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第20章 SweetでBitterな日常
ビターな恩返し
しおりを挟む「ごめんなさい、セオ様………………」
アミィール様は帰ってきてすぐに俺に頭を下げた。なんで謝られているのか分からなくて、問うた。
「アミィ、どうしたんだい?」
「あの人格破綻皇妃がまた馬鹿みたいな企画を持ち出して…………不愉快ですよね」
「う…………………」
アミィール様は瞳を潤ませている。本当に申し訳なさそうな顔をして親のことで謝っているのだ。勿論、アミィール様が悪い訳では無い。だから慌てて言葉を紡いだ。
「あ、アミィは悪くないさ。アルティア皇妃様が破天荒過ぎるんだ」
「いいえ、わたくしがもっと強ければあんな戯言言わせないよう脅すことも出来たはずなのに………お恥ずかしいことにあのお母様に1度も勝てたことがないのです…………」
アミィールはそう言って肩を窄めて悔しそうにする。セオドアは見ていられなくて、優しく抱きしめた。
「アミィ、アミィは悪くないよ。アルティア皇妃様に勝てる者などこのユートピアに居ないだろう?」
「ですが…………」
「それよりも、アルティア皇妃様は昔からああいう………その、不思議な事を言うのかい?」
頑張ってオブラートに包んでアミィール様に聞いてみる。すると、アミィール様はほんの少し俺から離れて、目を伏せた。
「ええ。人格破綻者なので、変なことばかりするのです。わたくしが小さい頃に『おりんぴっく』がやりたいと訳の分からない事を言い出したり、『わーるどかっぷ』をやりたいと言い出したりとおかしなことばかりいうのです…………」
「…………………」
あの人はユートピアで何をやりたいんだ?前世ではスポーツ観戦が好きだったり?何にしろ滅茶苦茶である。勿論、このギャルゲー『理想郷の宝石』にも『理想郷の王冠』にもサッカーや野球などはない。スポーツと言えば剣技やダンスだろう。
セオドアは苦笑いしながらアミィールに聞く。
「で、それはどうなったんだい?」
「途中で飽きて投げ出しましたわ」
「………」
そしてやるだけやって飽きやすいと来てるからたちが悪い。なんというか、力がある人って無茶苦茶でなくてはならないとかそういうルールがなければならないのか…………?
顔を引き攣らせるセオドアに、アミィールは今にも泣きそうな顔をする。
「本当に、本当にわたくしのお母様が頭がおかしくて申し訳ございません…………」
「いやいや!アミィは何も悪くないじゃないか!……そんなに謝らないで」
セオドアはぎゅ、と優しくアミィールを抱き締める。抱きしめるとほんの少しお腹が膨らんでいるのを感じて、幸せになる。
…………アルティア皇妃様は無茶苦茶だけれど、あの人が居なかったら腕の中にいるこの愛おしい人が居なかったのは事実で。このお腹の中にいる子供達も出来ることはなかった。
あの人が居なければ俺はこんなに幸せになることはなかったんだ。…………女装は嫌だ。けれど、恩返しはしたいと常々思っていた。
そりゃあ、巻き込まれたり、変なことばかりさせられているけれど、それでもあの人も大切な俺の家族なんだ。
なら_____
「アミィ」
セオドアは優しくアミィールの名前を呼ぶ。アミィールはセオドアの顔を見上げた。優しい、困ったような顔をしつつも笑顔がある。
「私が女装しても、愛していてくれるかい?」
「もちろんです。…………わたくしこそ、男装しても好きでいてくださいますか?」
「当たり前だよ。___前、言ってくれただろう?どんなアミィでも、私は貴方を愛するよ」
セオドアはそう言ってアミィールのおでこに唇を寄せた。アミィールもそれを受けてから『わたくしもです』と言って頬にキスをした。
_____どんな格好でも、アミィール様が愛してくれるならなんでもいいか。
甘い雰囲気の中、セオドアはそう自分に言い聞かせた。
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