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非常識とグリモア・ブック
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【魔人の国・ナイディカ村】
大成達は、時間があったので村に戻って復興の手伝いをしていた。
手伝いをしながら大成は、魔力を細かくコントロールして色々と試していた。
【魔人の国・ナイディカ村・おばさんの家】
結局、大成達は夕方まで復興の手伝いをして本日の作業が終わった。
大成達は、おばさんの家で夕飯を頂いている最中に、今日中に屋敷に戻ることを話した。
「嫌~!嫌~!いっや~!お兄ちゃんが、どっか行くなんて、ぜった~い、嫌~!」
エターヌは大成に抱きついて離れず、大成達は困った。
そんな時…。
「エターヌ、寂しいのはわかるわ。でも、姫様やウルミラ様、大成君に迷惑かけたらダメよ」
おばさんはエターヌの傍へ行き、後ろからエターヌの両片に手を置いて話す。
「で、でも~、嫌なのは嫌だよ~」
エターヌは涙目になり、大成に顔を当てしがみつく。
「ごめん、エターヌ。寂しいのは僕も同じだよ。でも、できる限り今回のようなことが、起きないようにしたい。そのために、僕は強くなって魔王を決める大会で優勝し、この国の魔王になってエターヌ達や皆を守りたいんだ」
エターヌの頭を優しく撫でながら、大成は目をそらさず真剣に話した。
ジャンヌとウルミラは、知っていたことなので驚かなかったが…。
「え?え?大成君、あなたも出場するの?でも、確かヘルレウスのリーダーでおられるローケンス様も出場することになっているわよ。こう言ったら失礼なのだけど、大成君は人間よね。その前に出場できるのかしら?」
驚いたおばさんは、気になっていたことを口にする。
おばさんの疑問は的確だった。
人間である大成が出場できるのか?
出場しても、ローケンスが優勝すると思う人が大半、いや、殆どの人がそう思っている。
それに、人間の勇者が魔王を倒して、この魔人の国を混乱させた元凶なのだ。
もし仮に大成が優勝しても、誰も納得しないかもしれないと正直におばさんは思った。
おばさんの言い分を聞いた大成は、不安になる。
「そ、そういえば、僕は人間だけど出場できるのかな?」
「心配しないで良いわ、大成。あなたは、異世界の人だから大丈夫よ」
「ですね。きっと説明すれば大丈夫です」
「いざとなったら、私の権限で意地でも通すから」
ジャンヌは、胸を張った。
「それは、良かったよ。そういうことで、わかってくれないかな。エターヌ」
苦笑いを浮かべた大成は、エターヌに振り向く。
「えっ!?ねぇ、今、異世界って言ったわよね?」
「お兄ちゃん、すご~い!」
おばさんは驚いたが、エターヌは先程の態度と違い目を輝かしていた。
「はい、そうです。僕は、ジャンヌとウルミラからこの世界に魔王候補として召喚されました。まぁ、僕の世界は魔法がなかったので魔法に関してはド素人なのですけどね。でも、少しでもできることをして魔王になって、このナイディカだけでなく、魔人の国全土を活気に溢れた国にして行きたいと思ってます」
「立派ね、応援するわ」
「ありがとうございます」
「エターヌも、大成君の話を聞いてわかったでしょう?」
「で、でも、う、うぅ~。なら、お兄ちゃん約束して、ぜった~い優勝して、魔王様になるって」
エターヌは上目使いで大成を見る。
「うん。約束するよ。指切りげんまん、嘘ついたら針千本の~ます、指切った」
大成は、エターヌと指切りをして約束した。
「よく、わからないけど、絶対だよ!お兄ちゃん」
「わかった」
大成はエターヌの頭を撫でて、エターヌは笑顔になったがその瞳には薄らと涙が見えていた。
そして、食事が終わり、別れの時間がやってきた。
