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クラスマッチ後と合宿の準備
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【ラーバス国・屋敷】
クラスマッチが終わり、大成達は屋敷に戻った。
ローケンスは今週は屋敷の護衛の当番だったが、大成の計らいでイシリア達と一緒に自分の家に戻ることになった。
「「お帰りなさいませ、修羅様、ジャンヌ様、ウルミラ様」」
玄関の前に待機していた2人のメイドが扉を開けると、玄関には両側に1列に並んでいるメイド達が待機しており、一同は一斉にお辞儀をした。
「「ただいま」」
「ただいまです」
大成達も挨拶して奥へと向かった。
(いつ経っても、これは慣れない…)
「あ、そうだ。すまない、言い忘れていたが今から人と会う予定だ。いつもの所は使えるかな?」
メイド達の間を通る時、いつも思う大成だったがフッと思い出して尋ねる。
「はい、大丈夫です。修羅様」
「急で、本当にすまない」
「いえ、お気になさらずに」
「いつも助かっているよ。ありがとう、皆」
「「勿体ないお言葉です!」」
メイド達は、頬を少し赤らめながら笑顔で声が揃った。
「ところで、誰が来るのよ。大成」
大成とメイドのやり取りに、少し嫉妬したジャンヌは不機嫌になった。
「ああ、それは…。丁度、来たみたいだ。玄関の扉を開けて貰っても良いかな?」
大成が答えようとした時、外から僅かな気配に気付いた。
「「?」」
扉の近くにいたメイド2人は、訳がわからず扉を開ける。
「「えっ!?」」
ジャンヌとウルミラは目を疑った。
なぜなら、玄関の前に居たのは闇組織【ノルダン】のリーダー・ダビルドとジャンヌとウルミラも顔を知っているドトール、ミシナを含む幹部達だった。
「た、大成、あなた何を考えてえるの!?」
「そうですよ。この人達は、先程まで大成さんの命を狙っていた人達ですよ!」
ジャンヌとウルミラは、すぐに携帯していた双剣と矛を構える。
「「!!」」
メイド達もジャンヌとウルミラの会話を聞いた瞬間、すぐさま武器を取り出しながらジャンヌ達を庇うように【ノルダン】の間に移動して武器を構えて警戒をする。
【ノルダン】側の幹部達も武器を取り出して構える。
大成は一瞬でメイドと【ノルダン】の間に入り右手を横に出して止め、同じく先頭にいたダビルドも自分の部下達を止めた。
「護衛してくれるのは有り難いが、先程も伝えたが俺の客だ。武器をしまえ。すまない、仲間にきちんと伝えるのが遅れてしまった。俺の不手際だ。謝罪をする、申し訳ない」
大成は、【ノルダン】全員に謝罪をした。
「いや、俺達も気を配り気配を消していたのが、逆効果になったことや来る時間も早すぎたのも悪い。だから、気にしないでくれ魔王修羅」
ダビルドが言い、大成とダビルドがお互いにフッと口元を緩ました。
屋敷にいたシリーダとニールはジャンヌ達と【ノルダン】の幹部達の殺気に気付き、険しい表情でいつの間にかジャンヌとウルミラの傍に駆けつけていた。
「どういうことなの?大成。詳しく説明しなさいよ」
「大成さん、お願いします」
「私も教えて頂きたいわ。なぜ、闇組織である【ノルダン】が、ここにいるのかを」
ジャンヌ、ウルミラ、シリーダは大成に説明を要求したが、ニールは黙って成り行きを見守る。
「勿論だ。というより、これから先、皆にも関わることだから知る必要がある。ローケンスはいないが、シリーダやニール、それにメイド達にもわかりやすいようにどういう経緯でこうなったかを一から説明する」
大成はクラスマッチの出来事を話し、ダビルドとの契約の内容も話した。
話を聞き終えたジャンヌ達は、頭を押えながら頭を左右に振ったり深い溜め息をする。
(さっきまで自分の命を狙った組織を迎撃した後、すぐに契約を持ち込むなんて普通はしないわ。大成は、どういう感性しているのよ)
心で思ったジャンヌの感想に、ジャンヌ達だけでなく【ノルダン】の幹部達も皆一致していた。
「そういうことになった。すまないが、メイド達には負担が多くなる。これからは、【ノルダン】は俺の下で働くことになるから宜しく頼みたいが…もし、無理なら…」
「「畏まりました」」
メイド達は、お辞儀をして承諾した。
「とても助かるが、無理はしないでくれ」
「「大丈夫です!」」
申し訳なさそうな表情を浮かべる大成だったが、メイド達は笑顔で答えた。
「ところで、大成。あなたには【ヘルレウス】がいるのに必要なわけ?」
ジャンヌは、怪訝な面持ちで尋ねる。
「【ヘルレウス】は武力としては申し分ないが、偵察は不向きだろ?」
大成はナイディカの森でローケンスを危うく殺してしまいそうになった日から、【ヘルレウス】のメンバーとその直属の部下達の顔を見て覚えるようにした。
