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第12章 "幻の島"・ワールドエンド
魂と思いの円舞曲
しおりを挟む「…………………………汚いな」
ぽつり、ラフェエルは声を漏らした。
遺跡の中は荒れていた。美しいものを強いてあげるのなら、ここまで来るのに見た様々な色の光の玉ぐらいだ。
そんなことを思いながら光の玉を目で追っていると____不可解なことが起きた。
「………………!」
突然、先程の老人のように半透明な人間が現れたのだ。急いで臨戦態勢を取るが、その半透明な人間_よく見れば自分と同じ紅銀の髪の男_はこちらを見ずに言葉を紡いだ。
『___この世界を変えるためなら、私は喜んでこの命を捧げる。
ラルク、どうか………龍神となってこのユートピアを救ってくれ』
そう言った男の先には____アルティアと同じ黒髪を一つに結った男。男が頷いた所でふ、と消えた。
それは私にだけ見えている訳では無いらしく、フランが震えながらダーインスレイヴに向かって声を上げた。
「な、に…………今の!なに!幽霊!?」
「_____かつてここを訪れた龍神と契約者だよ」
「で、では今のは……………!しかしなぜ…………」
動揺を隠せずにいるクリスティド。ダーインスレイヴは遠い天井を見上げながら言う。
「…………………ここは沢山の魂に満ちているんだよ。いや、魂の"思い"だな。
思いがこの特殊な教会に充満していて、記憶を映し出す…………いつまでもね。
ほら、行こう。アルティアがもうあんな所にいる」
アルティアはどんどんと躊躇なく進んでいく。ダーインスレイヴの説明を聞かなくてもわかる。
私も……………龍神の端くれだ。この教会には息が苦しくなるくらいの魂と思いが流れ込んでくるんだ。ここに長くはいたくない。そう思った。全ての意味不明な残像を掻き分けて進んでいたけど____足が、止まった。
「……………あ……………」
次の残像は_____ガーランドとカイテル、ダーインスレイヴに………………ラフェエルの顔を極限まで優しくしたような顔をした、紅銀の髪の男。
紅銀の髪の男の胸元には契約印があった。……………ガーランドの、契約者?
『____おい、サイファー』
残像のガーランドは男に声をかけた。振り返らない男に、また口を開いた。
『帰っても、いいんだぞ?今ならきっと引き返せる。俺も力を貸してやるよ』
その言葉を聞いて、サイファーと呼ばれた男は首を横に振る。
『……………その気持ちだけ受け取っておくよ、私は行かねばならない』
『はぁ…………わかったよ。もう言わねえ』
『いや!俺は何度でも言う!』
呆れたような声を出すガーランドを他所に、残像のダーインスレイヴは怒鳴った。
『サイファー、帰ろう!お前が死ぬのは………………嫌だ!』
いつものふざけた調子とは違う、真剣な声。しかしサイファーはその言葉に動じることなく言葉を返す。
『ここに来る前、いや、もっと前から……………覚悟していたことだろう?』
『あの時は…………どうかしていたんだ』
『ふふ、……私の為に悲しんでくれるのは嬉しい。けれど、私はガーランドに選ばれた契約者だ。この呪われた世界を変えるために、ここに居る。
ガーランドが気のいい男なのはお前も知っているだろう?
………………わかってくれ、ダーイン』
『…………………ッ』
サイファーとガーランドは歩き出す。ダーインスレイヴは下を向いたまま、震えていた。
そこで、残像は消えた。
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