「おばさん、本当にありがとうございました。お世話になりました」
「「ありがとうございました」」
ジャンヌに続いて、大成とウルミラもお礼を言った。
「こちらこそ復興を手伝って頂き、ありがとうございます。ほら、エターヌも」
おばさんが、エターヌの背中を少し押した。
「お兄ちゃん達、ありがとう」
「またな、エターヌ」
「またね、エターヌ」
「また会いましょう、エターヌちゃん」
大成はエターヌの頭を撫でて、大成達は後ろ向いて歩き出す。
「お、お兄ちゃ~ん」
エターヌは、走り後ろから大成に抱きついた。
「また、来るから」
大成は振り向き、地面に膝を付きエターヌの頭を撫でる。
「うん、絶対だよ」
「わかった、約束するよ」
大成達は、再び後ろ向いて歩き出す。
「バイバイ~!」
エターヌは、泣きながら大成が見えなくなるまで、大きく手を振るった。
【魔人の国・ラーバス国・屋敷】
屋敷に辿り着いた時には、日は完全に沈み月が登っていた。
気が付けば、月は普段の薄い黄色に戻っていた。
「やっと、帰りついたわね」
「ですね」
「だね」
ジャンヌ達は、戻って来たことを実感すると自然と口元に笑みを浮かべ屋敷に入る。
「えっ?!ひ、姫様!ウルミラ様、お帰りなさいませ。湯浴び致しますか?」
ジャンヌ達の予定を知らされていなかったメイド達は、大成達が帰ってくるとは思っておらず慌てる。
「ただいま。まだ、いいわ。それより、今から【解析の間】を使用するから魔鉱盤を1枚持ってきて欲しいの」
「ただいまです」
「お邪魔します」
「わかりました。姫様」
メイドはお辞儀をして駆け足で取りに行き、ジャンヌ達は一階にある【解析の間】に向かった。
【魔人の国・ラーバス国・屋敷一階・解析の間】
大成達は、【解析の間】に着いた。
「じゃあ、開けるわよ。」
ジャンヌが扉の中央に埋め込まれている魔石に手を触れて魔力を流す。
魔石が赤く輝き、ゆっくりと重厚感のある音を立てながら扉が左右にスライドして開いた。
魔王の血筋の者の魔力でしか、【解析の間】の扉は開かないようになっている。
大成達が部屋に入ると、部屋に設置された魔石が明かりを灯し、扉は再び音を立てながら閉まった。
部屋の中は、奥の床に【召喚の間】みたいな大きな魔法陣が描かれていた。
違うとしたら、【召喚の間】は魔法陣だけだったが、【解析の間】は円形の魔法陣と魔法陣に繋がっている幅2メートルの通路が一直線に通っており、周りは水に囲まれていることだった。
「何か、屋敷の中とは思えない場所だね…」
部屋の中を見て、大成は苦笑を浮かべる。
「そうかしら?」
「そうですかね?」
ジャンヌとウルミラは、お互いの顔を見合わせて頭を傾げた。
「いや、普通じゃないから」
大成が苦笑いを浮かべた時、扉からコンコンっとノックが聞こえたので、ジャンヌは扉の魔石に触れて魔力を流し解錠する。
「姫様、魔鉱盤を持って参りました。どうぞ」
扉の前にメイドがおり、黒い板一枚をジャンヌに渡した。
「ありがとう」
「では、私は、これで失礼します」
ジャンヌは板を受け取り、メイドはお辞儀をして部屋から退出する。
「大成、あなたは、これを持って魔法陣の中央に立って板に魔力を流せば、あなたの能力がわかるわ」
ジャンヌは、説明しながら大成に板を渡した。
「わかったよ」
板を受け取った大成は、ゆっくりと魔法陣に向かう。
そして、大成は魔法陣の中央に辿り着き、1度、深く深呼吸する。
「じゃあ、魔力を流すよ」
「ええ、いいわよ」
ジャンヌに確認した大成は、両手で持っている板に魔力を流す。
そうすると、持っている板と共鳴する様に床に描かれている魔法陣が輝き出して周りの水が勢い良く板に吸い込まれていく。
「なっ!?ぐっ…」
結構、水圧の反動が凄く、大成は板を落とさないように手に力を入れて耐える。