その時、偵察の特訓をしていたが、どの部隊も大成から見ればお世辞でも上手いとは言えないほど下手だったのだ。
大した実力がない相手には通用するが、【ノルダン】の幹部達には確実に見つかってしまうぐらいの実力だった。
「フム、なるほど。確かに、修羅様の言う通りですな」
冷静なニールは納得して頷いたが、ジャンヌ達は不機嫌な面持ちになる。
しかし、事実なのでジャンヌ達は押し黙り言い返せなかった。
「あの、大成さん。もし、この人達が裏切ったらどうするのですか?」
ウルミラは、【ノルダン】を一瞥しながら大成に尋ねる。
「その時やメイドに無理やり嫌がることをしたら、俺が責任持って全体責任として全員を始末するとも契約している」
ウルミラ問いに、大成は加減して威圧感と殺気を放った。
ジャンヌ達も【ノルダン】のメンバーも、圧倒的なプレッシャーを受けて体が硬直し顔が引き攣り、【ノルダン】とメイドの中には足元がふらつく者や怯えて体が震える者、顔を青ざめる者、そして、数名だがうっとりして大成に熱い眼差しを向ける者もいた。
「そういうことだ、こちらはそれで構わない。あと、俺達【ノルダン】は大抵のことは自分でする。メイド達には、できる限り負担をかけないつもりだ。それで問題ないだろ?」
ダビルドは、ジャンヌ達から視線を外さず目を見て話す。
「はぁ、それなら問題ないわ」
一息つき、承諾したジャンヌ。
「私に異論はないわ」
「わかりました」
シリーダ達も、渋々といった感じで認めた。
【ローケンス家】
その頃、ローケンス家では…。
「イシリア、マーケンス、2人共、よくやった!なぁ?マリーナ」
「ええ、2人共、お疲れ様。頑張ったわね。観戦していて楽しかったわ。来年も優勝できると良いわね。あと、もう少しで晩御飯できるからテーブルに着いていてね」
ローケンスとマリーナは、笑顔で娘のイシリアと息子のマーケンスを迎えた。
「はい、お母様」
「うん…」
笑顔で返事するイシリアと少し落ち込み気味で返事をするマーケンス。
2人は、テーブルに着いた。
「はぁ…。クラスが優勝したのは嬉しいんだけどさぁ、俺は今回は何もしてないんだよな…」
マーケンスは、肩を落として深い溜め息をする。
「そんなことないぞ、マーケンス。お前が控えていたことで、他の2人はお前を信じて安心して全力が出せたんだ」
ローケンスは、マーケンスの背後から頭を荒く撫で、腰を落として同じ目線の位置で話す。
「大和も言っていたけどさ。本当に、そうなのかな?」
「ああ、自分より強い奴が控えていたら、任すことができて安心できるから思う存分全力が出せるんだ。想像したら、マーケンスもわかるぞ。お前だって大和君が、後に控えていたら心強いだろ?」
ローケンスは、マーケンスの両肩に手を置いた。
少し考え込み、間を置いたマーケンス。
「そう言われてみたら、そうだ」
「だろ。居るだけででも、役に立っているのさ。それは、皆から信頼されている証拠だ。出場して活躍するよりも、難しいことなんだぞ」
「そうか!へへへ…」
マーケンスは、落ち込んでいた表情が笑顔に変わり、鼻を掻きながら喜んだ。
「イシリアも、大活躍だったわね。去年のリベンジが出来て良かったわね」
胸元で両手を合わせて微笑むマリーナ。
「はい!」
イシリアも笑顔で答えた。
「それにしても、大和君は強かったわね。まさか、ミューちゃんと接近戦のみで闘って、結果は引き分けだったけど。実際は勝っていたわね。お母さん、びっくりしたわ」
マリーナは手を頬に当て微笑む。
「「えっ!?ミューちゃん?」」
イシリアとマーケンスは、大成がわざと引き分けに持ち込んだことに気付いたマリーナに驚き、そして、聞いたことない名前に2人揃って首を傾げた。
「ミューちゃんとは、マミューラ先生のことだ。マリーナとマミューラ、それに、ウルミラの母・ウルシア、そして、ジャンヌ様の母君であるミリーナ様は、俺や先代魔王様と同い年で同じラーバス学園出身で同じクラスだったんだ。その頃、当時は【癒しの微笑みのアサシン・マリーナ】、【スタイル抜群のクレージー・マミューラ】、【凍りつく視線の氷の女王・ウルシア】、【お嬢様気質のマジックマスター・ミリーナ様】と学園内だけなく国中から呼ばれ、4人は四大天使とまで言われ有名だったんだぞ」
腕を組み、自慢気に説明をするローケンス。
「そうだったの!お母様」
「へぇ~、そうなんだ!」
イシリアとマーケンスは、驚いて目を見開いて母・マリーナを見る。
「もう、昔のことよ。それより、イシリアも男性を見る目があって嬉しいわ。お母さん、心配していたのよ。自分より強い人じゃないと駄目とか言っていたから、粗暴な男の子や変な男の子に引っ掛かったら、どうしようかと思っていたわ」
