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第10章 生贄皇子救出大作戦、始動
龍神の考え
しおりを挟む______どこまで飛べば、ラフェエルのところに行けるのだろう。
アルティアは自分の幻獣・聖鳥のヴァルに跨りながら、前だけを見ていた。
…………………ラフェエルは、私の為に死ぬことを理解した上で旅をしていた。
私は本当に無知でどうしようもなく愚かだったのだ。ラフェエルの気持ちを考えることも、ラフェエルの考えを理解すらしていなかったんだ。
今考えても悔しい。最初は、『なんで教えてくれなかったんだ』という気持ちさえ抱いていた。
けれどラフェエルの笑顔を思い出して、気づいた。
_____あの人は昔から、それこそ私が子供だった頃から何も変わっていないんだ。
自分の運命を受け入れ、死さえも宿命だと片付け、自ら死ぬことに躊躇しない………………そんな人だったよね。
それは、私と契約をしても、色々な国に旅をして色んなものを見ても、色んな戦いを経験しても____変われなかったんだね。
私は謝らなければならない。
そして、旅をやめようと提案しよう。
私も旅をやめて逃げ出す。一緒なら、何が敵でも大丈夫な気がする。
その為には______
「____アルティア様」
そこまで考えたところで、後ろからリーブが私の名前を呼んだ。振り返ると、リーブが茶色の目を輝かせながら見開いて、前を指さしていた。
「太陽神様の言う通り、透明化した結界がそこにあります。
解除しましょうか?」
「できそう?」
「ええ、おそらく。…………ただ、少々時間を有すると思います」
「何分くらい?」
「およそ10分ですかね…………見たことの無い魔法が編み込まれていますので、それを崩さなければ結界全てを解けませんゆえ、申し訳ございません」
「いいわ。じゃあ、私は______ 」
アルティアは、前を見た。
そこには______宙に浮いた、頭と顔にピンクの毛を申し訳程度に生やした、胸元パッカーンのド派手な服を着た金色の瞳の男の姿があった。
アルティアはそれを睨みながら、言った。
「10分だけ、遊んであげる」
_______ラフェエルを攫った奴らから奪い返さないと。
アルティアはふわり、浮遊した。
* * *
『_____やっぱり来たわね、龍神………いえ、"次期龍神"とお呼びした方がいいかしら?』
男は空中でくねり、と腰を揺らした。
喋り方といい口調といい……………この世界で初めてオカマに会った気がする。まともな話ができる気はまったくしないけど、話さないわけにもいかないようだ。
「ええ、どこぞの誰かさんが私の契約者を攫ってくれたおかげですわ?
この度はお招きいただきありがとうございます」
『あらぁ、今回の龍神と契約者はとっても敬意の足りないという噂は本当だったのね♪
あなたの話はよぉく聞いてるわ、草木も土も海もみんなみんなあなたのことを最強だと言っているのですもの。たくさんの魂が口を揃えて言うものだからどんな子かと思ったら………………まるで子供じゃない』
オカマは呆れた、と言わんばかりに肩を落とす。精霊というものは魂と話せるものなのだろうか?よくわからないけど、今はどうでもいい。
「おしゃべりしたくてわざわざここまで来たわけじゃないのよ。
____ラフェエルを返して」
『い、や、だ♪……………と言ったら?』
「勿論_______言わせないわ」
アルティアの黄金色の瞳が微かに光る。
オカマも同じように金色の瞳に光を灯した。
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