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大成とマルコシアス
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【合宿2日目の朝・ナドムの森・奥・守り神の領域】
「大和…。」
「し、師匠…。」
「「大和君…。」」
大成が助けに来てくれたことで、安心したマーケンス達は緊張が解けて身体中の力が抜けてへたり込んだ。
「ありがとう、大和。助かった。ところで、何でここにいるんだ?ここは立ち入り禁止区域だぞ。いや、それより俺達を置いて逃げろ。マルコシアスは、正真正銘の化け物だ。流石の大和でも、魔力値2のお前じゃ絶対に勝てない。だから…。えっ!?大和、お前、その髪の毛の色は…。まさか!?」
マーケンスは大成が助けにきてくれたことに感謝したが、大成を巻き込まないために相手が格上のことを伝えて逃げるように指示しようとした。
しかし、すぐに大成の髪の色がマーケンス達が知っている青一色だけでなく、雨で所々青色が剥げて黒も混ざっていたことで大成が魔王修羅だと気付いたマーケンス達。
「師匠が修羅様!?」
「嘘!?大和君が、あの修羅様なの!?」
「え、え?どういうこと!?」
マルチス達は、大成が魔王修羅と知り驚愕した。
「やっぱり、流石にバレるよな。もう、俺の正体わかったのなら安心できるだろ?あと、何故ここにいるのかは後回しだ」
マーケンス達の反応を見た大成は苦笑いし、濡れて乱れた髪の毛を掻き上げる。
【過去・ナドムの森・中央】
少し前、大成達は探索している途中で雨が降りだし木の下で雨宿りしていた。
「はぁ、早く止まないかな」
大成は空を見上げ、ポツリと呟く。
「「そうね」」
「そうですね」
ジャンヌ達は、小さい声で肯定し頷いた。
そんな中、森の奥から大成だけでなく、ジャンヌ達にも気付くほど、マルコシアスの圧倒的な威圧感、魔力、そして殺気を感じた。
「な、何なの?体の芯からゾッとするほどの恐ろしい威圧感は…。」
大成はまたランドニーが何か問題をしでかしたと思い溜め息を吐き、ジャンヌ達は冷や汗を掻きながらプレッシャーがする森の奥に視線を向ける。
そして、すぐに精神干渉魔法レゾナンスが発動して大成に連絡がきた。
相手はダビルドだった。
朝、大成が保険としてレゾナンスでダビルドに連絡をとっていたのだ。
「修羅様、大変申し訳ありません。ターゲットのランドニーは、未だに見つかりません。ですが、このプレッシャーの原因がわかりました。ローケンス様の息子であるマーケンス様のパーティーが、森の守り神マルコシアスと交戦しています。戦局は、非常に不味い状態になってます。私も参戦して手助けをしましょうか?」
「いえ、ダビルドさんもわかっているはずです。森の守り神マルコシアスの前だと、流石のダビルドさんでも手に負えないと…。ダビルドさんは、引き続きランドニーを探して下さい。おそらくですが、マルコシアスを前にして恐怖で逃げたはずなので近くにいると思います。マーケンスの方は、僕が今すぐ向かいますので」
「了解です。御武運を」
ダビルドはレゾナンスを解除した。
「何かあったのよね?大成」
「教えて頂けませんか?大成さん」
「ねぇ、大成君。まさかとは思うけど、マーケンスが何かやらかしたの?」
大成が厳しい表情に変わったので、すぐに気付いたジャンヌ達。
「緊急事態になった。説明は後でをする。今は、一刻を争う事態だ。すまないが、俺は先に行く。全力を出すから腹に力を入れてくれ」
大成は言いながら全力で身体強化をすると、周囲の木々や岩などがミシミシと音を立てる。
ジャンヌ達は大成の膨大な魔力のプレッシャーによって息を詰まらせそうになり、周囲の重力が強まった感じがするほど体が重く感じた。
大成は気にせずにジャンプして近くの木に跳び移り、更にそこから上に高くジャンプをする。