「も、もう、お母様!それより、ご飯にしましょう」
イシリアは頬を赤く染め、慌てて話を逸らす。
「フフフ、そうね。せっかく、作ったのだから冷える前に美味しく食べて欲しいわね」
マリーナは、口元に手を当て笑い、家族みんなに料理を配り始めた。
「また、いつでも大和君を食事に誘っても良いわよイシリア。あ、その時は、今度は泊まって貰おうかしら?」
マリーナはイシリアに料理を渡す際に、小さな声でイシリアに耳打ちする。
「は、はい…。ありがとうございます、お母様」
イシリアは、顔を真っ赤にして恥ずかしそうな表情で料理を受け取った。
【ラーバス国・屋敷】
それから、一ヶ月が過ぎた。
「エターヌ、ユピア。ラーバス学園入学おめでとう!」
「「おめでとう!」」
「「おめでとうございます!」」
エターヌとユピアを激励した大成達。
ラーバス学園の入学試験の合格発表の通知が来ており、エターヌとユピアは見事に合格したのだ。
流石に大成達のクラスは無理だったが特待生になり、その特待生の中でも唯一2人だけは飛び級となった。
エターヌとユピアは前は魔力値が1だったが、今は魔力値が3まで上がり武術や体術はルネルやマルチスぐらいの実力を身につけており強くなっていた。
2人は、入学試験の時に試験監督だった先生や観察していた先生達に天才少女と言われ注目を集めていたのだった。
普通はエターヌとユピアの年齢層だと、ラーバス学園に入学できる生徒は魔力値2だ。
2人が飛び級で入るクラスは、魔力値3の生徒の集まりだった。
そこを選んだ理由は、ジャンヌ達があのクラスの担当の先生の教え方が上手ということが決めてとなった。
「よく、厳しい訓練を乗り越えたね」
大成は、腰を下ろして両手でエターヌとユピアの頭を撫でながら褒める。
「合格できたのは、お兄ちゃんのお陰だよ!」
「そうです!修羅様のお陰です!」
エターヌとユピアは、大成に抱き付き両頬にキスをした。
「「なっ」」
少し離れて見ていたジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人は目を見開いた。
「じゃあ、私も~!」
「マキネさん、どさくさに紛れてキスをしようとしているのですか!抜け駆けはダメですよ」
マキネは大成にキスしようとしたが、ウルミラが慌てて止めた。
「ん~?「抜け駆けは」ってことは、ウルミラもダーリンとキスしたいんだね~♪」
「い、いえ、そ、それは…その…」
マキネに問い詰められ、顔を真っ赤にしてオドオドするウルミラ。
皆は、そんなウルミラを見て笑った。
「あ、そうだった。これ、入学祝だよ」
大成はエターヌとユピアにネックレスを渡し、一人一人に着けてあげる。
そして、ネックレスの効果も教えた。
ネックレスに付いてある黒い蝶々の形をした石は魔鉱石で倍増効果と魔法陣の刻印を刻まれており、魔力を込めると魔力障壁が発動する仕組みになっていた。
「ありがとう!お兄ちゃん」
「ありがとうございます!修羅様」
お礼を言った2人は、目を輝かしながらネックレスを触りながら笑みを浮かべた。
【ラーバス学園】
次の日、大成達はいつも通りの朝練を終え、今日からエターヌとユピアも一緒に学園に登校した。
大成達は、エターヌとユピアと別れて自分達の教室に向かった。
教室では、クラスメイト達は盛り上がっていた。
「「おはよう」」
「おはようございます」
「「おはようございます」」
大成達とクラスメイト達は、互いに挨拶した。
「何か面白いことでもあった?」
大成は自分の席に鞄を置いてから、マーケンスに歩み寄り尋ねた。
「あ、そうだったな。マミューラ先生は、何も言っていなかったから大和は知らないんだよな。明日から合宿が始まるんだ」
「合宿?」
大成は、首を傾げる。
「私も忘れていたわ。そういえば、もう、そういう時期になっていたわね」
「まぁ、仕方ないですよ。マミューラ先生ですから…」
「何だか納得できるけど…。連絡ぐらいは、ちゃんとして欲しいわ」
合宿があることを思い出したジャンヌと苦笑いするウルミラ、溜息をするイシリアだった。
「ところで、合宿の内容は?」
大成は、再びマーケンスに視線を向けて尋ねる。
「ああ、合宿の内容は…」
マーケンスが言いかけた時に、教室のドアが開いた。
「おい!お前達、席に着け。ホームルームを…。ん?何かあったのか?」
「いえ、特には。ただ、明日から合宿が始まるので、合宿のことで騒いでいました」
「あ、悪い。そういえば、言ってなかったな。あと、これは合宿のプリントだ。私は説明しないから、よ~く読んどけよお前達。忘れ物や集合時間間違えても、私は知らないからな」
マミューラは、頭を掻きながら面倒そうにプリントを配る。
