
ヴォルカー様のところへ、みんなを連れてきたよ。
そしたら、何故かエディオフェリクスさん、アールベル様までいたから驚いちゃった。
それで、今朝話したことを皆に伝えたよ。
「卒業後に彼女を雇う!?」
僕の提案に、驚いているのはエディオ。
ヴォルカー様は、なんとなく気づいていたのか、微笑んで見守ってくれてる。
「うんっ!デザイナーとして雇いたいなって。」
「デザイナー……。成る程、確かにシャルル嬢の考案する魔道具のデザインはどれも秀逸で繊細、とても美しいものばかりだ。エリィの青い魔核を飾るのに、これ程適した方はいないでしょう。」
ヴォルカー様もうんうん、と頷いてくれてる。
「まだ提案しただけだけどね。卒業までに、シャルルのお家の人に認めてもらわないと。僕の工房で働くこと。」
「ふふっ。エリィの工房は賑やかになるでしょうね。」
穏やかに過ぎる時間に、一人似合わない浮かない顔をした人がいて。
「アールベル様…?」
「………あ、あぁ。そうだな。…シャルル嬢の描くデザインは私も好きだ。」
あ。いつもの王子スマイルに戻った…。
それから、しばらく雑談して、美味しいフルーツを堪能して、また午後からの授業が始まるんだけど…。
「ギーヴ、さっきのアールベル様、おかしくなかった?」
「……んぁ?そりゃ、マルローズをお前に取られたからだろ?」
「なっ、取られたなんて、そんな……。ただ、働き口として提案しただけだよ!?」
「んー……まぁ、お前は、下町で育ってきただろうからな。知らないかもしれないけど、貴族の令嬢ってのは、学園卒業後は何処かの貴族か、商家なんかに嫁入りするんだよ。働くことなんて、ほぼない。…王子も、シャルルは卒業後は誰かと婚姻するんだと思ってて……その相手が自分ならって期待してたのに、まさか工房にスカウトされるとは思わなくて、しかもマルローズも乗り気だし言い出せなくなり…ってとこじゃない?」
……何てことだ。
僕が、アールベル様のシャルルとの未来を潰してしまうなんて!?
「そんな……僕、そんなつもりじゃ……。」
「そりゃそうだろ。お前もマルローズも悪くないよ。……ただ、アールベル王子がヘタレなだけだ。」
ヘタレ?
何で……ヘタレ?
「……ティル、ちょっと放課後ヴォルカー先生借りていいか?」
「へ?う、そりゃ……特に約束してないし……いいけど…。」
ヴォルカー様が、時間があれば工房に来てくれるだけで、いつも約束してるわけじゃない。それに、僕のものでもないし。……いや、僕はヴォルカー様のものだけどねっ!
「そっか。んじゃ報告を楽しみにしてろ。」
ギーヴの悪戯な笑顔を見ると、僕は何処か安心するんだ。
そして、ギーヴがヴォルカー様と何かを計画して、数日後のこと。
シャルルは、夏休みを前に、正式にアールベル様と婚約したんだ。
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