「グリモア・ブック、エア・インパクト」
空中で大成はグリモアを出して両手を前に出して風魔法エア・インパクトを唱えると、両手に周囲の空気が収束して高密度に圧縮していきサッカーボールぐらいの大きさの球体を2つ作りだし体を回転させて左右の足で踏みつけた。
踏みつけた瞬間、圧縮された空気の球体は大きな音を立てながら破裂して突風が巻き起こる。
大成は突風と反動を利用し、マルコシアスのプレッシャーがする方へと弾丸の様に一直線で飛んでいった。
大成が巻き起こした突風の余波で雨雲は吹き飛ばされていき、地面は削られ、生えている木は弓の弦みないに反り、中には耐えきれずに根っこから引き抜かれて飛ばされいく。
「「きゃっ」」
ジャンヌ達も身体強化していたが、吹き飛ばされそうになるほどだった暴風であった。
空を弾丸のように飛んでいる大成は、マーケンス達の前に立ちはだかるマルコシアスを見つけた。
「見つけた!あそこか!少し軌道がズレているな。エア・インパクト」
軌道がズレているとと判断した大成は、再びエア・インパクトを唱えて距離と方角を修正する。
なぜかマルコシアスは、すぐにマーケンス達に攻撃せずに固まっていたが、とうと前足が動き鋭い爪がマーケンス達を襲う。
「間に合え~!」
大成は勢いがついたまま空中で回転して右足で、大成に気付き振り向こうとしたマルコシアスを蹴り飛ばした。
大成がマルコシアスを蹴り飛ばした時、ダンプトラックがぶつかる音がし、蹴り飛ばされたマルコシアスは、地面をえぐりながら木を薙ぎ倒し約20mぐらいのところまで飛ばされた。
そのあと、ワンテンポ遅れて砂埃が舞ったのだ。
【ナドムの森・奥・守り神の領域】
マーケンス達に説明を粗方した大成は、マーケンス達の斜め後ろにロープで捕獲されている血塗れのマルコシアスの子供に気付いた。
「ところで1つ聞くが、これをしたのはお前達か?」
大成は、言葉使いが変わり目を見開き、威圧感を増してマーケンス達に尋ねた。
「「~っ!」」
マーケンス達は、身体中から冷や汗を搔いて震える。
大成は、ゆっくりと近づいてくる。
必死に何か言葉を出そうとしたが、大成の圧倒的なプレッシャーを受けて上手く声すらでなかった。
大成はマーケンス達を無視して横を通りすぎ、血塗れのマルコシアスの子供のところに歩み寄って罠のロープを外してマルコシアスの子供を抱き抱えながら脈をみた。
「良かった。まだ、生きているな。これなら、どうにか助けられる。ヒーリング・オール」
マルコシアスの子供の息があることに気付いた大成はホッとし、光魔法ヒーリング・オールを唱える。
マルコシアスの子供は、優しい緑色の光に包まれていく。
呼吸はあったが弱々しく、かなりの重症だったので回復魔法の最上級ヒーリング・オールを選択したのだ。
ヒーリング・オールは、ただ膨大な魔力消費だけでなく、緻密な魔力コントロールも必要なので完全に治るまでは間近で診ていないといけない。
そんな時だった。
「ガァァ!」
マルコシアスの親は、いつの間にかに大成の背後におり右前足で大成を攻撃した。
「待て!マルコシアス」
大成は気付いていたので、体を横に反らして攻撃を躱す。
「落ち着け!」
しかし、マルコシアスは止まりそうになかったので、大成は仕方なく左足でマルコシアスの右腕に蹴りを入れた。
大成は、蹴った感触でわかった。
分厚いタイヤを蹴った感触がして、全くダメージを与えていないことに気付いた。
最初の一撃は不意打ちで、しかも、勢いがついていたからダメージを与えれたのだ。
(どうする?治療を中断するか?いや、今、中断したら死ぬかもしれない…。その前に、ここで争うとマーケンス達にも被害が出てしまう)
大成は、いろいろ考えてマーケンス達と距離を取るために森の奥に向かうことにした。
大成の異常な強さを感じたマルコシアスは、逆に我が子に何かされていると思い冷静さを失っており魔法を阻止しようとして大成を追いかけながら左右の前足で連撃をする。