配られたプリントの内容は…。
1、4人で1組のパーティー。
2、初日だけ食料配付、パーティー同士の協力を認める。
3、合宿が終わるまでに与えられたノルマを達成すること。(武器を持参しても良い、武器を用意できない人は学校のを貸し出す)
4、魔物の横取り、パーティー内の仲間割れや他のパーティー同士の争いは禁止。
5、魔物の倒し方を知りたい時は、先生に聞いても良い。
6、洞窟や祠には近づかないこと、見つけた場合は速やかに離れ先生に報告すること。
7、合宿が行われるナドムの森の奥には、決して行かないこと。
8、炎系魔法は禁止(火事になる可能性があるため)。
9、一度の戦闘で魔物は最大2匹まで、それを越える魔物と遭遇した場合は戦闘をせずに速やかに撤退すること。
10、何かあった場合は、当日に渡される発煙筒を使うこと。
11、森の守り神には決して近づかない、手を出さないこと。
12、この合宿は学校の成績に反映しないので、参加は希望者のみ。参加しない場合は学園で授業がある。
「合宿は、魔物討伐みたいだな」
プリントを見ながら大成は呟く。
「そうです。この合宿で、冒険者としてのライセンスが手に入ります」
近くの席にいるウルミラが説明した。
ちなみに、ライセンスというのは指定ランク2以下の魔物だけしかいない森は大人がついていれば誰でも入れるが、指定ランク3以上がいる森はライセンスを所持している者しか入れない。
【時の勇者】の捜索の時に入ったパルシアの森は、ランク4も居たが、大成は魔王ということで特別に入れたのだ。
「あと、2枚目にパーティーが載っているから確認しとけよ」
「あの、マミューラ先生。ジャンヌ様達のパーティーと私達のパーティー2つだけ、メンバー的に異常に強いのですが…」
ルネルが、プリントに書かれているパーティーを確認して手を挙げて質問した。
Aチーム…ジャンヌ、ウルミラ、大成、イシリア。
Bチーム…マーケンス、ルネル、マルチス、ユニー。
他は、バランスよく分かれていたのだ。
「当たり前だろ。これは、ライセンスの取得もあるんだ。魔物退治した経験があるお前達が入ったチームは簡単にライセンスが取れてしまうだろ。それじゃ、意味がない。だから、1つに纏めた」
「「あ、なるほど」」
面倒そうな声でマミューラは説明し、皆は納得した。
生徒達は大成と会う前なら不満の声も出たが、今は大成のお陰で強くなった自分の力を試したいと思ったので、不満は一切出てこなかった。
そんな生徒達を見て、マミューラは嬉しく頼もしくなり口元を緩めた。
「じゃあ、各チームに分かれて合宿のことで話し合え」
マミューラの指示で、皆一斉に動き出した。
こうして、明日の合宿に備えて武器、陣形、役割を各チームで話し合った。
【旧館一階・魔法書図書館】
学園から帰った大成は、一人で屋敷の魔法図書館で資料書を読んでいた。
「お疲れ様です、修羅様。隣、良いですか?」
ニールは、趣味のガーデニングの本を探しに来ていた。
「構わないですよ、ニールさん」
「そういえば、明日から修羅様達は合宿のようですね」
大成の隣に座ったニールは、思い出したように話題を切り出した。
「ですね。合宿のためにナドムの森にはどんな魔物がいるか、その魔物達の特有の習性や攻撃などを調べています」
大成は、読んでいるナドムの森の本を持ち上げニールに見せた。
「ホホホ…勉強熱心ですね」
「何か問題が起きた時の備えですよ。ニールさんは、ナドムの森について何かご存知ありませんか?」
小さな事でも情報が欲しかった大成は、ニールに尋ねた。
今、大成が読んでいる本はナドムの森の地形、植物、魔物種類や特徴などだった。
「……そうですな。可能性は、とても低いのですが…。もしかしたら、ゴブリンロードがいるかもしれませんね」
髭を触りながらニールは、少し間を置き話す。
「ゴブリンロードですか?」
「はい。周りのゴブリン達を強化して指揮をとる。とても、やっかいな相手です。ロード本体も指定ランク4で結構強いです。まぁ、今まで強い森にしか出現してませんし。しかも、100年に一度、出現するかどうかの魔物ですが」
ニールは笑いながら説明した。
「ありがとうございます、ニールさん。参考になりました。では、僕はこれで失礼します」
「合宿、頑張って下さい。修羅様」
「ええ、もちろんです」
そう言って、大成は図書館から出て行った。
【屋敷】
合宿当日、いつもより朝練を早めに終えた大成達はいつもより早く学園に向かうことにした。
「大成、ウルミラ。今日は合宿だから…」
「そうだね、ジャンヌ。じゃあ、一足先に行ってくるよ」
「朝練、頑張って下さい」
大成達は、まだ朝練をしているエターヌ達に挨拶した。
「頑張って、お兄ちゃん達」
「ダーリン達なら心配ないと思うけど、無理しないでね」
