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二章 宝探し
62 記憶
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コーヒー飲んで、一人っきりになった工房用のお部屋で、背伸びして。
窓を開けると、爽やかな香草の匂い。
別荘だけど、小さな庭を作ってるんだって。
そこにはハーブを植えてるらしい。
マーティアスさんがあの時作ってくれたフレッシュハーブティーも、庭に植えてたものを使ってたんだってさ。
「…………んーっ!気持ちいいーーっ!」
太陽の光が、やけに眩しかった。
その光を感じていると、ふと記憶が蘇る。
いや、蘇るんじゃない。
僕の知らない記憶が、脳裏に浮かんだ。
◇◆
「ハウザー、ここは俺に任せてリグと退避しろッ!!」
玻璃の盾を展開しているのは、燃えるような夕焼け色の髪に、対比するかのような空色の瞳の青年だった。
「だめだ、全員で地上に帰るんだっ!!!」
青年の声に反論するのは、幼さの残る…少年のような声。
姿は…よくわからないが、肩まで伸ばした銀髪と、小柄な体躯。
きっと、この人がハウザー様なのだろう。
「ハウザー……っ!最期くらい、カイの言う事………聞けってんだよ!!!このままじゃ全滅だ!!!」
ハウザー様の背後から、がしっと腕を回して抱えあげる、2メートルはありそうな大柄な男が、乱暴に怒鳴る。
「リグレット!!離せ!!カイ……カイ!!」
リグレット、と呼ばれた男の腕から何とか逃れようと暴れるハウザー様に、カイと呼ばれた夕日色の髪の青年は怒りなのか苛立ちなのか……苦しそうな表情で首を横に振った。
「……このままじゃ盾が保たない。リグ、そのままエンダタールへ転移してくれ!!」
「ダメだ!!ダメだダメだダメだっ!!そんなことしたら……」
ハウザー様の悲痛な叫び虚しく、リグレットは転移魔法を展開しはじめる。
「お前の命より大切なものなどあるか!!頼むから……ハウザー…生きてくれ。……リグ、行けッ!!!」
「《転移、エンダタール城へ》!!」
「うわぁああーーーーっ!!!カイ!!!!カイーーーっ!!!!」
◆◇
………………………な、
なに、今の……。
フラッシュバックみたいに光景が浮かんだ……唐突すぎて、僕は呆然としてしまった。
ガチャン!
あっ!
しまった……コーヒーカップ………落としちゃった。
「ティルエリー様!?いかがされましたか!!」
マーティアスさんが慌てて入ってくる。
そして床に散らかった惨状に、蒼白して駆け寄る。
「マーティアスさん……すみません、カップ……落としてしまって……。」
謝ると、マーティアスさんは首を横に振り、僕の手や足元を確認してくれる。
怪我がないことが分かると、ほっとしたような顔で、微笑んでくれた。
あぁ、こういうところ、ヴォルカー様にそっくりだな。
「いいのです。お怪我はありませんか?床を掃除しますので、ソファの方にどうぞ。」
僕はソファに沈み込むと、自身の身体が少し震えていることに気付いた。
「…どうしたんですか?」
自分の腕を擦るように抱え込むと、少し震えは治まる。
「あ………うん。ちょっと、ね。後でヴォルカー様に話す……。」
ヴォルカー様なら、玻璃平原での出来事も見てたし。
あ。
マーティアスさんを信用してないってわけじゃないんだけど……!
と思って、気まずそうな顔してたかも。マーティアスさんはにっこり笑って、
「それがよろしいです。とりあえず、怪我がないなら良かったです。……こちらを片付けてきますね。新しいコーヒーをお持ちしましょうか?」
「ぁ……うんっ!お願いします!!」
ヴォルカー様にも謝らなくちゃ。高価そうなカップ、見事に割っちゃって…。
それにしても……さっきの、玻璃の盾の持ち主の記憶だよね。
盾の持ち主の魔力を貰ったことで、その人の記憶が共有されるって、言ってたから…そっか、僕自身の魔力が戻りつつあるんだ。
……でも、コーヒー飲んでるときに、とか。突然すぎでしょ………。
「……カイ、っていうんだ。玻璃の盾の持ち主…ハウザー様のブロディアの一人。ハウザー様を……守ろうとしてた。……主を地上に逃して、あの人はここで死んだんだ。」
この平和の象徴みたいな飛空島で、千年前に何があったの?