「くっ」
大成の両手には、マルコシアスの子供を抱えており、使えなかった。
なので、後ろに下がったり、しゃがんだり、左右に体を反らして回避する大成。
しかし、詰将棋の様に次第に追い込まれていく。
如何に魔力全開で身体強化をしても、相手も同じぐらいの相手なのでマルコシアスの子供を抱いており左右の手が使えないので不利なのは変わらない。
しかも、常にマルコシアスの子供に緻密な魔力コントロールを維持しないといけなかった。
唯一、大成の方が身体強化の魔力コントロールで勝っていたので、辛うじて凌げていたに過ぎなかった。
「ガァァ!」
「チッ」
大成は舌打ちしながら後ろにジャンプし、後ろにある木を蹴って方向を変えて避けた。
マルコシアスの前足が木に当たり、触れた木は勿論、離れていた木々もマルコシアスの攻撃で発生した鎌鼬でプリンのように何の抵抗もなく伐られる。
「ガァァ!!」
マルコシアスは雄叫びをあげると周囲に風が集束していき荒れまくり、あっという間に8つの巨大な竜巻を発生させた。
「おいおい、マジかよ…。」
「ガァァ!」
これは流石に危険だと大成は思った瞬間、マルコシアスの雄叫びと共に8つの竜巻は生き物ように動いて大成を襲い掛かる。
大成は木から木に飛び移りながら回避したが、竜巻は木や大地を深く抉り、それでも勢いは止まらずに次々と大成に襲い掛かる。
「手加減しろよ。如何にマルコシアスが風への絶対耐性があっても、まだ子供だぞ!」
ヤケクソに叫ぶ大成は、必死に回避しながら本の内容を思い出していた。
合宿前にマルコシアスの特質も調べていたのだ。
マルコシアスは、指定ランク5の魔物の中で数少ない神獣の部類に入っており風の絶対耐性を持っている。
神獣とは下手したらヘルレウスより強く、手に負えないレベルの魔物のことだ。
要するにディザスター(天災)なのだ。
あと、絶対耐性とは、その属性の魔法ならダメージを受けないことや状態異常にかからないというチート能力だ。
そして、大成が本気で討伐しようとしない理由は、本に挟まれていたメモ紙に手書きでこう書かれていた。
マルコシアスは我が親友でもあり、血が繋がってなくても家族なのだ。
もし森で何かあれば、マルコシアスを助け欲しい。
魔王より
メモ紙を見た大成は、魔王の名を引き継いだ自分が引き継ぐと決意していたのだ。
そして、大成の目の前には荒れ怒り狂うマルコシアスがいる。
大成は動きを読まれ始め、次第に掠り傷が増えていく。
(このままじゃ、長く持たないな。下手したら俺が死にそうだ…。仕方ない賭けに出るか。すまないが、我慢してくれよ)
大成はマルコシアスの子供を心配し、今度は木から木に飛び移らずに地面に降り、ヒーリング・オール分の魔力を残し、残りの魔力を片足に集中させ地面を蹴り飛ばした。
地面には大成の足跡が深く、くっきりと残るほどだった。
マルコシアスは、大成の異常な速さを目の当たりにして驚愕して目を大きく見開く。
竜巻は大成の速さについていけず、大成が通りすぎた場所に次々と激突として地面を抉る。
一瞬でマルコシアスの懐まで移動した大成は、そのままの勢いで右足でマルコシアスの胸元を蹴り飛ばした。
「ガァ…。」
マルコシアスは部分強化をして防げたのでダメージは軽度で済んだが、威力に押され後ろにズリ下がった。
大成は止まらずにズリ下がったマルコシアスの背後に回り、左足で背中を蹴る。
だが、今度は加速力が足らず、全くダメージを与えることができなかった。
「これなら、どうだ?魔力発勁」
いつも大成は手で発勁をしていたが、今は両手が使えないので左足で発勁をする。
「なっ!?」
「ガァァ」
大成は驚愕した。
なぜなら、左足が触れているマルコシアスの背中から魔力が放出し、お互いの魔力が衝突して爆発した。