そして、何事もなかったように水は途中で消え、大成が持っている板に文字が掘られていた。
「大成、大丈夫?」
「大成さん、大丈夫ですか?」
心配したジャンヌとウルミラは、大成の傍に駆けつけた。
「大丈夫だけど、板が水を吸い込むことを教えて欲しかったかな。危うく板を落としそうになったよ」
苦笑いしながら大成は、ジャンヌとウルミラに歩み寄る。
「ごめんなさい、言い忘れていたわ。滅多にユニーク・スキルの人が居ないから」
「すみません、大成さん」
本当に忘れていたジャンヌとウルミラは、苦笑いしながら謝った。
「そうなんだ」
「それより、大成。私達も、あなたに渡した板を見せて欲しいのだけど」
「私も見ても良いですか?」
「別に構わないよ」
大成は、ジャンヌとウルミラに板を渡した。
「えっ!?何なの?」
「えっ!?こんなの、今まで見たことないです」
「ん?どうしたの?」
ジャンヌとウルミラの反応が気になった大成は、2人に渡した板を覗いた。
板に空白の場所があった。
スキル名称:グリモア・ブック
効果・能力:
大事な効果・能力のところが空白だった。
「何これ?肝心な大事な効果が何も書かれていないけど…。やり方間違っていた?」
「いいえ、合っていたわ。私も、わからないの。今まで、こんなことなかったから…」
「ですね…」
「まぁ、考えても答えがでなさそうだから。とりあえず、グリモア・ブックを出して実際に確かめてみようと思うけど。どうしたら使うことができる?」
「私達の魔法と同じなら、創造しながら魔力を込めて魔法名を唱えたら発動できるかもしれないわ」
「そうですね、その可能性が高いです。魔法は、イメージ力が大切ですから」
ジャンヌとウルミラが予想する。
「ブックだから、本をイメージすれば良いのか…」
大成は、本をイメージしながら右手の掌に魔力を込める。
「グリモア・ブック」
大成が唱えた瞬間、掌の上に魔力が収束していき一冊の本の形に変化し光り輝く。
そして、輝きが消えると掌に厚みのある本が出現した。
大成は本に重さがないことに気付き、そして、自由に動かせれるか試してみる。
結果、グリモアは自由自在に飛んだり停止したりして、イメージした通りに動かせることに気が付いた。
「「……。」」
ジャンヌとウルミラは、呆然と生き物みたいに空中を飛び回るグリモアを眺めていた。
ジャンヌとウルミラは、ハッと我に返る。
「と、ところで大成。その本には、何が書いてあるの?」
「そうですね、とても気になります」
大成の魔法名称を知った時から、2人は気になっていた。
「そういえば、そうだった」
すっかり忘れていた大成は、グリモアを手元に戻す。
「「……。」」
大成達は、あまりの緊張に息を呑み、ゆっくりと大成はグリモアを開く。
グリモアの中に書かれていたのは…。
氷魔法
アイス・ソード
アイス・ウォール
アイス・ミサイル
アイス・シャワー
炎魔法
ファイヤー・アロー
ファイヤー・ボール
土魔法
アース・ショット
アース・ニードル
アース・スピア
風魔法
エア・クッション
無属性
拘束
レジナンス
1ページに1つの魔法の名と効果、そして、魔法陣が書かれていただけで他のページは空白だった。
大成達に沈黙が訪れる。
「こ、こんな場合もあるから落ち込まないで、大成」
「そ、そうですよ。大成さんには、頭脳と武術、凄い魔力で肉体強化があります。きっと、どんな相手でも倒せますよ」
「そ、そうよね、ウルミラ」
「は、はい。なので、落ち込まないで下さい。大成さん」
ジャンヌとウルミラは、グリモア・ブックの能力は魔法の解析だと思い込み、大成に慰めの言葉をかける。
なぜ思い込んだかというと、ユニーク属性は他の属性の魔法が全く使えないのが常識だったからだ。
大成は無言でジッとグリモアを見つめたまま沈黙しており、その傍ではジャンヌとウルミラはどう励ませば良いのかを考えている。