「修羅様達がいない間、屋敷はユピア達にお任せ下さい」
エターヌ、マキネ、ユピアは、笑顔で大成達を見送った。
クラスマッチが終わり、大成達は屋敷に戻った。
ローケンスは今週は屋敷の護衛の当番だったが、大成の計らいでイシリア達と一緒に自分の家に戻ることになった。
「「お帰りなさいませ、修羅様、ジャンヌ様、ウルミラ様」」
玄関の前に待機していた2人のメイドが扉を開けると、玄関には両側に1列に並んでいるメイド達が待機しており、一同は一斉にお辞儀をした。
「「ただいま」」
「ただいまです」
大成達も挨拶して奥へと向かった。
(いつ経っても、これは慣れない…)
「あ、そうだ。すまない、言い忘れていたが今から人と会う予定だ。いつもの所は使えるかな?」
メイド達の間を通る時、いつも思う大成だったがフッと思い出して尋ねる。
「はい、大丈夫です。修羅様」
「急で、本当にすまない」
「いえ、お気になさらずに」
「いつも助かっているよ。ありがとう、皆」
「「勿体ないお言葉です!」」
メイド達は、頬を少し赤らめながら笑顔で声が揃った。
「ところで、誰が来るのよ。大成」
大成とメイドのやり取りに、少し嫉妬したジャンヌは不機嫌になった。
「ああ、それは…。丁度、来たみたいだ。玄関の扉を開けて貰っても良いかな?」
大成が答えようとした時、外から僅かな気配に気付いた。
「「?」」
扉の近くにいたメイド2人は、訳がわからず扉を開ける。
「「えっ!?」」
ジャンヌとウルミラは目を疑った。
なぜなら、玄関の前に居たのは闇組織【ノルダン】のリーダー・ダビルドとジャンヌとウルミラも顔を知っているドトール、ミシナを含む幹部達だった。
「た、大成、あなた何を考えてえるの!?」
「そうですよ。この人達は、先程まで大成さんの命を狙っていた人達ですよ!」
ジャンヌとウルミラは、すぐに携帯していた双剣と矛を構える。
「「!!」」
メイド達もジャンヌとウルミラの会話を聞いた瞬間、すぐさま武器を取り出しながらジャンヌ達を庇うように【ノルダン】の間に移動して武器を構えて警戒をする。
【ノルダン】側の幹部達も武器を取り出して構える。
大成は一瞬でメイドと【ノルダン】の間に入り右手を横に出して止め、同じく先頭にいたダビルドも自分の部下達を止めた。
「護衛してくれるのは有り難いが、先程も伝えたが俺の客だ。武器をしまえ。すまない、仲間にきちんと伝えるのが遅れてしまった。俺の不手際だ。謝罪をする、申し訳ない」
大成は、【ノルダン】全員に謝罪をした。
「いや、俺達も気を配り気配を消していたのが、逆効果になったことや来る時間も早すぎたのも悪い。だから、気にしないでくれ魔王修羅」
ダビルドが言い、大成とダビルドがお互いにフッと口元を緩ました。
屋敷にいたシリーダとニールはジャンヌ達と【ノルダン】の幹部達の殺気に気付き、険しい表情でいつの間にかジャンヌとウルミラの傍に駆けつけていた。
「どういうことなの?大成。詳しく説明しなさいよ」
「大成さん、お願いします」
「私も教えて頂きたいわ。なぜ、闇組織である【ノルダン】が、ここにいるのかを」
ジャンヌ、ウルミラ、シリーダは大成に説明を要求したが、ニールは黙って成り行きを見守る。
「勿論だ。というより、これから先、皆にも関わることだから知る必要がある。ローケンスはいないが、シリーダやニール、それにメイド達にもわかりやすいようにどういう経緯でこうなったかを一から説明する」
大成はクラスマッチの出来事を話し、ダビルドとの契約の内容も話した。
話を聞き終えたジャンヌ達は、頭を押えながら頭を左右に振ったり深い溜め息をする。
(さっきまで自分の命を狙った組織を迎撃した後、すぐに契約を持ち込むなんて普通はしないわ。大成は、どういう感性しているのよ)
心で思ったジャンヌの感想に、ジャンヌ達だけでなく【ノルダン】の幹部達も皆一致していた。
「そういうことになった。すまないが、メイド達には負担が多くなる。これからは、【ノルダン】は俺の下で働くことになるから宜しく頼みたいが…もし、無理なら…」
「「畏まりました」」
メイド達は、お辞儀をして承諾した。
「とても助かるが、無理はしないでくれ」
「「大丈夫です!」」
申し訳なさそうな表情を浮かべる大成だったが、メイド達は笑顔で答えた。
「ところで、大成。あなたには【ヘルレウス】がいるのに必要なわけ?」
ジャンヌは、怪訝な面持ちで尋ねる。
「【ヘルレウス】は武力としては申し分ないが、偵察は不向きだろ?」
大成はナイディカの森でローケンスを危うく殺してしまいそうになった日から、【ヘルレウス】のメンバーとその直属の部下達の顔を見て覚えるようにした。
その時、偵察の特訓をしていたが、どの部隊も大成から見ればお世辞でも上手いとは言えないほど下手だったのだ。