爆発で踏ん張ることができたマルコシアスは少しズリ下がっただけで終わったが、大成は足で発勁したことが災いして片足だけでは踏ん張ることができずに地面を転がりながら吹っ飛んだ。
「くっ」
大成は、マルコシアスの子供を落とさないように体を丸めて抱き締めたまま受け身を取れずに転がった。
「ここまでか…。」
大成の目の前には、マルコシアスが立っていた。
大成は覚悟して動かず、マルコシアスをただ見つめる。
しかし、マルコシアスからは先ほどまで迸っていた殺気や威圧感が完全に消えていた。
「お前は、何者だ?」
突如、精神干渉魔法レゾナンスが発動し、マルコシアスから声をかけられて驚いた大成だったが、すぐに落ち着き冷静になった。
「俺は神崎大成。人間だけどラーバスの魔王になった。今は、魔王修羅と呼ばれている」
「ほう…。噂で聞いていたが、本当に人間の年端も行かぬ小僧だな。だが、しかし、恐ろしいほどの強さを秘めており優しさも備わっておるようだな」
マルコシアスは、瞳を細めて大成に抱かれている我が子に視線を向けて目を細める。
マルコシアスが攻撃をやめて話しかけたのは、転がりながらでも我が子を大切に庇っていた姿を見たことで冷静になったのだった。
「ああ、心配しなくっていい。ちゃんと、この子は、あんたに返すよマルコシアス。もう少ししたら、完全に治って元気になる。今まで、ヒーリング・オールをかけ続けていたからな」
「ギャ~!」
大成が説明していたら、マルコシアスの子供が目を開き、元気に鳴き声をあげた。
大成は笑顔で、抱き抱えているマルコシアスの子供を地面にそっと下ろした。
マルコシアスの子供は鳴き声をあげながらマルコシアスに駆け寄り、目を細めて親に擦り寄ってマルコシアスも嬉しそうに顔で子供の体を撫でた。
「大和…。」
「し、師匠…。」
「「大和君…。」」
大成が助けに来てくれたことで、安心したマーケンス達は緊張が解けて身体中の力が抜けてへたり込んだ。
「ありがとう、大和。助かった。ところで、何でここにいるんだ?ここは立ち入り禁止区域だぞ。いや、それより俺達を置いて逃げろ。マルコシアスは、正真正銘の化け物だ。流石の大和でも、魔力値2のお前じゃ絶対に勝てない。だから…。えっ!?大和、お前、その髪の毛の色は…。まさか!?」
マーケンスは大成が助けにきてくれたことに感謝したが、大成を巻き込まないために相手が格上のことを伝えて逃げるように指示しようとした。
しかし、すぐに大成の髪の色がマーケンス達が知っている青一色だけでなく、雨で所々青色が剥げて黒も混ざっていたことで大成が魔王修羅だと気付いたマーケンス達。
「師匠が修羅様!?」
「嘘!?大和君が、あの修羅様なの!?」
「え、え?どういうこと!?」
マルチス達は、大成が魔王修羅と知り驚愕した。
「やっぱり、流石にバレるよな。もう、俺の正体わかったのなら安心できるだろ?あと、何故ここにいるのかは後回しだ」
マーケンス達の反応を見た大成は苦笑いし、濡れて乱れた髪の毛を掻き上げる。
【過去・ナドムの森・中央】
少し前、大成達は探索している途中で雨が降りだし木の下で雨宿りしていた。
「はぁ、早く止まないかな」
大成は空を見上げ、ポツリと呟く。
「「そうね」」
「そうですね」
ジャンヌ達は、小さい声で肯定し頷いた。
そんな中、森の奥から大成だけでなく、ジャンヌ達にも気付くほど、マルコシアスの圧倒的な威圧感、魔力、そして殺気を感じた。
「な、何なの?体の芯からゾッとするほどの恐ろしい威圧感は…。」
大成はまたランドニーが何か問題をしでかしたと思い溜め息を吐き、ジャンヌ達は冷や汗を掻きながらプレッシャーがする森の奥に視線を向ける。
そして、すぐに精神干渉魔法レゾナンスが発動して大成に連絡がきた。
相手はダビルドだった。
朝、大成が保険としてレゾナンスでダビルドに連絡をとっていたのだ。