「ねぇ、2人とも。この屋敷に魔法書を保管している場所とかないかな?」
「あ、あるわよ」
「旧館に魔法書図書館があります」
慌ててジャンヌとウルミラは答える。
「じゃあ、案内して欲しい」
大成達は、【解析の間】を後にして旧館にある魔法書図書館に向かった。
【魔人の国・ラーバス国・旧館一階・魔法書図書館】
大成達は、【魔法書図書館】に着いた。
魔法陣が模様の描かれた扉の中央には、六角型の形をした凹みがあり、ジャンヌは凹みに手をかざして魔力を流し込むと模様が輝き出して自動的に扉が開いた。
部屋の中は広く中央に大きなテーブルあり、周りには沢山の本棚があった。
本棚の本は全て整理整頓されており、どことなく懐かしい本の香りが部屋中に充満している。
大成は、近くの本棚から適当に本・魔法書を手に取り、テーブルについて魔法書に目を通し、すぐにグリモアを出した。
「やはり、合っていた。アハハハ…」
大成は、グリモアを開いて内容を見て笑う。
「「えっ!?」」
ジャンヌとウルミラは、訳がわからず頭を傾げる。
「大成、私達にも教えて貰えないかしら」
「できれば、私も教えて欲しいです」
ジャンヌとウルミラは気になり、大成に歩み寄る。
「別に構わないけど。その前に訓練所か外に出ない?そこで説明した方が良い」
「わかったわ」
こうして、大成の提案でジャンヌ達は外に出ることにした。
【魔人の国・ラーバス国・スルト荒野】
大成達は、屋敷から少し離れたスルト荒野に着いた。
「じゃあ、試しに軽くグリモア・ブック。ファイア・アロー」
右手にグリモアを召喚した大成は、左手を伸ばして炎魔法ファイア・アローを唱えると大成の周りに3本の炎の矢が出現した。
そして、手を向けた方角の先にある大きな岩に向けて、大成は炎の矢を放ち命中させた。
岩は破裂して、直撃した箇所が赤く熔けた。
「う、嘘…」
「し、信じられません…」
ジャンヌとウルミラは唖然として戦慄した。
ユニークは、他の属性の魔法が全く使えないという常識が崩壊した瞬間だった。
大成は、そんな2人に構わずに次々に魔法を唱え続ける。
「アイス・ミサイル、アース・ショット、アイス・ウォール、アイス・ソード」
大成の魔法によって大地が抉れ、木々がへし折れた。
「「……。」」
ジャンヌとウルミラは、その光景をただ呆然と見ていた。
大成は、自分の右手の親指の腹を少し噛んで血を流す。
「最後にヒール」
【魔法書図書館】で見た大成は、光魔法ヒールを唱え、親指が輝いて傷があっという間に治った。
「予想通りの結果だな。まぁ、こんな感じかな。僕のユニーク・スキル、【グリモア・ブック】は、この目で見た魔法や魔法書で見た魔法が自由自在に使える能力なんだ。まぁ、同じユニーク・スキルは無理みたいだけどね。美咲さんの【ドール・マスター】は記載されていないから使えない」
大成は、グリモアを閉じて説明をした。
「ひ、非常識だわ!普通は、ユニークは他の属性魔法が使えないはずなのに…。大成、あなたのグリモア・ブックなら、ユニーク以外の属性は訓練しなくても全ての魔法が使えるということになるわよね?特に禁術や大魔法は取得するのに、どれだけ大変かわかっているの?中には何十年も特訓しても取得できない人達がいるのよ」
「す、凄い能力です。大成さん!」
「まぁ、見た魔法なら使えるね。正直、自分でも驚いているよ」
ジャンヌとウルミラ、いや、大成自身もチート過ぎる能力だと思った。
なぜなら、秘匿し発表されてないオリジナルの禁術や解明されてない魔法陣などでも、見てしまえば使用可能になるのだ。
大成は初めてグリモアを開いた時、すぐに見たことのある魔法しか記載されてなかったことに気付いた。
そして、なぜか使えそうな感覚がしたのだ。