大した実力がない相手には通用するが、【ノルダン】の幹部達には確実に見つかってしまうぐらいの実力だった。
「フム、なるほど。確かに、修羅様の言う通りですな」
冷静なニールは納得して頷いたが、ジャンヌ達は不機嫌な面持ちになる。
しかし、事実なのでジャンヌ達は押し黙り言い返せなかった。
「あの、大成さん。もし、この人達が裏切ったらどうするのですか?」
ウルミラは、【ノルダン】を一瞥しながら大成に尋ねる。
「その時やメイドに無理やり嫌がることをしたら、俺が責任持って全体責任として全員を始末するとも契約している」
ウルミラ問いに、大成は加減して威圧感と殺気を放った。
ジャンヌ達も【ノルダン】のメンバーも、圧倒的なプレッシャーを受けて体が硬直し顔が引き攣り、【ノルダン】とメイドの中には足元がふらつく者や怯えて体が震える者、顔を青ざめる者、そして、数名だがうっとりして大成に熱い眼差しを向ける者もいた。
「そういうことだ、こちらはそれで構わない。あと、俺達【ノルダン】は大抵のことは自分でする。メイド達には、できる限り負担をかけないつもりだ。それで問題ないだろ?」
ダビルドは、ジャンヌ達から視線を外さず目を見て話す。
「はぁ、それなら問題ないわ」
一息つき、承諾したジャンヌ。
「私に異論はないわ」
「わかりました」
シリーダ達も、渋々といった感じで認めた。
【ローケンス家】
その頃、ローケンス家では…。
「イシリア、マーケンス、2人共、よくやった!なぁ?マリーナ」
「ええ、2人共、お疲れ様。頑張ったわね。観戦していて楽しかったわ。来年も優勝できると良いわね。あと、もう少しで晩御飯できるからテーブルに着いていてね」
ローケンスとマリーナは、笑顔で娘のイシリアと息子のマーケンスを迎えた。
「はい、お母様」
「うん…」
笑顔で返事するイシリアと少し落ち込み気味で返事をするマーケンス。
2人は、テーブルに着いた。
「はぁ…。クラスが優勝したのは嬉しいんだけどさぁ、俺は今回は何もしてないんだよな…」
マーケンスは、肩を落として深い溜め息をする。
「そんなことないぞ、マーケンス。お前が控えていたことで、他の2人はお前を信じて安心して全力が出せたんだ」
ローケンスは、マーケンスの背後から頭を荒く撫で、腰を落として同じ目線の位置で話す。
「大和も言っていたけどさ。本当に、そうなのかな?」
「ああ、自分より強い奴が控えていたら、任すことができて安心できるから思う存分全力が出せるんだ。想像したら、マーケンスもわかるぞ。お前だって大和君が、後に控えていたら心強いだろ?」
ローケンスは、マーケンスの両肩に手を置いた。
少し考え込み、間を置いたマーケンス。
「そう言われてみたら、そうだ」
「だろ。居るだけででも、役に立っているのさ。それは、皆から信頼されている証拠だ。出場して活躍するよりも、難しいことなんだぞ」
「そうか!へへへ…」
マーケンスは、落ち込んでいた表情が笑顔に変わり、鼻を掻きながら喜んだ。
「イシリアも、大活躍だったわね。去年のリベンジが出来て良かったわね」
胸元で両手を合わせて微笑むマリーナ。
「はい!」
イシリアも笑顔で答えた。
「それにしても、大和君は強かったわね。まさか、ミューちゃんと接近戦のみで闘って、結果は引き分けだったけど。実際は勝っていたわね。お母さん、びっくりしたわ」
マリーナは手を頬に当て微笑む。
「「えっ!?ミューちゃん?」」
イシリアとマーケンスは、大成がわざと引き分けに持ち込んだことに気付いたマリーナに驚き、そして、聞いたことない名前に2人揃って首を傾げた。
「ミューちゃんとは、マミューラ先生のことだ。マリーナとマミューラ、それに、ウルミラの母・ウルシア、そして、ジャンヌ様の母君であるミリーナ様は、俺や先代魔王様と同い年で同じラーバス学園出身で同じクラスだったんだ。その頃、当時は【癒しの微笑みのアサシン・マリーナ】、【スタイル抜群のクレージー・マミューラ】、【凍りつく視線の氷の女王・ウルシア】、【お嬢様気質のマジックマスター・ミリーナ様】と学園内だけなく国中から呼ばれ、4人は四大天使とまで言われ有名だったんだぞ」
腕を組み、自慢気に説明をするローケンス。
「そうだったの!お母様」
「へぇ~、そうなんだ!」
イシリアとマーケンスは、驚いて目を見開いて母・マリーナを見る。
「もう、昔のことよ。それより、イシリアも男性を見る目があって嬉しいわ。お母さん、心配していたのよ。自分より強い人じゃないと駄目とか言っていたから、粗暴な男の子や変な男の子に引っ掛かったら、どうしようかと思っていたわ」
「も、もう、お母様!それより、ご飯にしましょう」
イシリアは頬を赤く染め、慌てて話を逸らす。