この歴史に、僕が触れても良かったのだろうか。
窓を開けると、爽やかな香草の匂い。
別荘だけど、小さな庭を作ってるんだって。
そこにはハーブを植えてるらしい。
マーティアスさんがあの時作ってくれたフレッシュハーブティーも、庭に植えてたものを使ってたんだってさ。
「…………んーっ!気持ちいいーーっ!」
太陽の光が、やけに眩しかった。
その光を感じていると、ふと記憶が蘇る。
いや、蘇るんじゃない。
僕の知らない記憶が、脳裏に浮かんだ。
◇◆
「ハウザー、ここは俺に任せてリグと退避しろッ!!」
玻璃の盾を展開しているのは、燃えるような夕焼け色の髪に、対比するかのような空色の瞳の青年だった。
「だめだ、全員で地上に帰るんだっ!!!」
青年の声に反論するのは、幼さの残る…少年のような声。
姿は…よくわからないが、肩まで伸ばした銀髪と、小柄な体躯。
きっと、この人がハウザー様なのだろう。
「ハウザー……っ!最期くらい、カイの言う事………聞けってんだよ!!!このままじゃ全滅だ!!!」
ハウザー様の背後から、がしっと腕を回して抱えあげる、2メートルはありそうな大柄な男が、乱暴に怒鳴る。
「リグレット!!離せ!!カイ……カイ!!」
リグレット、と呼ばれた男の腕から何とか逃れようと暴れるハウザー様に、カイと呼ばれた夕日色の髪の青年は怒りなのか苛立ちなのか……苦しそうな表情で首を横に振った。
「……このままじゃ盾が保たない。リグ、そのままエンダタールへ転移してくれ!!」
「ダメだ!!ダメだダメだダメだっ!!そんなことしたら……」
ハウザー様の悲痛な叫び虚しく、リグレットは転移魔法を展開しはじめる。
「お前の命より大切なものなどあるか!!頼むから……ハウザー…生きてくれ。……リグ、行けッ!!!」
「《転移、エンダタール城へ》!!」
「うわぁああーーーーっ!!!カイ!!!!カイーーーっ!!!!」
◆◇
………………………な、
なに、今の……。
フラッシュバックみたいに光景が浮かんだ……唐突すぎて、僕は呆然としてしまった。
ガチャン!
あっ!
しまった……コーヒーカップ………落としちゃった。
「ティルエリー様!?いかがされましたか!!」
マーティアスさんが慌てて入ってくる。
そして床に散らかった惨状に、蒼白して駆け寄る。
「マーティアスさん……すみません、カップ……落としてしまって……。」
謝ると、マーティアスさんは首を横に振り、僕の手や足元を確認してくれる。
怪我がないことが分かると、ほっとしたような顔で、微笑んでくれた。
あぁ、こういうところ、ヴォルカー様にそっくりだな。
「いいのです。お怪我はありませんか?床を掃除しますので、ソファの方にどうぞ。」
僕はソファに沈み込むと、自身の身体が少し震えていることに気付いた。
「…どうしたんですか?」
自分の腕を擦るように抱え込むと、少し震えは治まる。
「あ………うん。ちょっと、ね。後でヴォルカー様に話す……。」
ヴォルカー様なら、玻璃平原での出来事も見てたし。
あ。
マーティアスさんを信用してないってわけじゃないんだけど……!
と思って、気まずそうな顔してたかも。マーティアスさんはにっこり笑って、
「それがよろしいです。とりあえず、怪我がないなら良かったです。……こちらを片付けてきますね。新しいコーヒーをお持ちしましょうか?」
「ぁ……うんっ!お願いします!!」
ヴォルカー様にも謝らなくちゃ。高価そうなカップ、見事に割っちゃって…。
それにしても……さっきの、玻璃の盾の持ち主の記憶だよね。
盾の持ち主の魔力を貰ったことで、その人の記憶が共有されるって、言ってたから…そっか、僕自身の魔力が戻りつつあるんだ。
……でも、コーヒー飲んでるときに、とか。突然すぎでしょ………。
「……カイ、っていうんだ。玻璃の盾の持ち主…ハウザー様のブロディアの一人。ハウザー様を……守ろうとしてた。……主を地上に逃して、あの人はここで死んだんだ。」
この平和の象徴みたいな飛空島で、千年前に何があったの?
この歴史に、僕が触れても良かったのだろうか。
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