そこで、もしグリモアに記載された魔法が使えるかも知れないという仮説をたてた大成は、確認するために魔法書に目を通してグリモアを確認したら予想通りだったのだった。
大成達は、時間があったので村に戻って復興の手伝いをしていた。
手伝いをしながら大成は、魔力を細かくコントロールして色々と試していた。
【魔人の国・ナイディカ村・おばさんの家】
結局、大成達は夕方まで復興の手伝いをして本日の作業が終わった。
大成達は、おばさんの家で夕飯を頂いている最中に、今日中に屋敷に戻ることを話した。
「嫌~!嫌~!いっや~!お兄ちゃんが、どっか行くなんて、ぜった~い、嫌~!」
エターヌは大成に抱きついて離れず、大成達は困った。
そんな時…。
「エターヌ、寂しいのはわかるわ。でも、姫様やウルミラ様、大成君に迷惑かけたらダメよ」
おばさんはエターヌの傍へ行き、後ろからエターヌの両片に手を置いて話す。
「で、でも~、嫌なのは嫌だよ~」
エターヌは涙目になり、大成に顔を当てしがみつく。
「ごめん、エターヌ。寂しいのは僕も同じだよ。でも、できる限り今回のようなことが、起きないようにしたい。そのために、僕は強くなって魔王を決める大会で優勝し、この国の魔王になってエターヌ達や皆を守りたいんだ」
エターヌの頭を優しく撫でながら、大成は目をそらさず真剣に話した。
ジャンヌとウルミラは、知っていたことなので驚かなかったが…。
「え?え?大成君、あなたも出場するの?でも、確かヘルレウスのリーダーでおられるローケンス様も出場することになっているわよ。こう言ったら失礼なのだけど、大成君は人間よね。その前に出場できるのかしら?」
驚いたおばさんは、気になっていたことを口にする。
おばさんの疑問は的確だった。
人間である大成が出場できるのか?
出場しても、ローケンスが優勝すると思う人が大半、いや、殆どの人がそう思っている。
それに、人間の勇者が魔王を倒して、この魔人の国を混乱させた元凶なのだ。
もし仮に大成が優勝しても、誰も納得しないかもしれないと正直におばさんは思った。
おばさんの言い分を聞いた大成は、不安になる。
「そ、そういえば、僕は人間だけど出場できるのかな?」
「心配しないで良いわ、大成。あなたは、異世界の人だから大丈夫よ」
「ですね。きっと説明すれば大丈夫です」
「いざとなったら、私の権限で意地でも通すから」
ジャンヌは、胸を張った。
「それは、良かったよ。そういうことで、わかってくれないかな。エターヌ」
苦笑いを浮かべた大成は、エターヌに振り向く。
「えっ!?ねぇ、今、異世界って言ったわよね?」
「お兄ちゃん、すご~い!」
おばさんは驚いたが、エターヌは先程の態度と違い目を輝かしていた。
「はい、そうです。僕は、ジャンヌとウルミラからこの世界に魔王候補として召喚されました。まぁ、僕の世界は魔法がなかったので魔法に関してはド素人なのですけどね。でも、少しでもできることをして魔王になって、このナイディカだけでなく、魔人の国全土を活気に溢れた国にして行きたいと思ってます」
「立派ね、応援するわ」
「ありがとうございます」
「エターヌも、大成君の話を聞いてわかったでしょう?」
「で、でも、う、うぅ~。なら、お兄ちゃん約束して、ぜった~い優勝して、魔王様になるって」
エターヌは上目使いで大成を見る。
「うん。約束するよ。指切りげんまん、嘘ついたら針千本の~ます、指切った」
大成は、エターヌと指切りをして約束した。
「よく、わからないけど、絶対だよ!お兄ちゃん」
「わかった」
大成はエターヌの頭を撫でて、エターヌは笑顔になったがその瞳には薄らと涙が見えていた。
そして、食事が終わり、別れの時間がやってきた。
「おばさん、本当にありがとうございました。お世話になりました」
「「ありがとうございました」」
ジャンヌに続いて、大成とウルミラもお礼を言った。
「こちらこそ復興を手伝って頂き、ありがとうございます。ほら、エターヌも」
