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第5.5章 次期龍神と生贄皇子の再契約
もう一度、再契約のキスを
しおりを挟む謎の女が消えて、私は1人暗闇の中にいた。格子も消えて、完全な闇の中。
女と話している時は感じなかったが、ここは寒い。暗闇が怖いわけじゃない。ただ、ここに居たくない。
私は歩き出す。しかし、どんなに歩いても暗闇しかない。けれど、歩く。
…………………会いたいんだ。
会って、話をしたい。
いつもの無意味な掛け合いをしたい。
気まぐれに罰を落としたい。
偶には優しくしてやってもいい。
アイツは馬鹿だからもっと教育をしなければならない。
妖精神を屈服させなければいけない。
沢山の理由が浮かんでは消える。それを繰り返しているうちに…………………たったひとつだけ、残った。
___ずっと、アイツの隣にいたい。
今まで否定してきたけれど、もう認めざる得ない。
いつからだ?
いつから、私は自分の気持ちをごまかしてきた?
…………………そんなのはどうでもいい。
私は______アイツが、………アルティアが、好きだ。
契約者、教育者、生贄、器……………そんなの全部どうでもいい。
龍神も、世界の謎も、そんなものも含めて、どうでもいいんだ。
私はただアルティアを愛していたいんだ。
アルティアに、会いたい______……………?
そう思った時、白い光がぶわ、と足元から発現した。綿毛が空に向かって舞うように、上に飛んでいく。それだけじゃない。
「ッ、………………」
黄色の光が私の体を浮かす。浮上していく中、細く白い女の手が自分に向けられていた。この手は____
考えるよりも先に、その手に手を伸ばした。
* * *
「ん、………………………………」
薄く、目を開く。天井には色とりどりのステンドグラスが太陽の光を浴びて、自分を照らしている。ここは……………どこだ?私は_____
「ラフェエル様!!!!」
「ラフェエル!」
「ラフェエル殿下…………!」
「貴様ら…………………」
見知った顔___リーブ、クリスティド、エリアスが私の顔を覗きこんでいた。コイツらに会うのがえらく久しぶりな気がする。それにしても……………なんで揃いも揃って泣きそうな顔をしているのだ?
そんな疑問を持ちながら起き上がると___アルティアが腰を浮かせていた。
アルティア、…………私は、お前に伝えたいことがあるんだ。いや、その前に触れさせて……………………
そう手を伸ばそうとする私より早く、アルティアは動いた。すぐに私の傍に来て______半ば無理やり、唇を重ねられた。
「っん………!?」
「………………」
突然の接吻。重なった唇から魔力が押し込まれる。すると、以前契約を交わした時に現れた沢山の魔法陣が再び出現する。黒と金色の魔法陣は、輝きながら……………あの時と全く同じように黒い魔法陣は私の右目に、金色の魔法陣は無防備にさらけ出された首筋に刻まれた。
右目が焼き付くように熱い。けどそれ以上に…………………顔全体に広がる熱の方が熱かった。
これは………………契約?それとも………………
そこまで考えたところで、唇が離れた。
アルティアはタコのように顔を真っ赤にして、黄金色の瞳に涙を溜めながら…………………………小さく笑った。
「やっと、やっと会えた____おかえり、ラフェエル」
「な、にを…………………?」
「おぼえてないなら、いい。私、私ね____やっぱり、ラフェエルが契約者がいい。ラフェエルじゃないと………………嫌だ。
もう私から…………離れないで」
アルティアはそう言って、抱き締めてきた。
何を言われているか分からない。けれど……………胸が、熱くなった。
「……………………ッああ。私は…………お前から一生、離れない」
私はアルティアを抱きしめ返した。
それを祝福するように、光が私達を照らしていた。
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