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第4章 太陽の神と土の精霊と次期龍神
次期龍神の"呪い"
しおりを挟む『はぁ…………、はぁ……………ックソが』
どんなに攻撃しても壊れない青い結界に、太陽神・ドゥルグレは毒づいた。
今体内にある魔力が僅かだ、ということを差し引いても傷一つ付けられないというのはどういうことだ?
____気に食わない。
俺は神だ。
火の精霊・フレイムを喰らい、膨大な魔力の枯渇を代償に妖精神から神へと進化した至上の生き物だ。
この国も、人も、___太陽が浮かぶユートピア全て俺の意のままなはずだ。
なのに。
未だに龍神は俺より優れているというのか?
未だに世界の頂点は遠い、というのか?
____そんなの、認めねぇ。
あんな小娘なんかよりも俺の方が優れている。
もう、10万年だ。
10万年も、この世界全てを龍神に奪われ続けていたんだ。それを取り返す為に、しきたりに唾を吐いたのだ。
俺はただ龍神に従う傀儡にはならない、と誓って______
『…………………!』
パリィン、と結界が割れた。
青い結晶が舞う中、長い黒髪を揺らし、黄金色の瞳で俺を見据えていた。
グランドの枷が外れている。余計なことを………………龍神の癖に俺の物に触るなど____許されない。
俺はグランドに向かって大声を上げた。
『グランド!!貴様の魔力を寄越せ!!』
『ッ……………』
「ふん」
『…………!』
魔力を吸おうとするが、紅銀の髪、紅い瞳の人間___龍神の選んだ、龍神の為の、龍神が"龍神"となる為の"器"が、小生意気にも結界を張った。
魔封じの結界だ。人間の癖に優秀らしい。だが、大きな勘違いをしてやがる。
『そんなもので俺を凌いだつもりか?笑わせるな!グランドで無くてもこの国の人間の魔力を吸うことができる!
この国をなんのために魔法公国にしたと思う!?この国の全てが俺の生贄なんだよ!!
グレンズスの全種族の生き物よ、俺に力を「____そんなに魔力が欲しい?」___!』
なにかに四肢を引っ張られ、膝をつく。体を見ると___いつの間にか目の前にいた龍神の影が4本の黒い鎖のような物を発して、自分の四肢を拘束していた。なんだこの能力は………………………!?立ち上がろうと暴れるも、腰を浮かす程度しか身動きが取れない。
『おい、なんとか__むぐっ!』
龍神は俺の口を手で塞いだ。そして、光を灯す黄金色の瞳を細めて妖しく笑った。
「そんなに欲しいなら____あげるわ」
『もががっ!?』
女の手から黒い光が渦巻いた。先程魔力を吸ったのとは違う、もっと禍々しく粒子のようなソレは口を通して伝わる。
今まで味わったことがない魔力。異様で、不気味で、悪寒がする魔力が身体を巡る。膨大な魔力が暴れて、俺の体はボコボコ、と音を立てて肥大する。
『はな、…………っぶ、ぐぁぁぁ!!』
破裂しそうな痛みを伴って、肥大化した身体が元の身体に戻っていく。龍神はそこでやっと手を離した。
身体が焼けるように熱い。太陽神である自分は熱さに慣れているはずなのに、だ。
だが、それを表に出してはならない。
重い身体を起こして龍神を睨みつける。
『ハッ……………魔力を奪っておきながら魔力を注ぐとは愚かな…………!貴様は自分の魔力でねじ伏せられたいのか!』
「できるものならやってみなさい」
『言われなくてもやって___っ!?』
炎を纏い、龍神に殺意を向けただけで激しい頭痛とズン、と重くなる身体。そして………………勝手に龍神の前で膝をつけてしまう。
"逆らうな"
"我らが至高の存在に不敬だ!"
"身の程をしれ!"
思考回路に知らない声が響く。それだけで息苦しくなる。
ガンガンと内側から殴られるような感覚に襲われる太陽神に、次期龍神は腕を組んで静かに言った。
「____お勉強の時間よ、神様。私の"魔力"は"私の作りだしたモノ"。生みの親である私に、その可愛い魔力達は絶対服従なの。逆らう事を許さないわ。本来、人間の死体を、生き物の死体を、あるいは土や石を使ってアンデッドを作る時に使う術なんだけど………その術を"生きたまま"施された生き物は、どうなると思う?」
龍神はしゃがみ、くい、と太陽神の顎を上げる。黄金色の瞳と金色の瞳に互いの姿を映し出す。
太陽神は体内に鳴り響く罵声に耐えながら_____恐ろしい答えを導き出した。そんなはずない。自分は神だ。そんなことが許されるわけがない。そんなことが出来るわけない。
だけど、龍神は美しく冷たい笑みを浮かべ、言葉にしてごらんなさい?と囁くように言った。
口が___半強制的に、動いた。
『龍神の、生きた奴隷となる_____………………?』
「____正解。よくできました」
太陽神の目の前が、真っ暗になった。
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