おばさんが、エターヌの背中を少し押した。
「お兄ちゃん達、ありがとう」
「またな、エターヌ」
「またね、エターヌ」
「また会いましょう、エターヌちゃん」
大成はエターヌの頭を撫でて、大成達は後ろ向いて歩き出す。
「お、お兄ちゃ~ん」
エターヌは、走り後ろから大成に抱きついた。
「また、来るから」
大成は振り向き、地面に膝を付きエターヌの頭を撫でる。
「うん、絶対だよ」
「わかった、約束するよ」
大成達は、再び後ろ向いて歩き出す。
「バイバイ~!」
エターヌは、泣きながら大成が見えなくなるまで、大きく手を振るった。
【魔人の国・ラーバス国・屋敷】
屋敷に辿り着いた時には、日は完全に沈み月が登っていた。
気が付けば、月は普段の薄い黄色に戻っていた。
「やっと、帰りついたわね」
「ですね」
「だね」
ジャンヌ達は、戻って来たことを実感すると自然と口元に笑みを浮かべ屋敷に入る。
「えっ?!ひ、姫様!ウルミラ様、お帰りなさいませ。湯浴び致しますか?」
ジャンヌ達の予定を知らされていなかったメイド達は、大成達が帰ってくるとは思っておらず慌てる。
「ただいま。まだ、いいわ。それより、今から【解析の間】を使用するから魔鉱盤を1枚持ってきて欲しいの」
「ただいまです」
「お邪魔します」
「わかりました。姫様」
メイドはお辞儀をして駆け足で取りに行き、ジャンヌ達は一階にある【解析の間】に向かった。
【魔人の国・ラーバス国・屋敷一階・解析の間】
大成達は、【解析の間】に着いた。
「じゃあ、開けるわよ。」
ジャンヌが扉の中央に埋め込まれている魔石に手を触れて魔力を流す。
魔石が赤く輝き、ゆっくりと重厚感のある音を立てながら扉が左右にスライドして開いた。
魔王の血筋の者の魔力でしか、【解析の間】の扉は開かないようになっている。
大成達が部屋に入ると、部屋に設置された魔石が明かりを灯し、扉は再び音を立てながら閉まった。
部屋の中は、奥の床に【召喚の間】みたいな大きな魔法陣が描かれていた。
違うとしたら、【召喚の間】は魔法陣だけだったが、【解析の間】は円形の魔法陣と魔法陣に繋がっている幅2メートルの通路が一直線に通っており、周りは水に囲まれていることだった。
「何か、屋敷の中とは思えない場所だね…」
部屋の中を見て、大成は苦笑を浮かべる。
「そうかしら?」
「そうですかね?」
ジャンヌとウルミラは、お互いの顔を見合わせて頭を傾げた。
「いや、普通じゃないから」
大成が苦笑いを浮かべた時、扉からコンコンっとノックが聞こえたので、ジャンヌは扉の魔石に触れて魔力を流し解錠する。
「姫様、魔鉱盤を持って参りました。どうぞ」
扉の前にメイドがおり、黒い板一枚をジャンヌに渡した。
「ありがとう」
「では、私は、これで失礼します」
ジャンヌは板を受け取り、メイドはお辞儀をして部屋から退出する。
「大成、あなたは、これを持って魔法陣の中央に立って板に魔力を流せば、あなたの能力がわかるわ」
ジャンヌは、説明しながら大成に板を渡した。
「わかったよ」
板を受け取った大成は、ゆっくりと魔法陣に向かう。
そして、大成は魔法陣の中央に辿り着き、1度、深く深呼吸する。
「じゃあ、魔力を流すよ」
「ええ、いいわよ」
ジャンヌに確認した大成は、両手で持っている板に魔力を流す。
そうすると、持っている板と共鳴する様に床に描かれている魔法陣が輝き出して周りの水が勢い良く板に吸い込まれていく。
「なっ!?ぐっ…」
結構、水圧の反動が凄く、大成は板を落とさないように手に力を入れて耐える。
そして、何事もなかったように水は途中で消え、大成が持っている板に文字が掘られていた。
「大成、大丈夫?」
「大成さん、大丈夫ですか?」
心配したジャンヌとウルミラは、大成の傍に駆けつけた。