「修羅様、大変申し訳ありません。ターゲットのランドニーは、未だに見つかりません。ですが、このプレッシャーの原因がわかりました。ローケンス様の息子であるマーケンス様のパーティーが、森の守り神マルコシアスと交戦しています。戦局は、非常に不味い状態になってます。私も参戦して手助けをしましょうか?」
「いえ、ダビルドさんもわかっているはずです。森の守り神マルコシアスの前だと、流石のダビルドさんでも手に負えないと…。ダビルドさんは、引き続きランドニーを探して下さい。おそらくですが、マルコシアスを前にして恐怖で逃げたはずなので近くにいると思います。マーケンスの方は、僕が今すぐ向かいますので」
「了解です。御武運を」
ダビルドはレゾナンスを解除した。
「何かあったのよね?大成」
「教えて頂けませんか?大成さん」
「ねぇ、大成君。まさかとは思うけど、マーケンスが何かやらかしたの?」
大成が厳しい表情に変わったので、すぐに気付いたジャンヌ達。
「緊急事態になった。説明は後でをする。今は、一刻を争う事態だ。すまないが、俺は先に行く。全力を出すから腹に力を入れてくれ」
大成は言いながら全力で身体強化をすると、周囲の木々や岩などがミシミシと音を立てる。
ジャンヌ達は大成の膨大な魔力のプレッシャーによって息を詰まらせそうになり、周囲の重力が強まった感じがするほど体が重く感じた。
大成は気にせずにジャンプして近くの木に跳び移り、更にそこから上に高くジャンプをする。
「グリモア・ブック、エア・インパクト」
空中で大成はグリモアを出して両手を前に出して風魔法エア・インパクトを唱えると、両手に周囲の空気が収束して高密度に圧縮していきサッカーボールぐらいの大きさの球体を2つ作りだし体を回転させて左右の足で踏みつけた。
踏みつけた瞬間、圧縮された空気の球体は大きな音を立てながら破裂して突風が巻き起こる。
大成は突風と反動を利用し、マルコシアスのプレッシャーがする方へと弾丸の様に一直線で飛んでいった。
大成が巻き起こした突風の余波で雨雲は吹き飛ばされていき、地面は削られ、生えている木は弓の弦みないに反り、中には耐えきれずに根っこから引き抜かれて飛ばされいく。
「「きゃっ」」
ジャンヌ達も身体強化していたが、吹き飛ばされそうになるほどだった暴風であった。
空を弾丸のように飛んでいる大成は、マーケンス達の前に立ちはだかるマルコシアスを見つけた。
「見つけた!あそこか!少し軌道がズレているな。エア・インパクト」
軌道がズレているとと判断した大成は、再びエア・インパクトを唱えて距離と方角を修正する。
なぜかマルコシアスは、すぐにマーケンス達に攻撃せずに固まっていたが、とうと前足が動き鋭い爪がマーケンス達を襲う。
「間に合え~!」
大成は勢いがついたまま空中で回転して右足で、大成に気付き振り向こうとしたマルコシアスを蹴り飛ばした。
大成がマルコシアスを蹴り飛ばした時、ダンプトラックがぶつかる音がし、蹴り飛ばされたマルコシアスは、地面をえぐりながら木を薙ぎ倒し約20mぐらいのところまで飛ばされた。
そのあと、ワンテンポ遅れて砂埃が舞ったのだ。
【ナドムの森・奥・守り神の領域】
マーケンス達に説明を粗方した大成は、マーケンス達の斜め後ろにロープで捕獲されている血塗れのマルコシアスの子供に気付いた。
「ところで1つ聞くが、これをしたのはお前達か?」
大成は、言葉使いが変わり目を見開き、威圧感を増してマーケンス達に尋ねた。
「「~っ!」」
マーケンス達は、身体中から冷や汗を搔いて震える。
大成は、ゆっくりと近づいてくる。
必死に何か言葉を出そうとしたが、大成の圧倒的なプレッシャーを受けて上手く声すらでなかった。
大成はマーケンス達を無視して横を通りすぎ、血塗れのマルコシアスの子供のところに歩み寄って罠のロープを外してマルコシアスの子供を抱き抱えながら脈をみた。
「良かった。まだ、生きているな。これなら、どうにか助けられる。ヒーリング・オール」
