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第7章 次期龍神、人狼少年を拾う
人狼少年は恐怖する
しおりを挟む「ひ……………………、お前ら!俺を守れえええ!」
少年に触れていた男が怯えた顔で叫んだ。それと同時に沢山の男達が剣を携え現れた。……………2人だけだと思ったから、ダーインスレイヴを呼んだんだけど……………読みが外れたみたいね。まあ、いいわ。
魔剣・ダーインスレイヴ、アンタの大好きな血な血をたらふく飲めるよ。よかったね。
『俺は別に血が好きなわけじゃないんだけどな…………………本当に人使いの荒いねアルティアは。
まあ、お前を死なせるわけには行かないから力は貸すけどさ。へばらないでくれよ?これは鍛錬じゃないんだからさ』
アルティアはダーインスレイヴの小言を無視して剣を握り直す。そして、襲いかかってくる人間に向かって短く一言だけいった。
「ごきげんよう____そして、さようなら」
* * *
「ぎゃぁぁぁぁ!!」
_____沢山の血が、舞う。
「ぐぁぁぁぁぁ!」
____沢山の悲鳴が、響き渡る。
「ひ、ひぃい…………こ、降参だ 、だから命だけ___ぐふっ!」
_____その真ん中で、踊るように、舞を踊るように、黒いメスが青紫色の剣を振り回す。
「あ、悪魔_____っぎ!」
______アクマ?
アクマって、なに?
顔にどろ、とした液体が頬を伝う。
触ってみたらそれは血だった。
黒い、禍々しい光の玉がそのメスの周りを舞う。
人が死ぬと現れる光の玉。それがこんなにも飛んでいる。つまり。
______メスは、自分と同じ人間を死なせているんだ。
分かった頃にはボクに触れていた人間しか立っていなかった。血の海の中、メスは静かな、恐ろしい声で言う。
「_____残りは貴方だけね」
「な、何者なんだ…………っ、すみません!お願いします!俺の、俺を殺さないでください!
なんでもしますから!」
「なんでもしてくれるの?」
「は、はい!全財産差し出します!あなたのお望みの"商品"も無料で!なので!お願いします!」
「なら______貴方の命」
「へ?」
「貴方の命を差し出しなさい」
「へ______」
メスは、人間が言い終わる前に………………人間の心臓を剣で貫いた。
一際黒い光を宿した玉が飛ぶ。その直後、メスは剣を引き抜いた。床も、壁も、青紫色の剣も、メスも、ボクも………………血だらけだ。
メスはくるり、とボクを見た。
それを見て思ったんだ。
_____次は、ボクの番だ、って。
何をされても怖くなかった。
何をやらされても怖くなかった。
なのに。
________怖い。
身体が震える、汗が出る、頭の中が真っ白になる。
長く忘れていた感情が、溢れて…………………弾けた。
* * *
『派手にやったねえ』
最後に残ったいやらしい男を殺すと、ダーインスレイヴがそう言った。皆殺し。こんなに沢山の人間を殺したのはサクリファイス大帝国以来かな?
でも、今回は違う。
私が"自分の意思"で殺したんだ。
人間の心が残っているって思っていたけど、そういうわけでもないようだ。この男たちを殺してもなんとも思わなかったし。
要は、自分が許せるか許せないかっていう勝手な尺度で物事を決めつけてるっていうだけだったようだ。
我ながら自分勝手だね。
『……………………そういうもんじゃないのか?人間って……………ああ、アルティアは龍神だったな。
あまりにも人間に似てたから忘れてた』
……ふふ、そうね。私は人間で龍神なんだ。
そこまで考えて笑みをひとつ零してから、子供を見る。
子供は血だらけだった。血がこんなに派手に流れるものなのね、剣って。見るのとやるのとでは随分違うわ。ラフェエルは殆ど血を吹き飛ばさないし、ラフェエルはやっぱり殺すのが上手いのね………………………え。
思考が停止した。
だって、子供が____目の前で、犬に化けたから。銀色の毛並みを靡かせ、身体中には刺青が沢山描かれている。大きな犬。
『あれは犬じゃなくて狼だよ』
………………狼?
『そうだ。人狼だ。………………だいぶ怯えているようだ。頭の中が殺される、怖いで溢れてるぞ』
ダーインスレイヴはそう言った。
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