「大丈夫だけど、板が水を吸い込むことを教えて欲しかったかな。危うく板を落としそうになったよ」
苦笑いしながら大成は、ジャンヌとウルミラに歩み寄る。
「ごめんなさい、言い忘れていたわ。滅多にユニーク・スキルの人が居ないから」
「すみません、大成さん」
本当に忘れていたジャンヌとウルミラは、苦笑いしながら謝った。
「そうなんだ」
「それより、大成。私達も、あなたに渡した板を見せて欲しいのだけど」
「私も見ても良いですか?」
「別に構わないよ」
大成は、ジャンヌとウルミラに板を渡した。
「えっ!?何なの?」
「えっ!?こんなの、今まで見たことないです」
「ん?どうしたの?」
ジャンヌとウルミラの反応が気になった大成は、2人に渡した板を覗いた。
板に空白の場所があった。
スキル名称:グリモア・ブック
効果・能力:
大事な効果・能力のところが空白だった。
「何これ?肝心な大事な効果が何も書かれていないけど…。やり方間違っていた?」
「いいえ、合っていたわ。私も、わからないの。今まで、こんなことなかったから…」
「ですね…」
「まぁ、考えても答えがでなさそうだから。とりあえず、グリモア・ブックを出して実際に確かめてみようと思うけど。どうしたら使うことができる?」
「私達の魔法と同じなら、創造しながら魔力を込めて魔法名を唱えたら発動できるかもしれないわ」
「そうですね、その可能性が高いです。魔法は、イメージ力が大切ですから」
ジャンヌとウルミラが予想する。
「ブックだから、本をイメージすれば良いのか…」
大成は、本をイメージしながら右手の掌に魔力を込める。
「グリモア・ブック」
大成が唱えた瞬間、掌の上に魔力が収束していき一冊の本の形に変化し光り輝く。
そして、輝きが消えると掌に厚みのある本が出現した。
大成は本に重さがないことに気付き、そして、自由に動かせれるか試してみる。
結果、グリモアは自由自在に飛んだり停止したりして、イメージした通りに動かせることに気が付いた。
「「……。」」
ジャンヌとウルミラは、呆然と生き物みたいに空中を飛び回るグリモアを眺めていた。
ジャンヌとウルミラは、ハッと我に返る。
「と、ところで大成。その本には、何が書いてあるの?」
「そうですね、とても気になります」
大成の魔法名称を知った時から、2人は気になっていた。
「そういえば、そうだった」
すっかり忘れていた大成は、グリモアを手元に戻す。
「「……。」」
大成達は、あまりの緊張に息を呑み、ゆっくりと大成はグリモアを開く。
グリモアの中に書かれていたのは…。
氷魔法
アイス・ソード
アイス・ウォール
アイス・ミサイル
アイス・シャワー
炎魔法
ファイヤー・アロー
ファイヤー・ボール
土魔法
アース・ショット
アース・ニードル
アース・スピア
風魔法
エア・クッション
無属性
拘束
レジナンス
1ページに1つの魔法の名と効果、そして、魔法陣が書かれていただけで他のページは空白だった。
大成達に沈黙が訪れる。
「こ、こんな場合もあるから落ち込まないで、大成」
「そ、そうですよ。大成さんには、頭脳と武術、凄い魔力で肉体強化があります。きっと、どんな相手でも倒せますよ」
「そ、そうよね、ウルミラ」
「は、はい。なので、落ち込まないで下さい。大成さん」
ジャンヌとウルミラは、グリモア・ブックの能力は魔法の解析だと思い込み、大成に慰めの言葉をかける。
なぜ思い込んだかというと、ユニーク属性は他の属性の魔法が全く使えないのが常識だったからだ。
大成は無言でジッとグリモアを見つめたまま沈黙しており、その傍ではジャンヌとウルミラはどう励ませば良いのかを考えている。
「ねぇ、2人とも。この屋敷に魔法書を保管している場所とかないかな?」
「あ、あるわよ」
「旧館に魔法書図書館があります」
慌ててジャンヌとウルミラは答える。
「じゃあ、案内して欲しい」
