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第8章 氷の精霊、星の妖精神と次期龍神
隠された真実 #1
しおりを挟む『………………………ッ』
ゼグスが静かに泣いている。
………………余程辛かったのであろう。
心の優しい者だと言うのは言葉から伝わってきていたが、ここまでだったとは思わなかった。
顔がいくら似ていても私とは偉い違いだ。
仮に私がゼグスの立場だったとしても罪に苛まれることはなかっただろう。
力の限り戦って負けた。
国民が勝手に祈りを始めた。
私は悪くない。
______きっと、そう考えた。
だからゼグスの反応は私にとっては理解ができない。
どれだけ苦しんでいるのかもわからない。
ただ、………………これだけ優しい男だからこそ、国民は慕い、命を差し出したのだろう。こういう所は参考にするべきだと思う。
最も私は______ワールドエンドで、死ぬのだが。
『_____もう君は、自分の死を受け入れているんだね』
「……………!」
ゼグスは涙を流しながら、そう言った。心を読まれたのだろう。こうすんなりと思えるのは、"そういう者達"と関わってきたからだ。
『___私が泣いたせいで本来の話が脱線してしまった。
私が君に話したかったのはそのことだ。
君が死ななければならない、理由を_____伝えておかなければと思ったから』
「……………………」
私が死ななければならない理由。
今まで、妖精神や精霊に聞いた事は全て"受け入れる器"という言葉で片付けられてきた。
私が「死ぬことを知っている」というのはゼグスもわかっている。わかっている上で聞くということは………………より詳しい話を聞ける、ということなのだろう。
怖い気持ちが産まれるのは、きっとその死に心の底から納得してないからだろう。
納得出来る理由。私が死んでアルティアになんのメリットがあるのか。
ちゃんと、理解したい。
「_____頼む」
『…………………うん、いい目だ。
まずは君も知っていることをおさらいしてみよう。
最果ての孤島、"幻の島"・ワールドエンドには"死神・ハデス"、"闇の精霊・ケルベロス"、そして"真なる王"がいる。
死神、闇の精霊は初代龍神に差し出した。その結果、"亡者達の思い"は___死を司る"龍神"となった。
龍神はその死神、闇の精霊、"真なる王"を受け入れる為の"器"………………君を必要とする。
これが君の言葉と心が知っている事だ』
ゼグスのする話は理路整然とした説明だ。分かりやすく簡潔に纏められて、改めて再認識する。
ゼグスは溢れていた涙を親指で拭い、もう一度口を開いた。
『まずは順を追って話していこう。"死神・ハデス"……何故ハデスは"妖精神"ではなく"神"と呼ばれているか、考えたことはあるかい?』
「それは………………」
わからない、とは言いたくなかった。
自分の身のことばかり考えていた事に気づく。愚かしい。ゼグスは『随分拗れた心だね』と言ってから、言葉を紡いだ。
「太陽神・ドゥルグレは火の精霊・フレイムを喰らって神になった。けど、死神・ハデスには闇の精霊・ケルベロスが居る。なのに"神"だ。それは何故か?
理由は簡単、彼が妖精神を束ねる文字通り"最上の神"だからだ。
かの御方は____現在の"龍神"の位置にいた神なのだ」
「………………!」
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