マルコシアスの子供の息があることに気付いた大成はホッとし、光魔法ヒーリング・オールを唱える。
マルコシアスの子供は、優しい緑色の光に包まれていく。
呼吸はあったが弱々しく、かなりの重症だったので回復魔法の最上級ヒーリング・オールを選択したのだ。
ヒーリング・オールは、ただ膨大な魔力消費だけでなく、緻密な魔力コントロールも必要なので完全に治るまでは間近で診ていないといけない。
そんな時だった。
「ガァァ!」
マルコシアスの親は、いつの間にかに大成の背後におり右前足で大成を攻撃した。
「待て!マルコシアス」
大成は気付いていたので、体を横に反らして攻撃を躱す。
「落ち着け!」
しかし、マルコシアスは止まりそうになかったので、大成は仕方なく左足でマルコシアスの右腕に蹴りを入れた。
大成は、蹴った感触でわかった。
分厚いタイヤを蹴った感触がして、全くダメージを与えていないことに気付いた。
最初の一撃は不意打ちで、しかも、勢いがついていたからダメージを与えれたのだ。
(どうする?治療を中断するか?いや、今、中断したら死ぬかもしれない…。その前に、ここで争うとマーケンス達にも被害が出てしまう)
大成は、いろいろ考えてマーケンス達と距離を取るために森の奥に向かうことにした。
大成の異常な強さを感じたマルコシアスは、逆に我が子に何かされていると思い冷静さを失っており魔法を阻止しようとして大成を追いかけながら左右の前足で連撃をする。
「くっ」
大成の両手には、マルコシアスの子供を抱えており、使えなかった。
なので、後ろに下がったり、しゃがんだり、左右に体を反らして回避する大成。
しかし、詰将棋の様に次第に追い込まれていく。
如何に魔力全開で身体強化をしても、相手も同じぐらいの相手なのでマルコシアスの子供を抱いており左右の手が使えないので不利なのは変わらない。
しかも、常にマルコシアスの子供に緻密な魔力コントロールを維持しないといけなかった。
唯一、大成の方が身体強化の魔力コントロールで勝っていたので、辛うじて凌げていたに過ぎなかった。
「ガァァ!」
「チッ」
大成は舌打ちしながら後ろにジャンプし、後ろにある木を蹴って方向を変えて避けた。
マルコシアスの前足が木に当たり、触れた木は勿論、離れていた木々もマルコシアスの攻撃で発生した鎌鼬でプリンのように何の抵抗もなく伐られる。
「ガァァ!!」
マルコシアスは雄叫びをあげると周囲に風が集束していき荒れまくり、あっという間に8つの巨大な竜巻を発生させた。
「おいおい、マジかよ…。」
「ガァァ!」
これは流石に危険だと大成は思った瞬間、マルコシアスの雄叫びと共に8つの竜巻は生き物ように動いて大成を襲い掛かる。
大成は木から木に飛び移りながら回避したが、竜巻は木や大地を深く抉り、それでも勢いは止まらずに次々と大成に襲い掛かる。
「手加減しろよ。如何にマルコシアスが風への絶対耐性があっても、まだ子供だぞ!」
ヤケクソに叫ぶ大成は、必死に回避しながら本の内容を思い出していた。
合宿前にマルコシアスの特質も調べていたのだ。
マルコシアスは、指定ランク5の魔物の中で数少ない神獣の部類に入っており風の絶対耐性を持っている。
神獣とは下手したらヘルレウスより強く、手に負えないレベルの魔物のことだ。
要するにディザスター(天災)なのだ。
あと、絶対耐性とは、その属性の魔法ならダメージを受けないことや状態異常にかからないというチート能力だ。
そして、大成が本気で討伐しようとしない理由は、本に挟まれていたメモ紙に手書きでこう書かれていた。
マルコシアスは我が親友でもあり、血が繋がってなくても家族なのだ。
もし森で何かあれば、マルコシアスを助け欲しい。
魔王より
メモ紙を見た大成は、魔王の名を引き継いだ自分が引き継ぐと決意していたのだ。
そして、大成の目の前には荒れ怒り狂うマルコシアスがいる。