大成達は、【解析の間】を後にして旧館にある魔法書図書館に向かった。
【魔人の国・ラーバス国・旧館一階・魔法書図書館】
大成達は、【魔法書図書館】に着いた。
魔法陣が模様の描かれた扉の中央には、六角型の形をした凹みがあり、ジャンヌは凹みに手をかざして魔力を流し込むと模様が輝き出して自動的に扉が開いた。
部屋の中は広く中央に大きなテーブルあり、周りには沢山の本棚があった。
本棚の本は全て整理整頓されており、どことなく懐かしい本の香りが部屋中に充満している。
大成は、近くの本棚から適当に本・魔法書を手に取り、テーブルについて魔法書に目を通し、すぐにグリモアを出した。
「やはり、合っていた。アハハハ…」
大成は、グリモアを開いて内容を見て笑う。
「「えっ!?」」
ジャンヌとウルミラは、訳がわからず頭を傾げる。
「大成、私達にも教えて貰えないかしら」
「できれば、私も教えて欲しいです」
ジャンヌとウルミラは気になり、大成に歩み寄る。
「別に構わないけど。その前に訓練所か外に出ない?そこで説明した方が良い」
「わかったわ」
こうして、大成の提案でジャンヌ達は外に出ることにした。
【魔人の国・ラーバス国・スルト荒野】
大成達は、屋敷から少し離れたスルト荒野に着いた。
「じゃあ、試しに軽くグリモア・ブック。ファイア・アロー」
右手にグリモアを召喚した大成は、左手を伸ばして炎魔法ファイア・アローを唱えると大成の周りに3本の炎の矢が出現した。
そして、手を向けた方角の先にある大きな岩に向けて、大成は炎の矢を放ち命中させた。
岩は破裂して、直撃した箇所が赤く熔けた。
「う、嘘…」
「し、信じられません…」
ジャンヌとウルミラは唖然として戦慄した。
ユニークは、他の属性の魔法が全く使えないという常識が崩壊した瞬間だった。
大成は、そんな2人に構わずに次々に魔法を唱え続ける。
「アイス・ミサイル、アース・ショット、アイス・ウォール、アイス・ソード」
大成の魔法によって大地が抉れ、木々がへし折れた。
「「……。」」
ジャンヌとウルミラは、その光景をただ呆然と見ていた。
大成は、自分の右手の親指の腹を少し噛んで血を流す。
「最後にヒール」
【魔法書図書館】で見た大成は、光魔法ヒールを唱え、親指が輝いて傷があっという間に治った。
「予想通りの結果だな。まぁ、こんな感じかな。僕のユニーク・スキル、【グリモア・ブック】は、この目で見た魔法や魔法書で見た魔法が自由自在に使える能力なんだ。まぁ、同じユニーク・スキルは無理みたいだけどね。美咲さんの【ドール・マスター】は記載されていないから使えない」
大成は、グリモアを閉じて説明をした。
「ひ、非常識だわ!普通は、ユニークは他の属性魔法が使えないはずなのに…。大成、あなたのグリモア・ブックなら、ユニーク以外の属性は訓練しなくても全ての魔法が使えるということになるわよね?特に禁術や大魔法は取得するのに、どれだけ大変かわかっているの?中には何十年も特訓しても取得できない人達がいるのよ」
「す、凄い能力です。大成さん!」
「まぁ、見た魔法なら使えるね。正直、自分でも驚いているよ」
ジャンヌとウルミラ、いや、大成自身もチート過ぎる能力だと思った。
なぜなら、秘匿し発表されてないオリジナルの禁術や解明されてない魔法陣などでも、見てしまえば使用可能になるのだ。
大成は初めてグリモアを開いた時、すぐに見たことのある魔法しか記載されてなかったことに気付いた。
そして、なぜか使えそうな感覚がしたのだ。
そこで、もしグリモアに記載された魔法が使えるかも知れないという仮説をたてた大成は、確認するために魔法書に目を通してグリモアを確認したら予想通りだったのだった。
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