異世界から魔王候補として召喚された

フミナベ

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マルチスと練習プラン

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【ラーバス学園・教室】

クラスマッチのルールブックによると、魔法カードバトルは両者に魔法陣が刻印された同じカードが渡され、それを使用しバトルする。

カード以外の攻撃(魔法、武術など)は禁止。
カードは多目に魔力を込めても、威力は抑えられるので戦術と判断で勝敗が決まるようになっている。
 
 
バルーン競技は、2人1組でする競技で直径1メートルのバルーンが各チームに1つ渡される。
そのバルーンを破壊されたり、地面に落としたら負けとなる。
勝利条件は、バルーンを無事にゴールまで運ぶこと。
勿論、魔法で邪魔をしたり防いだりするのはあり。
 
 
ペア戦は、ランキング戦と同じで武器は木製で出来ていれば使用可能。
選手2人とも、気絶か降参で負けとなる。
男女ペアではないといけない。
例、心は女の子でも、性別が男なら男としてカウントされる。
 
サバイバル競技は、1人1人転移魔法陣で森の中にランダムで転移され、ブザーが鳴り響いたら競技開始となる。
制限時間があり、生徒が多く生き残ったクラスが勝ちとなる。
 
 
射的競技は、指定された色など条件にあったボールを先に撃ち抜いた人の勝ちとなる。
ボールは上から落ちたり、下から吹き上がってきたりして色んな色や形のボールが沢山出てくる。
これは、早打ちと言った方が良い。
 
 
代表に選ばれたクラスメイトの選手達は、大成の傍に集まっていた。
 
「俺達は、どうすれば勝てる?」
「大和君、射的なんだけど。どうすれば上手くなる?」
大成は、魔法カードバトルに出る男子達や早打ち競技に出る2人など相談されていた。
 
「僕はルールしか聞いてないから、あまり詳しくないけど。それでも良いのなら」
大成は本当に困った。
 
「「些細なことでも!」」
皆は身を乗り出すように大成に懇願した。

「アハハハ…。わかったよ、じゃあ…。」
もう苦笑いするしかできなかった大成は、皆にアドバイスをした。
 
 
アドバイスを終えた後、ジャンヌが闇魔法ブラインドを唱え外から練習をしているところを見えない様にしてから、それぞれ練習を開始した。
 
 
「ねぇ、大和君。ところで、君は前衛と後衛どっちが良い?」
バルーンの練習が終わったルネルは、ペア戦のパートナーになった大成に尋ねる。
 
「あ、ごめん。言ってなかったね。お互い、自由に行動しよう。役割を決めるのは良いけど、ルネルさんの強さなら大抵どうにかなると思うし、何かあったら僕が助けるよ。まぁ、僕よりもマーケンスの方が良いよね?」
 
「そ、そんなこと…ないよ。それに…。う、ううん、それよりも早く練習しましょう」
ルネルは、頬を赤く染めてブツブツ呟く。
 
「そうだね。って…」
大成は頷いたが、凄い力でルネルから手を引っ張られてグランドの中央へと連れていかれた。
 
 
 
【ラーバス学園・グランド】

グランドにはクラスメイト11人が集まっていた。
 
「えっと、あのさ、まさかとは思うけど…。11対2で闘うとか?」
大成は、顔を引き攣らせながら尋ねる。
 
「仕方なかったのよ。皆に練習相手を頼んだのだけど。皆が拒否したの。理由を聞いたら、私と大和君が組んだら、勝てる気がしないということだったの。それで、どんな条件なら良いかを聞いたら、10対2になったのよ」
ルネルの表情は仕方ないという感じだが、声音は嬉しそうに話す。 

