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第1.5章 次期龍神と生贄皇子の契約
ユートピアという世界の国々
しおりを挟むサクリファイス大帝国に戻ってきて10日が経った。
火急の要件だ、と記し各国の要人達に送った手紙の返信が全てきた。運のいいことに全てがいい返事で返ってきたのは僥倖だ。
これで何処の国にも行けるようになったわけだが、問題は順番だ。
ラフェエルは机に地図を広げた。
"ユートピア"と記された地図。中心は現在地であるサクリファイス大帝国。それを囲むように4つの国が囲んでいる。
北が"聖女を信仰する"宗教国家でありサクリファイス大帝国の次に大きい皇国・セイレーン皇国。
東が"世界一美しい海"を有し、サクリファイス大帝国とセイレーン皇国には劣るものの妖精神でさえしょっちゅう出入りする平和な大国・シースクウェア大国。
西が"常に灼熱な国"___砂漠の広がる、王族や皇族ではなく人間とエルフなどの亜人で構成された国民、太陽神が支持する人間が治める国・グレンズス魔法公国……いや、大衆国と言った方が正しいか。
南が"森と土に豊穣を約束された国"・ヴァリアース大国。シースクウェア同様妖精神がよく訪れる平和な国だ。
その四国の外側に小さな国が細々と存在している。争いの絶えない、王族気取りの愚か者達が小競り合いをしている事ぐらいしか特筆することはない。王国と言うよりは村や街といっても過言ではない。……………いや、一つだけこの5つの大国から離れた大きな国があるな。
セイレーン皇国よりも先、最北に位置する"常に銀世界の広がる国"・アイスバーン。閉鎖的な国で殆ど情報がない雪国と聞いている。
とにかく、大きな国と妖精神の加護は切っても切れないのが世界の常識だ。いくら大々的に発言しなくとも高確率でこの4つの国には妖精神がいる。その国の特徴を考えればどの属性の妖精神が居るかなど想像に固くない。
シースクウェアには水、海。
ヴァリアースには土、森。
セイレーンには聖。
グレンズスには太陽、火。
そして、アイスバーンには………氷。
空と風、星は検討がつかない。地図上ではなにもわからないからだ。シースクウェアやヴァリアースのようにセイレーンやグレンズス、アイスバーンに居る可能性もある。
こればかりは「…………エル」直接出向き、妖精神に聞いた方が早い。最果ての地という"ワールドエンド"のことも「ラ………エル」含めて考えると、妖精神との会話は必須なのだ。
とにかく、だ。
最初に行くとするなら「ラファ………」やはり交流の深いシースクウェア大国が妥当だろう。堅物王子とは腐れ縁だし「………ラファエル」話も早い。もう既に馬車も手配している故明日には行くつもり____「ラフェエル~~~!!」…………………。
私は地図から目を離し、ベッドを見る。
夜着を纏ったアルティアが寝転がりながら私を見ていた。
「五月蝿いぞ」
「んなっ!話しかけても無視してた上にそれは酷くない!?ドリル………文字の練習終わったから新しいの頂戴って言おうとしたのに」
むう、とむくれるアルティアに溜息しか出ない。気品もなにもありはしない。
「明日は馬車でシースクウェアに行くから文字ではなく言葉の練習だ」
「しーすくうぇあ?どこそこ」
首を傾げるアルティアは本当になにも知らない龍神だ。
世界を統べる至上の生き物がこんな無知な者だと思うと頭が痛くなる。
話すのさえ億劫になった私は自分のベッドに横になる。
「ちょっと!教えてよ!」
「五月蝿いと何度言えばわかる?………シースクウェアに行くのに早くても20日はかかるから覚悟しておけ」
「だから!しーすくうぇあって………ぎゃぁぁぁぁ!!」
罰を落とした。アルティアはベッドの上にそのまま倒れた。これで寝れる。
ラフェエルは目を閉じた。
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