「フフフ、そうね。せっかく、作ったのだから冷える前に美味しく食べて欲しいわね」
マリーナは、口元に手を当て笑い、家族みんなに料理を配り始めた。
「また、いつでも大和君を食事に誘っても良いわよイシリア。あ、その時は、今度は泊まって貰おうかしら?」
マリーナはイシリアに料理を渡す際に、小さな声でイシリアに耳打ちする。
「は、はい…。ありがとうございます、お母様」
イシリアは、顔を真っ赤にして恥ずかしそうな表情で料理を受け取った。
【ラーバス国・屋敷】
それから、一ヶ月が過ぎた。
「エターヌ、ユピア。ラーバス学園入学おめでとう!」
「「おめでとう!」」
「「おめでとうございます!」」
エターヌとユピアを激励した大成達。
ラーバス学園の入学試験の合格発表の通知が来ており、エターヌとユピアは見事に合格したのだ。
流石に大成達のクラスは無理だったが特待生になり、その特待生の中でも唯一2人だけは飛び級となった。
エターヌとユピアは前は魔力値が1だったが、今は魔力値が3まで上がり武術や体術はルネルやマルチスぐらいの実力を身につけており強くなっていた。
2人は、入学試験の時に試験監督だった先生や観察していた先生達に天才少女と言われ注目を集めていたのだった。
普通はエターヌとユピアの年齢層だと、ラーバス学園に入学できる生徒は魔力値2だ。
2人が飛び級で入るクラスは、魔力値3の生徒の集まりだった。
そこを選んだ理由は、ジャンヌ達があのクラスの担当の先生の教え方が上手ということが決めてとなった。
「よく、厳しい訓練を乗り越えたね」
大成は、腰を下ろして両手でエターヌとユピアの頭を撫でながら褒める。
「合格できたのは、お兄ちゃんのお陰だよ!」
「そうです!修羅様のお陰です!」
エターヌとユピアは、大成に抱き付き両頬にキスをした。
「「なっ」」
少し離れて見ていたジャンヌ、ウルミラ、イシリアの3人は目を見開いた。
「じゃあ、私も~!」
「マキネさん、どさくさに紛れてキスをしようとしているのですか!抜け駆けはダメですよ」
マキネは大成にキスしようとしたが、ウルミラが慌てて止めた。
「ん~?「抜け駆けは」ってことは、ウルミラもダーリンとキスしたいんだね~♪」
「い、いえ、そ、それは…その…」
マキネに問い詰められ、顔を真っ赤にしてオドオドするウルミラ。
皆は、そんなウルミラを見て笑った。
「あ、そうだった。これ、入学祝だよ」
大成はエターヌとユピアにネックレスを渡し、一人一人に着けてあげる。
そして、ネックレスの効果も教えた。
ネックレスに付いてある黒い蝶々の形をした石は魔鉱石で倍増効果と魔法陣の刻印を刻まれており、魔力を込めると魔力障壁が発動する仕組みになっていた。
「ありがとう!お兄ちゃん」
「ありがとうございます!修羅様」
お礼を言った2人は、目を輝かしながらネックレスを触りながら笑みを浮かべた。
【ラーバス学園】
次の日、大成達はいつも通りの朝練を終え、今日からエターヌとユピアも一緒に学園に登校した。
大成達は、エターヌとユピアと別れて自分達の教室に向かった。
教室では、クラスメイト達は盛り上がっていた。
「「おはよう」」
「おはようございます」
「「おはようございます」」
大成達とクラスメイト達は、互いに挨拶した。
「何か面白いことでもあった?」
大成は自分の席に鞄を置いてから、マーケンスに歩み寄り尋ねた。
「あ、そうだったな。マミューラ先生は、何も言っていなかったから大和は知らないんだよな。明日から合宿が始まるんだ」
「合宿?」
大成は、首を傾げる。
「私も忘れていたわ。そういえば、もう、そういう時期になっていたわね」
「まぁ、仕方ないですよ。マミューラ先生ですから…」
「何だか納得できるけど…。連絡ぐらいは、ちゃんとして欲しいわ」
合宿があることを思い出したジャンヌと苦笑いするウルミラ、溜息をするイシリアだった。
「ところで、合宿の内容は?」
大成は、再びマーケンスに視線を向けて尋ねる。
「ああ、合宿の内容は…」
マーケンスが言いかけた時に、教室のドアが開いた。
「おい!お前達、席に着け。ホームルームを…。ん?何かあったのか?」
「いえ、特には。ただ、明日から合宿が始まるので、合宿のことで騒いでいました」
「あ、悪い。そういえば、言ってなかったな。あと、これは合宿のプリントだ。私は説明しないから、よ~く読んどけよお前達。忘れ物や集合時間間違えても、私は知らないからな」
マミューラは、頭を掻きながら面倒そうにプリントを配る。
配られたプリントの内容は…。
1、4人で1組のパーティー。
2、初日だけ食料配付、パーティー同士の協力を認める。
3、合宿が終わるまでに与えられたノルマを達成すること。(武器を持参しても良い、武器を用意できない人は学校のを貸し出す)