「それなら、仕方ないかな」
(まぁ、ルネルがいいなら良いか)
大成は、そう思いながら苦笑いする。


「あっ、魔法書を持ってくるから少し待ってて」
「えっ!?魔法書?」
ルネル達が驚いた表情をした。

「うん。体術は得意だけど、魔法苦手なんだ。アハハハ…」
後頭部を触りながら、大成は苦笑いした。

自分1人なら、魔法を使用しないでも余裕で勝てるが、今回はルネルとのペア戦だ。
援護する時や魔法が必要な時は、グリモアが必要になる可能性がある。

大成の弱点は、ユニーク・スキル、グリモア・ブックを出していないと魔法が使用できないということだった。

「わかったわ。待っているから、早く戻ってきてね」
「行ってきな」
ルネルとマーケンスは承諾し、他の皆も頷いた。

もし隠れてグリモアを出しても、突然、何もないところから魔法書を持っていたら怪しまれると思い、走って教室に向かうフリをして事前に大成はグリモアを出した。


一方グランドでは…。

「意外だったな。大和の弱点は、魔力値が低いだけかと思っていたけど…。まさか、魔法が苦手だったとはな…。あれだけの魔力コントロールが凄いから魔法も凄いかと思っていたんだけどな」

「そ、そうよね」
マーケンスに話しかけられたルネルは、頬を赤く染めて答えた。

端から見ても、すぐにルネルがマーケンスのことが好きなのはルネルの態度でわかるほどなのだが、当の本人のマーケンスは全く気付かないほど鈍感だった。

皆もマーケンスと同意して頷き、これなら勝てるかもと思った。



暫くして、大成がグランドに戻ってきた。

「ごめん。お待たせ」
大成は、左手に1冊の魔法書(グリモア)を持っていた。

「よし!早速、始めるか」
マーケンスは、大成とは1対1で闘いたいとのことで、今回はジャッジ役に回った。

「皆、良いか?」
マーケンスは、全員を見渡して確認をとる。

「「おう!」」
「「うん!」」
皆は、頷き距離をとった。

「試合開始!」
マーケンスの掛け声と共に皆は一斉に身体強化をし、大成以外は魔法を唱え発動させた。

「「アース・ショット」」
「「ファイア・アロー」」
「「アイス・ミサイル」」
「「エア・カッター」」
クラスメイト10人の魔法が、大成とルネルに襲い掛かってくる。

「アース・ウォール」
ルネルは片手を地面に触れ、土魔法アース・ウォールを唱えると、地面が盛り上がり大成のところまで土の防御壁ができた。

次々と放たれた魔法が土の防御壁に衝突し、衝撃音とともに空気の振動が肌に伝わってくる。

「大丈夫?大和君。って、えっ!?」
ルネルは大成に呼び掛けながら振り向いたが、そこに大成の姿はなかった。

今も魔法が飛んできているのだが、ルネルは慌てて土の防御壁の端から顔を出して覗くと驚愕した。

「う、嘘!」
土の防御壁から見た光景は、無数に魔法が飛び交う中を大成は回避しながら相手に接近している姿だった。


「くっ…。流石、大和だな。だが、お前が魔法が苦手なことは知っている。だから、恐くないぞ。皆、大和に集中砲火するんだ!」

「「わかった」」

「「わかったわ」」
1人の男子が指示し、全員が大成に向かって集中砲火する。

「流石のお前でも、この数の魔法を避けることができるか?ハハハ…」
指揮を執っている男子が哄笑しながら叫ぶ。


集中砲火された大成は、回避できないのは持っている剣1本で魔法を弾き、スピードを落とさず接近する。

大成が弾いている魔法は、氷や土などの物理的な物しか剣で弾いていなかった。

剣に魔力を纏わせれば全部捌くことはできるが、する必要がなかったことや手の内を無駄に晒したくなかったためであった。

大成が決着を急いだのは、ルネルが怪我をするかもしれないと思ったからだった。


「な、な、何だと!?」
「「う、嘘だろ!」」
「「きゃ~!」」
どんどん接近し迫ってくる大成を前にしたクラスメイト10人はパニックになり、狙いが定まらなくなったり上手く魔法が発動できないで不発になったりする。

