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第9章 次期龍神達の"防衛戦"
氷の精霊と不審人物
しおりを挟む『なぁんで、俺を呼ばないかな~?』
「あ、…………」
突然現れたシヴァは、軽々とボクの身体_狼の姿だから重いはずなのに_抱き上げた。
なんでシヴァが居るのか、全くわからない。
だって、アルさまと一緒に居るってリーブさんが言ってたし…………………
『なんでってな、俺はお前と契約したんだぞ?ガロ。なのに、俺を呼ぶどころかアルティアのことばっかり頭ん中で考えてよ…………………俺の存在忘れんなっつーの』
「あぶな、い、から、逃げ…………て」
槍が刺さってるせいで喋っただけで苦しい。シヴァはふ、と笑った。
「死にかけてるのに、他人の心配か?本当に優しい子だな。
____大丈夫だ、嬢ちゃん…………アルティアはきっとお前を"いい子"だと褒めるさ。
だから……………もう休め。ここは俺が持ってやるから、な?」
「……………!」
シヴァがボクの身体を降ろしたら、勝手に狼姿が人間の姿に戻ってしまった。裸姿の自分は、至る所から血が流れている。
いつの間に、こんなに傷ついていたんだ………………………まったく痛くなかった。
『…………………そこまで本気だったっつーことだろうよ。ジェラっちまうなぁ本当に。
と、それよりも』
「ッ、ひぃい…………!」
「なんだあの男…………?」
「突然現れたぞ…………!」
シヴァが見ただけで、人間のオス達は怯えた。どんな顔をしているのか…………ここからでは見えなかった。
シヴァは先程とは違って、低い声で言った。
『俺の可愛い子孫に手を出したんだ……………生きて帰れると思うなよ?人間共』
「ひっひいいい!」
オス達は逃げ出した。シヴァはポリポリと頭をかいてから『逃げ場なんてねえのに』と呟いて、手を前に出した。
『______ダイヤモンド・ダスト』
「!」
「こ、凍って………!?」
「さ、寒い………!」
「いやだぁ……………!」
シヴァが呟いただけで、逃げ出すオス達が凍った。ボク以外の全てが凍った所でパチン、と指を鳴らしたら____全部が粉々になった。
人も、建物も、木も………………って。
ガロははっ、と我に帰ってヨロヨロと震えながらシヴァの足元にくっついた。
「シヴァ、まち、こわすの、だめ」
『なあに、また作ればいい。知ってるか?街はいくらでも作り直せる。
けどなぁ……………生き物の命は、作り直せねえんだよ』
「…………………?」
そう言ったシヴァは____悲しげな顔をした。
そんなの当たり前だ、とその時は思ったけど……………ボクはちゃんと分かってなかったんだ。
この言葉の意味を知るのは、もう少し先の話。
* * *
アイスバーン・南地区。
「………………………ふぅ」
ラフェエルはそう息を吐いて、剣についた血を払った。
辺りは血と肉の海だ。
リーブの話だと大軍はこちらに集中ひていると言っていたが、こんな雑魚だったら100万人居ても1人で充分だったな。
アルティアの人形まで借りる必要は少なくともなかった。
まあ、いい。粗方片付いたのなら次の場所に行って_____『あらやだ!全員死んじゃうなんて!』…………………!
気色の悪い声が響いた。
私はすぐに剣を抜き、声のした方に刃を向けながら振り返る。
が。
「……………………!」
刃が肉を割くことはなかった。指で刃が挟まれている。
そこには_____ピンクの毛を情程度に生やした頭、顔に青髭をくっつけた派手な服_____"人ならざる者"が持つ、金色の、瞳。
『______初めまして、サクリファイス大帝国の第一皇子サマ♪』
男はにこ、と笑った。
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