4、魔物の横取り、パーティー内の仲間割れや他のパーティー同士の争いは禁止。
5、魔物の倒し方を知りたい時は、先生に聞いても良い。
6、洞窟や祠には近づかないこと、見つけた場合は速やかに離れ先生に報告すること。
7、合宿が行われるナドムの森の奥には、決して行かないこと。
8、炎系魔法は禁止(火事になる可能性があるため)。
9、一度の戦闘で魔物は最大2匹まで、それを越える魔物と遭遇した場合は戦闘をせずに速やかに撤退すること。
10、何かあった場合は、当日に渡される発煙筒を使うこと。
11、森の守り神には決して近づかない、手を出さないこと。
12、この合宿は学校の成績に反映しないので、参加は希望者のみ。参加しない場合は学園で授業がある。
「合宿は、魔物討伐みたいだな」
プリントを見ながら大成は呟く。
「そうです。この合宿で、冒険者としてのライセンスが手に入ります」
近くの席にいるウルミラが説明した。
ちなみに、ライセンスというのは指定ランク2以下の魔物だけしかいない森は大人がついていれば誰でも入れるが、指定ランク3以上がいる森はライセンスを所持している者しか入れない。
【時の勇者】の捜索の時に入ったパルシアの森は、ランク4も居たが、大成は魔王ということで特別に入れたのだ。
「あと、2枚目にパーティーが載っているから確認しとけよ」
「あの、マミューラ先生。ジャンヌ様達のパーティーと私達のパーティー2つだけ、メンバー的に異常に強いのですが…」
ルネルが、プリントに書かれているパーティーを確認して手を挙げて質問した。
Aチーム…ジャンヌ、ウルミラ、大成、イシリア。
Bチーム…マーケンス、ルネル、マルチス、ユニー。
他は、バランスよく分かれていたのだ。
「当たり前だろ。これは、ライセンスの取得もあるんだ。魔物退治した経験があるお前達が入ったチームは簡単にライセンスが取れてしまうだろ。それじゃ、意味がない。だから、1つに纏めた」
「「あ、なるほど」」
面倒そうな声でマミューラは説明し、皆は納得した。
生徒達は大成と会う前なら不満の声も出たが、今は大成のお陰で強くなった自分の力を試したいと思ったので、不満は一切出てこなかった。
そんな生徒達を見て、マミューラは嬉しく頼もしくなり口元を緩めた。
「じゃあ、各チームに分かれて合宿のことで話し合え」
マミューラの指示で、皆一斉に動き出した。
こうして、明日の合宿に備えて武器、陣形、役割を各チームで話し合った。
【旧館一階・魔法書図書館】
学園から帰った大成は、一人で屋敷の魔法図書館で資料書を読んでいた。
「お疲れ様です、修羅様。隣、良いですか?」
ニールは、趣味のガーデニングの本を探しに来ていた。
「構わないですよ、ニールさん」
「そういえば、明日から修羅様達は合宿のようですね」
大成の隣に座ったニールは、思い出したように話題を切り出した。
「ですね。合宿のためにナドムの森にはどんな魔物がいるか、その魔物達の特有の習性や攻撃などを調べています」
大成は、読んでいるナドムの森の本を持ち上げニールに見せた。
「ホホホ…勉強熱心ですね」
「何か問題が起きた時の備えですよ。ニールさんは、ナドムの森について何かご存知ありませんか?」
小さな事でも情報が欲しかった大成は、ニールに尋ねた。
今、大成が読んでいる本はナドムの森の地形、植物、魔物種類や特徴などだった。
「……そうですな。可能性は、とても低いのですが…。もしかしたら、ゴブリンロードがいるかもしれませんね」
髭を触りながらニールは、少し間を置き話す。
「ゴブリンロードですか?」
「はい。周りのゴブリン達を強化して指揮をとる。とても、やっかいな相手です。ロード本体も指定ランク4で結構強いです。まぁ、今まで強い森にしか出現してませんし。しかも、100年に一度、出現するかどうかの魔物ですが」
ニールは笑いながら説明した。
「ありがとうございます、ニールさん。参考になりました。では、僕はこれで失礼します」
「合宿、頑張って下さい。修羅様」
「ええ、もちろんです」
そう言って、大成は図書館から出て行った。
【屋敷】
合宿当日、いつもより朝練を早めに終えた大成達はいつもより早く学園に向かうことにした。
「大成、ウルミラ。今日は合宿だから…」
「そうだね、ジャンヌ。じゃあ、一足先に行ってくるよ」
「朝練、頑張って下さい」
大成達は、まだ朝練をしているエターヌ達に挨拶した。
「頑張って、お兄ちゃん達」
「ダーリン達なら心配ないと思うけど、無理しないでね」
「修羅様達がいない間、屋敷はユピア達にお任せ下さい」
エターヌ、マキネ、ユピアは、笑顔で大成達を見送った。
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