冷静さを保ち続けていたら、魔力値2で剣に魔力を纏わせないままの大成なら勝てていたかもしれなかった。

実際、大成は、このままだと自分の間合いに入ることができないと判断していた。

そのため、フェイントを入れて間合いに入るか、魔法を使用するかなど、いろいろ考えていたが、先にクラスメイト達が自滅したので、このまま接近することにした。

そして、大成に接近されたクラスメイト達は、なす術もなく大成の餌食になり敗れていった。


大成と組んだルネルやジャッジをしていたマーケンス、それに面白半分で見ていた他のクラスメイト達は、大成の実力を目の当たりにして驚愕していた。

だが、ジャンヌ、ウルミラ、イシリア、そして、いつの間にか姿を見せている担任のマミューラは、当たり前の様に見ていた。


「あの弾幕でも、魔力値2の大成を足止めすることは無理なのね」
「そうみたいですね」
「そうね」
ジャンヌに肯定するウルミラとイシリア。

「大成君って、本当に理不尽な強さだわ」
「そうね」
「そうですね」
「ククク…」
イシリア、ジャンヌ、ウルミラは呆れた表情だったが、マミューラただ1人は笑っていた。

そして、代表者に選ばれた皆は、順調に練習が進んだが、大成とルネルのペア戦の練習は、アレ一度きりだった。

流石のルネルも、大成の理不尽な強さを目の辺りしたので、クラスの皆に練習を頼むことはなかった。

(やはり、こうなったか…)
心の中で、大成は溜め息をした。
結局、大成1人は皆のアドバイスをし、練習は相手が居ないのでできなかった。



【ラーバス学園・教室】

クラスマッチ練習2日目、入院していたマルチスが退院し登校してきた。

「おはよう!皆、元気だったか?」
手を上げ、皆に挨拶するマルチス。

「「おはよう。マルチス」」
「「おはよう。マルチス君」」
クラスの皆も挨拶し、マルチスの傍に集まった。


「「元気だったか?」は、俺達が聞く方なんだよ。この、この心配させやがって!」
マーケンスがマルチスの頭をグチャグチャに掻く。

「マーケンス。ちょっ、ちょっと…」
マルチスは両手で、マーケンスの手を止めようとするが止まらない。
そんな、やり取りを見てクラスの皆は笑った。


マルチスは自らマーケンスの舎弟になりたいと言い出して舎弟になり、その中では1番強かった。

やっと、マーケンスが落ち着き、マルチスは大成の前に歩み寄って大成に向かって指をさす。

「お前が大和大成だな?」
「そうだけど」
「マーケンスに勝ったのは、まぐれだろ!俺と勝負しろ!そして、俺が、か、か、勝ったら…」
途中で言葉を噛むマルチス。

「勝ったら?」
大成は首を傾げて尋ねる。

「かっ、かっ、勝ったら、ル、ル、ルネルちゃんとのペア戦、俺と代われ!良いな!」
顔を真っ赤にして叫ぶマルチス。

大成は相方のルネルの方を見たら、なぜか頬を赤く染めていた。
次に取締役のイシリアの方を見たら、声は発していないが口元の動きで何を言っているのか理解した。

イシリアの口元は、「勝てばいいのよ。勝てば」と口元が動いていた。

「僕は構わないよ。あと、ルネルさん本人に了解を得れば良いよ」
仕方ないと思い、大成は苦笑いする。

「ル、ルネルちゃん!俺、勝ちますので、待っていて下さい」
ルネルに向かって、マルチスは告白のようなことを口走る。

「あ、愛の告白!?」
「「きゃ~っ!」」
マルチスの発言でクラスが盛り上がり、ジャンヌ、ウルミラ、イシリアも頬を赤く染めた。


そんな中、ルネルはゴミを見る様な目でマルチスを見ていた。

(この様子だとマルチスは、ルネルさんとペアを組んだら緊張して固まって何もできなさそうだな…。可愛そうだけど勝つしかないか…)
大成は深い溜め息をし、練習時間に決闘することに決まった。



【グランド】

ホームルームが終わり、ついに決闘の刻はきた。

皆は帰らずにグランドに集まり、大成とマルチスの周りを囲むように立って観戦していた。

ルネルは、クラスメイトが何処から拝借してきたのか知らないが用意された立派な椅子に腰かけている。

「約束は守れよ!大和大成!」
マルチスは大成に指を指し、テンションが高くなり大声で話す。

「わかっているよ。マルチス」
逆に大成はテンションが低かった。

「ワハハハ…。俺に恐れをなして、やる気がないみたいだな。だが、ルネルちゃんの前で、お前をボコボコにし、俺の強さを見て貰い。そして、そして、俺はルネルちゃんと結婚するんだ!お前には悪いが、俺の幸せのために、いや俺とルネルちゃんの幸せのために生け贄になって貰うぞ!」
マルチスはテンションが最高潮になり、とうとう結婚するんだと言い放ち、ルネルに向かって唇を突き出して両手を前に出した。