大成は動きを読まれ始め、次第に掠り傷が増えていく。
(このままじゃ、長く持たないな。下手したら俺が死にそうだ…。仕方ない賭けに出るか。すまないが、我慢してくれよ)
大成はマルコシアスの子供を心配し、今度は木から木に飛び移らずに地面に降り、ヒーリング・オール分の魔力を残し、残りの魔力を片足に集中させ地面を蹴り飛ばした。
地面には大成の足跡が深く、くっきりと残るほどだった。
マルコシアスは、大成の異常な速さを目の当たりにして驚愕して目を大きく見開く。
竜巻は大成の速さについていけず、大成が通りすぎた場所に次々と激突として地面を抉る。
一瞬でマルコシアスの懐まで移動した大成は、そのままの勢いで右足でマルコシアスの胸元を蹴り飛ばした。
「ガァ…。」
マルコシアスは部分強化をして防げたのでダメージは軽度で済んだが、威力に押され後ろにズリ下がった。
大成は止まらずにズリ下がったマルコシアスの背後に回り、左足で背中を蹴る。
だが、今度は加速力が足らず、全くダメージを与えることができなかった。
「これなら、どうだ?魔力発勁」
いつも大成は手で発勁をしていたが、今は両手が使えないので左足で発勁をする。
「なっ!?」
「ガァァ」
大成は驚愕した。
なぜなら、左足が触れているマルコシアスの背中から魔力が放出し、お互いの魔力が衝突して爆発した。
爆発で踏ん張ることができたマルコシアスは少しズリ下がっただけで終わったが、大成は足で発勁したことが災いして片足だけでは踏ん張ることができずに地面を転がりながら吹っ飛んだ。
「くっ」
大成は、マルコシアスの子供を落とさないように体を丸めて抱き締めたまま受け身を取れずに転がった。
「ここまでか…。」
大成の目の前には、マルコシアスが立っていた。
大成は覚悟して動かず、マルコシアスをただ見つめる。
しかし、マルコシアスからは先ほどまで迸っていた殺気や威圧感が完全に消えていた。
「お前は、何者だ?」
突如、精神干渉魔法レゾナンスが発動し、マルコシアスから声をかけられて驚いた大成だったが、すぐに落ち着き冷静になった。
「俺は神崎大成。人間だけどラーバスの魔王になった。今は、魔王修羅と呼ばれている」
「ほう…。噂で聞いていたが、本当に人間の年端も行かぬ小僧だな。だが、しかし、恐ろしいほどの強さを秘めており優しさも備わっておるようだな」
マルコシアスは、瞳を細めて大成に抱かれている我が子に視線を向けて目を細める。
マルコシアスが攻撃をやめて話しかけたのは、転がりながらでも我が子を大切に庇っていた姿を見たことで冷静になったのだった。
「ああ、心配しなくっていい。ちゃんと、この子は、あんたに返すよマルコシアス。もう少ししたら、完全に治って元気になる。今まで、ヒーリング・オールをかけ続けていたからな」
「ギャ~!」
大成が説明していたら、マルコシアスの子供が目を開き、元気に鳴き声をあげた。
大成は笑顔で、抱き抱えているマルコシアスの子供を地面にそっと下ろした。
マルコシアスの子供は鳴き声をあげながらマルコシアスに駆け寄り、目を細めて親に擦り寄ってマルコシアスも嬉しそうに顔で子供の体を撫でた。
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ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。
試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。
「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」
枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
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