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第1.5章 次期龍神と生贄皇子の契約
サクリファイス大帝国に次期龍神が降り立つ
しおりを挟む「なんだあれは………………!」
「世界の……………終わりか……………!?」
サクリファイス大帝国皇城庭園。
皇城は大騒ぎだった。今度は祭りではない。上空に____巨大な生き物が飛んでいたからだ。見たことも無いほど大きな黒い生き物は眼前の城を見下ろしながら背に乗る者たちに聞く。
『………………ラフェエル、カイテル、ここ?』
「ああ」
「そうですよ。ゴミクズ……………ごほん、人間達が騒がしいですね。すこし威嚇してみましょうか……………。
"頭が高い、ひれ伏せ"」
「「「ぐあっ!!」」」
カイテルの言葉に、皇城から見上げていた人間は地面に膝を着き頭を垂れた。黒い生き物はそれを見計らって静かに降りる。庭園の薔薇は潰され、木は何本も折れた。それを見やることなく、カイテルは大きな布を黒い生き物に掛ける。黒い生き物から降り立ったのは紅銀の髪、紅い瞳の男______この国の第1皇太子、先日死んだはずの______ラフェエル・リヴ・レドルド・サクリファイスだった。
それを見計らって黒い生き物は小さくなり、少女に化ける。大きな布を羽織った長い黒髪、黄金色の瞳___アルティア=ワールド=ドラゴンだ。
「カイテル、これではラフェエルが会話出来ないわ。解除して」
「は。
"自由にしなさい"」
「「「…………!」」」
その言葉で人間は動けるようになる。
それを見計らって、ラフェエルは言葉を紡いだ。
「父上_____皇帝に取り次げ」
* * *
「り、龍神様……………此度は我が皇城に来ていただきありがとうございます………………………」
「…………………………」
私は今、サクリファイス大帝国の玉座の間で何故か玉座に座らされ、目の前でラフェエルの父親だと名乗る…………この国の皇帝に頭を下げられてる。
なんだこれ、って感じ。
最初はこうじゃなかった。カイテルが偉そうにふんぞり返っていた皇帝を言霊魔法で地面とキッスさせたのだ。
で、今に至る。
「…………まだ敬意が足りないようですね。もう一度やり直しさせますか?」
「カイテル、余計な事しないで」
「は、アルティア様!」
ワンダフルだわーん!カイテルを連れてきたのは失敗だ。ガーランドの大馬鹿者。
「コホン……………とにかく、暫くこの国に居させて欲しいの。いい?」
「も、勿論です!龍神様の御心のままに!」
ほらもー怯えきってる。やっぱり龍にならなきゃよかった。………ラフェエルの事が心配だっただけなんだ。ほら、よくあるじゃない?「なんで死んでこなかったんだ」的な理不尽な物言いを聞きたくなかったから。
ならば"龍神を従えて帰ってきた英雄"の方が幾分かマシじゃない?と思ったのだ。そしたらこの通りの有様。溜息しかでない。
それに、気に食わないことが1つ。
「ねえ、皇帝」
「な、なんでしょう…………?」
「折角帰ってきた息子をほっぽりだして私にばかり頭を下げるのって、おかしくない?
親なんでしょ、貴方」
「ヒッ」
睨みつけたら下を向いて視線を泳がせた皇帝。そしてその後ろで虫でも見るかのように軽蔑の瞳を父親に向けるラフェエル。…………だめだこりゃ。
「アルティア様、私に少しばかり発言の許可をしていただけませんか?」
「もういいわよ。カイテル、任せるわ」
「は。………………皇帝及び皇族、この城にいる全ての人間に"龍神に関する文献及び口伝"並びに"第1皇太子生還に関する文献及び口伝"を禁止する。
その動向が見つかり次第、このサクリファイス大帝国は滅ぶと言う自覚を持つように」
「は、はぁぁぁ!」
ワンダフル執事に平伏する皇帝。
それを見ながらラフェエルは口を開いた。
「何故だ?」
「龍神様は本来人間などにお姿さえ見せない存在。アルティア様の寛大な御心故の対処。それを伝承する必要は御座いません。加えて、貴方のように"特例"で生きる事を許される事は滅多に御座いません。
今後生まれてくる第1皇太子に無駄な希望を持たせない。……これは龍神様の御心です」
「…………………」
ラフェエルは再び気難しい顔をして目を閉じた。……………龍神も中々面倒臭いのね。知ってたけど。
まあ、そんなこんなで私は1つ、他の王族が泊まるために作られた部屋を貸してもらい、カイテルは言いたい放題言って帰った。
帰り際「お元気で私の龍神様美しい神子うんたらかんたら」とほざいてアトランティスに帰っていった。
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