「き、き、気持ち悪いわ…」
流石の心優しいルネルも鳥肌が立ち、生理的に無理だった。

クラスの皆もドン引きし、心の中でルネルに同意した。

だが、言われた本人のマルチスは、妄想が膨らみ続けていたのでルネルの言葉は聞こえていなかった。


「ゴホン。では大和VSマルチスのルネルを賭けた勝負を開始する。両者準備は良いか?」
今回もマーケンスがジャッジを担当し、大成とマルチスの2人は頷いた。

「では、開始!」
マーケンスの掛け声と同時にお互い、身体強化し接近する。

今回の相手のマルチスの武器は木製の短剣だったので、大成も同じ木製の短剣にした。

「死ね!」
マルチスは、叫びながら連撃を繰り出す。

「殺す気!?」
大成は、マルチスの台詞に突っ込みながら難なく回避したり防ぐ。

マルチスの連撃を目の当たりにした大成は、マルチスの評価を改めた。

「くそ、なぜ、通じないんだ!」
「オラッ」
「これでもか!」
上から振り下ろしたり、横に凪ぎ払たり、斜め下から救うように攻撃したり、次々に連撃するマルチス。

大成は短剣を使わず体を左右前後に動かし、体術だけで回避する。


ウルミラから聞いた情報通りで、マルチスの家系は短剣の道場を開いておりマルチスも短剣の基礎ができていて使い方が上手かった。

だが、残念なことにマルチスの性格が出ているかの様にフェイントも入れない、組み手をする様な気配もなく、ただ直線的な攻撃だった。


(せめて、フェイントを入れたら、もっと強くなるのにな)
大成はマルチスに興味を持ち、そして、今度は大成が短剣で攻撃をしてマルチスの対応を見てワクワクしながら鍛えるプランを考えて闘う。

「糞っ!」
マルチスが反撃し横から凪ぎ払ってきたので、大成は短剣で防ぎ、手本として簡単なフェイントや空いている手や足を使って攻撃して見せることにした。

(これは、どう対応するかな?)
大成は左フックを放った。

「ぐぁ、くそ…。俺とルネルちゃんの夢が…」
「あっ!」
大成はマルチスなら回避できるかと思ったが、マルチスは回避できず、大成の左フックが顎に当たり脳震盪を起こし倒れた。

「勝者、大和!」
マーケンスの宣言で終わりを告げた。


そのあと、マルチスは何度も大成の舎弟にもなると言い出したので、大成は断る条件として考えた練習プランを教えることで納得して貰いマルチスは目を輝かして喜んで立ち去っていった。


「ふぅ~、嵐は過ぎ去った感じだな」
「大変だったわね、大成。でも…」
大成が溜め息をしたところに、ジャンヌは苦笑いを浮かべながら話し掛けた。

「で、でもの、そのあと何?」
「これから、修羅場になるわよ」
嫌な予感がした大成はジャンヌに聞いてみると、ジャンヌは横に指をさした。

ジャンヌが指をさした方向から足音が聞こえてくる。
しかも、1人や2人ではない…。
恐る恐る大成はそちらに視線を向けると、クラスの皆がこっちに走って来ていた。


「「良いな、俺にも練習プランを作ってくれ!」」
「「私も」」
など、大成はクラスの皆に頼まれる嵌めになった。

「さ、流石の僕でも、皆の分は無理だから」
どうにか断ろうとした大成だったが…。

「「いつでも良いから」」
クラスの皆の声は綺麗に揃った。


それからというと、みるみる痩せていった大成。
原因はクラスの1人1人の個人の練習プランを真剣に考えて作り、わからないところは直に教えていったことだった。

こういうことは、大成は手を抜きたくない性格だったので正直ラゴゥバルサ国を滅ぼすよりもキツイと思った。

代表者に選ばれたクラスメイトの皆は、順調にスクスクと上達していった。


そして、明日にクラスマッチが始まる。
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