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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う

"奴隷売買国"・プリズン

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 私は、街を歩くのが好きだ。
 素朴だったり、きらびやかだったり…………城にいる兵士やメイドのように決まりきった動きしかしない人間と違って自由で、陽気な声を出して笑うのを見ると心が癒される。



 セイレーン皇国に出てから結構いろんな街を訪れていて、いつしかそう思うようになっていた。



 だから、ラフェエルが"街に行く"と言った時とても嬉しかった。




 _____なのに。




 「なによ………………この街……………………」




 アルティアは目を覆う仮面の外を見て、震えながらそう言った。
 その街は、とても汚かった。空は傘のような結界で覆われ夜のように暗い。ネオン街のようなきらびやかな看板とは対照的に周りは薄汚れてて汚い。けど、驚いたのはそこじゃない。




 「俺を、俺を買ってくれ!」



 「なんでも致します!なのでご慈悲を! 」





 「うわぁぁぁぁぁん!」



 「く、来るなぁ、俺を見るな、貴族が!」



 「んーっ!んーっ!」




 街の真ん中にある道を囲むように牢屋が立っている。その中には、老若男女の人間が声を上げて閉じ込められている。それを街ゆくきらびやかで豪華な貴族の格好をした人間_私とラフェエルと同じように仮面をつけている_が見ている。



 こんなの私の好きな街じゃない。
 私はすぐさま同じように仮面を付けたラフェエルを見た。


 「ラフェー!なによここ!なんで人がッ…………!」



 「騒ぐな、目立つ。………………ここは奴隷売買国・プリズンだ」



 「奴隷…………売買国……………?」


 「そうだ。………大国の支配下にない国にはわりとある。小国の醜い貴族ぶったゴミどもを標的に作り出した場所だ」




 「なんで、そんなに平然としていられるのよ………………こんなこと、人間がすることじゃないわ…………!」


 「____人間は、貴様のような龍神と違って醜い生き物なんだ」





 そう言い切ったラフェエルの声は、とても冷たくて。

 私の心はズキ、と痛くなった。

 _____こんなことを言うラフェエルと、一緒に居たくない。






 「………………………ッ、私!帰る!」



 「そうしろ。外でリーブ達と共に待っていろ」



 「~っ!ラフェー、いや、ラフェエルには幻滅したわ!」


 「な、おい!」



 アルティアはラフェエルの言葉を無視して走った。しかしそれは入口ではなく。街中に向かって走り出したのだ。





 あの馬鹿………………一体何がしたいんだ?



 「_____クソ」



 ラフェエルは小さく毒を吐いた。







 *  *  *





 「は、は………………………」



 私は無我夢中に走った。


 ラフェエルの馬鹿!クソ!ウンコ野郎!


 頭の中はこれでいっぱいだった。ラフェエルは確かに理不尽大魔王だし人でなしだ。けど、こういう場所には来ないと思っていた。こんな巫山戯た国に足を踏み入れるなんて思っていなかった。



 異臭ではなく胸くそ悪くて、吐きそうだ。
 人間は嫌いだし今更正義ぶる気はないけれど、それでもここまで気分が悪くなるのだから案外人の心は失っていないようだ。

 こんなことがまかり通る世界なんて本当に滅んでしまえばいいと思う。



 ______いっそ私が壊してやろうか?


 そう思って、でもすぐに首を振った。




 いや、だめだ。キリがない。人間の欲にキリなんて存在しない。人間がいる限り、欲は断ち切れない……………そんなこと、前世から知っている。





 一刻もこの場から立ち去りたい。


 でも、行けど行けど金切り声を上げる人間の入った牢屋が途切れない。



 ……………こんなに出口は遠かったっけ?




 ふと、我に返った頃には……………………薄暗い路地裏に居た。










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